収益至上主義が招く虚偽に満ちた現場

折口雅博氏率いるグッドウィルグループでは、
介護ビジネスの「コムスン」に続いて、人材派遣の

「グッドウィル」

でも様々な法令違反が摘発されましたね。


折口氏は、起業家としては優れた才覚の持ち主です。

彼の事業センス、マーケティングセンスは
今でも高い評価に値すると思っています。


しかし、経営者としては、昔ながらの

「収益至上主義」

を採用していましたよね。

折口氏のこの経営スタイルが
今回の破綻を招いてしまったのは明らかです。


私が3年前に出席した講演で、折口氏は、

「過去を見れば、未来は予測できる」

と豪語していました。

これは、逆の見方をすれば、

原因となる現在の行動を着実にやれば、
未来(目標)は、自分の予測したとおりになる

という意味でした。


しかし、この考え方は現場にとっては、
単なる押し付けになっていたのだと思います。


なぜなら、折口氏は現場に対して、
必達の売上ノルマ(目標)を与えた。

そして、折口氏曰く、

“執念と鉄の意志を持ち、決してあきらめない”

ことを社員に訴えたのです。

つまり、「過去を見て予測する」というよりも、
未来という名の「目標」を何が何でも達成することを
社員に約束させた。

折口氏の(収益)予測が的中するのは当然ですね。


しかし、現場の社員は、
折口氏の予測を的中させるために、
それこそ、どんな手段でも取らざるを得なくなります。

ノルマ達成のためには、
多少の不正行為も仕方がない、やむを得ないとなる。

そして、不正行為がだんだんと拡大し、
またエスカレートしていく。

こうなることは自明の理のはずでした。


元日本マクドナルドの人材開発室長で、
現(有)ジェイシップ代表取締役社長の田岡純一氏も、

“数字を追いかけると、人は疲弊し必ずうそをつく”

とおっしゃっています。


つまり、コムスンにしろ、グッドウィルにしろ、
「売上」という数字を追いかけさせられたことによって、
誰もが予測できる結末として、

「虚偽に満ちた現場」

を生んでしまったというわけです。


残念なことながら、この必然的な未来を
折口氏は予測できなかったようですね。


顧客の「満足」や「信頼」の先にある結果に過ぎない

「収益」

を現場をコントロールする手段にしてしまっている経営者は、
折口氏に限らずあいかわらず多いのですが、
収益至上主義の経営は、遅かれ早かれ現場の破綻を招く。

これは簡単に予測できる未来ではないでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 11:15 | コメント (2) | トラックバック