顧客情報記憶力

先日、地上波で映画、

『舞妓Haaaan!!!』

が放送されましたね。

この作品は、劇場公開中の評判も良く、
結局、興行収入20億円を超えるヒット作となりましたが、
残念ながら私は見逃していました。

最近、京都花街の研究をちょっとだけしている私としては、
万難を排して視聴しました。


さすが宮藤官九郎のシナリオですね。
よく練られたストーリー。

主人公、鬼塚公彦を演じた
阿部サダヲの軽快な演技も良かった。


鬼塚は、高校生の頃、
修学旅行先の京都で道に迷っていたところ、
たまたま通りかかった舞妓の小梅さんに優しくされ、以来、

「京都・祇園の舞妓さんと野球拳をしたい」

という夢を追い求めることになります。

その後社会人となり、
鈴屋食品の東京本社に入社した鬼塚は、
舞妓さんを応援するWebサイトを運営しながら、
お座敷に上がることを夢見るのです。

数年後、幸運にも(会社的には左遷)、
京都の工場に異動が決まり、鬼塚は狂喜乱舞。

京都赴任後、早速、鬼塚はATMで現金をおろし、
勇躍、お茶屋に向かいます。

ところが、

「一見さんお断り」

の壁に阻まれてしまう。

お馴染みさんの信頼を得て、
その人に紹介してもらわなければ、
お座敷には上がれないのです。


そこで、鬼塚は、
体がぼろぼろになるほど仕事に打ち込みます。

そして、運よく新製品開発・販売に成功させることで、
既にお馴染みさんだった鈴屋食品、鈴木大海社長の信頼を
勝ち取り、とうとうお座敷に連れて行ってもらうことに
なるのです。


さて、初めてのお座敷で鬼塚は、
高校生時代に優しくしてもらった小梅さんに
再会します。

その時、小梅さんは、既に舞妓さんを卒業し、
売れっ子の芸妓さんになっていました。


えーと、長々とあらすじを説明してきましたが、
ようやく本題です。

小梅さんは、何年も前に1度だけ、
短い時間会っただけの修学旅行生のことを
ちゃんと覚えていました。

また、その後、鬼塚が入れあげることになる
舞妓の駒子さんも、舞妓さんデビューの日にカメラを
構えて追っかけしていた鬼塚のことをしっかり
覚えていました。


売れっ子の舞妓・芸妓になるための条件は、
「やる気」と「体力」を大前提として、
芸事に優れていること、そして高いコミュニケーション
能力が挙げられますが、そのベースには、強力な

「顧客情報記憶力」

が必要なのです。

上記に説明した通り、

『舞妓Haaaan!!!』

でもそのことが、きっちりストーリーに
織り込まれていたというわけです。


ちなみに、あるお茶屋のお馴染みさんである私の知人は、
半年振りに会ったある舞妓さんが自分の名前をちゃんと
覚えてくれていたことに感激してファンになったそうです。

この舞妓さんは、その後2年間、
年間売上げ(花代)トップとなって表彰されたとのこと。


数万、数十万人以上の顧客を相手にする商売では、
もはや頭脳の能力の限界を超えますので、
顧客データベースの活用が不可欠となってくるのは
言うまでもありません。

しかし、企業の個々のスタッフ(営業、サービスなど)と
個々の顧客が相対する場、すなわちコンタクトポイントでは、
その社員の

「顧客情報記憶力」

が極めて重要な働きになってきます。
顧客データベースに100%依存できるわけではないからです。


コンタクトポイントの担当スタッフ(Contact Personnel)
に対する研修・教育内容は現在、

外見や基本的な礼儀作法、商品知識、コミュニケーション

などが中心になってますけど、

「顧客情報をいかに早く、正確に記憶し、
 またすばやくに引き出せる(思い出せる)ようにするか」

という

「記憶術」

も必修科目にすべきではないでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 2008年09月02日 13:40

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