ターザニア TARZANIA

ターザンのように木から木へと空中を飛び回る!
そんな体験ができる施設が今年の7月21日にオープンしますね。

フランス生まれの“フォレストアドベンチャー”、

「ターザニア」

です。首都圏初登場だそうで。


所在地は、千葉県長生郡長柄町にある「生命の森リゾート」内。
最寄駅はJR内房線誉田駅。車なら東京から約60分です。


豊洲にある、子供向け職業体験施設の「キッザニア」と
名称が似てますが関係はなさそう。

ともあれ、なかなか面白そうです。

自宅の千葉・松戸からはドア・ツー・ドアで90分程度と近いので、
ぜひ今夏行ってみたいと思います。

投稿者 松尾 順 : 05:47 | コメント (0) | トラックバック

情報料理人(3)道具

今回は、情報料理人の道具について。


料理の道具は、大きくは以下の2つにわけることができますね。


・包丁のような「切る」ための道具
・鍋のような「混ぜる・合わせる」ための道具


この喩えを用いて、
情報を料理するための道具を考えると、

・情報を切るための道具    →各種フレームワーク
・情報を混ぜる・合わせるための道具 →各種発想法

となります。


「各種フレームワーク」は、
情報をいくつかの要素(カテゴリー)に切り分けて、

「食べやすい(わかりやすい)情報」

にします。


具体的には、すでに多くの皆さんがご存知だと思いますが、

・4P(商品、価格、広告・販売促進、流通)
・3C(顧客、競合、自社)

といったものがありますね。

これらの道具は、「MBAなんとか」といった本で
いくらでも手に入れることができます。

ただ、入手は簡単でも、使いこなせるようになるには
経験を積む必要がありますが。


さて、こうしたフレームワークでやっていることは、
ひとことで言えば、情報の「分析」ですね。

その目的は、前述したように、
生のままでは大きすぎたり、複雑すぎる情報を
細かく分ける。

そうして情報を理解しやすくすることです。


しかし、情報を切り刻んだだけでは、
何も生まれません。

食べやすくはなったけれど、おいしくなったわけではない。

おいしい料理を作るためには、
情報を混ぜ合わせたり、味付けをしていく作業が必要。


そのために、もうひとつの道具である

「各種発想法」

を手に入れ、利用することになります。


具体的には、

・ブレーンストーミング
・オズボーンのチェックリスト

などを始めとして、さまざまなものがありますね。


ただ、情報を混ぜ合わせたり、味付けをするというのは、

「情報と情報の間の意外な関係性を見つける」

ところに妙があり、これは発想法ではなく、

「編集法」

と呼んだ方が、より適切だと思っています。


私の場合、情報を切り刻むためのフレームワークは、
主に本・専門誌で学び、手に入れました。

しかし、情報を混ぜ合わせたり、味付けする道具、
すなわち、発想法・編集法は、独習だけでは難しく、
使えるようにはなりませんでした。


そこで、料理学校ならぬ、

「ISIS編集学校」

に通ったというわけです。


ちなみに、マッキンゼーを経て、現在ワトソンワイアットの
代表取締役社長を務めてらっしゃる淡輪(たんなわ)敬三氏は
次のようなことをおっしゃっています。


“マッキンゼー時代に学んだコンサルティングの本質は、

「分解と統合」

である。”


分解とは、要するに情報の分析であり、
統合とは、情報を混ぜ合わせることですね。

投稿者 松尾 順 : 09:51 | コメント (2) | トラックバック

情報料理人(2)情報材の仕入れ

今日は、クライアントが列をなす「おいしい料理」を出せる、

一流の「情報料理人」

になるための「食材=情報材」の仕入れのポイントについて。


まず頭に留めて置きたいのが、
良質で新鮮な食材は、あまり料理をしなくてもおいしいということ。

こんな一切の加工なしで生でも出せるほどの食材をベースに
調理すれば、それこそ最高のメニューになりますよね。


この点にこだわるシェフは、
自ら生産農家まで出向いて、そこで作られている野菜が
本当に無農薬か、あるいは有機農法かを確かめます。

つまり生産者の「質」を見極めるわけです。

また、できるだけ市場を通さず、
農家から直接仕入れることで「新鮮さ」を高めようとします。


同様に、良質で新鮮な情報を手に入れようと思ったら、
情報の発信源の質、言い換えると「信頼性」をしっかり見極める。

また、できるだけ直に情報を仕入れるようにすることが理想。


これは、要するに、情報発信者に直接会い話を聞くことです。
また、現場に行き、自分の五感で情報を仕入れてくることです。

これは、大変手間と時間がかかりますね。


しかし、近くの八百屋で誰でも買えるようなお手軽食材を
買ってくるだけでは、よっぽど料理の腕が高くないと、
おいしい料理にするのは難しい。

情報についていえば、インターネットですぐに手に入るものは
情報材としての相対的に価値が下がります。

他の情報料理人との差別化をしたかったら、
情報そのものにもこだわり、その仕入れに手間と時間を
かけるべきでしょう。


私自身は、インターネット以外に、意識的に紙媒体
(新聞、雑誌、単行本など)からの仕入れを重視しています。

そうすれば、「インターネットがあれば十分」と
紙媒体にほとんど接しない人よりも、
情報材仕入れの点で優位に立つことができます。

また、人に会うことや、現場に行くことは、
現在は事情があって意識的に時間を減らしていますが、
ほんとは、もっと増やしたいなと思っていることです。

ご参考>私の情報材仕入先(主要情報源)


さて、もうひとつ情報材の仕入れについて留意したいのは、

「多様性」

ということです。


メニューを考える時、肉、魚、野菜と多種多様の食材を
仕入れることができればできるほど、
バリエーション豊富なメニューを考案できますよね。

ところが、、私は「魚」しか仕入れていないとなったら、
メニューの幅がずいぶん狭くなってきます。


もちろん、創造性と料理の腕を発揮すれば、
限定された食材でも多様なメニューを生み出せるとは
思います。

しかし、選択肢はたくさんあるに越したことはない。
基本的に、食材は様々取り揃えられるほうがいいわけです。


情報でも同様に、できるだけ広範囲の異質な分野の情報材を
仕入れることが、「おいしい料理」づくりに役立ちます。

産地が違えば食材の味や食感も微妙に異なるように、
同種の情報も情報源によって切り口が違いますから、
情報源も多様化させるとモアベターでしょう。


まあ、口で言うのは簡単、実践するのはめちゃくちゃ大変なことを
申し上げているわけですが、どんな道にせよ、プロを目指すなら、
人生のすべて(=時間)を捧げるくらいの覚悟が必要だと思います。


私は、まだまだたいしたことない情報料理人ですので、
偉そうなことはほんとは言えないんですけれども。

投稿者 松尾 順 : 11:10 | コメント (0) | トラックバック

情報料理人(1)

新しいアイディアを生み出し、具現化するための企画作業は、

「料理」

のプロセスに似ています。


このことは、プランニングをメインの業務にされている方なら、
すぐにピンと来るんじゃないでしょうか。

実際、下記の本

『PLANNING HACKS!』(原尻淳一著、東洋経済新報社)

で著者の原尻さんは、

“企画作りと料理づくりはほとんど同じ。
 料理のフローを考えると、見事にプランニングのフロー
 に対応しています”

と述べています。


私もまた、

‘素材となる「情報」をおいしく料理すること’

が企画作業だと考えています。


ですので、最近になって

「情報料理人」

という表現を用いて、業務内容を見直し、
一流の「情報料理人」を目指すためには、

「なにをどう改善すればいいのか」

についてのヒントを得ようとしていました。

*実は、以前書いた「マーケティング情報士官」という
 メタファーも使えるのですが、なにしろ、情報士官
 (インテリジェント・オフィサー)の仕事はなじみが
 薄くよくわかりません。料理人のメタファーのほうが
 わかりやすいですよね。

参考>マーケティング情報士官


そこで、今日から何回かに分けて

「情報料理人の仕事」

について概要を書いてみたいと思います。
(なお、原尻さんの切り口とは若干異なります)


前述したように、情報料理人の目的は、

「情報をおいしく料理すること」

です。そして、その結果として

「料理済みの情報」

が注文した人のテーブルに置かれることになります。


この「料理済みの情報」がおいしいかどうかは、
たとえば、

売れる新商品や新規事業開発に役立つ
「ヒント」が含まれているかどうか

で判断されるます。


ここで「ヒント」とは、専門用語では、

「カスタマーインサイト(顧客洞察)」

と言い換えることもできます。

また、「マーケティング情報士官」で述べた

「インテリジェンス」

のことでもあります。


ただ、大事なことは、

「使える情報になっているかどうか」

です。


つまり、端的には

「おいしい料理済みの情報」

とは、

「使える情報」

ということですね。


したがって、

「情報料理人」の腕は、
外部から「生の情報」を食材として仕入れ、
それを「使える情報」になるように料理できるかどうか

で判断されることになります。


なお、「生の情報」は、
多くの場合そのままではおいしくありません。

実は、生で食べてもおいしい、新鮮で極上の情報も
出回っているのですが、それらはごく限られた人たちの
間で独占されています。

ですので、市井の情報料理人は、
一般に出回っている普通の食材を中心に仕入れ、
その食材をうまく組み合わせたり、味付けを工夫する
ことによって「おいしい情報」に変えていくのです。


では、次回は食材としての「生の情報」の仕入れなどに
ついて書きたいと思います。


蛇足ながら、

『PLANNING HACKS!』(原尻淳一著、東洋経済新報社)

の原尻さんは、私と同様、

ISIS編集学校

の師範代です。
残念ながら、まだ直接お会いしたことはないんですけどね。


この本は、企画における「準備の大切さ」を強調されている点
にもおおいに共感を覚えました。

一流の情報料理人を目指す方の「基礎テキスト」という感じです。

投稿者 松尾 順 : 11:25 | コメント (4) | トラックバック

ボールパークのセンターピン

「ボールパーク」とは野球場のことです。

今日は、メジャーリークの事例をご紹介するので、
あえて英語で表現してみました。


さてさて、

ボールパークのセンターピン(成功のカギ)

は、なんだと思いますか?


実は以前にも書いたんですが、その答えは、

「混んでいること」

です。

参考>人の集まるところに人は集まる


大観衆で埋まった野球場の熱気、地面が揺らぐような大歓声は、
野球を観戦する楽しさを倍増させてくれます。

逆に、閑散とした客席に座って、
応援もまばらな中でみるゲームほどわびしいものはありませんよね。


福岡生まれの私は、小さいころ、年に1度は今は取り壊された
平和台球場に野球観戦に行ってました。

その頃の地元球団はライオンズです。

しかし、ライオンズの黄金時代ははるか昔のこと。
当時は、毎年最下位争いをするチームに成り下がってました。

さすがに、地元でも人気は低迷。
球場は閑散としていて、どうも盛り上がらない。
しかも、たいてい負けてしまう。

7回が終わった頃には、

今日も負けているし、混む前にそろそろ帰るか・・・

などと、見切りをつけて帰るのは本当にわびしいものでした。

そんな状況の中、ライオンズのエース、
東尾投手が孤軍奮闘していた姿を思い起こすと
泣けてきます・・・


おっと、感傷に浸っている場合じゃないですね。
本題に戻しましょう。


「混んでいること」

がセンターピンとなるのは、サッカーやディスコも同じです。

上記の過去記事で書いたように、
「ジュリアナ東京」がブレークしたのも、
「アルビレックス新潟」がJリーグ最大の観客動員数を
誇るようになったのも、当初、タダ券を大量にばらまいて、
とにかく人を集めて、「混んでいる感」を演出したからです。


つまり、こうした娯楽施設においては、
たくさんの人が来場していることが、大衆にとっては
人気度を判断する尺度であり、また、活気を生み出し、
興奮や感動を高めてくれる要素になるのです。

また、実際に人気が高まってくれば、
今度は、チケットなかなか手に入らなくなりますから、
価値が高まり顧客単価も上昇しますよね。
(いわゆる「プラチナチケット化」)


さて、野球場に例を絞りますが、
「混んでいる」状態に見せるための打ち手は、
次の2つ(の組み合わせ)になりますよね。

・人を大量に集める
・野球場のサイズ(座席数=収容人数)を小さくする


ただ、野球場のサイズを小さくするというのは、
従来のビジネスの発想からはバカげたことに感じます。

なぜなら、野球場からの売上は、

顧客単価x座席数(=来場者数)

で決定されるからです。

すなわち、座席数を減らすということは、
自ら売上機会を減少させていることになります。


しかし、「混んでいること」
というセンターピンに照らし合わせると、
むやみに野球場のサイズを大きくしてしまうと
逆効果になることがわかります。

というのも、そこそこ人が入っていたとしても、
施設が大きすぎるために、相対的にスカスカに見えてしまい、
「混んでいる」ように見えないからです。

つまり、収容人数だけではなく、座席の稼働率、
端的に言えば「埋まり具合」も考慮しなければならないわけです。


このことに気づいたのがメジャーリーグの各球団でした。
(日経ビジネス、2007年6月25日)

たとえば、ニューヨーク・ヤンキースが建設中の新球場の
客席数は現在の1割減の5万1千人。今でもチケット入手が
困難な人気チームにも関わらずです。

同様に、ニューヨーク・メッツの新球場「シティーフィールド」
の客席数は、なんと2割減の4万5千人。

ボールパークは狭くしたほうが、稼動率が高まり、
結果的に総売上が高くなるというロジックですね。


実は、このロジックは、地方球団のサクセスストーリーに
よって証明されたことでした。


クリーブランド・インディアンズの本拠地、
クリーブランド市営球場は観客席7万4400の巨大施設でした。

アメリカンフットボールのクリーブランド・ブラウンズとの
共用施設として建設されたこの施設は、野球場としては
あまりに大きすぎたようです。

観客と選手との距離が遠く臨場感が味わいにくい。
また、ホームランが出にくいために、ゲームの面白さも
足りなかったようです。

しかも、チーム力も低迷していたこともあって、
1試合あたりの平均観客数は、1万人ちょっと。

テレビに映るガラガラの客席は、地元の人に

「いつでも入場できる」

という意識を植え付けて、さらに足を遠ざけることに
なっていました。
(また、あんなガラガラの球場で試合を見てもぜんぜん楽しくない
 という気持ちも当然湧いたでしょうね)


しかし、94年に建設した野球専用の「ジェイコブス・フィールド」
では、客席数を4万3千人に絞りました。

また、ファウルグランドも狭めて、迫力あるプレー観戦も
実現しました。


そして、客席を埋め尽くしたファンの声援に押されて、
同チームの選手も大活躍します。

有名選手を獲得できるだけの資金がない分、
有望な若手を育成する方針もちょうど功を奏し始めてました。

結局、94年には1ゲーム差の2位という成績を収めます。
翌年も満員のゲームが続き、とうとうアメリカンリーグを制覇。


ちなみに、同チームの1試合あたり平均チケット収入(ドル)は、
93年のクリーブランド市営球場時代は約25万ドル。

ところが、94年、ジェイコブスフィールドに移った年は、
約57万ドルに達しています。


座席を約半分に絞って、売上は倍増したのです。

投稿者 松尾 順 : 11:03 | コメント (4) | トラックバック

温浴施設のセンターピン

先日起きた、渋谷の女性専用高級スパ「シエスパ」の爆発事故に
よって、温浴施設には、一歩間違うと人命に関わる危険性がある
ことがわかって驚きました。

どうやら、上記施設には、運営上最も重視すべき

「安全性」

に対する意識が弱かったようですね。


さて、近年、全国的に温浴施設を集客の切り札として
建設するところが増えています。

また、手ごろな値段で様々なタイプのお風呂が楽しめる
「スーパー銭湯」もあちこちに増殖中です。


こうした温浴施設、特にスーパー銭湯の

「センターピン」

は何だと思いますか?


なお、「センターピン」とは、ボーリングのピンのことです。
センターピンにボールが当たると全部のピンが倒れて
「ストライク」が取れることから、

「成功のカギ」

という意味で使います。

このセンターピンという言い回しは、
現在マスコミに叩かれて憔悴気味のグッドウィルグループ代表、
折口雅博氏の言葉です。

折口氏は、拡大欲にとち狂い、事業の「社会性」を
見失ってしまいましたが、ビジネスセンスは
すばらしいものがありました。


本題に戻しましょう。

冒頭に述べたように「安全性」は、あって当たり前。
「センターピン」ではありません。

「センターピン」とは、
繰り返し利用したくなるような独自の強みのことです。


温浴施設のセンターピンは、私の考え(仮説)では、

「休憩スペースの広さ」

が第一だと思います。


休憩スペースが食事処を兼ねているところもありますが、
飲食する・しないに関わらず、湯上りにゆっくりできる
十分なスペースがあることって、重要だと思いませんか?


私も、新しくオープンした自宅周辺のスーパー銭湯には
よく行ってみるのですが、「休憩スペース」が十分に
広いところは意外に少ないです。

そのため、ゆっくりすることができず、
そそくさと帰途につかなければなりません。


今の私たちは、昔の銭湯の時代のように
内湯がないから行くわけではないですよね。

温浴施設の広い湯船に浸かって開放感を味わい、
体だけでなく、心もさっぱりしたいから、
わざわざ外湯に行く。

なのに、湯船ばかりやたら豪華で、
入浴後のスペースを軽視しているところが、
結構多いと思います。


昨年、房総旅行の帰りに、
養老渓谷の新しい温浴施設に立ち寄ったことがあります。

総ヒノキ造りの豪華な上屋。
お風呂の種類はあまり多くありませんでしたが、
天井が高く、広々としていて気持ちが良い。


しかし、食事処はあっても休憩スペースがありません。
正確には、2階に有料の個室がいくつかありましたが、
かなり高めの値段でした。

ゆっくりしたかったら、食事を頼むしかないわけです。


その時は、夕食を取ることにしたので問題はありませんでした。
でも、そうでなければさっさと帰らざるを得ません。

私は、「なんだかなあ・・・」とつぶやきながら、
ここには2度と来ることはないだろうと感じてました。


実はこの温浴施設は、地元の大手温泉宿が建設したものでした。

旅館の場合、宿泊客には部屋があるので、
館内の浴場に休憩スペースを設けてないことが多いですよね。

この発想をそのまま新しい温浴施設の設計に持ち込んで
しまったんじゃないかと思います。

温浴施設の「センターピン」が何かをわかっていなかった
ということでしょう。(私の仮説に基づけばですが)


余談ながら、この施設、「総ヒノキ造り」にこだわり、
長持ちさせるために、建物の空気の通りが良い設計に
なっていました。

このため、入浴されるお客さまには、
多少寒い思いをさせることになります。
この点ご理解お願いします。

などと書いてある。


ところが、洗い場のオケを見ると、
ヒノキに見せかけたプラスチック製です。

「ヒノキにこだわるなら、細部にこだわれよ」

と突っ込みを入れてました。


さて、この温浴施設、
莫大な資金をつぎこんだことは明らかでしたが、
まだ存在しているのかどうか・・・

投稿者 松尾 順 : 12:20 | コメント (0) | トラックバック

「団塊戦隊!香リンジャー

若い女性や子供から嫌われる、加齢臭漂う“オヤジ”たちが、
家族愛・人類愛のために悪(悪臭軍団)に立ち向かう痛快戦隊
アニメ。


「団塊戦隊!香リンジャー」はフジテレビの美術センターが制作。
同局アナが声優を担当した社内制作アニメです。

“フジテレビZOO”のコンテンツとして今後シリーズ放映されて
いく予定。


先日、予告編を見ましたが、かなり自虐的。
微妙にすべってる印象を受けました。(笑)
(現在はなぜだか予告編が閲覧できませんね、
 何か表現上の問題があったのか・・・)

果たして人気キャラになるかは微妙ですねぇ。


しかし素朴な疑問。
なぜ、いわゆる「モモレンジャー」に当たる
女性キャラがいないのか?

女性にも加齢臭があるんですから、5人の勇士全員が男性
というのはちょっと不自然だと思います・・・


オヤジばかりが、「臭い」と言われるのは不当ではないかと。

投稿者 松尾 順 : 10:18 | コメント (0) | トラックバック

「確かにうまい」

最近、サントリー、「ザ・プレミアム・モルツ」の缶には、

“確かにうまい”

のコピーが書かれた小シールが貼ってありますね。


メーカー自身が、こうした自画自賛的なコピーを
製品に貼るのはちょっと傲慢な感じもします。


しかし、これでいいのです。

プレミアム・モルツを飲んでいる人は、

「確かにうまい」

と思って購入してるわけですから。


しかも、変な話ですが、こんなコピーを読まされると、
念押しされているようでありながら「やっぱりうまいよなあ!」
という気持ちが湧いてくる。


シンプルながら秀逸なコピーだと思います。

投稿者 松尾 順 : 09:49 | コメント (1) | トラックバック

売るのか、売れるのか

「デジタル化」の進展、それは、

何事も「数字」で把握する傾向

が強まることです。


確かに、「数字」という客観的な尺度で物事を見ることは、
企業運営を円滑に行う上で必要なことではあります。


しかし、この傾向が行き過ぎると

「数字至上主義」

になる危険性をはらんでますよね。


たとえば、伊勢丹の入社3-5年の若手バイヤーは、
売れ筋の品番を即座に、そらで言えます。
(日経MJ、2007/06/18)

品番はたぶん10桁とかの数字ですよね。
すごい記憶力。


ところが、店頭にいる時に、

「売れている商品はどれか」

と聞いても、バイヤーたちは商品自体は見ずに、
商品に付けられているタグの品番を探すんだそうです。

個々の商品の色や形ではなく、
数字でしか商品を識別できないわけです。


こうした傾向は、10年選手のバイヤーにもあるそうです。

1ヶ月に1枚も売れない衣料品のデータを見て、

「メーカーに返品していいですか」

と上司に聞きに来る。


上司は、「ちょっと待て」と言って、
この道30年のベテラン販売員を集めて、

「売れるものと売れないものを分けてくれ」

と頼む。すると、

「これはダメだけど、これはもっと前に出せば売れますよ」

などと分類してくれる。


そして、言われたように陳列をいじると、
1ヶ月に1枚も売れていなかった商品がいきなり

「ベストセラー」

に様変わりしたりすることがあるそうです。


単に、結果の数字だけを見て「売れない」と
短絡的に判断するのは必ずしも正しくない。

こちらに「売る気」があれば、
売れ始めることがあるということを忘れちゃいけません。


つまり、商品販売については、

・売るのか(積極的に・・・)
・売れるのか(商品力で黙ってても・・・)

の両側面があるわけですが、
どちらか一方ではなく、バランスが大事ですよね。


最後にもうひとつ、積極的に「売る」ことで成功した事例。
(Works 82号、2007/06/07)


京成成田駅徒歩数分のスーパー、「ヤオコー成田駅前店」

同スーパーで、調味料、お菓子、日用雑貨などを扱う
グロッサリー部門の責任者は、下澤洋子さん。

下澤さんは、ヤオコー92店のグロッサリー部門で
利益率トップの“スーパーパート社員”です。


さて、下澤さんが「売ろう」としたのは、長野県産のみそ。
1キロの定価が900円超。ずいぶん高いですね。

月1度の特売日は3割引になるものの、
同店の売れ筋みそは、200-300円程度でしたので、
特売日でさえ、価格差は2倍もあります。

したがって、このみそは、
特売日でも1日2個売れればいいほうでした。
(つまり、普段はほとんど動いていなかったということです)


このみそを売るため、下澤さんは、
まず味を知ってもらおうと、試食部門と組んで、

「みそをつけたきゅうり」

の試食を1年にわたり出し続けました。


もちろん、だからといってそう簡単には売れません。

試食部門の人からは、

「そろそろ他の商品をお客様に薦めたらどうか」

と言われたそうです。

しかし、下澤さんは譲らなかったのです。


また、陳列棚の端のエンド部分、
よく特売で商品が山積みにされているスペースにも、
このみそを置いて粘り強くアピールを続けました。

結局、下澤さんは、2年にわたってこのみそを
「売る」ことに賭けた結果、今では

1日80個

を売るヒット商品になっています。


商品や販売現場をろくに知らないまま、
数字だけを見つめ、しかも、短期的な結果を重視することで
失われてしまうチャンスがあるかもしれない。

この事例はそんなことを教えてくれます。

投稿者 松尾 順 : 10:50 | コメント (2) | トラックバック

「手抜き調査」の自覚

マーケティングリサーチャーの一人として、
自戒を込めて、やや極論を申し上げます。

「アンケート調査は、手抜きの調査方法です。」

こうした自覚が、マーケターには必要だと思います。


アンケート調査自体を否定しているわけではありません。

仮説を検証し、定量的な数字で物事を判断する場合に、
きわめて有効な手法です。


ただし、アンケート調査が、

「今回の調査目的を達成するために、最適の手法か?」

という吟味が十分になされた上で実施が決定されるべきでしょう。


なぜ、こんなことを書いているかというと、
アンケート調査を行う理由が、その「合目的性」ではなく、

・予算がないから
・時間がないから
・他の調査は手間がかかるし面倒だから
 (あからさまにそう思ってはいないでしょうけど)

といった、率直に言ってしまえば、

マーケターの「手抜き」

的なものになりがちだからです。


最近はお手軽・安価なネットアンケートが普及したので、
猫も杓子もアンケート、アンケート。

安易にアンケートを実施して、
結局のところ、あまり役に立たないデータが量産されている
可能性があるんじゃないでしょうか?


「調査なんて役に立たない」

などと、調査の本質を理解しない発言をする人がいるのも、
アンケート調査の氾濫が背景にあるのかもしれません。


消費者対象の調査について言えば、
それは、消費者の心理や行動を的確に把握するもの。

そこから、売れる商品開発や、
効果的なコミュニケーション施策のためのヒント
(顧客洞察=インサイト)を得ることができなければ、
調査をやるだけ無駄です。


逆に言えば、売れる商品開発や、
効果的なコミュニケーションのためのヒント
(顧客洞察=インサイト)を得たかったら、
安易な「手抜き」をしてはいけません。


商品開発や、コミュニケーション施策には莫大なお金を
投じるにも関わらず、リサーチを軽視し、
十分な時間や予算、手間をかけないのはまさに本末転倒。


これは、先日書いた記事、

「思えばなる方式」からの脱却

でも指摘した通りです。


調査手法にはさまざまなものがありますが、
最もリッチな情報、すなわち、
磨けば光るインサイトの原石が含まれているのは

「観察調査」

でしょう。


これは、要するに「現場」に行くということです。

顧客が対象商品を選んだり、利用している様子を
じっくり観察する。ビデオに撮って繰り返し見る。

観察調査は、大変に面倒で、お金も時間もかかります。


しかし、情報のリッチ度と調査の面倒度は
相反する関係にあります。

私の感覚的なランキングではありますが、
情報が最もリッチ(裏返すと調査の面倒度)が高いものから
主要な調査手法を並べると次のようになるでしょう。

1.観察調査
2.個別インタビュー調査(デプスインタビュー)
3.グループインタビュー調査
4.アンケート調査
5.マーケターの思い込み(これは調査ではないですが)


顧客の理解度の深さが、
新商品やマーケティング施策の成功の鍵を握っています。

だとするならば、顧客理解のための調査には、
必要十分な手間と面倒をかけていただきたいと願っています。

投稿者 松尾 順 : 08:51 | コメント (6) | トラックバック

いなかマーケティング

昨日、「村ぶろ」の記事を書いている時、
ふと、数年前、北海道の某自治体職員の方を対象として

「いなかマーケティング」

の講義をやらせてもらったことを思い出しました。


当講義では、ごく基本的な内容をお話したんですが、
当メルマガ&ブログで、講義内容のポイントを
ご紹介しておきたいと思います。


さて私は、「いなかマーケティング」の副題を

-いなかを元気にするマーケティング-

としていました。


そこで、まずは

「いなかを元気にする」

という意味を説明します。


「元気である」という状態とは、要するに

「活動が活発」

だということですよね。


そして、いなか(地元)を元気にするために重要な活動は、

ヒト、モノ、カネ、情報の「地元」と「地元外」との交流

のことだと私は考えています。


「地元内」だけの交流活動も、もちろん大切です。
しかし、閉じた世界であるために、
活動が不活発な状態に陥っているのが「いなか」の現状です。

したがって、地元と地元外との交流を通じて
地元に新しい風を吹き込む必要があるわけです。


ここで、ヒト、モノ、カネ、情報のうち、
とりわけ注力すべきなのが「情報の交流」です。


なぜなら、

“おもしろい観光スポットがある”

といった情報が流れることによって、「ヒト」が動く。
(端的には、観光旅行)

“このお菓子はおいしい”

といった情報によって、「モノ」が動く。
(端的には購買行動)

「ヒト」や「カネ」が動けば、当然ながら「カネ」の動きも
発生する。

というわけで、「情報」こそが、
ヒト、モノ、カネを起動するきっかけになっているからです。


したがって、

「いなかを元気にする」

ためには、情報のやりとり、すなわち

「コミュニケーション」

を上手に行うことが鍵になってきます。


そして、このコミュニケーションを上手に行うことこそ、

「マーケティングの本分」

ですよね。

だから、自治体の皆さんにもマーケティング・マインドが
必要なんですよ、という論理展開をしたのでした。


次に、いなかのブランディングのポイントについてです。

いなかのブランディングにおいて最も重要なことは、

「とんがりを作ること」

です。


すなわち、「オンリーワン」、かつ「ストーリー性」のある
その地元ならではの「強み」を磨き上げてとんがらせる。

そして

「XXXXと言えば、XXXX村(町)だよね」

とシンプルなブランド連想を強化する。

まずは欲張らずに一点突破型でコミュニケーションを行う。


たとえば、和歌山県北山村の場合は、かんきつ類の

「じゃばら」

をとんがらせてきてますね。


いなかの人はしばしば、

“このあたりはなんも面白いものはないからなあ・・・”

などと自嘲気味におっしゃいますが、それは思考停止してます。


どんな地域にも、その地域ならではの独自の強みがあるはず。

・気候
・風土
・文化
・歴史
・人
・イベント(祭り、儀式)
・偉人、有名人

等々

掘り起こしてみれば、「原石」が眠っているでしょう。
原石を見つけたら、資源を集中して磨き上げるのです。

よしんば、地元には本当に原石が見つからなかったとしても、
外から持ってくることだって可能です。


たとえば、札幌で毎年開催されている

「よさこいソーラン祭り」

は、16年前に始まった新しいイベントです。

1991年に高知のよさこい祭りを目にした一人の学生が、
地元北海道のソーラン節とミックスして始めた祭りでした。


この第1回の参加チームは10チーム、
観客動員数は20万人に過ぎませんでした。

ところが、先日終了したばかりの第16回では、
参加チームは341チーム、観客動員数は216万超までに
拡大しています。


さて、「とんがり」が作れたら、力を入れるべきこと。
それは冒頭に述べたコミュニケーションです。

地元外の人々に向けて、「とんがり」を
上手に伝えることが必要です。

もちろん、このためにインターネットを
活用しない手はありません。

コミュニケーションにおいては、
一方的な情報発信だけでなく、相手からの情報の受信も
オープンに受け止める双方向性が双方の理解を深めるために
有効です。

インターネットなら、いまさら言うまでもなく
双方向コミュニケーションも比較的容易にできますから。


結局のところ、いなかマーケティングにおいて、
成否の鍵を握るのは、

「インターネットの活用」

だと私は思っています。

投稿者 松尾 順 : 10:56 | コメント (0) | トラックバック

村ぶろ・・・和歌山県北山村発

紀伊半島の南東部に位置する小さな村。

和歌山県北山村。

村面積48平方キロの97%を山林が占めています。


北山村は、136年前の廃藩置県の際に和歌山県残留の道を
選びました。このため、周囲を三重県と奈良県に囲まれた
全国で唯一の飛び地自治体だそうです。

この村もご多分に漏れず少子高齢化、過疎化が進み、
今の住民はわずか516人です。(2007年5月31日現在)


同村の基幹産業となっているのは、柑橘類の「じゃばら」生産。

近年、「じゃばら」は、花粉症に効果があることがわかり、
人気が高まっています。

また、ダム建設によって中止を余儀なくされた、
600年の歴史を有する「筏流し」の伝統技術を継承した

「観光筏下り」

を復活させることで、観光事業を中心とした地域づくりに
取り組んでいます。


この取り組みの一環として開始されたのが、

「村ぶろ」(murablo)

北山村が主催する自治体初のブログポータルです。

今年3月からテスト版がオープンしてましたが、
6月21日にグランドオープン。


「村ぶろ」には、北山村の住民以外の誰でも、

「村人(むらびと)」・・・仮想村民

として登録することで、
無料のマイブログを開設することができます。


テスト版オープン以来、これまでに登録した
仮想村民は、約5,900人。(5月17日現在)

なんと、仮想村民は住民の10倍以上に膨れ上がっています!


現在はコミュニティ機能も追加されており、
地域SNS的な「仮想村」として発展していく可能性が
ありますね。


もちろん、単にネット上の活動だけでなく、
北山村の村人としての意識が醸成されることによって、
「じゃばら」の直販サイトの売上増につながるでしょうし、

「私のもうひとつのふるさとに帰りたい」
(東京生まれの人にとっては、新たなふるさとになる!)

という気持ちから、そうでもなければわざわざ行く気には
ならない不便な場所にある同村に観光に行く(帰る)人も
増えてくるでしょう。

北山村に永住したいという人も間違いなく出てきます。


「村ぶろ」の今後の展開は、
少子高齢化・過疎化に悩む地方の活性化に効く、
ネット活用例として要注目でしょう。


あ、私も早速、村人になってみました。
登録は簡単ですね。

巨大すぎて無個性化した大手の無料ブログポータルよりも、
手作り感があっていい感じです。

投稿者 松尾 順 : 10:09 | コメント (0) | トラックバック

フリーペーパー花盛り

最近、さまざまなフリーペーパーを目にするように
なってきましたね。

特に、駅構内や街頭で配布する無料誌が
雨後のたけのこのように出てきてます。


これらの無料誌のレイアウトやコラムの文字数(800字)を
見ると、『R25』のスタイルを真似したものが多いようです。

街頭配布型としてひとつの成功モデルを作った『R25』が
スタンダードとして見られているということでしょう。


さて、無料誌についてのネット1000人調査の結果を
かいつまんでご紹介しておきたいと思います。
(日経産業新聞、2007年6月15日)


・最近3ヶ月以内に読んだ人は64.4%
・一番よく読まれた媒体(閲読率)は、

1位:「ホットペッパー」(46.7%)、
2位:「ぱど」(26.9%)、
3位:「タウンワーク」(24.1%)
4位:「R25」(16.8%)


ホットペッパーが圧倒的に多いですね。

配布スタッフが駅前などでかなり強引に配ってますから、
到達率が高くなるんでしょう。

しかし、最近のホットペッパーのタウンページ並の厚さは
どうにかならないんでしょうか。

あまりの厚さに、そもそも受け取る気にならないし、
もらってもめくる気がしない・・・

好きな人にとっては、あの分厚いページを
じっくりめくるのが楽しみなのかもしれませんが・・・


・満足度の高さ(満足+まあ満足)の1位:「L25」(84.6%)


「R25」の姉妹紙である「L25」閲読率では8%程度でしたが、
20-30代女性ターゲットのこれまでになかった切り口(R25的な)
が受け入れられたことがわかりますね。


・無料誌を読む理由のトップは、
「お得な情報が手に入るから」(65.7%)、
 2位は「暇つぶしになるから」(%明示されていません)


・無料誌を読まない理由は、

1位:「不要な情報が多い」(31.2%)
2位:「捨てるのが面倒だから」(24.2%)
3位:「大きかったり、重かったりして邪魔だから」(12.9%)


自由回答では、「もっと小さく、軽くしてほしい」との
要望が多かったようですが、おそらく「ホットペッパー」
に向けられたものでしょうね・・・


日本生活情報紙協会の調査(06年)によれば、
発行されている無料誌は都市部を中心に1,200誌、
年間総発行部数は約100億部に達するようです。


インターネット上のデジタルメディアが浸透しつつある一方で、
従来ながらのアナログな情報誌の存在感が高まっているのは、
ちょっと不思議ですよね。


紙媒体の持つ携帯性の高さ、手軽さには、
デジタル機器はまだまだかなわないから、というかも
知れません。


蛇足ながら、
私のお気に入り無料誌は、
「R25」は別格として、50代男性が対象の

「ゴールデンミニッツ」(毎月26日発行)。

内容がしっかりしてますし、つくりにもお金をかけています。


当誌は、東京都心の限られた地下鉄駅でしか配布されていません。
配布部数は10万部台のようです。

「R25」以上に、すぐになくなってしまいます。


ただ、果たして事業としてペイする(している)かどうか、
疑問です。コスト的に厳しいように感じます。

廃刊にならないことを願っています。

投稿者 松尾 順 : 13:53 | コメント (4) | トラックバック

知られざるゴスペルの世界

休日はたまにはちょっとオフな話題で・・・


「ゴスペル」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

教会で黒人の人たちが集団で歌ってるイメージ?

今までゴスペルを実際に知る機会がなかった方は、
たぶんこの程度のイメージしか湧かないですよね。

私もそうでした。


ただ、ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画、

『天使にラブソングを』

を見た方はおわかりになると思うんですが、
教会で厳かに歌われるスローなものだけでなく、
結構‘ノリノリ’の曲もあります。


実は、私は1年ほど前から、全国各地にメンバーがいる
ゴスペルグループに参加しています。

練習は月2回。東京のメンバーは100人ほどで、
練習場所には、毎回50人以上のメンバーが集まります。


ゴスペルグループに入会した動機は、友人に誘われたからです。

「天使にラブソングを」は以前から大好きな映画でしたから、
ゴスペルについて多少の関心がありました。

でも、実際のところはよく知らないまま。
自分でゴスペルを歌ってみたいとは、考えたこともありませんでした。

でも、直感的に「ひょっとしたら面白いかも!」と思って参加したのです。


そして、たちまち夢中になってしまいました。(笑)


50人以上(コンサートでは200-300人になることもあります)の
メンバーが歌う時の迫力、そして感動。

歌を通じて仲間と心をひとつにする感覚は、
一人か、せいぜいデュエットで歌うだけのカラオケの何百倍も楽しい。


なによりも、私がはまった最大の理由は、
ゴスペルは心、いや「魂」(ソウル)で歌うということを
知ったからです。(これは私なりの理解ですが)


私たちが、小中高の音楽の時間などにやらされた
いわゆる「合唱」は、「頭」で歌っていたように思います。
「合唱」では、きれいに歌うことが大切でした。

しかし、ゴスペルは魂の歌です。

きれいに歌おうとするよりも、声に言葉に魂を乗せ、
聞き手に対して自分たちの思いを届けることが大切なのです。


ですから、美しいサウンドに聞こえた方がもちろんいいのですが、、
魂のない歌になるくらいなら、むしろ多少汚く聞こえたとしても、
魂が入っていると感じられるほうがいい。


実は、魂をこめて歌うのはなかなか難しいことなのですが、
「思いを伝える」ということを大切にするゴスペルを歌うことは
私にとっては、今までにない貴重な体験になっています。

なお、私の参加しているゴスペルグループでは、
宗教にはこだわっておらず、様々な他のジャンルの曲をゴスペル風に
アレンジして歌っています。

例えば、ビートルズやサザン・オールスターズ、そして美空ひばりまで!

これもまた楽しい・・・!


また、この1年は、いろいろとゴスペルの音楽CD(20枚以上!!)を
買って聴いていますが、宗教歌っぽい典型的な曲もある一方、
結構ロックしていたり、ポップな感じの曲もたくさんあります。

はっきり言って、そのへんの凡庸なバンドやボーカリストよりも
何倍もクールです。

ゴスペル・ミュージックの世界がこんなにすばらしいものだったとは・・・

もっと早く知っておくべきだったと後悔しているほどです。


おそらく多くの方にとっては、

「知られざるゴスペルの世界」

といったところだと思いますが、
機会があればちょっと試してみたらどうでしょうか。

たとえば、上記ゴスペルグループでは、
ゴスペルをやったことのない方を対象に、
7月に体験ワークショップの開催を予定しています。
募集人員は200人。すでに半分程度集まっているようですが、
ほとんどが女性なので、男性の参加者も大募集中だそうです。
(ワークショップは、東京と広島で開催されます)

興味のある方は、下記ホームページをのぞいてみてください。

> Anointed & Brighten Mass Choir

> 東京ワークショップ

> 広島ワークショップ

投稿者 松尾 順 : 22:50 | コメント (0) | トラックバック

3年我慢

化粧品の口コミサイト、「アットコスメ」


今でこそ、ネットビジネスの成功事例として、
また、Web2.0のトップランナーとして超有名ですが、
創業当時はやはり相当苦労されたようです。


人気メルマガの「プレジデントビジョン」に、
今、アットコスメの運営会社、(株)アイスタイルの
代表取締役兼CEO、吉松徹郎氏が登場されています。

吉松氏によれば、サービス開始当初(2000年ごろ)、
口コミを活用したマーケティングはほとんど理解されませんでした。


化粧品メーカーからは、悪口を書かれたらいやだと言われ、
広告会社からは、悪口が載っているようなサイトに広告を
出すなんてとんでもないと、広告出稿を取り下げられ・・・
と散々。

また、当時は資本金300万円の有限会社でしたし、
ネットバブルが弾けた後で、IT会社は信用できない。

与信も通らないから、取引できない。

ということも言われたそうです。


こんな状態が2年ほども続き、ようやく風向きが変わってきたのは
創業3年目、2002年くらいから・・・


やはり、新しいビジネスが認知され、事業の可能性が
見えてくるまで最低3年くらいは必要なんですね。


それまでは、自分を信じて信念を貫き、
様々な批判、中傷にじっと耐える強さが、
起業家には要求されるんだと改めて思いました。

投稿者 松尾 順 : 00:37 | コメント (0) | トラックバック

ナポリピッツァが食べたい:パルテノペ

昨日のお昼は、ランチョン・ミーティング。

ランチの場所は、女性に人気のナポリピッツァの店、

パルテノペ(恵比寿店)

にしてみました。


パルテノペは、広尾が1号店です。恵比寿は2号店。

広尾、恵比寿以外には、品川、横浜にもありますが、
実は、同店は、日清製粉(株)が始めたレストランです。


「日清製粉って、カップヌードルの会社?」

じゃないですよ。それは日清食品。
(実際、よく間違えられるそうですが・・・)


日清製粉は、小麦粉メーカーですね。
販売先は、パン屋さんなど消費財メーカーがメイン。

すなわち、同社は、消費財メーカー向けに、
「小麦粉」という原材料を製造・販売する生産財
メーカーであり、典型的なB2Bビジネスを展開
している地味で堅実な会社です。


さて、生産財メーカーの同社が、
なぜナポリピッツァのレストランを始めたのか。

もちろん、それは、小麦粉需要を拡大するため。
小麦粉の実際の用途のひとつである
ナポリピッツァの市場を自ら創造することが狙いでした。


パルテノペ広尾店がオープンしたのは2000年です。

当時の日本のピッツァ市場は1964億円で、
1996年の2100億円をピークに微減傾向となっていました。

つまり、頭打ち状態になっていたんですね。

また、ナポリピッツァの店は
まだほとんど存在していませんでした。


しかし、その後のナポリピッツァブームにより、
2006年の市場規模は2400億円と、再び急拡大しています。

ナポリピッツァの店もずいぶん増えました。


こうして、ナポリピッツァブームを仕掛けることに、
狙い通り見事成功したのが

「パルテノペ」

でした。


日清製粉としては、まず広尾、恵比寿といった、
外国人が多く住む洗練されたイメージのある街への出店を
行うことで、ナポリピッツァの

「ブランド化」

を図ることにしたそうです。


両店では、ピッツァ窯をイタリアから直輸入、
薪で焼く本格的な石窯を導入しました。

また、ピッツァ生地も、粉から練り上げる「スクラッチ」
という製法を採用し、本場の味を実現したおかげで、
たちまち外国人や食通の人気を集め、メディアからの取材も
殺到するようになりました。

ぴあランキンググルメ(2002)では、
パスタ・ピッツァ部門、イタリア部門の両部門でランキング
1位を獲得しています。


こうして、ナポリピッツァへの注目が高まる中、
最近急速に成長している

「ピッツァ・サルバトーレクオモ」

なども続いて、市場が急拡大してきたわけです。


なお、日清製粉では、昨年(2006年)、
イタリア・ナポリで、ナポリピッツァの伝統的製法を守っている
「真のナポリピッツァ協会」の日本支部の立ち上げを主導。

「ナポリピッツァ」のブランドを維持・向上させるための
ネットワーク化を進めています。


ところで、ナポリピゥツァの魅力は、

「表面はカリッと香ばしく、中はふんわりモチモチの食感」

ですね。まさに日本人好みの味だと思います。


試したことのない方はぜひ!
(別にパルテノペの回し者じゃありませんよ)

投稿者 松尾 順 : 07:06 | コメント (4) | トラックバック

良い企画を立てるコツ

私は、企画屋のはしくれでもあります。

もっと良い企画を立てたいと願い、
若いころから、企画立案のノウハウ本を読み、
各種セミナーに受講したりして必死で学んできました。

また、「発想法」についての勉強をしてきたのも、
同様の理由からです。


そして、最近になってようやく、

「良い企画を立てるために一番大切なことが何なのか」

がわかりました。


気付くの遅すぎですね・・・

しかも、わかったからといって、
良い企画が立てられるようになる、というわけじゃないし(^_^;


さて、気を取り直して良い企画を立てるコツですが、それは、

「普段から、企画のネタ、パーツをストックしておく」

ということです。


たとえば、工業・空間デザイナー、吉岡徳仁氏は、
普段から、デザインに使えそうな新しい素材をいろいろと
集めています。

そうした事前の準備があるからこそ、
斬新なアイディアも生まれますし、最適な素材を使った
すばらしいデザインができるわけです。


ただ、意外なことに、企画・発想関連の本で、

「普段から、企画のネタ、パーツをストックしておく」

ことの重要性をちゃんと書いてある本は
ほとんどありません。
(だから、私もなかなか気付かなかったかな)


おおむね、上司やクライアントから、
企画立案の依頼を受けてから企画書に落とし込むまでの

「企画業務の手順」

を説明してあるだけです。


しかし、企画業務手順は、あくまで「企画プロセス」
(企画の製造工程)にすぎません。

肝心のインプット(企画ネタ、パーツ)を入れなければ、
良いアウトプット(企画書)が出てくるはずもありません。


 インプット  →   プロセス   → アウトプット
 (企画ネタ)   (企画製造工程)   (企画書)

企画依頼を受けてから、あわてて原材料、
すなわち、企画ネタ、パーツを集めるのは大変です。

手遅れとは言わないまでも、
良い企画に仕上がる可能性は低くなってしまうでしょう。
納期が短いですからね。


ただ、実際の企画業務が発生していない段階で、
いろんな企画ネタ、パーツをしこしこ集めてストック
しておくのは、「アウトプットを生み出すこと」を
目標としてしまうと、なかなか続かないものです。

「このネタ面白れぇ」「このネタ使えそうだ」

と純粋にネタを集めることを楽しむ、

「企画ネタ・コレクター」

となることが、必要じゃないかと思います。


なお、NECが運営するビジネス情報サイト

「Wisdom」

で最近連載されている記事、『プレゼン勝利体質』講座
(執筆者:藤木俊明氏)の第5回、

『プレゼンに強くなる実践的「冴えた企画」立て方指南』

では、企画立案のプロセスの1番目に

「インプットのストックを溜める」

が置かれています。


これは、具体的な行動としては次のようなものです。

「日常気付いたこと、思いついたこと、面白そうな話は
 すべて記録してストック。」


そして、「心がけること」として、

・人的ネットワーク
・常に取材者の視点、好奇心
・ストックについては選別しない

を藤木氏は挙げています。


関心のある方、詳細は、Wisdomのビジネス・スキルのコーナー
をご覧くださいね。


ところで、よく考えてみると、
こうして毎日メルマガ&ブログを書くことは、
まさに「企画ネタをストックする作業」ですね。

投稿者 松尾 順 : 08:37 | コメント (4) | トラックバック

フォロワー狙いのペネトレーション戦略:DoCoMo2.0

ここ数年、多数の人気タレントを同時起用した
ブランドコミュニケーションが目立ちますね。


その中でも、
最も成功したのは、資生堂の「TSUBAKI」でしょう。

初年度の予算は50億円だったといわれていますが、
とてもその予算内に収まっているとは思えない露出量でした。


さて、多数タレント同時起用の狙いは、
大きくは2つ挙げられます。ひとつは、

「インパクト効果を高めるため」

です。

1人よりは2人、2人よりは3人、と華のあるタレントが
多く登場すればするほど、消費者の関心(アテンション)を
より多く引くことができますから。


そして、もうひとつの狙いは、

「ターゲットを広げるため(絞込みすぎない)」

ためです。


資生堂の「TSUBAKI」の場合、ブランドを統廃合して、
特定少数のブランドにマーケティング資源を集中する

「メガブランド戦略」

の一環として立ち上げた新ブランドですが、
メガブランドは、マーケットリーダーとなることが必須。

つまり、市場シェアの最大化を目指さなければなりません。

ということは、細分化されたターゲットを狙った従来の
ブランドと異なり、いわゆる「大衆」(マス)を狙って
いかなければなりません。


ただ、現代の大衆は、
価値観やライフスタイルが多様化しています。
(そもそも、もはや「大衆」とは呼べない)

したがって、一人のタレントだけでは、
大衆の一部の心しかつかめないわけです。

そこで、多数のタレントを同時起用して、
できるだけ広範囲の大衆をカバーしようとしている。


このあたりは、以前次の記事でも書かせてもらった
ことでした。

資生堂のメガブランド戦略:
◎ブランドではなく、意味を多様化せよ

そして、今、「DoCoMo2.0」でも、
8人もの人気タレントを起用した大々的な
ブランド・コミュニケーションが展開されていますね。

現在54%のシェアを持つマーケットリーダーのDoCoMoの
至上命題は、シェアの死守・拡大。

チャレンジャーのau、ソフトバンクモバイルほど、
尖がりすぎるわけにはいかないのです。

目立つことはやりたいけれど、
マスにそっぽを向かれるわけにはいかないということが、
多数タレント同時起用につながったんじゃないかと思います。


また、DoCoMo2.0のようなアプローチが行われる背景には、
携帯電話はもはや成熟商品であり、これ以上、
機能・性能的おいて劇的な差別化はなしえず、
またベネフィット(便益)における優位性の確立も難しいこと
があります。


シンプルマーケティングの森行生さんの

「プロダクトコーン理論」

によれば、商品の次の3つの切り口

・規格(機能・性能)
・ベネフィット(規格がもたらす便益、価値)
・エッセンス(端的にはブランドイメージ)

において、基本的な訴求の順番は、

規格→ベネフィット→エッセンス

と進んでいくべきとされています。


携帯電話においても、これまでまず規格、次にベネフィットが
アピールされてきたわけです。

しかし、ソフトバンクモバイルのカラーバリエーションが
売れたように、もはや、規格やベネフィットではなく、
デザインやブランドイメージのような、

「エッセンス」

を強くアピールすべき段階に、
携帯電話市場は来ているということです。


このひとつの回答が、「DoCoMo2.0」だと言えるのでしょう。


識者の間では、
「DoCoMo2.0」といいながら規格面での違いは生み出せていないから、
消費者の期待をそぐことになるのでは・・・

といった批判をする人もいます。

しかし、上記の考え方に照らせば、
この批判は的外れのように思います。


DoCoMo2.0は、その圧倒的な資金力で物量作戦を行うことで、

「業界標準は、DoComoだよね」
「DoCoMoなら間違いない」

と、理屈抜きで思い込ませようとしているということです。

もちろん、製品自体も高い品質を維持することは必須ですが、
他社との違いをことさら打ち出すことは、もはやあまり重要
ではありません。


そして、こうした理屈抜き、
「エッセンス」訴求主体のコミュニケーションに
ノックアウトされてしまうのは、フォロワーな人たち。

すなわち、最も人口比の多い、
いわゆる一般大衆であることは言うまでもありません。


DoCoMo2.0は、フォロワー狙いのペネトレーション戦略。
お金持ちの業界トップだけが実施できる戦略です。


なお、大前研一氏は、

“Docomo2.0は、大きな過失
 絶対にやってはならないマーケティング戦略だ”

と厳しく断定しています。
(大前研一『ニュースの視点』2007/05/18)


その理由は、

“『そろそろ反撃してもいいですか?』というキャッチコピー
 を見て分かるように、この戦略は、完全に同業他社に反発し、
 それを打ち負かすことだけを考えたものだから”

だそうです。

“こういった考え方を、経営学では「コンピティティブ・
 リタリエーション(競合反発)」と呼び、経営者が選んでは
 いけない戦略の一つになっている”

とのこと。

“なぜなら、この考え方は、業界収益をなくし、
 自分も相手も血だらけになるだけという結果をもたらすから”

というのも、

“「反撃しても、いいですか?」などという挑戦的な
キャッチコピーを見れば、消費者は「値下げするのかな?」
 と思います。

結果、消費者の買い控えを引き起こす可能性があります。

つまり、大々的な広告は打ったが、買う人はいなかったという
最悪の結果につながる危険性が高いと私は思います。”


ということなのだそうです。


はて、そうでしょうか?

一消費者の実感としては、「DoCoMo2.0」から受け取る
メッセージは「値下げ期待」ではありませんし、
買い控えをしてしまうことにはならないように感じるのですが。


あなたはどう思いますか、DoCoMo2.0は成功するでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 14:16 | コメント (6) | トラックバック

なぜ人はツイッターにはまるのか?

最近、ブログ・SNSのお手軽版と呼んだらいいのか、
短いメッセージを気楽に何度でも投稿できる新サービスが
ユーザー数を伸ばしていますね。


代表的なサービスは、米国生まれの「Twitter」
(ツイッター、ついったー)です。


私は、日本生まれの類似サービス「もごもご」


を試していますが、まだその面白さがよくわかりません・・・


上記のようなサービスは、日本では

「リアルタイム日記」

とも呼ばれていて、携帯電話からの投稿も可能なので、
10代ユーザーの伸びが特に大きいようです。


さて、このサービス、やってみた人の半分くらいは

「はまる」

と言われているそうですが。


すでに「はまっている」らしい、
SNSライターの高橋暁子さんによれば、

“ついったーは、きちんとやってみないと
 面白さが分からないサービス”

なんだそうです。


そして、

“「一言言いたい!でもわざわざメールしたり
  日記書くほどじゃない!」という気持ちに従って書くと、
 ついったーはかなり楽しめるんですよね。

 基本独り言だから気軽な上に、思わぬところから
 反応がいただけたりします。”

とのこと。

なるほど、そういうことなんですね。

*以上は、高橋さんのブログから引用させていただきました。
「twitter(ついったー)の面白さを知る方法」


しかし、それにしても、「独り言」なら、
公開しなくてもいいじゃん!

なんて思ったりします。

まあ、以前から、掲示板にしろ、ミクシィーの日記にしろ、
「独り言」的メッセージがかなり多かったわけですけど。


ですから、私としては、

「なぜ人はツイッターにはまるのか?」

ということが気になるわけです。

そして、この疑問を解く上でヒントになる情報が
いくつかありますのでご紹介してみたいと思います。


ひとつは、イッセー尾形の演出をやってる森田雄三氏の話。

家族のコミュニケーションについて、森田氏は、

“夫婦はそもそも話をしない”

という事実を指摘しています。確かにそうです。(笑)

“子供が小さいころは育児の話題が口の端にのぼるが、
 育ってしまうと、連れ添った二人には格別の話題は
 ない。雑事も「あ・うん」の呼吸でわかり合ってしまう”


つまり、近い存在になればなるほど、相手を理解するための
言語コミュニケーションの重要性は軽くなっていくということ
でしょう。

そしてまた、

“相手が真剣に聞かないから、遠慮のない話ができるのが身内だ。
 「話を聞かない態度」と「聞いてくれない話のできるありがたさ」
 のふたつに支えられて、身内の親密さは成立する”

という面白い視点を提供しています。

この意味は、愚痴をこぼす妻が、
単に聞き流せばいいのにまともに受け答えてしまう夫に
対して、逆ギレするシーンを思い浮かべていただければ、
おわかりになるでしょうか。


端的にいえば、人は、

「単に聞き流して欲しいこと」

をしばしば言いたいのであり、

それを聞いてくれる相手として、
真剣な、意味のある対話に持ち込むのではなく、

「あいづちを打つけれど、実は真剣には聞いていない」

相手を必要としているということです。


この状況を仕組みとして備えているのが、
まさに「ツイッター」と言えるんじゃないですかね。

こうしたサービスでは、投稿できるメッセージの長さが
極端に短く制限されていますから、真剣な意味のある対話
には決してならない。

せいぜい、適当な合いの手を入れるだけしかできないからこそ、
必ずしも身内ではないし、近い存在でもないかもしれないけれど、

「聞き流して欲しい人」と「聞き流してあげる人」

をうまく結び付けているということでしょうか。


一方、ITの普及による若者の言語能力の低下という点も
背景にあるかもしれません。

キッシンジャー博士が、
最近次のようなことを言っていたそうです。

“私の孫は、私よりインターネットを駆使して世界中の情報を
 集めて整理するのが上手だ。しかし、自分の考えを書かせると
 二行しか書けない”


今は、ネットを使って実に簡単に情報が手に入りますよね。

ほぼあらゆることに対する答え(らしきもの)が、
ネットで探せば見つかります。

したがって、自分自身で考えることをしなくても済みます。
その答えらしき情報を参照すればいいわけですから。

そしてまた、自分の言葉で語り合う機会が減っているのかも
知れません。


きっちりと自分の考えを伝えるために構成された長い文章は、
仕組み的に書けない「ツイッター」は、現代の若者にとって
実に使い勝手のよいコミュニケーションツールであることは
確かでしょう。


森田雄三氏の話は、下記新書から。

「間の取れる人、間抜けな人」
(森田雄三著、祥伝社新書)

投稿者 松尾 順 : 11:06 | コメント (1) | トラックバック

ナチュラルローソンの探索型マーケティング

コンビニ業界は、もはや成長産業ではありません。

有望立地には、競合店舗がひしめき、
一部の商品では価格競争さえ始まっています。


要するに、コンビニ店は量的には飽和状態。
今後も、売上を維持・拡大するためには

「質的な転換」

を図る時期が来ていると言えますよね。


とはいえ、

徒歩5分以内商圏、24時間営業、100平方メートル程度の店舗面積、
3000-4000アイテムの多品種少量の品揃えと、
チケット販売、公共料金支払い、ATMなど多様なサービスを提供

といった、これまでの成功モデル(型)を
打ち破るのは簡単ではありません。

最大手のセブン-イレブンでさえ、
まだ、コンビニの新たなスタイルを打ち出せずにいます。


しかし、若きリーダー、新浪剛史氏率いるローソンでは、

「ナチュラルローソン」

という2001年に立ち上げた新業態で、
脱コンビニの新たなスタイルを生み出すための、
さまざまな試行錯誤を重ねる

「探索型マーケティング」

を行い、一定の成果を上げているようです。
(PRESIDENT 2007.7.2)


ナチュラルローソンのメインターゲットは、
20-30代の働く女性です。

従来のコンビニが、20-30代の男性をメインターゲット
としていましたから、対極にある人たちをターゲットに
置いているわけです。


店内には「おでん」は置いてありません。
代わりに、焼きたてのパンの香り。

また、いかにも女性が好みそうな可愛い輸入雑貨や文具が
工夫を凝らした展示で置いてあります。

ヌードが踊るアダルト雑誌は昨年末に撤去。
一人で軽食がとれるイートインスペースあり。


そそくさと必要なものを買うために、
ついでに立ち寄る存在だった従来型コンビニとは異なる、
高品質な空間づくりにある程度成功していると思います。


日販は約60万円。従来のローソン(青ローソン)より
2割ほど高いそうです。

なお、平均的なコンビニの日販は40万円台です。
そして、約60万円というのは、酒・たばこを販売
している店舗がようやく達成できる水準です。

ナチュラルローソンの場合、
かなり客単価が高いんでしょうね。


さて、立ち上げからこれまでの経緯を追うと、
同業態の基本コンセプトである

「美と健康」

を売る店としての輪郭が鮮明になるためには3年を要し、
さらに業態としての完成度が増してきたのは、
この2年ほどとのこと。

つまり、およそ5年に渡る試行錯誤の中から、
新たなコンビニのモデル(型)を彫りこんきたわけです。


もちろん、さまざまな失敗も。

たとえば、軍手やクラフトテープは、
ナチュラルローソンらしくないといったんカットしたものの、
女性客の要望で復活。

一方で、イメージに合うキッチン雑貨は売れないそうです。
(ターゲットの働く女性は、忙しくてキッチンに
あまり入らないんじゃないかと思いますが。あるいは、
両親と同居しているので料理は母親任せかも・・・)

また、伊藤園の「おーい、お茶」を撤去して、
保存料の入らないオリジナルの緑茶を入れたところ、
客からクレームがつき、元に戻さなければならない
ということもありました。


こうしたことは、実際やってみないことには
見えてこないことばかりですよね。


基本コンセプトを核に、
現場でのテストマーケティングを繰り返すなかで、
顧客ニーズを探索し、「ナチュラルローソン」
らしさをすこしずつ打ち出していく。

顧客の振る舞いを予測するのがますます難しい昨今、
ナチュラルローソンの「探索型マーケティング」のアプローチが
成功の近道なのかもしれません!

投稿者 松尾 順 : 20:27 | コメント (0) | トラックバック

ミクシィユーザー、40歳以上は7.2%

先日、ミクシィの登録ユーザー数が1,000万人を
突破しましたよね。

登録者数の急激な伸長は言うまでもないんですが、
ユーザー属性をじっくり見ると、なかなか面白い発見があります。


性別では、

男性47.9%、女性52.1%(PC)

と、ほぼ半数なんですね。
モバイルだと、女性比率が56.6%とさらに増えます。


年齢別だと、ユーザー数が一番多いのは

20-24歳(33.8%)

次いで

25-29歳(24.7%)、30-34%(16.4%)

と続きます。


私が意外に感じたのが、40歳以上のユーザー構成比です。

40-44歳(3.7%)、45-49歳(1.9%)、50歳以上(1.6%)

と40歳未満と比較して極端に少ない。


40歳以上合計でも、7.2%と全体の1割にもなりません。


私は現在40歳前半ですが、ミクシィでは少数派なんだなと
あらためて実感しました。

自分がユーザーだと、もっと同年代のユーザーが多いように
勘違いしてしまいやすいものですよね。

投稿者 松尾 順 : 09:03 | コメント (0) | トラックバック

売れているのか売れていないのかよくわからないカップヌードル詰め替え

4月に、

「カップヌードル詰め替えセット」

の話を書きました。

「マイヌードルカップの深慮遠謀」

実は、最近、あまり食べてなかったんです。

でも、久しぶりに詰め替え用(リフィル)を買おうと、
詰め替えセットを購入したコンビニに行ったところ、
セットもリフィルも、影も形もありません。


やはり、それほど売れなかったので、
さっさと撤去されてしまったんでしょう。


さて、困りました。

このコンビニ以外で、詰め替え用を売ってるところを
まだ見たことがありません!

繰り返し使える、立派なプラスチック製容器、

「マイヌードルカップ」

をいったいどうしてくれるんですか>日清食品さん?


当初から懸念してましたが、
POSデータに基づいて、売れ筋以外の商品を
あっさり冷酷に切り捨てる流通サイドの壁を克服するのは、
さすがの日清食品さんでも難しいようです。

実は、この文を書いた日にちょうど、日経産業新聞で
カップヌードル詰め替えバージョンの開発担当者の
取材記事が掲載されていました。

記事を読むとそれなりに売れているようなことを担当者は
言ってましたが、じゃあどこで売ってるんだあ・・・・

投稿者 松尾 順 : 10:33 | コメント (0) | トラックバック

良さそうに見えなきゃ売れないョー

以前も何度か書きましたが、
売れる商品の「基本原則」はつぎの2つです。


・見た目が良さそうに見えること(端的には「デザイン」)
・中味も実際良いこと(端的には「機能・性能・品質」)

つまり、外見と中味が一致していることが大事。


見た目はいいのに、中味がひどい商品、
これはほとんどサギ。顧客は2度と買ってくれないでしょう。


逆に、中味はすばらしいのに、外見がしょぼい。

これだと、潜在顧客はそもそも手にも取らない・・・
素通りされてしまう商品になります。


昨日書いた小林製薬の場合、
同社商品が持つ優れた機能・性能・品質という「中味」を
インパクト重視のネーミングとパッケージデザインで
的確に「見せる」ことで成功を収めています。

つまり、外見と中味のバランスの重要性を十分に理解している
会社と言えるわけですね。


しかし、上記の2つの基本原則を認識していない会社の方が
よほど多いように思います。


たとえば、青森の大手豆腐メーカー、太子食品工業。

同社は最近、新しい豆腐の開発に成功しました。
(「ガイアの夜明け」から)


この豆腐は、中国原産の緑大豆を使用。

爽やかな印象を与える淡い緑色をしていて、
白い豆腐に見慣れた私たちにはとても新鮮に写ります。

また、緑黄色野菜に含まれるベータカロテンが
含まれているため、野菜のような豆腐だと言えます。


革新の少ない豆腐商品において、この「緑豆腐」は
とても魅力的です。

ヒットする可能性大の有望商品だと思います。


しかし、肝心の「見た目」に失敗してるんですね。


まず、パッケージを半透明にしたため、
この豆腐の最大の魅力である「緑色」が見えなくなっています。

この問題は、製品を見たスーパーのバイヤーから指摘されて
いましたが、同社の関係者は、なぜもっと早く気づかなかった
のでしょうか?


また、パッケージのデザインには、
江戸時代の火消しを描いた浮世絵を採用。

ネーミングは、「伊達くらべ」としています。


うーん、よくわかりません。

なぜ、浮世絵?、なぜ「伊達くらべ」?


中味と外見がまったく整合していないですね。

結果的に、付加価値をつけて価格競争を回避しようとした
新商品であったにもかかわらず、

「味はいいけど、パッケージがこれじゃあね。
 特売しないと売れないよ」

と、スーパーのバイヤーからは一刀両断。


大変残念なことです。


さて、こうやって後からいろいろケチをつけるのは
ずいぶん身勝手だとは思いつつも、あえて太子食品さんに
アドバイスさせていただきます。


開発途中で、バイヤーやエンドユーザーの意見を聞き、
反応を確認しながら進めたらどうでしょうか。
(たぶん、今回はやってませんよね)

いわゆる、「マーケティング・リサーチ」を
やりましょうということですが、必ずしも、
大金を投じる必要はありません。


営業の方が試作品をバイヤーのところに持参したり、
開発担当の方が、自宅に持ち帰って、
自分の奥さん、だんなさんに食べてもらう。

それだけでも、商品改良に役立つ貴重な意見が得られたはずです。


なお、ネーミングやパッケージの改善についても、
私なりにちょっと考えてみました。


「森の精霊豆腐」

なんていかがでしょう。


パッケージデザインには、スタジオジブリと交渉して、
もののけ姫に登場した森の精霊「コダマ」を採用します。

森=緑という連想に加えて、緑豆腐が持つ上品さ、清らかさを
「コダマ」なら伝えてくれるように思います。

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (0) | トラックバック

インパクトか上品か

最近、私がトライアルしている小林製薬の「ナイシトール」。

内臓脂肪、とくにおなか周りに効く薬ということですが、
まだ1週間目なので実感ないですね。

まあ、当然ですが・・・


さて、「ナイシトール」は、爆発的な売れ行きを示していますが、
その正体は別に新薬でもなんでもありません。

昔からある漢方薬、

「防風痛聖散」

です。


しかし、「小林式ネーミング」と呼ばれる、
その機能や効能が一瞬にしてわかる商品名にしたおかげで
この大ヒット。


「ナイシトール」の例を出すまでもないかと思いますが、
小林製薬のマーケティングの真髄は

「わかりやすさ」

なんですよね。


そしてこの「わかりやすさ」を具現化するのが、
大阪発らしいベタな、こてこてのネーミング。

最近の新製品の名称もこの点は一貫してますね。

・あら熱とーる(弁当のあら熱を取る冷却ジェル)
・コリホグス(肩こりなどに、飲んだその場ですばやく効く)
・ムズメン(股間・内股のかゆみ、かぶれなどに)


先日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)には、
小林製薬代表取締役社長、小林豊氏が登場されてましたが、
こうしたストレートなネーミングは、

「インパクト」

を重視しているとおっしゃってました。


ネーミング、またパッケージデザインも同じことが
言えますが、「インパクト」の反対の極には、
「上品さ」、あるいは「洗練さ」があります。


小林製薬の場合、一般の小売店で売られる消費財ですから、
まずは、消費者に商品名を覚えてもらえること、
店頭で手に取ってもらえることが重要。


気取った名前を付けたり、きれいなパッケージにするより、
インパクト優先、ストレートなネーミングとパッケージで
勝負!ということなんですね。


なお、小林社長が注意を促していましたが、

インパクトか上品か

どちらを重視するにせよ、
どっちつかずの中途半端はよくありません。

コミュニケーションの基本方針(たとえば「わかりやすさ」)
をきちっと決めて、とことんやりぬくことが大切でしょう。


ついでながら、最近、「カロリーゼロ」のコーラが、
コカコーラ、ペプシコーラの両社から出揃いました。

・コカ・コーラ ゼロ(ZERO)
・ペプシ  ネックス(NEX)


「わかりやすさ」ではコカコーラに軍配が上がりますね。
さて、どちらが勝つでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 10:56 | コメント (8) | トラックバック

ICタグを使ったスマートシェルフ

今日はちょっとIT寄りのネタです。


大手百貨店の高島屋は、06年11月から、

「スマートシェルフ」

の実験を紳士用シャツ売り場で行っていたそうです。
(日経コンピュータ、2007/05/28)


「スマートシェルフ」とは、
ICタグ用のアンテナを各棚に取り付けた商品棚のことです。

商品に取り付けたICタグを定期的に読み取ることで、
リアルタイムで在庫量を把握することができます。


高島屋では、このスマートシェルフを
店頭とバックヤード(倉庫)に設置。

そして、実験の対象とした高島屋のプライベート・ブランドの
シャツにICタグを取り付けることで、
多様なサイズごとの在庫をバックヤードまで確認しにいかなくても、
店頭端末で即座に照会できるようにしました。


さて、先日発表された実験結果によれば、
販売成約率が4割弱から7割に向上したそうです。

ちょっと、「ホントかいな・・・」と感じるほどの
驚異的な成果ですね。


成約率が3割向上した理由については、

「在庫確認で顧客を待たせることなく、
 多種の商品を販売員が薦めることができたから」

と分析されています。

ホンソメワケベラじゃありませんが、
やはり「客を待たせない」ことって大事ですね。


「ビジネス成功の基本原則」


また、接客時間は、6.4分から9.2分へと伸びました。

在庫確認など、接客以外の時間が短縮された分、
顧客対応により長い時間をかけられるようになったという
ことのようです。


この話で、私が特に面白いと思った点は、

同社IT推進室の担当の方が、
当初、ICタグ+スマートシェルフの導入によって
接客時間は短縮できる

と想像していたことです。


技術系の方にありがちな発想なんですが、
IT投資の目的として、

「効率化」

にばかり目がいってしまいがちな人が多いです。

このご担当も、IT化によって、
接客業務を効率化できると思い込んでいたんでしょう。


でも、自分が顧客の立場で考えたらわかると思うのですが、
百貨店で効率的な接客は望んでいません。

自分のためにどれだけ親身に、
時間を使って対応してくれるかが重要ですよね。


だから、本来スマートシェルフの導入についても、
接客以外の無駄な業務を減らすことで
接客により多くの時間を割けるようにするという

「接客効果」

の向上を本来期待しておくべきだったんじゃないかな
と思います。


まあ、これまで長いこと、
業務効率化を第一義としてIT投資は実行されてきましたので
しょうがないことではあります。


しかし、これからは、サービス向上、サービス強化のために
いかにITを活用するかに焦点を当てることが企業生き残りの
鍵でしょう。

投稿者 松尾 順 : 14:52 | コメント (0) | トラックバック

成長するタクシー広告

タクシー業界は、運転手さんのサービス・マナーの悪さや
低賃金の問題がよく取り上げられますよね。


一方で、ほとんど注目されてこなかったのが

「タクシー広告」

です。


しかし、ここ数年は、「小冊子広告」が急激に伸びています。
(日経産業新聞、2007/06/01)

タクシーの背もたれの設置された専用ラックに、
置かれたハガキ大の小冊子、お気づきですよね。

広告内容は、ダイエット食品やエステなどさまざまです。


従来は、20センチメートル大のパンフレットが主流でした。

近年、小冊子スタイルが増えているのは、
そのまま持ち帰ってもらうことが狙いです。


このタクシー内での「小冊子広告」の先鞭をつけたのは、
おそらく、新卒採用コンサルティングで急成長した

「ワイキューブ」

だと思われます。


社長は、安田佳生氏。
安田氏は、何冊もベストセラーを書いています。

最近では、

『千円札は拾うな』


というユニークなタイトルの本が売れました。


ワイキューブは、マーケティング巧者です。

社長さんが積極的に本を書き、マスコミに登場することで
知名度を上げる一方、ダイレクトマーケティングなど
地道なところにもしっかりお金をかけています。


さて、同社の主力事業、新卒採用コンサルティングの
ターゲットは企業の採用担当者ですが、中小企業では
経営者自身がかなり採用に関与します。

そこで、目をつけたのがタクシー広告でした。


タクシーの主要客層は、
30-50歳代の購買力を持つビジネスパーソンです。

そして、東京を走るタクシーには、
上京した地方の中小企業社長が乗車することも多いだろうと
仮説を立てたわけです。


同社がタクシー広告を始めたのは、3年ほど前だったと
記憶していますが、いまだに継続しているということは、
相応の効果があるということなんでしょうね。


実は、タクシー広告は意外に安い媒体です。

小冊子を専用ラックに置いてもらう場合で、
都内を走るタクシー500台以上に掲出して
1ヶ月、1台当たり950円。


たとえば、1,000台に1ヶ月掲出したとすると、
総費用95万円です。

そして、タクシーの一日当たりの輸送人員は
46人だそうですから、1,000台、1ヶ月掲出では、

延べ138万人

の潜在顧客にリーチできる計算になります。

この場合、
ターゲット一人当たりへの到達コストは約1.5円と、
TVコマーシャルのそれにかなり近い水準ですね。

投稿者 松尾 順 : 08:35 | コメント (0) | トラックバック

ビジネス成功の基本原則?

・客を待たせない
・質のいい仕事をする
・不正を働かない


ビジネス成功の基本原則?

確かにそうですね。
しかし、今回は人様の話じゃありません。


小型の海水魚、ホンソメワケベラ(以下、ベラくん)は、
自分より大きな魚の体表面につく「外部寄生虫」を
餌としています。


ベラくんたちは、サンゴ礁のあちこちに専用の

「掃除処」

を構えています。


「さあ、いらっしゃい。掃除屋でございます。
 寄生虫でお悩みの大きな魚さんたち、
 私の掃除処に来てくれれば、きれいに食べてあげますよ。」

ということで、寄生虫を取り除いてもらえる大きな魚も、
お腹を満たせるベラくんも、共にハッピーな取引です。


さて、魚の世界にもやはり競争原理が働いています。

質のいい仕事をする腕利きのベラの前には、
掃除してほしい魚たちが順番待ちの列をなします。


でも、あまり待たされるとさすがに我慢できずに、
別の掃除処に行ってしまうそうです。

ベラくん側としては、質を落とさずスピーディな仕事が
求められるということでしょう。


一方、ベラくんの中にも性質の悪いやからがいます。
寄生虫を食べるふりをして、客の体表面の健康な粘液を
食べてしまう。不正行為ですね。

すると、客は驚いて泳ぎ去る。


こんな「掃除処」は閑古鳥が鳴き、
不正を働いたばかりに、ベラくんはすきっ腹を
抱えることになるわけです。


ところで、客にも2種類のタイプがあります。

「回遊魚」と「根魚」です。


回遊魚は、広いテリトリーを泳ぎ回りますが、
根魚は、狭いテリトリーに留まるタイプ。

実は、ベラくんはこの2つの顧客セグメント別の対応を
きちんとやっています。


具体的に言うと、客が混み合っている時には、
根魚よりも回遊魚を優先して掃除するのだそうです。

その理由は、行動範囲が広い回遊魚は、
複数の掃除処から好きなところを選ぶことができますが、
根魚は動く範囲が狭いので、掃除屋を選べないからです。


ベラくんは、根魚に対しては、

「君はいつも近くにいるんだからさ、
 遠来のお客さんを優先させてもらうよ、悪いね・・・」

と、もし言葉が喋れたら言ってるところでしょう。


ともあれ、人間よりも知能でははるかに劣る魚類でさえ、

「客がサービスを選ぶポイント」

は実質的に同じであることに驚きますよね。


まあ、

「やるべきことをきちんとやり、やるべきじゃないことはやらない」

というだけなんですけど。


とはいえ、企業組織として取り組む上では、

・客を待たせない(スピーディな業務運営)
・質のよい仕事をする(個人、およびチームとしての質向上)
・不正を働かない(個人、および組織としての高い倫理性)

を徹底するのは、そうそう簡単ではないのが現実。


*ホンソメワケベラの話の出典:
 別冊日経サイエンス 社会性と知能の進化
 (日経サイエンス編集部編、日経サイエンス社)

投稿者 松尾 順 : 11:33 | コメント (0) | トラックバック

冷え冷えクールブリザード

今、私の事務所で最も高性能なのは、
今年1月に買ったばかりのノートPCです。

分析ソフトを使って、大規模データをガシガシ回すと、
かなりの熱を発しながらがんばってくれます。

これから暑くなりますし、
発熱しすぎて処理スピードが落ちるのはまずいので、
USB接続の冷却装置を購入しました。


ELECOMの

「冷え冷えクールブリザード」

というへんてこりんなネーミングの製品です。


この冷却装置は、要するにPC用小型扇風機です。

ノートPCの後部を載せる形で使用しますので、
キーボードが傾斜する形となり、打ちやすさも増します。

ファンの回る音が若干気にはなりますが、
使用感は悪くありませんね。


この製品、アマゾン、楽天などでの実売価格は3,000円前後です。

でも、ネットを探し回ってみると1,500円程度で販売している
オンラインショップを発見したので、そこで買いました。


同一製品で、2分の1の価格というのは相当な差ですよね。

購入したショップでは、特に「目玉商品」「セール品」と
いった位置づけで、意図的に安く価格設定していたのでは
なさそうでしたが。

投稿者 松尾 順 : 01:16 | コメント (0) | トラックバック

釈然としない体験

出張で某地方都市のビジネスホテルに宿泊。
なかなか快適なホテルだった。

出張から戻ってから、ネクタイを部屋に置き忘れてきたことに
気づいた。ホテルに電話したら、幸い保管してくれていた。

そこで、自分の自宅住所まで送ってくれるようお願いして
電話を切った。

数日後、宅配便でネクタイが届いた。

着払いだった。

落ち度は自分にあるとは言え、どうも釈然としない。
良いホテルではあったが、口コミで勧めることはないだろう。


以上は、先日読んだあるブログに書かれていた方の話です。

目先のコストを優先した結果、好意度を低下させ、
口コミパワーを自ら封じて、将来の利益を逃しているホテル。

どんな業界にも、こうした会社・お店が数多くありますよねぇ。


人は、想像力を働かせないと見えない未来の利得よりも、
目に見える今の利得を優先しようとするのが自然な心理です。

したがって、意識的に「長期的思考」を持たなければ
なりませんよね。


さて、ネクタイ一本の話でちょっとおおげさかもしれませんが、
経営の神様、ジャックウエルチの言葉でオチをつけます。(^_^)


“四半期の成果を求める圧力と、
 儲かる未来を築く必要性の両方に答えることが、
 優れた経営者の仕事である”

 (「ジャックウェルチのビジネス問答」PRESIDENT 2007.6.18)

投稿者 松尾 順 : 07:35 | コメント (2) | トラックバック

健全な懐疑精神を持て!

今のように変化が激しい時代では、
自分の持ってる知識があっという間に通用しなくなりますよね。

「昨日は正しかったことが、今日はもう間違い」

ということが頻繁に起きています。


また、世の中はいろんなことが複雑に絡み合っていますから、

「何が原因で、何が結果なのか」

を判断することもまた、ますます難しくなってきています。


ですから、私たちは、自分の知識や、外部から取り入れる「情報」
に対して、もっと慎重になる必要があるんじゃないでしょうか?

具体的には、

---------------------------------

「自分の知識は、既に古くなっていないだろうか?」

「自分の知識は、間違った思い込みではないだろうか?」

「この情報は、どの程度信用できる(正しい)のだろうか?」

「この情報は、短絡的なロジックに基づいていないだろうか?」

---------------------------------

といった質問を常に行い、

「使える(生きている)知識・情報とそうでないもの」

を適切に選り分けるべきでしょう。


これは、ものごとをネガティブに見るためのものではなく、
「使える情報」を拾い上げるための意識的な姿勢ですから、
「健全な懐疑精神」と私は呼んでいます。

そして、こうした姿勢は、
単なる「情報(インフォメーション)」を価値の高い情報、
すなわち、「インテリジェンス」に磨き上げるために
必須だと思います。


今、「意識的」と書きましたが、かなり意識しないと
私たちは、すぐに思い込みの短絡的な思考に
陥ってしまいがちです。


先日、池上彰氏が書かれた

『伝える力』(PHP研究所)

を読んでいて、あらためて驚いたことがあります。

それは、実に多くの人が、
勝手な思い込みや陳腐化した知識でものごとを判断し、
また「批判」しているということです。


池上氏が以前担当していた「NHK週間こどもニュース」
でのエピソードを紹介しましょう。


日銀が金利を引き上げたときのこと、

「日銀は金融機関同士が貸し借りしている
 資金の金利水準を一定にしていて、この金利を引き上げた」

という説明を池上氏がしたら、

「なぜ公定歩合と説明しないのだ」

という抗議電話が何本もかかってきました。

しかし、日銀は公定歩合で金利を決めることを
とっくにやめているのです。
(恥ずかしながら、私も知りませんでした)


私は、この抗議をした人たちに言いたい。
電話をかける前に、まず公定歩合の現状を
なぜ自分で調べないのですか?


あるいは、

「年金は、若い人が払った保険料がお年寄りに渡されます」

という説明をしたら、お年寄りたちから、

「若い者の世話にはなっとらん。我々が昔払った保険料を
 積み立てて、それを受け取っているだけだ」

という抗議電話が多数かかってきたそうです。

これも思い込みです。今は制度が変わっています。
公的年金制度は、

「(子から)親への仕送り」

の制度化と考えるのが正しいのです。


池上氏は、

「自分が受け取っている年金について、
 きちんと理解していないお年寄りが大勢いることが
 わかりました。」

と書いています。


実際、世の中には、実はわかっていないのに、
わかったつもりになっている人が多いですよね。
(自戒を込めて・・・)


逮捕状はどこが出すか知ってますか?

「警察」だと思い込んでませんか?
実は、「裁判官」が出すんです。
(私も、やはり知らなかったんですけど(^_^;)


思い込み、短絡的な思考を捨て、
謙虚に知識と情報に向き合いたいものですね。

とりわけ、批判・抗議する時には。

今回は、ずいぶん説教くさくなっちゃいました・・・(笑)


-----------------------

How much easier it is to be critical than to be correct.

     -Benjamin Disraeli
      (British prime minister and novelist,1804-81)

批判的であることは、
正しくあることよりもなんとたやすいことか

-----------------------

投稿者 松尾 順 : 08:33 | コメント (2) | トラックバック