ヒューマノイドロボットの過去・現在・未来

人手不足の影響もあって、サービス低下がはなはだしいのが、
流通・外食・サービス業界ですね。


私も、ファミリーレストラン等には、
過剰な期待は持ってはいないのですが・・・

感情のかけらもない、機械的な挨拶と笑顔に迎えられ、
声をかけたくても、わざと避けているかのように目をそらす
ウェイター・ウエイトレスに出会うたび、

「あんたらはいらん。セルフサービスがまだましや!」

「あんたら、うかうかしてると、そのうち

 “ヒューマノイドロボット(人型ロボット)”

 に仕事を奪われるで!」

と、なぜだか「なんちゃって関西弁」で内心毒づいております。


というわけで(やや強引な導入ですが)、今日は、

実用に供されるヒューマノイドロボット

の過去・現在・未来を語ります。(偏った内容ですけど・・・)


☆ヒューマノイドロボットの過去


回転寿司大手の「くら寿司」では、
今から20年も前の1986年に、

「お運びロボット」

を導入しました。

テーブル席まで注文された寿司を運ぶ、
このロボットは、1台500万円もしました。


しかし、様々な問題があったようです。

なかでも一番の問題は、
当時の技術ではバッテリーの持続時間が短く、
すぐに途中で止まってしまったことです。

すると、生身の店員が、
寿司を持ったまま立ちつくす直立不動ロボットを
「よいしょ」と後ろから押してあげなければいけない。

なんか情けないですね・・・


結局、ロボットを導入後に売上がどんどん低下したため、
半年でロボットはお役ご免になりました。


☆ヒューマノイドロボットの現在


三菱重工の人型ロボット、「ワカマル」。
かわいらしい姿が人気を集めましたね。

「ワカマル」は、東京都区内限定で、
2005年から家庭用販売を開始していました。


ワカマルは、家族の顔や名前を登録しておけば、
家族一人ひとりを識別して話しかけたり、
インターネットから天気予報やニュースを取り込んで
教えたり、メールの到着を知らせてくれたりします。
また、留守中の室内を監視してくれる機能も。

販売価格は157万5千円、販売目標は当初100台でした。


しかし、販売が思わしくなかったことから、今年07年春に

「販売中止」

を決定しています。


ワカマルのショールーム(丸の内・池袋)には、
05年秋の販売開始数ヶ月で延べ1万人を集めました。

ユーザーの関心は非常に高かったわけです。


ところが、実際に予約を受け付けると数十台しか
獲得できませんでした。

しかも、予約した家庭に行ってみると、
段差があってワカマルが移動できなかったり、
インターネットを導入していなかったりで、
実際に販売できるのは

10数台

にとどまることがわかりました。

これでは、アフターサービス体制の維持も困難と、
本格販売を断念したのです。


さて、この販売不振の原因ですが、開発担当者によれば、

「ロボットに対する消費者の期待値と、
 現在の技術レベルに差がありすぎる」

と分析しています。


ショールームでは、

「(ワカマルは、)掃除や炊事はできないの?」

と尋ねる女性が多かったそうですが、
さすがに、現在の技術ではそこまでは無理でしょう。

また、ネット情報の取り込み、メール到着の通知、
室内監視などの機能は、もっと手軽な携帯でも
実現可能なサービスですね。

ヒューマノイドロボットの強みといえば、
人との「会話能力」ですが、ワカマルの音声認識能力は
まだまだだったようです。

ワカマルの大きさ(体長約1メートル、幅40センチ)も
家庭用としては若干大きめと感じられたようです。


ただ、無料貸し出しをしていた家庭では、
一緒に暮らすうちに、ワカマルに対する愛情が生まれ、

「そばにいてくれるだけでいい」
「言うことをよくわかってくれないのもかわいい」

というユーザーの声も多く聞かれたそうです。

こうしたコメントは、
人型ロボットならではだと思います。


三菱重工では、受付用などよりも、
はるかに市場規模の大きい家庭用ロボットを
あくまで狙うため、ワカマルをさらに進化させるための
研究開発を続けています。


☆ヒューマノイドロボットの未来


たった一人で二足歩行の精巧なロボットを
製作するロボットクリエイターの高橋智隆氏。

高橋氏のロボットは、
ロボカップ世界大会で4連覇を達成しています。


高橋氏は、近い将来、一般家庭には、

「ヒューマノイドロボット」

が欠かせない存在になると信じているそうです。


高橋氏のイメージするそんなロボットは、
小さめのサイズ(おそらく30-40センチ)くらいで
普段はそこらへんにいます。

そして、時折、

「そういえば、松尾さん、“劇団ひとり”が
 好きでしたよね。今晩11時からテレビに出演しますよ」

などと、気の利いた提案をしてくる。

「そうか、でも今日は早く寝たいから、
 その番組を録画しといてくれるかな?」

などと頼むと、HDDレコーダーに信号を送って、
録画予約を完了してくれるのです。


つまり、このロボットは、人間と、そして
家庭内の様々な機械の両方と会話できる能力を
持っているわけです。

いわば、人間と機械の仲立ちをしてくれる
通訳のような役割を果たしてくれるのが、
高橋氏の理想とするヒューマノイドロボットです。

なかなかいいと思いません?


こんなロボットなら

「一家に1台(人)の時代がやってくる」

というのも、荒唐無稽な夢じゃないと思います。


*高橋氏のHP:『ロボ・ガレージ』


さて、以上、

ヒューマノイドロボットの過去・現在・未来

を簡単にご紹介しましたが、とりあえずは、
「大人向けおもちゃ」としての高額な

「ロボット組み立てキット」

がこれからブレークすると思います。


(出所)
くら寿司のロボット・・・カンブリア宮殿(TV東京)
ワカマル・・・日経産業新聞(2007/07/27)
高橋智隆氏の話・・・トップランナー(NHK)

投稿者 松尾 順 : 07:41 | コメント (0) | トラックバック

生物の進化=社会・企業の進化

旭山動物園の小菅園長のお話の中で、
もうひとつ、印象に残った内容をご紹介したいと思います。
(なお、説明のわかりやすさのため、私が若干補足しています。)


それは

「生物の進化」

についてです。

生物は、安定した環境にあり、
そこにうまく適応できている状況では、
徹底的に「異物」を排除します。

なぜなら、「異物」は
自らの存在を危うくするものだからです。


ところが、環境の激変などにより適応が困難になっていく
状況では、異物を受け入れる

「スキマ」

ができるというのです。

異物は、そのスキマから入り込み、
生物に変異を起こします。

そうして変異を起こした生物の中から、
新たな環境に適応できる能力を備えた生物が生き残り、
「命」をつないでいきます。


この話の示唆するところ、それは、

自らの生存がおびやかされるような外的変化が起きないと、
生物はなかなか変化を受け入れない

ということです。


これって、社会や企業においてもまったく同じことが
言えますよね。


異端のリーダーが登場し、
社会や企業が大きな変革を受け入れるのは、
安定期ではなく、外部環境が大きく変化する時期だけです。


実は、

「動物園」

という存在において、「旭山動物園」は、
数々の常識を破ってきた「異端」です。

そして、動物園が生き残るための

「次世代のあるべき姿」

を先取りして見せていると考えることができます。


小菅園長によれば、動物園の来園者数は、
数十年前は全世界で

年間10億人

と算出されていたそうです。


ところが、現在はそれが

同8億人

にまで落ち込んでいます。
日本の動物園でも減少傾向は顕著でした。

全世界的に「動物園」の存在意義が
問われていると言えます。


そんな中で、「旭山動物園」の革新は、
年間26万人というどん底の来園者数を記録した96年から、
わずか10年で300万人を突破するほどの驚異的な復活を
導きました。

そして、その成功を見て、他の動物園も、
旭山動物園が先行した「行動展示」「能力展示」などの、
これからの環境に適応できるスタイルを取り入れて
自らを変革しようと取り組み始めています。

その結果、上野動物園の場合、
昨年度は60万人も来園者数が増えたのだそうです。


もし、あなたの企業が、
現在の激変する外部環境への適応に苦しんでいるようなら、
企業内に潜んでいる「異端の人」が活躍できる

「スキマ」

を作ってあげる必要があるんじゃないでしょうか。

これまでと同じように「異端の人」を
つぶしていたら、会社の将来はおそらくありません。

投稿者 松尾 順 : 09:15 | コメント (2) | トラックバック

「キリン・ザ・ゴールド」の不発

17年ぶりの大型定番ビールとして投入された、

「キリン・ザ・ゴールド」

は、07年3月の初出荷こそ160万ケースだったものの、
6月末までの実績は319万ケースにとどまり、
ビール最盛期の5月以降の伸びがぱっとしません。

このままでは目標達成は厳しいかもという状況ですね。
(初年度の出荷目標は800万ケースでした)


以前私が書いた記事では、

同製品のパッケージデザインの「インパクトの弱さ」

を指摘したんですが、残念ながら
ターゲットとして狙った「二十代」の支持を
得られなかったようです。


そもそも、このパッケージデザインは、

「ビールらしさをいかに払拭するか」

というリスキーな試みに挑戦したもの。


すなわち、

「店頭での目立ち具合よりもむしろ、
 手に取り部屋に置かれた時の雰囲気にマッチするかを
 重視したこと」

でした。

500もの案の中から選ばれたデザインでしたが、
味自体はそう簡単に変えるわけにはいきませんから、
まずは、デザインの刷新を検討すべきかなと思います。


*「キリン・ザ・ゴールド」は定番化するか?

*(続編)「キリン・ザ・ゴールド」は定番化するか?

投稿者 松尾 順 : 06:29 | コメント (10) | トラックバック

失速するメッセージ

某携帯電話会社から昨日届いたメルマガ、
冒頭の前振り文は次のようなものでした・・・

---------------------------------------

夏到来! 大きな口を開けて笑っているみたいな太陽を見上げて、
わんわんとうるさいほどのセミの声を聞くと、思わず歌っちゃう
歌はありませんか? 暑いからってふーふーいっているだけでなく、
夏っぽい歌を口ずさみながらリズミカルに過ごしたいですね。

---------------------------------------

この装飾過剰な形容詞に彩られた大袈裟な文章は、
メルマガ業務を請け負っているプロダクションが制作したもの
でしょうけど、いまだ夏を感じさせない天候不順が続く昨今、
この文章に共感を覚えた人は果たして何人いたのか?


効率向上のための業務の仕組み化で、
失われる細やかな心配り。失速するメッセージ・・・

大企業が、顧客と心を通じ合わせるのは
なんと難しいことでしょう。

投稿者 松尾 順 : 09:33 | コメント (11) | トラックバック

アンケート調査は役に立たない?

以前の記事で、

・予算がないから
・時間がないから
・ほかの調査は面倒だから

といった本末転倒の理由で「アンケート調査」を安易に
やってしまうのは「手抜き」であるという極論を書きました。

*「手抜き調査」の自覚


もちろん、私は、
アンケート調査自体を否定しているわけではありません。

仮説を定量的に検証するためには最も有効な調査方法です。


ところが、旭川市旭山動物園の園長、小菅正夫氏は、

「アンケート調査はまったく役にたたない」

と断言しています。


なぜなら、調査票の作成は、

・きっとこう答えるだろうな
・こう答えてほしい

といった調査実施者側の「予想」や「期待」に基づいて
行われるため、得られた回答結果は自分の範疇を超える
ことができないからです。

小菅園長は、来園者対象のアンケート調査を2年続けて、
この問題に気づいたのだそうです。


上記調査の詳細は聞けていないのですが、
小菅園長のおっしゃる、

「自分の範疇を超えることができない」

というのは、


「すでに自分がわかっていたことを再確認できるに過ぎない」

という意味でしょう。


ただ、そうであるならば、そもそも
アンケート調査の使い道を間違っていた可能性があります。
(小菅園長を非難する意図はありません)


旭山動物園で行われたアンケート調査の目的は、
来園者の不満点、改善点を発見することにあったと
想定されます。

これは、要するに

「仮説発見(構築)」

を主目的とするものですから、
アンケート調査はあまり適した方法ではないのです。

というのも、アンケート調査では、
回答者は、あらかじめ設定された質問にしか答えませんから、
動物園側が思いもしない、新たな不満点や改善点が得られる
はずはないからです。


「アンケート調査は、役に立たない」

という小菅園長の判断は、正確には、

「来園者がどんな不満や改善要望を持っているかという
 仮説発見・構築には、アンケート調査は役に立たない」

ということだと思います。


実際、アンケート調査の代わりに、
来園者への聴き取り調査(ヒアリング調査)を
行ったところ、たくさんの発見が得られています。

来園者に自由に語ってもらい、
それを素直に記録するやり方が効を奏したわけです。

聴き取り調査の結果を
まとめるのはとても手間がかかります。

しかし、冒頭に述べたように、手間がかかるからと
いって安易に「アンケート調査」に逃げてはいけないと
思います。


なお、上記聴き取り調査の結果は
まことに辛らつ、かつ率直なものでした。

そもそも、動物園に来ているにもかかわらず、

「動物園は面白くない!!」

と多くの人が語っていたのです。


その理由は、まず「動物たちが動かないから」

・クマは寝てるだけ
・キリンは立ってるだけ
・水鳥は浮かんでるだけ

ということでつまらない。


また、「見てるだけじゃつまらない」

・抱っこしたい
・えさをあげたい
・お世話したい


さらに、「いつ来ても同じ」

これは、GWの季節などの毎年同じ時期に、
他にいくところもないから、「動物園でもいくか」
といいった調子で来ていた人たちが多かったため、
変わり映えがしないと感じていたようです。


旭山動物園は今、
動物たちが本来持つ能力を発揮させ、
生き生きと活動する姿を見せる、

「行動展示」「能力展示」

の成功により、上野動物園に匹敵する来園者数を
集めています。(平成18年度は約304万人)


この展示スタイルの導入に、
少なからず、聴き取り調査の結果が活かされている
のは間違いないでしょう。


*小菅園長のお話は、
 夕学五十講の講演(2007年7月26日)にて
 お聞きしたものです。

投稿者 松尾 順 : 11:24 | コメント (4) | トラックバック

料理の道理=仕事の道理

先日、京都嵐山の老舗料亭「吉兆」の総料理長、
徳岡邦夫氏の講演を聴く機会がありました。

こぶ平さん(現九代目林家正蔵師匠)にちょい似の、
親しみやすい風貌の徳岡氏は、近年マスコミに
頻繁に登場されてますね。


さて、今日は、徳岡氏の講演で聴いたさまざまなお話の中で、

「仕事全般に通じる普遍的なことだなあ」

と思った話をご紹介したいと思います。


徳岡氏によれば、昔、北大路魯山人は、
全国の一流の料理人を集めた「美食クラブ」のようなものを
作ろうとしたことがあったそうです。

そこで、魯山人は、新聞広告を出して、
「自分こそは最高の料理人だ」と思う人を募集しました。


そして、応募してきた料理人には、魯山人自ら面接を行い、

「君はいったい何が好きかね?」

という質問をしたそうです。


この質問に対して、応募者が、
たとえば「釣り」とか「囲碁」とか、
料理以外のことを答えた場合は不合格としました。

「好きなことは料理です」と答えられない料理人は、
「意識が低い」と魯山人は考えていたんですね。


徳岡氏は、仮にこの求人に自分が応募したとして、
魯山人との面接で上記の質問をされた時になんと答えるか、
考えてみたそうです。

単に、

「魚」や「肉」

と答えるだけでは不十分だろう。

「魚」といっても、さまざまな種類がある。
季節によって味が変わる。

頭、胴、尾っぽ、ぜんぶ魚だ。
部位によって味も違う。

また、焼く、煮る、蒸す・・・
料理法でも味が変わってくる。


徳岡氏はこんなことを考えているうちに、

「料理の道理」

という本質に到達します。


「料理の道理」とは、

「結果的にどんな料理を作りたいか」

というイメージ(理想像)を実現するために、
どんな素材のどの部位を選び、どんな料理技術を
使うべきかということです。

これは、いわば料理における

「因果関係」(原因と結果の関係性・ロジック)

と言えるでしょう。


また、料理の先には、それを食べてもらうお客さんが
いますから、彼らが喜んでもらえる料理を作ることが
究極の目的です。


つまり、究極の目的を達成するために
将来のイメージ(理想像)を構想し、
それを確実に具現化できる能力を備えているのが

「一流の料理人」

ということ。


これは、料理に限らず、
あらゆる分野の仕事に当てはまることですよね。

すなわち、

「仕事の道理」

をわかることが、プロフェッショナルの必要条件です。


なお、上記の話も含まれていますが、
徳岡氏の講演レポートが下記にアップされています。

*夕学五十講 受講生レポート 徳岡邦夫氏

投稿者 松尾 順 : 08:46 | コメント (2) | トラックバック

ミシュランガイドの評価方法

レストランの格付けで世界的に知られた

「ミシュランガイド」の「東京版」

が今年07年11月に発刊されますね。


マーケティングリサーチャーの私としては、
格付け、つまり「評価方法」が気になるところです。


先日、来日したミシュランガイド 6代目総責任者、
ジャン=リュック・ナレ氏のインタビュー記事
(日経ビジネスアソシエ、2007.07.17)では、
その評価方法がわかりやすく説明されていたので、
ポイントをご紹介します。


まず、ミシュランガイドの信頼性が高いことについて、
ナレ氏は、次の3つを挙げています。


・調査や制作の資金をすべて自社で負担しているという独立性
・世界各国で調査員が同じ基準で評価していること
・評価は1年ごとに更新されること

すなわち、偏りの少ない、
最新の評価を知ることができるということでしょうね。


次に調査方法。

ミシュランと契約したフルタイムの調査員が、
レストランで食事をした後、所定のフォームを使って
レポートにまとめます。

別の記事によれば、ミシュランガイド東京版の発行のため、
昨年5月から覆面調査員5人が、東京の1200店以上を対象に
調査を開始しています。

5人のうち2人は日本人、3人は欧州系だそうです。


おいしい料理を食べることが仕事だなんて、
私もぜひ覆面調査員やりたいです。

なんとかなりませんかね・・・?(笑)


なお、8年前から発行されている

「ザガットサーベイ東京版」

の場合、一般のレストラン利用者のアンケートによって
評価が行われています。


さて、ミシュランガイドの調査項目ですが、
所定のフォームの表には

・店の内装
・テーブルウェア
・快適さ

といった客観的な評価項目が並んでいます。

調査員は、該当する項目(選択肢形式でしょう)を
チェックすることで評価します。


そして、フォームの裏側は、「料理」の評価です。

これは調査員の主観を大切にするため、
あえて「自由記述」を採用しているそうです。


料理の評価の基準は、以下の5つ。

・食材
・火加減
・味
・シェフの個性
・安定性(どの料理もおいしいか、いつ行ってもおいしいか)


そして各店の星の数は、
上記調査結果に基づき、格付け会議を開いて決定されます。

この格付け会議にその国の調査員が一同に会し、
1店ずつ星の数を決めていくのです。

もし、調査員によって評価が分かれたら、
その店は日によってバラツキがある、つまり「安定性」に
難ありと判断されるようです。


星の数の意味は次のとおりです。

☆ :「そのカテゴリーで特に美味しい料理を提供するレストラン」
☆☆ :「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」
☆☆☆:「わざわざ訪れる価値がある卓越した料理」


ちなみに、私もぜひやりたい

「覆面調査員」

になるための条件ですが、最も重視するのは、

「「食べることに情熱を持っているかどうか」

だそうです。

うん、これは私はクリアしてると思います。(^_^)

実際、私のメルマガ&ブログは、

「食」

のテーマが多いことには皆さんお気づきでしょう。


しかし、技術面の条件としては、
どれだけ細かく観察できるか、また料理については
繊細に評価できるかが問われます。


なるほど・・・

恥ずかしながら、私は味覚についてはかなり鈍感なので、
やはり調査員になるのは無理のようです。(+_+)

残念!


*ミシュラン社のプレスリリース(2007年3月14日)

投稿者 松尾 順 : 09:54 | コメント (0) | トラックバック

開発者側とユーザー側の意識差

マーケティング巧者、小林製薬のネタは、
これまで何度か取り上げてきました。


*インパクトか上品か

*良さそうに見えなきゃ売れないョー


小林製薬は、
ユーザーの潜在ニーズを見抜くことにかけては、
最も優れた会社のひとつです。

それでも、
ユーザーの心に刺さるメッセージを生み出すのは
簡単ではない、ということがうかがえる最新事例がありました。


同社は今年(07年)3月発売の

「ホットクレンジングジェル」

でメイク落とし市場に新規参入しています。

上記製品は、発売1ヶ月で20万本以上を出荷して
年間売り上げ目標4億5千万円の3分の1をすでに達成。
現在も順調に出荷を伸ばしています。
(日経情報ストラテジー、SEPTEMBER 2007)


この製品の開発に当たっては、
SNSを活用して多数の消費者の意見を集め、
パッケージデザインや売り場作りなどに活かしたそうです。


具体的には、昨年(06年)12月、
SNS最大手の「ミクシィ」内に公認コミュニティサイト、

「あっためてつる肌委員会」

を開設しています。

開設後半年(今年5月末)で、
上記コミュニティメンバーは5千人を突破。

小林製薬では、この反響の大きさを考慮して、
コミュニティ開設期間を8月いっぱいまで延長を決めました。


さて、このコミュニティで出されたアイディアのうち、
実際の商品開発に反映されたのは、
パッケージに記載された次のキャッチコピーでした。

「蒸しタオル効果でお肌つるつる」


実は、小林製薬内では当初、

「温かさ」

をキャッチコピーにすべきという声が強かったそうです。

というのも、

「ホットクレンジングジェル」

のウリは、単なるメイク落としではなく、
肌を温めて毛穴を開かせ、毛穴に入り込んだ化粧品まで
落とすことにあったからです。


すなわち、既存他社製品との最大の差別化ポイントは、

「肌を温める」

ということであったわけです。


ところが、
SNSを通じてユーザー500人にサンプル(試供品)を
配って感想を聞いたところ、

“つるつるになって気持ちいい”

という意見が一番多かったのです。


開発者と、ユーザーのこの意識の差に驚きませんか?


開発者側である小林製薬が重視した「温かさ」は、

「機能価値」(規格・仕様)

ですよね。すなわち、「なにができるか」ということ。


しかし、ユーザー側は正直ですね。
女性にとって、とてもうれしい「つるつるになる」という

「便益価値」(ベネフィット)

を実感していた。


小林製薬でさえ、ついつい
自社の強み(機能)を訴求したいという欲求が先立ち、
ユーザーが一番知りたい、

「その製品を使えば、どんないいことがあるのか」

というベネフィットを伝えることを
忘れそうになってしまうというのは、実に興味深いです。


やはり、ユーザーが真に求めているのは、

「ドリル」

ではなくて、

「穴」

なのです。


このケースは、
ユーザーの意見を愚直に聴くことの意義を
改めて感じさせてくれますね。

投稿者 松尾 順 : 10:18 | コメント (0) | トラックバック

リンガーハット・・・体感価格の読み違い

「長崎ちゃんぽん」

って、九州以外の方にはあまりなじみのない料理だと思います。

うどん、そば、ラーメンのように
どこでも食べられるものじゃないですからね。


でも、福岡生まれの私にとっては、

「長崎ちゃんぽん」

は、小さいころから
うどん、ラーメンと同じくらい慣れ親しんだ味です。
(「そば」は年に1回、年越しそばの時に食べるくらいでした)


ですから、18歳で東京に出てきてからも、
渋谷や銀座にあるチェーン店の「リンガーハット」に
わざわざ足を運んでいました。

今は、事務所から近い御茶ノ水店ができたので、
週1ペースで通っています・・・(^_^;


さて、リンガーハットは、
昨年(06年)9月に若干の値上げをしたんですが、
以来、客数の落ち込みが激しく業績悪化に苦しんでいます。


値上げ前のレギュラーちゃんぽんの値段は、

399円(税込み)、値上げ後は450円。


海鮮、肉、野菜がたっぷり入った健康的でおいしい料理が
400円未満で食べられるのは格安。大変お得でしたし、
値上げ後の450円でも十分安いと思いませんか?
(逆に、具がちょこっと乗っただけの普通のラーメンが、
 東京では600円以上するのが信じられません・・・)


リンガーハットの経営陣も、
「450円でも通用するだろう」という自負があったようですが、
ふたを開けてみたら大誤算!

今、慌てて割引クーポンを発行して客を呼び戻そうと
がんばっています。


まあ実際に、ひとりのユーザーの立場で考えると、
約400円から450円への値上げというのは、
絶対的な価格としては安いけれど、値上げ率は10%以上に
なりますから、「体感価格」としては「大幅値上げ」です。


リンガーハットの場合、味のおいしさだけでなく、
安さに惹かれていたユーザーも多かったと思いますから、
この価格差の大きさが客足を遠ざけることになったのでしょう。


リンガーハットの誤算は、
「プライシングの難しさ」を教えてくれますよね。

絶対価格じゃなくて、
元の価格(基準価格)との相対的な差が重要だ

ということをうまく読めなかったということでしょう。


まあ、後付け講釈ですから
いくらでももっともらしいことは言えますけど。

私の場合は、値上げ後もリンガーハットに
足繁く通ってますから多少の批判はお許しを!

大好きなリンガーハット、がんばれ!


余談ですが、マクドナルドは、
今年(07年)6月から地域別価格を導入してますね。
東京では3-5%の値上げ。

当初、ユーザーに受け入れられるか心配されましたが、
あまり客足に影響は出ていないようです。


マクドナルドの場合、かなり綿密なシミュレーションに
基づいて地域別価格を決定したようです。

さすが外資系企業。

リンガーハットのように、
「原材料の価格高騰」を理由に、経営側の思い込みだけで
値上げしてしまうのとは違います。


ただ、マクドナルドの場合、
ここ数年、あまりにも価格改定が頻繁でしたから、
そもそも元の価格(基準価格をどこにおくべきか、
ユーザーがよくわからなくなっています。

マックの価格に対する感度は、いわば

「マヒしている状態」

と言えます。

100円マックが維持されているのも、
値上げを感じさせないことに寄与していますね。

投稿者 松尾 順 : 11:14 | コメント (9) | トラックバック

毎年届くDM

今年も届きました。
事務所近くのメガネ店からのダイレクトメール。

年に1回、この時期になると、
かもめーるのハガキでこの店のDMが送られてきます。

といっても実は、私が利用した店じゃありません。


私の事務所はマンションの1室。

ここ10年ほどは事務所として使われているのですが、
それ以前の一時期、個人(女性)が住んでいたらしく、
その人の宛名で届くのです。

前に住んでた個人の方は、
転居届けを出さなかったみたいですね。


ともあれ、このメガネ屋は、おそらく10年近く毎年、
本人に届かないDMを機械的に送り続けているわけです。

レスポンス(来店)が、長いことないんだから、
いいかげん、顧客リストから削除すればいいのに・・・!


残念ながら、この店は「知恵」を
あまり使ってらっしゃらないようです。

投稿者 松尾 順 : 08:34 | コメント (8) | トラックバック

俺の名前を間違えるな!

さて、今週届いたメルマガ本文冒頭には、

松尾潤様

とありました。


“バッキャヤロー、俺は「順」だ、「潤」じゃねぇ!”

と叫ぶほどではありませんが、やはり不愉快です。


人にとってもっとも心地よい「ことば」、それは

「自分の名前」

です。

しかし、だからこそ、

「相手の名前を間違える」

のは、相手を最も落胆させることになります。


いろいろお世話になってますから誌名を公表するのは控えます。

しかし、マーケティングをメインテーマでやってる専門誌
なんですから、細心の注意をお願いしますね!

投稿者 松尾 順 : 23:34 | コメント (3) | トラックバック

検索社会で漂流する個人

PCの前に座れば、クリックひとつで、
さまざまな分野の膨大な情報が手に入るインターネット時代。

個人はネットを通じて情報を入手・活用することで、
企業と対等か、時に上回るパワーを持つようになっていますね。


しかし、私たちは、この拡大しつづける情報の海の中で、
本当にうまく泳げているのでしょうか。

ひょっとして、

「ただ流されているだけかも・・・」

という感覚がありませんか。


編集工学研究所所長、松岡正剛氏は、

“世界的な事情として「検索社会」というものが、
 非常に強く個人に食い込んでいるのではないかと思います。
 世界中を、グーグルやアマゾン検索というシステムが
 覆っているわけです。”

と言い、検索社会では、

“一人ひとりが情報と深く関わらなくなっている”

ということを指摘しています。
(人間会議、夏号 2007)


松岡氏は、ネットを通じて情報を入手する手続きを

「親指一発ケータイ主義」

と呼んでいますが、情報の入手は実に簡単になったけれど、
検索社会には「落とし穴」があることを見抜いています。


“親指ひとつで、どんどん情報を出しているようでいて、
 実はそのたびに、前の情報を消し去っているんです。

 だから、自分は実にたくさんの情報に対応していると
 いう錯覚はつくり出せるのだけれど、対応しているのは、
 一回ずつ、他とまったく無縁のものであって、情報の
 「かけら」しか見ていないのです。”


このため、前述したように

「一人ひとりが情報と深く関わらなくなっている」

という結果をもたらしているというわけです。


問題は、個人や基地や港や船などの「エンジン力」をつけないと
膨大な情報のなかは泳いでいけないはずのネット時代において、
そうした力をそぎ落とすことになっている点です。

これは、情報の良し悪しを判断する拠り所や基本的な価値観、
「自分は何者か」といったアイデンティティを
はっきりさせないまま、入手しやすい限られた情報を
盲目的に受け入れてしまっているという意味だと
私は解釈しています。


“情報が膨大だといっても実際は、ページランクの上位100
 とかしかみていないわけですから、アクセス数やランキングに
 よって、個人は泳がされているに過ぎない。”

という松岡氏の指摘には激しく同意します。


そして、アメリカを中心とする一極的な政治経済体制に
呑み込まれている現代日本と、上記の「検索社会」が
組み合わさることによって、

“スタート時点から、個人は孤立したまま、
 「深さ」を持ちえずに漂流せざるを得ない”

という状況が生まれていると松岡氏は考えています。


さて、この「個人が漂流する」ということについては
2つの側面があると松岡氏は言っています。

ひとつは、個人が孤立していて、
コミュニティの中心が欠如しているということ。

もうひとつは、個人単位で見たときに、
自己が自己のセンタリングが効かなくなっているということ。
(=志向の能力低下がどんどん起きているという意味)


検索社会は、上記のような

「漂流する個人」

を多数生み出す結果をもたらしているのは確かでしょう。


これは、別の見方をすれば、
流通させる情報をうまく操作することで、
他の人々を動かすことがますます簡単になっていることも
意味しているんじゃないでしょうか?

「口コミ」の影響力が、ネット社会、検索社会において
飛躍的に高まっていることは、そのひとつの表れだと思います。

投稿者 松尾 順 : 07:17 | コメント (4) | トラックバック

マーケティングとは何か?

“マーケティングとは、ひとことで言えば何ですか?”

先日、ミクシィのマーケティング・コミュニティで、
こんなトピックが立てられていました・・・


ああ!なんと素朴な質問であることでしょう!
(質問をした人をバカにしてるんじゃないですよ)

これまでも、このような「そもそも論的質問」は、
あちこちで、何度となく繰り返されてきたんでしょうね。


確かに、ナイーヴ(素朴)な問いではありますが、
たまにこうした「原点」に戻ることは決して
無意味じゃありません。


ただし、そもそも

「マーケティングとは何か」

なんて一言で言えるはずはありませんよね。
人それぞれ、様々な見方・考え方があります。


ですから、こうした

「原点に立ち返る問い」

をする場合には、ひとつの答えを求めようとするのではなく、
むしろ、多様な答えが帰ってくることを期待する。

そして「マーケティング」に対する、
多面的、立体的な理解を深めることを狙いとすべきでしょう。


さて、先ほどのミクシィのトピでは様々な回答が投稿されてます。
(勝手ながら、一部加筆修正しつつ引用させていただきます)

マーケティングとは、

・売れる仕組みづくりである
・市場に対する働きかけである
・市場とのコミュニケーション活動である
・製品やサービスを消費してもらうための技術である
・お客さまの笑顔をつくる全ての手段
・見込客の創造である(これは私のCRM的定義です)

などなど・・・

いろいろ挙げられてましたが、どれも正解ですよね。

こうしてさまざな視点でマーケティングを
切ってみる(定義する)ことで理解は確実に深まります。


ちなみに、私が最近好んで使うマーケティングの定義は、

------------------------------------

顧客(見込客含む)を獲得するための、

・仕組み
・仕掛け
・仕切り

づくりである

------------------------------------

というものです。


仕組みとは、「構造」、仕掛けとは「機能」、そして
仕切りとは「マネジメント」(管理)のことです。

マーケティング戦略、マーケティング施策を考える際には、
この定義における

・仕組み(構造)
・仕掛け(機能)
・仕切り(管理)

という3つの切り口が参考になるんじゃないでしょうか?


ところが最近、
さらに現場に即した見方(定義)に遭遇しました。

それは次のようなものです。

“マーケティングという行動を突き詰めて言うならば、
 より上手にモノを売っていくために「客の立場に立って
 知恵を使い続けること」と捉えることができる”

*出所:『売れないのは誰のせい?』―最新マーケティング入門
    (山本直人著、新潮新書)

この文中、

「客の立場に立って知恵を使い続けること」

という平易な表現を読んだ瞬間に、感じることがありませんか?


「マーケティング」

と言ってしまうと、なんだか、
しっかりした企業組織やマーケティング部門ためだけの言葉
のように響きます。


しかし、その本質は、
下町の八百屋、魚屋のオヤジさん、オカミさんも含めた全ての
商売人、全ての組織が日々行っている活動そのものであること。

そして、客の立場に立ち、
客の気持ちが理解できなくてはならないこと。
(顧客が欲しいと思うからこそ商品は売れる)

なにより、とことん考えて知恵を搾り出すことを継続すること。
(永久に有効であり続ける「売れる仕組み」は存在しないから)

という、マーケティングにおける

「理想とすべき基本姿勢」

が伝わるなあと私は感じたのです。

“マーケティングという行動を突き詰めて言うならば、
 より上手にモノを売っていくために「客の立場に立って
 知恵を使い続けること」と捉えることができる”


「知恵」使い続けてますか?

投稿者 松尾 順 : 05:44 | コメント (0) | トラックバック

誰が新聞を滅ぼすのか

ネットに読者や広告を奪われ、
最も大きな打撃を受けているのが新聞・雑誌業界でしょう。


かといって、自らネットに力を入れれば、
自社の紙媒体からの収益の落ち込みを加速させる可能性もあり、
なかなか思い切った意思決定ができない。

いわゆる

「イノベーションのジレンマ」

に直面してますよね。


さて、日経ビジネス最新号(2007年7月16日号)の第2特集は、

「誰が新聞を滅ぼすのか」

というタイトルで主に米国新聞業界の動向を伝えていました。


この特集のなかで、面白いと思ったのは、
有料モデルを採用する米経済新聞、

「WSJ(Wall Street Journal)」

と、無料モデルを採用する米経済雑誌、

「フォーブス」

の対比でした。


WSJは当初から電子版は有料を貫いていてきました。

現在の電子版の購読料は、年額79ドル。
紙の購読者は、これが同20ドルになります。

契約者数は、前年比20%の93万人と、
紙の購読者の約半数に達しているそうです。


この結果、WSJの電子版の収入構成は、
広告と購読料が50%ずつとなっており、
ほぼ広告収入だけに頼る他紙と比較すると、
収益基盤は手堅いものがあります。


WSJサイトの月間訪問者数は370万人。
新聞社サイトトップの人気を誇る

「ニューヨークタイムズ」

の同1000万人超の約3分の1しかありません。


WSJは、当初「オンライン戦略に出遅れた」と
言われていたそうです。

しかし、このところ電子版、紙版ともバランスよく
読者数を増やしてきていることから、
そのビジネスモデルが見直されているとのこと。


WSJは、今年1月に紙面改革を行いました。

最新のニュース報道は電子版に任せ、
紙の方では、ニュースの分析や解説が8割を
占めるようになっています。

つまり、電子版と紙版の役割分担を
はっきりさせたわけです。これが両方の読者数を
増加させることに寄与したと考えられています。


一方のフォーブス。

フォーブス電子版の特徴は、
雑誌の支援媒体ではなく、
独立した媒体として位置づけてきた点です。


フォーブスは、記事全文を無料公開していますが、
公開のタイミングは木曜日の午後6時です。

雑誌が届くのは、金曜か土曜なので、
電子版の方が早く読めることになります。

でも、雑誌の部数減には、
今のところつながっていません。


スティーブ・フォーブス社長兼CEOは、

“紙とオンラインは共食いしない。
 広告主はあらゆるプラットフォームの広告を
 要求するようになった。これからは、
 紙に固執するほど、紙が痛手を受ける時代になる”

と述べています。

彼は、

「イノベーションのジレンマ」

を乗り越える決意を固めているようですね。


なお、北米を中心に雑誌の発行部数を
伸ばしている英エコノミストのWebサイトの発行人、
ベン・エドワーズ氏は、
同特集の中で、次のような重要なコメントを残しています。

“本来、雑誌とウェブは使い方が異なる。
 当社のサイトに読者が滞在する時間は、平均6分。
 これは、仕事上、必要な情報を探し出すために
 使っていることを意味する”

“これに対して、雑誌は週末や電車の中で
 ゆっくりと読むもの。もし雑誌の部数が落ちているなら、
 それはウェブのせいではなく、雑誌自身の中身の問題だろう”


私自身、10誌以上の雑誌をいまだに購読し、
並行して、各種ニュース系Webサイト、ポータル、ブログ、
メルマガを読んでいますが、
まさに、オンラインとオフラインでは使い方が異なります。


そして、コンテンツが面白かったり、役に立つものであれば
有料でも読みますし、そうでなければ無料でも読みません。
時間もコストですから。

それだけです。


新聞、雑誌の関係者の方々は、
自社媒体が売れない格好の理由として「ネット」を
槍玉に挙げるべきではないんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 08:41 | コメント (4) | トラックバック

その商品は、どんな奴だ。

当メルマガ&ブログでも以前ご紹介しましたが、

「ペルソナ(デザイン)法」

という比較的新しいプランニング手法があります。


「ペルソナ」とは、
企業が提供する製品・サービスにとって
最も重要で象徴的な

「顧客モデル」(=顧客像)

のこと。

そして、「ペルソナデザイン」とは、
上記の顧客モデルを作ることです。


「ペルソナ」は、実在する人物ではありません。
しかし、ちゃんとした名前を与えます。

そして、性別、年齢はもちろん、
職業、住居、年収、家族構成、趣味、レジャー、
スポーツ、ファッション、購読雑誌、結婚観、
飼っているペット、食事の好みなどなど、
できるだけ詳細なプロフィールを設定します。


すなわち、「ペルソナデザイン」では、
従来のマーケティングにおいて設定されることの多い、

「20代男性」

といった大括りの漠然としたターゲット像と異なり、
より具体的で明確な顧客像を描きます。

したがって、
エッジの効いたデザインやコンテンツ設計、
コミュニケーション施策のプランニングが可能になります。


最近ようやく、ペルソナデザインを解説した単行本が
初めて発刊されたばかりですし、普及はまだまだこれから
というところですが・・・

『ペルソナ戦略-マーケティング戦略、製品開発、
 デザインを顧客志向にする』
(ジョン・S・ブルーイット著、秋本芳伸訳、ダイヤモンド社)


さて、ペルソナ(デザイン)法は、
理想とする典型的な「顧客像」を詳細に描くことによって、
マーケティングプランニングに役立てるわけですが、
同様に「商品」を人に見立てる、すなわち、

「擬人化」

することがあります。


当記事のタイトルとして使わせていただいている、

“その商品は、どんな奴だ”

は、実は、コピーライター、仲畑貴志氏の寄稿記事

「仲畑貴志氏の勝つ広告」(宣伝会議、2007.7.1)

のタイトルです。


仲畑氏は上記記事において、次のように述べています。

“新製品はもちろん、新たに商品広告に着手するときは、
 その商品を一人の人間に見立てて人格形成をしてから
 表現に入ると、その後の広告活動にブレがなく進行できる”

“まず性別を決め、年齢、職業、経済性、生活エリア、
 家族構成、(中略)・・・と細部に至るほど、
 明確な人物像が見えてくる。”

“このように、ひとりの人間として商品のプロフィールを
 設定すると、新聞広告や雑誌広告であれば、ヘッドラインや
 ボディコピーの文体がおのずと生まれ、さらにその文体が
 タイポフェイスを決定し、レイアウトが作られていく。”


つまり、商品の「個性」をはっきりさせ、
人の心に刺さるコミュニケーションを行うためには、
擬人化が有効だということですね。


いま、「個性」という言葉を使いましたが、
ある商品が、単なる「商品」ではなく、

「ブランド」

として確立するためには、
まさにその商品ならではの「個性」を磨き、
際立たせる必要があります。


「擬人化」を行うことは、商品に命を与えるために、
担当者の「魂」を吹き込むようなものと言えるかもしれません。


ついでながら、マーケティング・コンサルタント、
森行生氏の「プロダクトコーン理論」の3層構造、

・規格
・ベネフィット
・エッセンス

のうち、最上位に位置する「エッセンス」とは、
商品が持つ性格(擬人化)のことです。


<ペルソナ(デザイン)関連記事>

*できるだけリアルな「顧客の仮面」をかぶる方法

*ペルソナデザインの専門サイトオープン!

<プロダクトコーン理論関連記事>

*シンプルマーケティング(8)プロダクトコーン理論

*シンプルマーケティング(9)プロダクトコーン理論:訴求の順番

投稿者 松尾 順 : 05:55 | コメント (2) | トラックバック

どうする?「グッドウィルドーム」

所沢の旧西武ドームは現在、

「グッドウィルドーム」

と呼ばれてますよね。
(その前は「インボイスSEIBUドーム」)

実は、西武鉄道とグッドウィルグループは、
今年07年1月1日からの5年契約を結んだばかりでした。


ところが、コムスンの不祥事で、
グッドウィルグループのブランドイメージが悪化。

「グッドウィルドーム」

の名称を使うことに対する非難が、
西武鉄道の株主の間で高まっているそうです。


西武側は、対応に苦慮している模様・・・
今後の展開によっては、契約解消もやむをえないでしょう。


ネーミングライツ(命名権)販売の歴史は、
日本ではまだ浅いのですが、そのリスクのひとつが
早くも発生したということですね。

投稿者 松尾 順 : 07:57 | コメント (0) | トラックバック

行くと一人2千円もらえる(ような)レストラン

ソフト・オン・デマンド創業者、高橋がなりさんの農業事業、
「国立ファーム」が運営するレストラン、

「農家の台所」

のことは、以前体験記事を書きました。

*百姓になった高橋がなりの『農家の台所』


今年07年1月30日オープンですから、まもなく半年経過です。

今のところ、毎月2千万円の赤字。

したがって、客数で割ると
一人当たり2千円あげてる計算になるそうです。
(もちろん、実際に2千円もらえるわけじゃありませんけど!)


「農家の台所」は、
シャキシャキと新鮮な野菜がおいしいお店でした。

最寄駅の国立に近い方は、ぜひ行ってみてください。


事務所が文京区、自宅が千葉・松戸の私には、
国立はちょっと遠すぎて、なかなか足を運べないのが残念です。

投稿者 松尾 順 : 01:48 | コメント (1) | トラックバック

派遣と言えば・・・

テンプスタッフの社長、篠原欣子氏の話によると、
徒手空拳で始めた派遣事業が軌道に乗った10年目、
社員数100人、売上百億となった頃に、一時期業績が停滞した
のだそうです。


当時は全社員が女性だったのですが、
もっと売上を伸ばそうよと篠原氏があおっても、

「私たちは今で十分です。」

みたいな言葉が返ってくる。


そんな時、ある支店に

男子学生のアルバイト

が入ったところ、俄然活気がでて、
その支店だけ業績が伸びたんだそうです。

以来、テンプスタッフでは、
男性社員を積極的に採用するようになったとのことでした。


やはり、人のモチベーションアップには

「異性」

の存在が重要なんですね。

また、その昔、人類の祖先は、男性たちがマンモス狩りに出、
女性たちは家を守るという役割分担をしてたわけですが、
当時の思考・行動パターン(男は攻め、女は守り)が
現代人のDNAにも、しっかり受け継がれているのかなと
思いました。

投稿者 松尾 順 : 10:00 | コメント (0) | トラックバック

先日、ITmedia Biz.IDの「達人の仕事術」の取材を受けまして、
既に記事がアップされています。


*インプットは仕入れ、アウトプットは広告 ― 松尾順さんの情報流通術


事務所で取材を受けているのに、
アロハ風シャツを着て、コンガと一緒に写っている写真が
あったりして、ちゃんと仕事をしているようには、
まるで見えないんですよね・・・(^_^;

投稿者 松尾 順 : 09:57 | コメント (0) | トラックバック

態度データの活用

アウディジャパンでは、
「顧客の生活様式」に関する情報を
現在より詳細に管理できる情報システムを
2008年以降、全国の販売店に導入する予定です。
(日経産業新聞、2007年7月12日)


具体的には、従来顧客データとして管理していた

保有車両

サービス関連情報(オイル交換や車検などのことでしょう)

に加えて、

趣味や習慣、嗜好(しこう)

など、

「日本人顧客の生活様式」

に関する情報を詳細に収集・管理するシステムを
開発済み。


アウディジャパンでは、収集したデータに基づいて
日本市場で販売する車種の選定や広告、
イベント、サービスなどの施策を連動させて
展開することを考えています。


この同社の動きは、従来、主に活用されてきた

「デモグラフィック属性」(性別、年齢など基本属性)

や、

「行動履歴」(商品・サービスの利用履歴)

だけでは、顧客心理や消費行動を理解するには
十分ではないということが(ようやく)わかってきたからだと、
私は見ています。


さて、趣味や習慣、嗜好といった顧客情報は、

「態度データ」

と一般に呼びますが、米国の調査会社、
フォレスター・リサーチは次のようなことを述べています。

----------------------------------------

・態度データを利用したセグメンテーションの利点は、 
 (顧客行動の)予測のための確実なパワーを与える

・一般消費者の場合、特定の行動よりも態度の方が
 変化しずらいので、長期間にわたり予測要素として
 活用できる

・企業が顧客のライフスタイルデータを収集する場合、
 「態度データ」によるセグメンテーションは、
 「属性データ」、「行動データ」によるセグメンテーション
 よりも優れている。

----------------------------------------


態度データの収集は、
属性データや行動データほど容易ではありません。

しかし、「態度」とは、
顧客の行動の背景にある「心理状態」のことです。

基本的に、好き、欲しい、といった気持ち(心理)が
あって、初めて行動に結びつきくわけです。

ですから、今後、顧客の「態度」についての情報を
収集・蓄積・分析・活用することがますます重要に
なっていくと思います。


なお、ご参考までに・・・

顧客を深く理解するために有効なデータは、
大きくは次の4つに分けられます。

・属性データ
・行動データ
・インタラクションデータ
・態度データ

それぞれどんなデータが具体的には該当するのかを
以下に記載しておきます。

----------------------------------------

・属性データ

-性別
-年齢
-職業
-居住地 など


・行動データ

-注文
-取引履歴
-支払い履歴
-利用履歴 など


・態度データ

-意見
-嗜好
-ニーズ
-要望 など


・インタラクションデータ

-オファー
-キャンペーンの結果
-コンテキスト(文脈)
-クリックストリーム(Web上の動線) など

----------------------------------------


*今回の記事は、
 
「SPSS Data Mining Day 2007」(7月12日開催)

において行われた

“The Power of Words ~ 
 データマイニングのビジネス価値を高める言葉の力”

 SPSS Inc. Vice President, Market Strategy
 Mr. Olivier Jouve

の講演内容を一部参考&引用させていただきました。

投稿者 松尾 順 : 11:29 | コメント (1) | トラックバック

ホステス派遣

クラブ活動やってますか?

大人のクラブ活動です。
活動拠点は銀座。人によっては六本木ですが。

私は予算の制約のため、ほとんどやってないんですけど。


さて、昨日の夕方、行きつけのラーメン屋で担担麺を
食べていたら、たまたま流れていたテレビ番組で、

「銀座のクラブにホステスさんを派遣するビジネス」

が紹介されてました。


なかなか面白いと思ったので、メモ代わりに書いておきます。

まず、あまりよくこの世界を知らない人のために
簡単に説明しておきますが、銀座や六本木のクラブとは、
おおむね一組のお客さんに2-3人のホステスさんが付き、
スナックとお酒で他愛のない会話をする

「男性のための癒しのスペース」

を提供するところです。

お代は、2-8万円UP程度。
ランクによって料金に大きな差があります。

基本的に、「接待」という名目で、
会社に請求書を回すことが多いようです。


お客さんは、
お気に入りのホステスさんと一緒に店に入ったり(同伴)、
席についてから、指名することもできます。

この場合、ホステスさんには、
通常のお給料に加えて、別途報酬が支払われます。


実は、この業界もやはり万年人手不足。

繁閑の差も激しいでしょうし、
常勤のホステスさんだけでは店が回りません。

必要な時だけホステスを呼べるのは
ありがたいわけです。


一方、働く側としても短時間で高収入が得られますし、
夜間のお仕事ですから、昼間とのダブルワークが可能。

テレビで紹介されていた派遣会社には、
500人ほどが登録しているとのこと。

時給は3千円でした。
夜8時から11時まで3時間働けば、9千円になりますね。


さて、どのくらい前から「ホステス派遣」という形態が
あったのか不明ですが、従来の正規ホステス、あるいは
アルバイトの斡旋(この場合、お店が雇用者になります)
と違って、

「派遣」

には、働く側に次のようなメリットがあります。

・残業がない(終電に間に合うように上がれます)
・ノルマ(同伴件数など)がない
・お客さんと距離を置かなければならない
 (名刺を作成しない、出勤日を教えない)


つまり、しつこい客に追いかけられたり、どろどろした
色恋沙汰になることがありませんので、あと腐れなく
気楽に働ける労働形態ということです。


番組では、何人かの派遣の女性が登場していました。

昼間は大手企業の社長秘書をやっているが、
お小遣い稼ぎのために夜も働いている人。

海外留学の資金を貯めるために働いている人。

心理カウンセラー(臨床心理士でしょう)を目指して
大学院に通っていて、お客さんとの会話を通じて、
カウンセリングの技術を磨いている人

など、様々な目的で働いているんですね。


ともあれ、クラブの世界も

「非正規化」

が進んでいるということに驚きました。


なお、夜の世界に詳しい方、
補足情報や「そこ間違ってるよ」という点がありましたら、
ぜひご連絡お願いします。


しかし、マーケターなら、
こうして2次情報に頼っているだけでなく、
「現場」にも行って1次情報を収集すべきですよね。

投稿者 松尾 順 : 08:20 | コメント (6) | トラックバック

「とんがり」を作るということ

「とんがり」

とは、難しくいえば

「製品差別化(差異化)」

のことです。


他社製品と同じポジションにいると、
どちらか一方しか勝てないという状況になってしまいますよね。

ですから、自社商品はできるだけ
他社と異なるポジションを目指すのが賢明です。


島田紳助は、お笑い芸人を目指す若者たちから、

「紳助さんみたいになりたいんです☆」

とよく言われるそうですが、紳助は、

「わしはもうおるで!」

と返すそうです。

同じポジションを目指すな、と釘を刺しているわけです。

彼自身も、他の芸人やタレントと自分のキャラが
かぶらないことを常に意識してきたのでしたね。


さて、ブランド構築のためには、

“製品差別化を行う”

と難しく言うより、

“「とんがり」を作り上げる”

と説明する方が私は好きです。


その理由は、単にわかりやすいだけでなく、

「とんがり」

という言葉が、

「実行上のポイント」

を端的に教えてくれるからです。


ものを“とんがらせる”ためには、
余計なものをそぎ落としていかなければなりません。

あれもこれも・・・と、機能を欲張って増やしすぎたり、
広告コピーなどでも、特徴をずらずらと並べすぎると、
何がその製品の強みなのかが不明瞭になります。


むしろ、当社製品の強みは「XXXです」と
ひとつに絞ってバーンと打ち出す。

それ以外のことはそぎ落としてしまう。
そうしないと「とんがらない」。


つまり、とんがらせるためには、強みや訴求点を
思い切って絞り込むことが必要だということです。

先がとんがっていればいるほど、
ターゲットの心に刺さりやすいですしね。


そう、「とんがり」を作りあげる目的は、
ターゲットの心により刺さりやすくするためです。

すなわち、ターゲットの興味・関心を惹き、
欲望を刺激するため。

先の丸いナマクラ製品では刺さりません。


しかしながら、「とんがり」を作るのは
時間と手間のかかる工程です。

口で言うのは簡単だけど、
なかなか難しいと皆さんおっしゃいます。


それは、とんがりを作りあげる「努力」
をしていないことを誤魔化すための言い訳じゃないですよね?


実際のところ、難しいのは、

どこをとんがらせ、どこをそぎ落とすべきか

の見極めでしょう。

ひとつに絞って残りを大胆にそぎ落とすのは、
勇気がいる決断でもあります。

しかし、とんがりを作り上げることができなければ
その他大勢に埋没してしまうだけです。


なお、ベストセラー本を連発している幻冬舎の社長、
見城徹氏によれば、売れるコンテンツは、次の4つ要素を
備えていると考えているそうです。

1. オリジナリティがあること
2. 明解であること
3. 極端であること
4. 癒着があること

この必要条件を満たすものは必ずヒットするのだそうです。


「とんがり」と共通性がありますよね。

(注)
 4の「癒着があること」というのは、すでにファンがいる
 有名人や作家のように、売れるベースがあることを意味して
 います。これは出版業界特有の条件と言えるでしょう。
 (スーパーモデル監修の水着開発等も該当しますけど)


(参考文献)
『編集者という病』
(見城徹著、太田出版)

投稿者 松尾 順 : 10:43 | コメント (0) | トラックバック

孤独感を和らげるダイエットブログ:リエータカフェ

「リエータカフェ」

という無料ブログサービスはご存知でしょうか?


このブログは、
健康食品メーカー、キリン ヤクルト ネクステージ(株)が
製造・販売するダイエットのための低カロリー食品、

「リエータ」

の購入者のためのサイト。

ダイエットに取り組む女性を支援するファンサービスであり、
リピート購入を主な狙いとする「CRM施策」と言えます。


ちなみに、ほぼ同じような狙いやコンセプトで運営されている
サービスサイトとして、ワコール(株)の

「スタイルサイエンス」

があります。

これは、「トレーニングボトム」と呼ばれる補正下着の購入者を
対象としたサイトです。

詳細は、以前書いた下記記事を参照してください!

*「愛すべきなまけものたちへ」・・・
   ワコール・スタイルサイエンスのWeb-CRM

さて、「リエータカフェ」ですが、
このブログサイトの開設は05年4月でした。

そして、開設から2年が経過した07年4月の段階で、
会員は2万人を超えています。


一日あたりのブログの書き込み数は、
冬場で800-1,000件程度ですが、女性が薄着になる夏場は、
冬場の倍以上に増えるそうです。

体の線が見えやすくなるため、
ダイエットに慌てて取り組み始める女性心理がうかがえます。(笑)


当ブログは、
ブログとしての基本機能(コメント、トラックバックなど)に
加えて、毎日の自分の体重や体脂肪を記録し、公開する機能が
ついています。

リエータカフェで日記を書く人の約半数は、
体重も入力しており、目標体重を宣言することによって、
ダイエットを続けるための動機付けにしているようです。

また、コミュニティ機能があり、
さまざまなトピックでのディスカッションが行われています。


このブログは開設以来、
何度かメディアで取り上げられてきているのですが、
2年経った今でも活発な日記投稿、ユーザー同士の熱い意見交換が
行われています。

ブログを効果的に活用したCRMの先進事例として、
今後も動向をウオッチすべきでしょう。


この成功の背景には、
ダイエット食品「リエータ」が即効性のあるものでなく、
リバウンドが起きない程度の緩やかなダイエットに
向いたものであること、このため、
長期にわたって継続利用することが必要だという点が挙げられます。

(当然、ビリーズ・ブートキャンプとは違いますね・・・)


ダイエット効果がすぐに現れないと、
途中で挫折しがちなものです。

しかし、リエータカフェにユーザー登録すれば、
ダイエットに取り組む仲間とお互いに励ましあうことが
できます。

これまで、どちらかといえばひそかに行われていた
ダイエットの「孤独感」和らげることができるのが
リエータカフェなのです。

(この点は、ワコールのスタイルサイエンスの成功要因でも
 あります。)


なお、ブログに書き込まれる生の声は商品開発にも
活かされており、リエータカフェで要望の多かった

「チョコレート味」

を投入したところ、

「おいしかった」「この味はちょっと苦手」

といった反響がすぐに書き込まれたそうです。


以上は、過去の各種記事、および
NBonlineの日経情報ストラテジー発ニュースの
下記記事(2007.05.23)を参考にしました。

*ダイエット支援の「リエータカフェ」、
 「男性お断り」のブログ販促で効果

投稿者 松尾 順 : 06:00 | コメント (0) | トラックバック

音声で届ける特売情報

実は、私は電話がかなり苦手です。

受けるにしろ、こちらからかけるにしろ、
相手の状況を無視して強引に割り込むような感覚が
あるからです。


また、ミーティング中などに携帯電話を取るのは、
通話中待たせてしまう相手の時間を奪うことになるので、
私は原則出ません。

しかも、電車などでの移動中の携帯通話はマナー違反ですから、
外出している間は、ほとんど電話に出られるタイミングが
ないんですよね。(したがって、いつも留守電にしてあります)


ですから、今日今すぐ電話で話せないと問題が起こる場合を
除いて極力、メールでのやりとりにしています。

以前から、私は電話ではなかなかつかまらないと
言われておりますが、こんな事情があります。

ご理解いただければありがたいです。


さて、事務所にしょっちゅうかかってくる売込みの電話。

おおむね投資の話ですが、
仕事が中断されるので、ほんと頭に来ます。

電話が苦手かどうかに関わらず、
誰にとってもセールスコールはいやなものでしょう。


ただ、ちょっと不思議なことがあります。


生身の営業マンが、

「このたび、このエリアの担当となりまして、
 ご挨拶に回っているんですが・・・」

などといった、説得力ゼロの切り出し方で
なんとかして面会の約束を取り付けようとするよりも、

電話を取ると自動音声が流れて単刀直入、

「御社の業務効率改善に役立つ○○に興味がおありでしょうか、
 もしご興味がある場合は1を押してください・・・」

といった内容の電話を受ける方がまだ気が楽だということです。


相手がコンピュータだとわかっていれば、
途中でさっさと切ることに心理的抵抗を感じませんし、
用件をすぐに切り出すので、こちらもあまり時間を取られずに
済むからでしょう。


ですから、企業が

「アウトバウンドコール(お客様へにかける営業電話)」

をやるのなら、対象商品によって向き不向きはありますが、
生身の人間じゃなくて、自動音声にしたほうが効果が
ある場合も多いんじゃないかと思います。


えーと、ようやく本題に入ります。
前ふりが長くてすいません。

今日ご紹介したい事例は、
ドラッグストアの特売情報を会員カードを保有している
既存ユーザーに自動音声の電話で伝えたというものです。
(アイティセレクト、2007.07.08)


「ハックドラッグ」「ハックエクスプレス」といった名称で
展開するドラッグストアを運営するCFSコーポレーションでは、

「Voice Reach」(プレミアグローバルサービス社)

という音声の一斉配信を行うASPサービスを利用し、
「ハックドラッグ」会員に対して、特売情報をあらかじめ
録音された音声データで伝えることにしました。

ただし、いかに販促の対象者が「既存ユーザー」とは言え、
突然自宅や携帯に電話をかけ、音声データを流すという
販促方法に対する会員の反応が当初読めなかったため、
まずは限定された店舗でテストをやることにしたのです。


テストは06年の8月、10月、12月の3回にわたって行われ、
最初は1万人程度で試し、その後2万人へと対象者を増やして
いきました。

その結果は、音声配信をした顧客は、しない顧客よりも、

3%-8%

多く来店することが分かりました。
このコンバージョン率はなかなか悪くない数字ですね。

費用対効果がどうだったのかが気になります。
(記事には記載なし)


また、懸念された苦情はわずかだったようです。

ただし、表立っての苦情は少なかったかも知れませんが、
不快感を持った客はいたでしょうし、別途顧客の反応について
調べたほうがいいと感じました。


日本では、自動音声によるアウトバンドコールは
米国ほどには普及していません。

しかし、意外に、受ける側の抵抗感が少ないことが
上記事例からもうかがえますので、今後伸びる可能性が高いと
思います。

投稿者 松尾 順 : 12:03 | コメント (0) | トラックバック

2割引の携帯クーポンが届いた時だけ行くレストラン

それは、「バーミヤン」です。
スカイラークグループの中華レストランですね。


店舗、メニュー、サービスはどれも十分なクオリティ。
価格も安く、食後の満足度はそこそこ高いのですが・・・

微妙に「何か」が足りないんです・・
不思議と「また来ようね」とならない。

クーポンじゃないと釣られない客です。(笑)


バーミヤンは、要するに「ファミレス」ですから、
価格がそこそこ安いのは当たり前ですね。
店舗、メニュー、サービスにもそれほど期待していない。


でも、やっぱり「味」には多少期待があります。

ところが、バーミヤンの味は、

「まずくはないが、うまくもない」

という微妙な味でした。

*バーミヤンに行かれたことのある方、どう思いますか?


さて、今期のバーミヤンは、
既存店売上高が2ケタ減だそうです。

すかいらーくグループの再上場の鍵を握るのは
バーミヤンの業績なので相当ヤバイ。

同業態の立て直しが喫緊の課題なのです。


その基本方向は、

「商品力の向上」

ということで、
原材料の見直しと調理技術の改善によって

「味」

を良くすることに取り組んでいます。


バーミヤン幹部によれば、

“何となくおいしくなった”

と思えるような微妙な違いとのことですが。


昨日、またバーミヤンから
2割引クーポンが届いたので、早速行ってみますか!

投稿者 松尾 順 : 01:23 | コメント (5) | トラックバック

売れない家

松戸の自宅から最寄り駅までの通勤途中に、
昔、古い社宅用マンションがありました。

今は取り壊されて、15戸ほどの建売住宅になってます。
(ミニ宅地開発といったところ)


これらはほぼ一斉に売り出されたんですが、
なぜだかいまだに1戸だけ売れ残ってるんですよね。

業者はなんとか売り切りろうと、内覧会のチラシを入れ、
週末には、案内人が一日詰めてるのをよく見ます。

しかし、なかなか売れないようです。
いまだに「販売中」ののぼりが立ったまま。


さて、私が毎日この家の前を通って感じる「売れない理由」
(仮説)を書かせていただくと、それは

「公」(パブリック)と「私」(プライベート)の境界

が引かれていないことです。


15戸のうち、公道に面しているのは3戸あります。

そのうち1戸は、塀で仕切ってあります。
もうひとつは生垣です。

しかし、売れない家は何もないんです。
2メートルほど公道から引っ込んでいるだけ。

公道から玄関のドアが丸見え。
2-3歩脇にそれるだけで玄関前に立てます。

なんか嫌ですよね・・・


自分の家というプライベートな空間と、公の空間は、
ちょっとでもいいから仕切られていないと、
なんとなく不安です。

ただ、公道と家の間は駐車スペースなので
塀や生垣が置けない設計になってます。

いまさら、公と私の境界はつくれません。


売れない理由は他にあるのかもしれません。
しかし、ひとつだけ売れ残るというのも変です。

同じ業者が開発したものですから、
規格や価格帯はほぼ同じのはずですし。


私の仮説が正しければ、
自分のテリトリーをはっきりさせたいという心理を
理解していなかった設計者の大チョンボということになりますね。


少なくとも、玄関の前にゴールドクレストあたりを
1本植えるだけでもずいぶん違うはずですが。

投稿者 松尾 順 : 09:38 | コメント (0) | トラックバック

お詫びの技術

不祥事が明らかになった企業幹部の釈明・謝罪会見。
彼らの口から決まって出てくるのが、次のような言葉です。

「結果的に、○○○と受け取られても仕方がない」

*○○○には「偽装」「粉飾」「手抜き」などが入ります。


はっきり言って、この言い訳ほど情けないものはありませんよね。

会社の行動がどんな結果を引き起こすのか
をまるで予想していなかったような苦しい言い逃れ。


なぜ、素直に

「自分がやりました、悪うございました」

と言えないのか。


言えない理由は明らかですけどね。

それは、謝罪において最も必要な

「誠意」

が欠けているからでしょう。

謝罪する気が本当はないのに、周りが責めるから、
仕方なく頭を下げるふりをしているだけなんですよね。


さて、謝罪には「誠意」が不可欠とはいえ、
「誠意」さえあれば、謝罪はうまくいくというものでは
ありません。

誠意を持ってお詫びしているつもりが、
お客様はますます逆上。

火に油を注ぐような結果になることだってあります。


何事も、「気持ち」に「技術」が伴わないと
いい結果につながらないのです。


実際、日々企業などに寄せられるお客様からの苦情に
対してうまく対応できず悪化させるケースが多いようです。

顧客接点にいる方たちは、もう少し、

「謝罪の技術」

をちゃんと学ぶべきじゃないかと思うんですけどね。


そこで、「お詫びの技術」を簡単にご紹介したいと思います。

出典は、

「話すチカラをつくる本」
(山田ズーニー著、知的生き方文庫)


この本は100ページちょっとの内容ですが、
本当にすばらしい。さすが山田ズーニー氏です。


さて、ズーニー氏が同書で挙げる

「伝わらない謝罪文」

は次のようなもの。

-----------------------------------

このたびは、誠に申し訳ございませんでした。

日ごろミスが出ないよう万全をつくしてはいたのですが、
これからは、こういうことがないよう精一杯
がんばりますので、よろしくお願いします。

------------------------------------

誠意は感じられないこともないのですが、
すんなり納得できるお詫びではないですね。

同じミスが再発しないという確証が持てませんし、
もし再発しても、やはりこんな形式的なおわびを
繰り返して「その場しのぎ」をするだけじゃないか
と思ってしまいます。


ズーニー氏は、企業で編集をしていた16年の間に
たくさんのおわびの文章を書いたそうですが、
その経験から、一定の構造を持つ謝罪文を
書くようになったそうです。


ズーニー氏によれば、
相手がどんなお詫びを求めているかを考えると、

・まず自分が受けたダメージをわかって欲しい(相手理解)
・そして、本当に悪かったと認めた上で(罪の認識)
・ごめんなさいと謝って欲しい(謝罪)
・損害が発生している場合には、
 どのように償ってくれるのか(償い)に関心がある
・また、今後同じようなことが起きないために、
 どうするのか(今後の対策)にも 興味がある

なのだそうです。

なお、お詫びの順番も大切ですね。

たとえば、謝罪もろくにせず、
さっさとお金を渡す(償う)のでは、
お客さんは

「金が欲しくて言ってるんじゃない」

とますます怒らせることになりますから。


というわけで、ズーニー氏が示す

「お詫びの構造」

は次の通り。
(同書では、「お詫びの問いの構造」と表記されています。
「問い」というのは、この本のキーワードなのですが、
説明が長くなりますので、詳しくは同書をお読みください)


----------------------------

1 相手の立場から、この一件を見るとどうか(相手理解)

2 自分の責任・非はどこにあるか(罪の認識)

(ここで謝罪)

3 なぜ、このようなことをしたのか(原因究明)

4 二度としないためにどうするか(今後の対策)

5 かけた迷惑をどう償っていくか(償い)

----------------------------

*3の原因究明を入れるのは、今後の対策を伝えるうえで、
 これがないと説得力がないためです。

投稿者 松尾 順 : 13:20 | コメント (0) | トラックバック

お笑いの教科書  -紳竜の研究-

島田紳助が吉本入りしたのは、
B&Bの島田洋七の漫才にショックを受けたからというのは
有名な話ですよね。

島田洋七といえば、

「佐賀のがばいばあちゃん」

大好きです。(^_^)


さて、お笑いの世界で成功するために
紳助がまず取り組んだのは、

「お笑いの教科書」

を作ることでした。


「お笑いの教科書」は、
本屋などで買えるものではなかったので
自分で作るしかなかったわけです。


具体的には、
先輩漫才師のしゃべりを一字一句ノートに
書き写すことを続けました。

そして、

・どうしたら客に受けるのか
・客が引くのはどんな場合か

を徹底的に分析し、

「笑いを取るパターン」

を発見、整理していったのです。


客と一緒になって先輩のネタに大笑いしていたら、
その裏にある、

「笑いを取るパターン」

が見えてきません。

そのため、録音テープを回したり止めたりしながら、

「ノートに書き出す」

というわざわざ手間のかかる作業をやったのだそうです。


紳助は、こうしてつかんだ、いわば

「お笑いの原理原則」

を自分たちのネタに応用することで成功します。

たとえば、
竜介は公立高校、紳助は私立高校出身だったため、
2人は公立と私立の違いをよくネタにしていました。

これは、B&Bがやっていた広島、岡山(対東京)を
いじるパターンを置き換えたものでした。

ところで、
紳助が、先輩漫才師のしゃべくりから抽出した

「お笑いの原理原則(パターン)」

は一般に「理論」と呼びます。


よく「机上の空論」と言う方がいますよね。

しかし、本来「理論」とは、
さまざまな実践の中から、成功の可能性が高い

「一定のパターン」(=原理原則)

をエッセンスとして抽出したものです。

もちろん、エッセンスですから抽象性が高くなります。

したがって、別の新たな実践に落とし込む、
つまり応用するためには知恵と工夫が必要です。


どんな世界にも、
成功率を高める一定のパターン(原理原則)としての
「理論」があります。

それを学ぶことが成功の近道じゃないでしょうか。


- 蛇足 -------------------


“この間な、「理論なんか役に立たん」と言うやつがおったんよ”

“ほう、それで?”

“こいつはアホや、本質がわかっとらんと思うて、
 役に立たんのは「理論」やなくて「あんたや」 と
 言うたったんや!”

“きついなあ・・・”

“そしたら、いきなり殴りかかってきよった”

“まずいことになったな”

“待て、待て、わしを怒らすな、この「右手」を使わすな!
 と止めさせようとしたんやけどな”

“おまえの右手はそんなにすごいんかい”

“この右手には暗い過去があると言うてな・・・”

“なんや、暗い過去って?”

“深爪してるねん”


すんません。最後のオチ、完全パクリです。


参考資料:

・紳竜の研究(DVD)

・ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する
 (島田紳助著、幻冬舎新書)

投稿者 松尾 順 : 11:57 | コメント (0) | トラックバック

天才マーケター島田紳助 - 紳竜の研究 -

猛烈な漫才ブームが起きた時期のこと、覚えてますか。
1980年代前半でしたよね。

あの頃、ブームの中心にいた人気漫才コンビのうち、
もっとも異彩を放っていたのが、

「紳助・竜介」

でした。


このコンビは、1985年に解散。

島田紳助は、
現在もマルチタレントとして活躍してることは説明不要ですね。

一方、松本竜介は、
2006年4月に若くしてこの世を去っています。


さて今回は、「紳助・竜介」が売れた秘密をお教えしましょう。

それは、紳助の優れた

「マーケティング的発想」

によるものです。


もちろん、彼がマーケティング理論を
わざわざ勉強したわけじゃないと思います。

紳助は、ビジネスの本質を見抜く力を持った

「天性のマーケター」

だったのです。


紳助の基本戦略、それは

「負けるけんかはしない」

ことです。


これは、言い換えると

「(同じ土俵で)戦わない」

こと。


当時、紳助は、漫才では、
オール阪神・巨人の才能には勝てないと
気づいていました。

また、芸人として生まれつきの才能を持つ
明石家さんまにも、やはり逆立ちしても勝てない。


だから自分たちは

「ヒール」(悪役)

というポジションで勝負しようと考えたのです。


つまり、他の漫才師と異なる

「ブランドポジショニング」

を明確に設定したのですね。


だから、舞台の上ではスーツを着るのが常識だったにも
関わらず、「紳助・竜介」はあえて「つなぎ」を着て
ヤンキー漫才を繰り広げた。

先輩や劇場支配人から、

「なんやその格好は!」

と怒鳴られても、つなぎを脱がなかったのは、
ダテではなく、上記のような明確な戦略に基づくもの
だったからです。


また、漫才は

「子供からお年寄りまで万人を楽しませるもの」


という考えも、紳助は捨てました。


「自分たちが笑かす相手は、20-35歳の男性」

と、ターゲットセグメントも明確にしていたのです。
同年代の男性を笑わせるのが一番やりやすかったからです。
(結果的には幅広い人気を集めましたが)


彼らも段々売れるようになってくると、
劇場には若い女性のファンが増えてきました。

しかし、自分たちのターゲットではない
「若い女性」に迎合することは決してしませんでした。

そうすると、本来のターゲットが離れていくことが
わかっていたからです。


さて、紳助独自の「マーケティング理論」の圧巻は、

「XとYの法則」

です。


Xとは、自分たちのお笑いのスタイル、個性、強みのこと。
Yとは、お笑いのトレンドです。


紳助は、お笑いの世界で「売れる」ためには、
まず、自分たちのスタイル(強み)を理解すると同時に、

・今受けているお笑いのスタイルはどんなものか、
・また、今後受けるだろう新しいスタイルはどんなものか

を把握する必要があると考えていたのです。


お笑いのトレンドとは、その時々で大衆が求める

「お笑いニーズ」

と言い換えることができると思いますが、
要するに「XとYの法則」は、

「(変化する)ニーズと供給のマッチング」

というビジネスの基本原則のことです。


紳助は、

“XもYもわかっていない芸人が多い”

と言っていますが、これはお笑いの世界だけでなく、
一般企業、個人にも該当する言葉ですね。


一発屋は、偶然にXとYがうまく合致して売れた人です。
そして、すぐに没落してしまうのは、本人がXとYを
理解していないから。

Yが変わってしまうと、ついていけずに
大衆から見捨てられる。それが、一発屋なのです。


しかし、賞味期限の長い芸人は、
変わり続けるY(お笑いニーズ)をしっかり分析し、
X(自分の強み)をうまく調整しているのです。


紳助は、実業の世界でも成功を収めていますが、
彼の天才マーケターとしての才能は、
どの世界でも通用することを見事に証明していますね。


正直、紳助には脱帽です。参りました。降参。


参考資料:紳竜の研究(DVD)

投稿者 松尾 順 : 10:38 | コメント (5) | トラックバック

富裕層マーケティングの極意

日経MJ(2007/07/02)のMJ論壇に、

『富裕層マーケティングの極意』

と題して、
アメックス(アメリカン・エキスプレス・インターナショナル)
日本支社支社長、山中秀樹氏の寄稿が掲載されていました。


なかなか興味深いことが述べられていたので、
要点をご紹介したいと思います。


・現在の富裕層は、カネさえあれば、キンキラでもいいという
 かっての「成金」から、「オシャレで賢く、合理的な」
 スタイルへと洗練されてきている。

・富裕層をさらに細分化するとブランド志向の高い人と
 低い人がいる。

・富裕層を取り込む3原則は次の通り。

 1 emotional Affinity (感情への訴えかけ)
   →ブランド志向の高い層に「持つメリット」(利点)を
    訴求する
 
 2 rational value (理にかなった価値)
   →ポイントを航空各社のマイレージに交換可能など
    現実的な特典

 3 customer experience (感動体験)
   →会員に提供するきめ細かく、親身で質の良いサービス

・アメックスの会員が、カードの盗難や紛失など困った時に
 コールセンターへかけてくる電話に対する我々の第一声は
 「ご安心ください」。即座にカードを再発行でき、会員も実際に
 安心する


なるほど。

金持ちは、誰もがブランド志向といった思い込み(固定観念)
は避けるべきなんですね。

いわゆる、「新富裕層」と呼ばれる人たちの
「心理と行動」については、正確な把握が必要なようです。


さて、山中氏は、

“安心感を抱かせるためには歴史も大切だ”

と強調しています。

“アメックスには、150年以上積み上げてきた世界で
 通用する安全と安心の顧客サービスの歴史がある”

とのこと。

確かに、ブランドは一夜にしてなりません。
長い時間をかけて培っていくものです。


そして、山中氏は、トヨタ自動車のレクサスが、
当初目標よりうまくいっていないということの理由について、
次のような見方を示しています。


“レクサス車は高い価格に見合う高い性能があるが、
 まず歴史がない。顧客は後ろにトヨタ自動車のエンブレムを
 透かしてみてしまう”

“加えてレクサス車を選ぶ顧客は高級ブランドにさほど執着せず、
 むしろ実利を求める層だろう。”


“ところが、レクサスの広告手法をみると、
 「感情への訴えかけ」が前面に出ており高級ブランドの
 イメージで売ろうとしている。”

“レクサスの場合は、「特徴」を訴求すれば、
 その性能・機能の高さで実利を求める顧客を取り込めるはずだ”


マーケティング・コンサルタント、森行生氏の

「プロダクトコーン理論」

によれば、新製品(新ブランド)の
訴求は、まず「規格」から始めるのが基本です。


*プロダクトコーン理論については下記記事を参照ください。

「シンプルマーケティング(8)プロダクトコーン理論」

「シンプルマーケティング(9)プロダクトコーン理論 訴求の順番」


規格とは、すなわち性能、機能面の特徴のこと。

プロダクトコーン理論では、
まず「規格」を訴求したら、次に「ベネフィット」を訴求、
最後に「エッセンス」(=ブランドイメージ)へと
訴求ポイントを移すのが定石です。


レクサスの場合、最初から

「エッセンス」

を訴求しているため、「伝わるコミュニケーション」
としては、難易度が高かったのは確かですね。

投稿者 松尾 順 : 07:22 | コメント (0) | トラックバック

お客さんに告白しよう


「事業の目的は、顧客の創造である」

とはドラッカーの言葉。


この本質がわかっていながら、現実には、

「事業の目的は、商品の販売である」

と考えている(建前はさておき行動レベルでは)企業が
あいかわらず大多数を占めているようです。

顧客を食い物にする不祥事が、昔も今も絶えることがないのが、
その証拠です。


しかし、「商品の販売が事業目的」とする考え方じゃあ、
これからは生き残ってはいけないよ、ということで
10数年前に登場したのが、いわゆる

「CRM」(Customer Relationship Management)

でした。


「CRM」は、簡単に説明すると、

「顧客との良好な関係を構築、強化、維持」

することです。

文字通り、「顧客の創造」ですよね。

もちろん、その先には、結果として商品が売れる、
というか、「商品が買われる」というロジックに
つながっているわけですけど。
(「売れること」が、先にあるのではない点が重要なんです)


さて、顧客との良好な関係を構築するというのは、
ベタな言い方をすれば、

「お客さまと‘相思相愛’の関係」

になることだと言えます。


ところが、私の過去の経験に基づいて言わせていただくと、
企業が「CRM」を導入し、実践する際に、
根本的に間違った考え方で取り組んでいるケースが多いのです。


それは、CRM施策において考えがちなことは、
企業が顧客に対して、一方的に、

“当社(商品)を好きになってください”

と訴えようとしてしまうということです。
これでは、単なる従来の販売促進と同じです。


たとえば、特に大手企業が発行するメルマガ。

「リレーションシップメール」

などと大層な名称を
つけているものさえありますが・・・


その実態は、新商品情報を羅列しただけのものが
ほとんどですよね。

必死でアピールしたいということはわかるのですが、
その本心は、

「当社(商品)を愛してください(=買って下さい)」

であることが見え見えです。

相手が、それを望んでいるか、
喜んでくれるかどうかを全然考えていない。


各種懸賞も同様です。

「得する何か」「ただでもらえる何か」で、
相手の関心を引こうとすること自体は、
やむをえないことだと思います。


しかし、こうした施策は、基本的に
相手に気に入られたいがための小手先のテクニックに
過ぎないという自覚が足りません。

お客さんも、このことがわかっているから、
おいしいとこだけ取って逃げていく。


そもそも、お客さんに対して、
自社(商品)を愛して欲しいと願うなら、
まず考えるべきことは、

「どのようにお客さんを愛するか」

です。

愛が欲しいなら、まず自分から与えなくては。


「お客さんを愛したい」という思いがあればこそ、

・お客さんのことをもっとよく知りたい
・十把一絡げには扱いたくない
・時には損をしてでも尽くしたい

ということが自然にできるようになっていく。


お客さんのすべてが、
愛を受け止めてくれるわけではありませんが、
中には、愛を投げ返してくれて、
相思相愛になるお客さんが必ずいます。


実は、企業だけでなく、個人レベルでも、
成功しているトップセールスマンの行動を見ると、

「お客様に対する深い愛」

からくる行動が、顧客の信頼を得ていることがわかります。
(一方的に愛を奪うことで一時的に成功するセールスマン
 もいますが、長続きはしません。)


ですので、
私は、今後、クライアントのCRM施策立案を
お手伝いする際には、

“では、お客様をどうやったら深く愛せるのかを考えましょう。
 どうやったら、うちを愛してもらえるかを最初に考えるのは
 やめましょう!”

とはっきり伝えようと考えています。


ところで、今回のタイトルは、

『戦わない経営』(浜口隆則著、かんき出版)

の中で見つけたフレーズです。
この場を借りてお礼申し上げます。


また、当該箇所を引用させていただきます。

----------------------------------------

ビジネスはお客さんがいないと完結しない

いくら自分が好きな仕事だって、
いくら価値がある仕事だって、
お客さんがいないと成立しない

だから、お客さんは大切なパートナー。

だから、お客さんを好きになろう。

そして、先に、「好きです」って言おう。
告白してしまおう。

すると、何人かに一人は、
「私も好きだよ」って返してくれる。

それが、ファンが生まれた瞬間

-----------------------------------------


この考え方を実践に落とし込めるかどうかが、重要なんですが!

投稿者 松尾 順 : 09:33 | コメント (0) | トラックバック

スパ ラクーア

先日、数ヶ月ぶりに「スパ ラクーア」へ行きました。

事務所から徒歩10分少々と近いのに、
なかなか行く時間が取れません・・・


渋谷の温浴施設の爆発事故の影響か、
心なしかお客さんが少ないような印象を受けました。

もちろん、同施設でも緊急点検を行って、
設備機器には問題がないことを確認しています。


ところで、「スパ ラクーア」でも、
ようやくという感じで紙製の「スタンプカード」を
今年4月から導入してました。

行くたびにはんこを押してもらい、10個になると、
1回無料で入場できるという典型的なリピート施策です。


今どき、紙製のスタンプカードかと思いますが、
ローテクなだけに、コンピュータベースのポイントシステムと
違って、初期投資も運営経費も安い。

ですから、施設側としては続けやすいんですよね。
同時に、コアなユーザーをリピートさせる効果は高いわけです。


ところで、全国のサウナを渡り歩いている自称、

「サウナ大王」(その正体はビジネス誌編集者)

によれば、日本一のサウナは、

「スパ ラクーア」

だそうです。


私も確かに良いと思います。

燃えさかる家の中にいるかのような強烈な熱さが味わえる、
「オールド・ログ」という高温サウナと、
大画面テレビを見ることのできる「スタジアムサウナ」(中高温)
の2種類があるのが魅力です。


さて、スタンプカードももらっちゃったし、

「たまにはさっぱり気分転換しないと、
 いい仕事はできないしね!」

とか、いろいろ理由をひねり出して、
私も行く回数を増やそうかなと思ってます。(笑)

投稿者 松尾 順 : 11:23 | コメント (0) | トラックバック