女子トイレ個室内広告の料金は?

先日ご紹介した、
羽田空港の女性トイレ個室内広告ですが、

「広告料金」

が宣伝会議(2009.2.1号)に掲載されていました。


この広告、ドア側の左隅に据えつけられた7.5インチの
液晶ディスプレイに広告映像を配信するもの。

女性トイレ65カ所、355室に設置されています。


1配信(ロール)は2分間(120秒)。

広告枠は15秒のCMが7枠(合計105秒)、
残り1枠は空港インフォメーションが流れます。

総放映回数は、
月間で1枠当たり575万1千回になるそうです。


で、広告料金は、1枠・1日当たり

18万円

です。

1枠の広告を1ヵ月間(30日間)掲載したとすると、

540万円

となりますね。なかなかいい値段です。


となると気になるのは、
この広告の視聴者数と視聴率です。

つまり、

・個室を利用する女性は1日延べ何人いるのか(視聴者数)
・個室が利用されている時間は1日のうち何%なのか(視聴率)

のデータが知りたい。


この広告、利用者のいない深夜時間帯を除き、
2分間のCMが繰り返し延々と流されているものと思われます。
(個室に入ったら自動再生される仕組みではないでしょう)

とすると、誰も個室を利用しておらず、
CMが視聴されていない時間もそれなりにあるでしょうからね。

投稿者 松尾 順 : 20:12 | コメント (2) | トラックバック

“干物”の知識をもっと食べよう!

「干物」を自分で作ったことはありますか?

そもそも、料理さえろくできない私にはもちろん、
干物を作った経験はありません。

朝食でよく食べてますけど!
干物のアジとか、とてもおいしいですよね。


「干物」って文字通り、
天日の下に魚介類を干(さら)して乾燥させたもの。

鮮度は失われますが、
うまみが凝縮され、長く保存できるようになります。

干物の作り方を調べてみたんですが、
おいしい干物を作るポイントは、

「風通し」

だそうです!

ですから、乾燥した風が吹き込む冬場が、
干物づくりに適しているとのこと。


さて、ベストセラー、

「悩む力」(集英社新書)

の著者であり、政治学者として知られる姜尚中氏は、

“生もの”の知識と“干物”の知識

という言い方をされています。


姜氏の言う“干物”の知識とは、

「古典」

と称される書物のことです。


一方、“生もの”の知識とは、
日々起こっている目の前の出来事などについての
情報やニュースのことです。


姜氏は、

“ビジネスの世界は、言ってみれば「生もの」を扱う世界です。
 何事も鮮度が大事で、すぐに解決しなければいけない、
 ビジネスチャンスを逃してはいけないといったことが
 この世界の常識です”

とおっしゃっています。

そして、

“歴史の大転換期においては、「生もの」の知識やノウハウだけでは
 事足りません。自分たちがどこにいるのかという現状が理解できない
 からです。だからこそ、一見、無駄であるような「干物」の知識が
 求められているのです”

と古典を読むことの重要性を説いています。


とはいえ近年、
膨大な情報がネットを通じて入手できるように
なったこともあり、

「生もの」

の知識を追いかけるだけで精一杯。

なかなか、古典のような「干物」の知識まで
味わう時間が取れないのが現状でしょう。


しかし、「干物」の知識は、
時代の変化という強風に風化することなく、
むしろ味わい(エッセンス)が増したおいしい内容を
含んでいるのです。

そして、目先の情報だけを見すぎて

近視眼

になってしまった私たちに、

・全体を俯瞰してみること

そして

・ものごとの構造・仕組みや、
 世の中の変化の大きな方向性を把握する手がかり

を教えてくれるのです。


ちなみに私の場合、昨年の著作、

『営業はリサーチが9割!売上げ倍増の“情報収集”マニュアル』

および、監修者として先日出版されたばかりの

『先読みできる!情報力トレーニング』

の中では、同様のことを

「フロー情報」と「ストック情報」

という表現で説明しています。

すなわち、

・生もの=フロー情報
・干物=ストック情報

ですね。


「ストック情報」には、古典といわれる書物だけでなく、
様々な理論が載っている専門書を含めていますが、
「ストック情報」を積極的に蓄えることは、

・フロー情報の収集が加速できること
・フロー情報の解釈(読み方)がより的確になること

というメリットがあるのです。


確かに古典や専門書は、
とっつきにくいところがあります。

正直、難しい。読むのに骨が折れる。


しかし、日々流れていくフロー情報に
どっぷり浸かっているままだと、姜氏が指摘するように、
自分が今どこにいてどこに流されているのか、
という現状が見えません。

膨大な情報に流されないためには、
その流れから飛び出して、遠くから眺めてみる
必要があります。


ストック情報、というか、
“干物”の知識をもっと食べましょう!


*姜氏の発言は以下の記事から引用しました。

「教科書なき時代」に古典は唯一の羅針盤だ
(日経ビジネスオンライン Associe スキルアップ最前線)


『悩む力』(姜尚中著、集英社新書)

投稿者 松尾 順 : 11:49 | コメント (4) | トラックバック

電話帳広告の今とこれから

あー、また勝手に置いてかれちゃったよ・・・


毎年今の時期になると、
事務所のドアの前に分厚いハローページとタウンページが
黙って置かれていきます。

以前は、直接手渡してくれたように記憶してますが。


黙って置いていくようになったのは、

「使わないから電話帳持って帰ってよ・・・!」

と、受取拒否する人がいるからかもしれませんね。


実際、私も、
電話帳はここ5年くらい1度もめくってません。
インターネットで調べることに慣れちゃいましたから。


だから、

電話帳も必要な人にだけ配布してくれたらいいのに!

と思います。


もちろん、NTTさんとしては、
こうすることはなかなか難しい決断でしょう。

配布部数が減少すれば、
広告媒体としての価値が落ちてしまいますから。

タウンページNETを見ると、

・タウンページの発行部数は5,600万部(全国285版)
・ハローページは同5,500万部(全国788版)

 (どちらも2008年3月現在)

と、いちおう日本の全世帯をカバーする数が
発行されているのです。


さて、電通発表による2008年日本の広告費を見ると、
電話帳に掲載されている広告費合計は今でも

892億円

もありました。

これは、CATV、CS、BS放送などの衛星メディア関連広告費、

676億円

より多いのです。


ただし、電話帳広告費の推移を見ると、

・2006年→1154億円
・2007年→1014億円
・2008年→ 892億円

ですから、過去3年だけでみると
毎年100億円を超える減収傾向が続いています。


電話帳は、インターネットが不便な、
あるいは使いこなせない地域や年代の人々にとって、
まだまだ重要な情報源であり、電話帳広告の効果も
それなりに高いとは言われてきていますね。

ただ実際、どの程度の費用対効果(ROI)があるのか
私が探してみたところでは公開されていないようです。

そもそも、広告料金も複雑すぎるのか、
公開されておらず、お問合せベースとなっています。

ざっくり調べてみたところでは、
1枠数千円から数百万円まで広告予算に応じて
選択肢は豊富のようですね。


インターネットは今後もさらに浸透し、
電話帳を利用しない人が増えていくでしょうから、
電話帳広告の存在意義も、他のマス媒体と同様、
今後も低下していくのは間違いありません。


NTTとしてはインターネット版の電話帳である

iタウンページ

に力を入れてきていますが、
Yahoo、Googleなどの検索エンジンから情報を探す場合の
存在感が薄いですよね。

iタウンページの
検索エンジン対策が不十分な点は
早急に改善すべき点ではないでしょうか?

*電通 日本の広告費(平成21年2月23日発表)
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2009/pdf/2009013-0223.pdf

投稿者 松尾 順 : 08:45 | コメント (6) | トラックバック

ギフト家電の可能性

先日、東京ドームで開催されていた

「世界らん展日本大賞」

に行きました。


「らん」の花が大好きだから・・・

というわけじゃなくて、招待券をもらったからです。

そうでなければ、
まず私なんぞが行くことのない展示会ですね。(笑)


実際会場を歩いてみると、中高年女性比率がやたら高い!
いわゆるコンパニオンさんもほとんどいませんでした。

想定内でしたが、
やはりちょっとガッカリです・・・


そんなスケベ丸出しの発言はさておき(笑)、
様々に工夫を凝らした各種らんの展示は見事でした!

思わずデジカメを撮りまくり。
そこそこきれいな写真がたくさん撮れました。


がさつな私が見てもとても癒される美しいらんの写真。
仕事の合間とかに見たいなと感じました。

でも、プリントすること自体面倒だし、
もしプリントしたとしても整理・保管に手間がかかります。

このままでは、今までのデジカメ写真と同様、
パソコンのハードディスクの中に死蔵されてしまうのがオチ。
ちょっと残念です。

似たような経験、
あなたもされているんじゃないでしょうか?


さて、このような消費者の悩みを解決する商品である、

「デジタルフォトフレーム」

の市場がこのところ急速に拡大中です。

2007年の販売台数は約3万台でしたが、
2008年には、23万台と8倍近い成長を記録しました。

今年もこの勢いは続く見込みだそうです。
(日経デザイン、March 2009)


デジタルフォトフレーム市場を牽引しているのは、
現在約35%のシェアを持つと言われているソニー。


ソニーが現在トップシェアを獲得できたポイントは、
日経デザインによれば、

「ギフト家電」

という切り口でアプローチしたからとのこと。


デジカメ写真を自分自身で楽しむ用途よりも、

・子供(孫)の写真を入れて祖父母にプレゼント
・結婚式、披露宴で撮影した写真を入れて友人にプレゼント

といった

コミュニケーションツール

としての購入をソニーでは開発段階から
想定していたそうです。

そこで、ソニーのプロダクトプランナー、
樋口氏が、同社のデジタルフォトフレーム、

「S-Frame」

の開発に当たって力を入れたのが「梱包」でした。


“梱包は中身の保護が主目的だが、
 この製品は梱包も商品力の一部”
(樋口ブランドプランナー)

というわけで、ブランドものの靴箱を参考に開発。


買ったままの箱の状態でも、
ギフトとして贈れるほどの質感のある梱包形態を
追求したそうです。

同時に、贈る人がいったん製品を取り出して、
写真データを入れた後に詰め直すことが簡単に
できるような設計にしてあります。


ソニーのこの作戦はズバリ当たったようです。

ギフト目的で「S-Frame」を購入する人の割合は、
3-5割に達しているとのこと。


他社製品はどのような目的で買われているかの情報は
今のところありませんが、おそらく店頭で比べてみたら、

「ギフト用ならやっぱりソニーのS-Frameだな」

という判断になり、
他社を大きく引き離すことになっていると思われます。


ギフト用であれば予算の制約があったとしても、
自分用ほど値段の安さにこだわりませんし、

「ソニー」

という高いブランドイメージも活きます。


以上、ご紹介したソニーの取り組みを見て感じたのですが、
デジタルフォトフレームに限らず、手軽で低価格の家電品を

「ギフト家電」

のコンセプトで本体デザインや梱包を開発すれば、
新たな市場をもっと開拓できるのではないでしょうか?


*引用資料:特集 もてなしのデザイン
      (日経デザイン March 2009)

*S-Frame商品紹介ページ(ソニーWebサイト)

*S-Frame V700(アマゾン)

国際らん展で撮影したデジタル写真から・・・!

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投稿者 松尾 順 : 17:49 | コメント (2) | トラックバック

情報力を飛躍的に伸ばすセミナー

セミナーやりまーす。


2月20日出版予定の私の監修本、

『先読みできる!情報力トレーニング』
(TAC出版、ビジマルシリーズ)

の記念セミナーを開催します!

-------------------

○日 時:2009年3月12日(木)18:30 - 20:30
○場 所:ヴィラフォンテーヌ汐留
○受講料:7,000円(事前振込割引6,000円)
 *受講される方全員に、上記監修本をプレゼント!

★20代若手ビジネスパーソンを対象とした、
 基本的な内容を予定しています。

--------------------

主催は、ユーザー参加型ビジネスメディア、

「インサイトナウ」
http://www.insightnow.jp/

を運営されているクイックウィンズ(株)さんです。


詳細はこちらをご覧ください↓
https://www.insightnow.jp/events/seminar0312

*当初の予定から開催時間・会場が変更されています。

投稿者 松尾 順 : 17:58 | コメント (1) | トラックバック

「情緒価値」の作り方・・・ミスティガーデン

「情緒価値」とは、
製品やサービスを利用している時、なんとなく

・心地よい
・楽しい
・ワクワクする
・癒される

といった感情をもたらしてくれる特性のことです。


何らかの具体的なニーズ(問題、課題)を解決してくれる
製品・サービスの本来的な機能を

「本質価値」

と呼ぶなら、情緒価値は「付加価値」部分といえます。


もはや常套文句ですが、

「本質価値」部分での差別化が難しい

と言われている現代、「付加価値」としての
「情緒価値」を製品・サービスに与えることは、

「製品開発における重要課題」

になっていますね。


そこで今日は、
うまく情緒価値を作りこんだ例として、
身近な商品、すなわち、ある「加湿器」を
ご紹介しましょう。

この制品については、
以前簡単に紹介したことがありますが
今回はちょっと別の切り口で考えてみます!

『ミスティガーデン』

は、自然蒸発式の加湿器です。
つまり、電気が不要。

07年10月に登場したばかりのこの製品、
私も発売早々に飛びつき、今冬も使用しています。


ミスティガーデンは
特殊な不織布フィルターを使用しており、
毛細管現象によって、水分をフィルター全面に
行き渡らせることで蒸発スピードを高めています。


たまに加湿器がない乾燥した部屋で、
やむを得ずコップにくんだ水を加湿のために
置くことがありますよね。

でも、1晩おいてもコップの水はほとんど減りません。
水が空気に触れる面積が小さいので蒸発しにくいからです。

ところが、同製品は、フィルターが置かれたトレイに
一杯の水が一晩でほとんど空になります。

つまり、かなりのスピードで
水分が蒸発していることが実感できます。


同製品に限りませんが、「加湿器」の本質価値は、

「空気の乾燥しすぎを防ぐこと」

ですね。

これによって、利用者は、

・のどを痛めにくい
・カゼの予防になる
・楽器保管場所を良好なコンディションに維持できる

といったベネフィット(便益)を得ることができます。


実は、開発は宮地楽器さん。
そう、楽器店や音楽教室を運営している会社です。

そもそも、乾燥や温度によってピッチが変わってしまう
デリケートな楽器である「ピアノ」に優しい部屋にしてほしい、
という調律師の声や、乾燥している部屋だとレッスン中に
「のど」を痛めやすいという音楽教室の指導者の声を聴いて
開発されたのが、ミスティガーデンでした。


上記のようなニーズに、
従来からあった市販の超音波式、熱蒸発式の加湿器は
適していなかったそうです。

おそらく、強制的に加湿するため湿度が
高くなりすぎることや、駆動音がすること、
清掃が面倒なことなどが問題だったのでしょう。


ミスティガーデンは、
自然蒸発式なのであまり大きな部屋の加湿には
向いていません。
(せいぜい6畳1部屋くらいまでのようです)

しかし、電気を使わないので音はしませんし、
ちょうどよい湿度が24時間、自然に保たれます。

また、手入れも基本水洗いでOKなので
手間があまりかかりません。


私は以前、超音波式、および熱蒸発式、
両方の加湿器を長年使っていたので、
手入れの面倒さがよくわかっています。

また、うっかり加湿しすぎて、
洋服ダンスの中に大量のカビを発生させたこと
がありました・・・

ミスティガーデンは、
私のようなめんどくさがりやにもありがたい
製品だったのです。


さて、前段が長くなってしまいました。
本題の「情緒価値」です。


ミスティガーデンの

「情緒価値」

は、不織布フィルターを草花の形にカットし、
ジャバラ状に成形したことによって生まれています。

実際にデザインをご覧になってみてください↓
http://mistygarden.jp/misty_set.php


これをプランターを連想させる白いミニトレイに
拡げて置くと「観葉植物」っぽく見えます。

私はデスクの脇に置いていますが、
目に入るとなんとなく気持ちいいのです!


また、水は毎日補充しなければなりませんが、
私はいくつか面倒を見ている本物の観葉植物用の
ジョウロで水をあげています。

これも実際に植物に水をあげているように感じて、
なんとなく楽しいんですね。


もし、純粋に蒸発効率だけを考慮したら、
草花に似せた形状にはならなかったかもしれません。

もしそんな製品だったら、
本質価値はあるけれど、情緒価値の欠けた
つまらないものになっていたと思います。

おそらく、ミスティガーデンは、
開発担当者やデザイナーを初め関係者の方々が
おおいなる遊び心を持っていたからこそ生まれた
のでしょう。


ただし、昨年の段階ではひとつ難点がありました。

色は当初、ナチュラルカラー1色だけ。
これは薄い黄色。あるいは黄色の強いクリーム色
ですかね。

この色は、草花にみたてると

「枯れ草」

のように若干感じる点が問題でした。

なんでこの色なんだろうと、
私は見るたびにちょっと引っかかるものが
あったのです。


ところが、私と同じように感じたユーザーから
実際に要望が寄せられたんでしょうか、
最近、「グリーンカラー」が発売されていました。


草花なんですから、なぜ最初から

「グリーンカラー」

にしなかったのか不思議です。

ともあれ、これでさらにミスティガーデンの
情緒価値は高まったと言えるでしょうね。


なお、既に専用芳香液も出ていて、
嗅覚的な癒しを得ることもできます。

それ以外にもいろいろとこの製品は
情緒価値を付け加えられそうですよね。

例えば、水を吸い上げると、
フィルターの上部だけが赤くなって
花が咲いているように見えるとか(水がなくなると緑に戻る)
フィルターを入れる「トレイ」も平板なホワイトじゃなくて、
陶器やレンガみたいなデザインにしてみるとか・・・

「本質的価値」と違って、
具体的な問題や課題の解決でないだけに、
いろいろ遊べるのが情緒価値を作りこむ場合に
楽しいところです。


ちなみに、ミスティガーデンを製造しているのは、
(株)ミクニというメーカーです。

また、私は、宮地楽器さん、
ミクニさんのどちらの回し者でもありません(笑)


*宮地楽器 ミスティガーデン公式サイト
http://mistygarden.jp/index.php

*(株)ミクニ 公式サイト
http://www.mikuni.co.jp/j/index.html


*アマゾンはこちらから↓
・ミスティガーデン U600-01 ナチュラルカラー
・ミスティガーデン 交換フィルター U60E グリーンカラー

投稿者 松尾 順 : 00:43 | コメント (0) | トラックバック

機能性の認知限界を考慮せよ!

新商品発売のニュースを見た時、

「そうそう、こんなの欲しかったんだよ・・・!」

と感じる商品がありますよね。


最近こんな声が多く聴かれた商品に、
キングジムの新商品、

デジタルメモ「ポメラ」

があります。


「ポメラ」は、
テキスト入力に機能に特化したデジタルなメモ帳。

スイッチを入れると2秒で起動し、
単4アルカリ電池で約20時間使用できる。

キーボードはノートPCとほぼ同じサイズで
キータイピングもストレスなし。

作成した文章はUSB接続でPCに転送可能。

キーボードをたためば、
文庫本ほどの大きさで370gの軽さ。


「気軽に持ち歩けて、必要な時、
 パッと立ち上げてサクッとメモを取りたい」

「そのテキストデータはPCに移して仕上げたい」

というニーズにジャストフィットした商品だと思います。


私は以前、500gほどの携帯可能な小型ワープロを
利用していたことがあります。

そのワープロはやや大きく厚みがあったため、
バッグに入れると結構かさばりました。

500gでもやはり重く感じましたし、
なにより、キーピッチが小さくてタイピングに
ストレスを感じました。


また、電子手帳もあれこれ試しましたけど、
キータイプはまず無理ですし、手書き入力も面倒。

結局のところ、

外出先等で、デジタルにメモを取りたい、文章を作成したい

というニーズに応える商品は今までなかったんですよね。


私も普段は、ノートPCを我慢して持ち歩いていますが、
簡単な文章作成のためだけにノートPCをわざわざ取り出し、
立ち上げるのはなんともおっくうでした。


しかし、ポメラは、近年のIT技術の進展のおかげで、
上記のような問題点を解消することに成功していますね。


さて、ポメラは一見PCのようではあるけれども、
テキスト入力だけに絞った単機能マシン。

いわゆる「性能破壊型」商品です。


多機能化が進む一般的なPCに背を向け、
意図的に性能(機能)を低下させたアプローチを
採用しています。

こうした性能破壊型商品は、
既存市場のプレーヤーから生まれてくることは
まずありません。

「イノベーションのジレンマ」があるからです

ポメラの場合も、案の定、
PCメーカーではなく、事務機器メーカーから
誕生してますね。


ポメラの開発に当たってキングジム社内では、

「やっぱりネット接続ができてメールは見れたほうがいい」

などと、既存のPCを前提とした、

「多機能化」

への要請が担当者に寄せられたようです。


新製品開発では、しばしば、
そもそものコンセプトを無視したアイディア、
言い換えると、

「思いつきのお節介な意見・要望」

がとりわけ企業上層部から多く投げられます。

この結果、革新的な商品になるはずだったものが、
平凡なものに落ち着いてしまうことが起きますよね。


しかし、キングジムの担当者は、
当初の商品コンセプトを大切に守り切ったようです。

おかげで、ターゲット顧客にとっても
ベネフィットの明快な商品として幸先の良いスタートを
切ることができたといえます。


新商品、特にパソコンや携帯電話などのIT系商品は、

「多機能化への誘惑」

が大きいですね。


しかし、あまりにも多くの機能を
一つの製品に組み込んでしまうと操作が
複雑になりがち。

そうすると、ユーザーの

「認知限界」

を超えてしまう。

つまり、理解、判断、学習能力をオーバーするため、
使い方を学んだり、覚えることが不可能となり、
結果的に利用しなくなってしまうのです。


以前の記事

『機能性と使い勝手』

でご紹介しましたが、ターゲットユーザーは、
使用前のテストでは多機能な商品ほどを高く評価します。

しかし、実際に利用するようになると、
「使い勝手」を高く評価することがわかっています。

私たちは、本来シンプルで使いやすい商品こそを
求めているということなのです。


人の「認知限界」は、

製品の形状、大きさ、重さ

といった目に見えるデザイン分野では
とても重視されています。

「軽薄短小」

が一般的なトレンドとはいえ、
何事も小さすぎればいい、軽すぎればいい
というものではないので、

ジャストサイズ、ジャストウエイト

を慎重に決めています。


ところが、目に見えない「機能性」については

認知限界

があまり考慮されていないようです。

機能てんこ盛りの携帯電話機を考えてみれば、
明白でしょう。

まあ、盛り込める新機能も一段落ついたので
ようやく単機能化へと転じつつありますけどね。


『機能性と使い勝手』

投稿者 松尾 順 : 09:22 | コメント (0) | トラックバック

この声、世界遺産。

天性の声を持つ、ハナレグミの永積タカシ。

彼の声を聴いたことのない方は、
以下のWebサイトにアクセスしてみてください。
(注意、音が出ます)

●ハナレグミ PEOPLE GET READY
http://www.jvcmusic.co.jp/hanaregumi/


いわくいいがたい美声。魂が揺さぶられます。

彼の声を聴けば、

「この声、世界遺産。」

というキャッチコピーが納得できるでしょう。


でも、彼はまだ35歳で生きてます。
「世界遺産」というのはちょっと違いますよね。


とはいえ、

「この声、人間国宝。」

ではガクッと来ますから、やっぱり世界遺産。

投稿者 松尾 順 : 11:15 | コメント (0) | トラックバック

女子トイレ個室内広告

昨年(08年)12月から、
羽田空港の女子トイレの個室内で

「電子広告」(デジタルサイネージ)

の試験運用が始まっていますね。


女性が個室に入って便座に座ると、
左斜め前方に設置された7インチの液晶に表示される
動画等が目に入るという仕掛け。


正式名称は、

「羽田空港レストルームチャンネル」

です。


数年前に、男性トイレの小便器の上のスペースに
広告を掲載できるサービスが開始されたことがあります。

この男子トイレ内広告サービスは結局、
離陸できなかったようです。

今でも、都内の地下鉄のいくつかの男子トイレには、
その残骸が残っていますね。

さて、国内初という

女子トイレの個室広告配信サービス

は無事離陸できますかね?

投稿者 松尾 順 : 13:42 | コメント (5) | トラックバック

ブランドとは「事前期待」である!

「ブランドとは何か?」

という問いに対する回答は様々ですね。
唯一絶対の正解というものはおそらくありません。

例えば、

“ブランドとは「約束(プロミス)」である”

というよく知られたフレーズは、
シンプルながら、とてもツボを押えた回答だと思います。


さて、上記のフレーズは「企業側」に立ったものですが、
「顧客(見込客)側」に立った場合の表現は、

“ブランドとは「事前期待」である”

と言えるのでは・・・?


「事前期待」とは、簡単に言えば、
購入対象となっている特定の製品・サービスに対して

「購入したら、どんなことが自分に起こるのか」

といった顧客の予感というか、予測のことです。


この事前期待には、

ポジティブなもの、ネガティブなもの

の両方があります。

そして当然ながら、ネガティブな事前期待を
与えてしまっている製品・サービスが選択されることは
まずありません。


ですから、ブランド構築の目的は、

ターゲット顧客に対して
ポジティブな事前期待を持ってもらうこと

になります。

このことは、

新規顧客の獲得

においてとりわけ重視すべき点です。

というのも、まだ利用したことのない製品・サービスを
思い切って購入する決断を下せるのは

「良さそうに感じられた、思えた」

というポジティブな事前期待があればこそだからです。


経営コンサルタントの石原明氏は、
実際に製品・サービスが優れているだけでは売れない。
見込客にとって、その製品・サービスが

「良さそうに見えること、思えること」

が大事であると常々強調されています。

また、飲食店コンサルタントの
佐野裕二氏によれば、繁盛する飲食店とは、

「美味しい店」

ではなく、

「美味しそうな店」

なのだそうです。


さて、ポジティブな事前期待は、

見た目(パッケージや店舗の外観、デザイン等)や
様々な媒体、手段を通じたコミュニケーション

によって形成することが可能ですが、
繰り返し購入してくれるリピート客を増やすためには、
実際に購入した製品・サービスの利用体験が

「事前期待」

を裏切らないことが重要ですね。


事前期待以下の利用体験だった場合、
高い顧客満足が得られないため、

「ガッカリしたよ、次は買わない」

ということになるからです。


「顧客満足」は、

「事前期待」と「実際の体験」

の差で決まります。


それほど優れた製品・サービスでなくとも、
事前期待があまり高くなければ、
それなりの顧客満足は得られます。

逆に、どんなに優れた製品・サービスで
あったとしても、事前期待が高すぎると、
高い顧客満足は得られないのです。


ですから、ブランド構築においては、

「事前期待を高めすぎない」

という点を留意しなければなりません。

良さそうに見せなければならないが、
過剰な宣伝、誇大広告はするなということです。


あくまで、実際に提供可能な製品・サービスの
質やベネフィットの水準を踏まえて、期待感を
ちょっとだけ高めて購買意欲を刺激する。


ブランドマネジメントはいわば、

事前期待のマネジメント

であり、微妙なさじ加減が要求される仕事なのです。


*「事前期待」については、
  以下の本の内容にインスピレーションを受けました。


『顧客はサービスを買っている』
(北城恪太郎監修、諏訪良武著、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 16:03 | コメント (0) | トラックバック

未来に化ける人材

「ミラバケッソ」=「未来に化ける新素材」


クラレの変なTVコマーシャル。

かわいらしい動物、
アルパカ(クラレちゃん)のおかげで
注目度は抜群ですね。


さて、「新素材」という言葉には、
化学メーカー、クラレがこれまで様々な新しい素材を
生み出してきたという意味と、もうひとつ、

「未来に化ける人材」

という意味が込められていたんですよね。

つまり、同社への就職希望者増が本来の狙いでした。

最近のミラバケッソのTVコマーシャルのストーリー
(駅のホームでお兄ちゃんがクラレちゃんに化けてしまう)

では、このことがストレートに訴求されています。


産業財系メーカーは、
こうした面白CMに流れる傾向がありますが・・・
旭化成は昔「イヒ」とかやってましたよね。


まあ、実際のところ効果は抜群で、
クラレの場合は、昨年の新卒採用の応募者は
倍増したそうです。(宣伝会議、2009.2.1)

ただ、昨年後半からの景気後退で、
採用枠が絞られてしまい、優秀な学生がせっかく
たくさん集まったにも関わらず、採用したくでも
定員オーバーという悲しい状況になってるかもしれませんが。

投稿者 松尾 順 : 00:22 | コメント (5) | トラックバック

運転免許センター

先日、運転免許の更新のため、
最寄の運転免許センターに行ってきました。

手続きはスムーズでしたけど、講習はたっぷり1時間!

かったるいなあ・・・と思いつつも、素直に聞いてみると、
講習の先生、大事なことを話してました。

やっぱ、5年に1回くらいは聴いとかないとね。


今回の講習ではパワーポイントをバリバリ活用。

スライドインとか、ワイプとか各種アニメーションを多用し、
またページを移るごとに各種効果音があれこれ鳴る。

しかし、効果音の中には、どう考えても

「クルマの衝突音」

をサンプリング録音したとしか思えないものも混じっていて、
これは覚醒効果を狙ってのものでしょうか。

それにしても、講習のおじさん、いや先生は、
いつもちょっと東北なまりの人が多いように感じるんですが、
千葉のセンターだけですかね。

投稿者 松尾 順 : 09:47 | コメント (2) | トラックバック

新刊:ビジマルシリーズ

昨年末、TAC出版さんから

『ビジマル』シリーズ

と銘打って同時に5冊の本が発刊されています。


『ビジマル』シリーズは、

新書版、定価840円

と大きさ、値段も手ごろ。


ページをめくってみると、Q&Aから始まるスタイル。

2色刷り、図表も豊富で読みやすく、
ビジネスパーソンに不可欠な各種スキルの基本が
さくっとおさえられるようになっています。

若手ビジネスパーソンにおすすめします!

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[TAC出版 『ビジマル』シリーズ]

『成果が上がる!ビジネス思考力トレーニング』(大勝文仁 監修)

『ヒトを動かす!課長力トレーニング』(村上力 監修)

『仕事にいかす!雑談力トレーニング』(箱田忠昭 監修)

『成功に変える!失敗力トレーニング』(和田秀樹 監修)

『プラス人生の!ビジネス女子力トレーニング』(前田京子 監修)
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実は私が監修した本、

『先読みできる!情報力トレーニング』

が2月下旬に発刊される予定です。

またご案内しますね。

投稿者 松尾 順 : 22:14 | コメント (0) | トラックバック

サブリミナルマインド&サブリミナルインパクト

神経科学的アプローチ、
つまり脳内の反応を直接測定するメリットは、

「人のホンネが正確に読める」

ということでした。

逆に言えば、

人が言葉で語ることはあまり当てにならない

ということですね。


ただ、こう言い切ってしまうと、

「じゃあ、なんのためにアンケート調査なんかやるの?」

と言われてしまいそうです。

これに対する答えは3つあります。

1 調査対象者の行動は、「事実」としてある程度正確に把握できる。

2 購入意向などの心理状態(気持ち)についての回答も
  ある程度は信頼できるという前提に立っている。

3 他の方法よりも時間・コスト的に優位性がある


要するに、従来採用されてきた各種調査手法も、
限界はありつつも、相応の価値があるのだと言わせてください(笑)


さて、

人の言葉がいかに当てにならないか

もっと言えば、

自分の「意識」がいかにいいかげんなものか

について理解するためには、
下記の2冊の本がとても役に立ちます。


『サブリミナルマインド』
(下条信輔著、中公新書)

『サブリミナルインパクト』
(下条信輔著、ちくま新書)


どちらもタイトルに

‘サブリミナル’

という言葉がついていますが、これは

「潜在意識」

のことですね。

つまり、自分が意識できない無意識の世界。

私たちの行動の多くは、
無意識の世界の働きに影響を受けているのです。


著者、下條氏は次のように述べています。

“人は自分で考えているほど、自分の心の動きをわかっていない。
 人はしばしば自覚がないままに意思決定をし、自分のとった
 行動の本当の理由に気づかないでいるのだ”


上記2冊の本はこの意外な真実を実感させてくれる

各種実験

を示しつつ、広告などマーケティングの世界でも、
巧妙に活用されていることを解説しています。


例えば「偽の心音実験」。

これは、男子大学生のヌード写真に対する興奮度合いに対して、
自分がそれをどの程度認知しているか(意識しているか)を
調べるものでした。


被験者には測定機器をつけてもらい、

「これから10枚にスライド(ヌード写真)を
 1枚ごとに見せながら、心拍数を測定します」

と伝えます。


その心拍音は、
被験者にも聞こえるようにしてありました。

でも、実は測定機器はダミーで、
心拍音は実験者が鳴らしている機械音でした。

そして、被験者ごとに特定のスライドにおいて、
この偽の心拍音を速くしたり、遅くしたりしたのです。


この流れを2回繰り返した後、
被験者に、それぞれの写真の魅力度を聞きました。

すると、偽の心拍音が速くなった時に見ていた写真に対する
魅力度が他のものよりも著しく高かったのです。


これは何を意味しているのでしょうか。

本当は自分の心拍音でないにも関わらず、
自分の心臓の鼓動が速くなったと思い込んだだけで、
本人は、

この写真を見て自分は生理的に興奮している
(だってドキドキしているから)

と無意識に認知し、結果としてその特定の写真に
とても魅力を感じるようになってしまったというわけです。


なんともはや、私たちの意識・無意識は
頼りないもの、操作されやすいものなんですね。


最近注目を集めているニューロマーケティング、
ニューロエコノミクス、あるいは行動経済学をより深く
理解するためのバックボーン的知識を得たい方は、
この2冊の本をお読みになることを強くお勧めします。


『サブリミナルマインド』
(下条信輔著、中公新書)

『サブリミナルインパクト』
(下条信輔著、ちくま新書)

投稿者 松尾 順 : 09:34 | コメント (0) | トラックバック

ホンネが読める?ニューロマーケティング(2)

ニューロマーケティングの研究事例としては、

コカ・コーラvsペプシコーラ

の事例が有名ですね。

これは以前ご紹介*しましたので別の例を。
(『買い物する脳』より)


プリンストン大学が行った

「アマゾンギフト券」

についての実験です。


同実験では、
被験者に対して次の2種類のプレゼントを提示して、
どちらかを選ぶよう依頼しました。

・今すぐもらえる15ドルのアマゾンギフト券
・2週間後にもらえる20ドルの同ギフト券


この際、被験者の脳内がどのように反応しているかを
「fMRI」で測定したところ、

・今すぐもらえる15ドルのアマゾンギフト券

を提示された場合に、

「大脳辺縁系」

が異常に活性化したそうです。


大脳辺縁系は感情や記憶の形成を司るところです。

つまり、今すぐもらえるプレゼントに対して、
被験者は感情的な興奮を示していたというわけですね。


理性的に考えれば、
2週間待って20ドルもらったほうがお得。

しかし、「今欲しい」という感情的興奮を我慢できず、
思わず目の前の15ドルのギフト券をもらうという選択を
しまうのです。


生物全般に言えることですが、
基本的に、‘長期的’な利得よりも‘短期的’な利得を
優先する傾向があります。

「手の中の一羽の鳥はやぶの中の二羽の鳥に値する」

という言葉がありますが、今目の前の獲物を逃せば、
いつ次の獲物が手に入るかわからないという毎日を
送っている生物にとって、目先の利得を優先するのは、
当然の行動かもしれません。


人間においても短期的思考が強いことは、
過去に行われた様々な実験でわかっていました。

そして、アマゾンギフト券の実験では、
なぜ短期的利得を優先するのかという理由が
脳科学的にわかったということです。


さて、もうひとつの事例は、カネボウが、
脳科学者、茂木健一郎氏と共同で実施している研究の
第一弾。(日経ビジネス、2009年2月2日号)

20代と30代前半の女性17人に

・自分の素顔
・自分の化粧顔
・他人の素顔
・他人の化粧顔

の4枚の写真を2秒間隔で見せた時に、
脳のどの部位が活性化したかをfMRIで調べました。


その結果、「自分の化粧顔」を見た時、
他人の顔を見た時に活性する部位が反応したそうです。

つまり、自分の化粧顔は、

あたかも他人であるかのように客観的に認識している

ということが、脳内を見たらわかったということです。

日経ビジネスの記事中に書かれていますが、
自分の化粧顔を見せられて、

「これは自分の顔ですか?」

と聞かれたら、当然ながら「はい」と答えるでしょう。

しかし、脳では他人として認識しているわけです。

当人が言葉で語ることと、実際の感覚や認識には
違いがあるということがわかる貴重な実験ですね。


それにしても、化粧品は、文字通り

「化ける」

ためのものなのかなと思いますが、

「素の自分」

とは似ても似つかぬ、他人としか思えない顔に化ける
からこそ「他人」と認識してしまうんでしょうかね・・・?


*ニューロマーケティング:コークvsペプシ

『買い物する脳 驚くべきニューロマーケティングの世界』
(マーティン・リンストリーム著、千葉敏生訳、早川書房)

投稿者 松尾 順 : 13:07 | コメント (2) | トラックバック

ホンネが読める?ニューロマーケティング(1)

先日、ある社会人向けの研究会からの依頼で、
最近ますます関心が高まっている

「脳(神経)科学」

の「マーケティングへの応用」の最新動向について
お話をする機会がありました。


これまで私は、

心理学の視点からマーケティングを考える

といった内容で過去2回ほど
別の会などで講演をやらせてもらっています。


最後にお話したのは3年ほど前でした。
当時はいわゆる

「ニューロマーケティング」(脳科学のマーケティング応用)

はまったくと言っていいほど注目されておらず、
私もご紹介するネタがほとんどありませんでした・・・


しかし現在は、特に経済学分野やマーケティング分野に
おける人間行動・心理研究に

「脳科学的なアプローチ」

が積極的に取り入れられ、
たくさんの研究事例が生まれていますね。


さて、脳科学的アプローチというのは、端的には

「fMRI」(機能的磁気共鳴画像法)

のような数億円する測定装置を使って直接、

「脳の中の反応」

を把握することです。


このアプローチのメリットは、
くだいて言えば、

「人のホンネが正確に読める」
(現状では、その可能性を秘めている)

ということになります。


従来の心理学的アプローチでは、

・人がなぜその商品を購入したのか(購入しないのか)?
・人はなぜその商品が好きなのか(嫌いなのか)?

といった行動の背景にある理由や態度(気持ち)を
知るためには、

アンケート、インタビュー

などの調査手法によって本人から‘言葉で’
聴いていました。


しかし、この方法には限界があるんですよね。


ひとつは、実験・調査協力者が、
正直に本当のことを言っているという確証が
もてなかったこと。

立ち入った内容(セックス経験だとか・・・)だと、
いくら心理学の研究とはいっても、なかなか本当のことは
しゃべりにくいですよね。


もうひとつは、そもそも私たちは、
自分の行動の理由を常に深く考えず、

半自動的、無意識的

に生活しているため、理由を聴かれると
その場に応じたもっともらしい説明をしてしまう
という点です。

これは、ゴマかしたり、ウソをついているわけでは
ないだけに最初の限界よりもタチが悪い。


例えば、仮の話ですが、
夕方、スーパーに買い物にいって、
夕食用に

「カレールー」

を購入した主婦がいたとします。


彼女に、今晩の料理をカレーにした理由を聞くと、

「店頭でたまたま目についたから」

といった答えが返ってきました。

もちろん、それもひとつの理由でしょう。


しかし、実は昼間テレビで見たカレーの
コマーシャルが引き金になっていたのです。

ただ、夕方の時点では、
彼女はそのコマーシャルを見たことを
すっかり忘れてしまっているので、

「店頭で目に付いたから」

という理由しか出てこない・・・。

だとすると、この回答を鵜呑みにするのは、
リスクが高いですよね。


様々なメディアを通じて届けられる

マーケティングメッセージ

は、たとえ消費者が意識的に覚えていなくても

「潜在意識」

に着実に刷り込まれ、自分でも気づかないうちに
特定の商品を購入するという行動に結びついている
可能性があります。

こうした「潜在意識」の働きについては、
過去の心理学のさまざまな実験において検証されて
きたことでした。


しかし、近年台頭著しい「脳科学的アプローチ」では、
人から言葉で聴くことが難しい無意識の行動や心理を
「fMRI」等を用することによって正確なデータとして把握し、
実証することができる

様々な分野の研究者が、
脳科学に注目するのも当然というわけですね。


では次回は、ニューロマーケティングにおける
最新の研究事例をいくつかご紹介しますね。

投稿者 松尾 順 : 16:05 | コメント (0) | トラックバック

チェ・ゲバラ

最近、キューバ革命の英雄、

「チェ・ゲバラ」

の映画がけっこう話題集めてますね。

『チェ 28歳の革命』
『チェ 39歳分かれの手紙』

http://che.gyao.jp/


私は、以前「ゲバラ日記」など彼についての本を
何冊か読んだことがあったので興味があり、早速見ました。

ドキュメンタリー的な展開で、
ゲバラの魅力あふれる人間性がよく描かれていました。

やっぱ、ゲバラは「男の中の男」って感じでいいですね!


それにしても、私は背景や経緯を事前に知っていたので
楽しめたのですが、もしキューバ革命についての基本的知識がない人が
見たら、たぶんあんまり面白くないだろうなと感じました。

背景説明がほとんどないので・・・

もしゲバラの映画を見ようと思ってらっしゃるんだったら、
事前にゲバラの本とかで予習してからにしてくださいね。

投稿者 松尾 順 : 00:56 | コメント (0) | トラックバック