あのヒトは、一人じゃない。

これ、コピーライターの仲畑貴志さんの言葉です。

次のようなエピソードがぶらさがってます。
(宣伝会議、2006.3.1)

即席ラーメンの新商品開発のために行った事前調査で、

「減塩ラーメンを選びますか?」

という問いに対して、大多数の「賛同」というデータが出た。
ところが、この数字に背中を押されて売り出した

「減塩ラーメン」

は売れず、

その真逆の価値である

「激辛ラーメン」

が売れたそうです。

これはどう捉えれば良いのでしょうか?


仲畑さんの答えは、

「ひとりの人間の中には、複数の人格価値観が存在している」

ということです。

「減塩ラーメンを選びますか?」

という問いに好意的な反応を示したのは、健康に留意するという、
その人の中の「理性的」な人格。

ところが、即席ラーメンを食べるときのその人は、

「腹へった、とりあえず、なんか食お」

というゆるい価値観で行動しています。

したがって、ゆるい価値観で選択されているラーメンという
商品を理性反応の数字の集積で判断したのが間違い、

だというのが仲畑さんの考え。


まあ、まったくもってその通りです。
調査のやり方、データの解釈の仕方が適切じゃなかった
ということです。


こうした、

消費者の言ってること(調査結果)と
やること(購買行動)は違うじゃん

という悲劇はかなりの頻度で起きているようですが、
そもそも仲畑さんが指摘されているように、

「ヒトは複数の人格を持っている」

という点を忘れがちな点が問題でしょうね。

ただ、「複数の人格」を持っているといっても
精神が分裂しているということじゃありません。

より正確に言うと、

「消費者は市場というステージで様々な役を演じている」

ということです。

会社員、夫(妻)、親、子、ミュージシャン、ゴルファー

など、時と場合、相手との関係によって、
私たちは、まるで俳優のように複数の役を使い分けています。

もちろん、それぞれの立場で、価値観も違う。
購買行動だって変わってきます。

これは専門的には、

「Role Theory」(役割理論)

と呼ばれるものですが、

よく引き合いに出される、

高級車に乗り、100円ストアで買物をする

といった一見、一貫性に欠けた行動に見えることも、
一人の人間が複数の自分の役を使い分けていることを
考えると、なんら不思議ではないわけです。

ちなみに、即席ラーメンを食べる時の自分は、欲望のままに生きる
「素の自分」を演じているんだと考えられるでしょうね。(笑)

投稿者 松尾 順 : 2006年06月14日 10:24

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