可能性を感じさせること

作詞家、秋元康さんの先日の講演の中で、ドラマや番組出演者を
決めるオーディションの話が出ました。

そういうオーディションには、「オーディションの常連さん」と
いう人たちがいるんですね。「常連さん」という意味は、
いつも応募してくるけれど、いつも落とされてしまう人。
ちょっとかわいそうですが・・・

秋元さんによると、常連さんは、自分の魅力が十分に
わかっています。だから、例えば、脚がきれいな女性なら、
審査員の前でこれみよがしに足を組んでみせてアピールする。

でも、審査する側にとっては、彼女のセールスポイントが
最初から見えてしまっているので、かえって採用する気に
ならないそうです。ある意味、できあがってしまっているから。

むしろ、

「この子が洗練された身のこなしを身に付けたら、
 ひょっとして、大化けするかも!」

と感じてしまうような、垢抜けない田舎娘の方が、
彼女の潜在能力を引き出せる可能性に期待して、採用してしまう
ということがあるそうです。

「マイフェアレディ」のイライザを思い出しますね。


先日書いた「積分する経験」に対する、TJさんのコメントで、

「それは、まだ不十分なサービスをお客さんがクレームつけて
 育てていくようなものですか」

というのをいただきましたが、確かにそんな顧客と商品・サービス
の関わり方も、積みあがっていく利用経験としてあると思います。

PCのソフトウェアなんかは、もろそうですね。

当初はバグだらけだけど、お客さんからのクレームを
受けてバージョンアップを繰り返していく。
そうして、ソフトも洗練されていくし、お客さんも
自分が育ててきた「愛いヤツ」という気持ちが生まれます。

あまりにも完成された、つけいるすきのない製品やサービスは、
かえって面白みがないですよね。

高く評価するかもしれないけれど、愛着はわきにくい。

むしろ、多少不具合や欠点があったりする方が、
さらに良くなる可能性を感じさせてくれる分、より深く
関わってみようという気持ちになれるように思います。

これに近い話だと思うのが、販促クリエーターの原崎裕三さん
の考え方です。

原崎さんは、「円」と「球体」のどちらが魅力的かという問いに、
それは「球体」である。なぜなら、「奥行きがあるから」という
説明をしています。

つまり、原崎さんは、魅力とは「謎を探りたいと思う力」であり、
あなたの商品や企業、あなた自身を魅力のあるものにするためには、
謎めいた、奥行きを感じさせる必要があるとおっしゃっています。

一定以上のクオリティは当然クリアしている必要がありますが、
深い可能性を感じさせるものに、人は惹かれるんでしょう。

投稿者 松尾 順 : 2005年10月28日 12:14

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