「箇条書き」にはご注意!

昨日書いた「合脳的プレゼンテーション」では、
内容の展開を「接続詞」でつないでいけば、

・プレゼンを物語化することができること

これによって、

・プレゼンの内容が、聴いている人の脳にすっと入っていくこと

を説明しましたが、
究極の合脳的プレゼンテーションは、物語そのもの、
具体的には「劇」として組み立てられたものでしょう。


例えば、統計解析ツールを開発・販売しているSPSS社が、
昨年からイベントで行っている「寸劇形式」のプレゼンテーション
が該当します。

*以前このことについて書きました>寸劇プレゼン


寸劇形式のプレゼンは、シナリオ作成から始まって、
演出、配役、リハーサルなど、準備が半端じゃなく大変ですが、
それに見合う効果(面白さ、わかりやすさ、記憶の残りやすさ)
があると思います。

つい先日、このプレゼンのストリーミング映像が
公開されましたので、関心のある方はぜひごらんください。
(寸劇裏話やイベントレポートのURLも併せて掲載します)

------------------------------------------------------------
*SPSS Data Mining Day 2006で披露された、
SPSS社員が演じる寸劇形式のプレゼンテーション「SPSS Solution」

▼ストリーミング映像(登録制/所要時間37分)

▼SPSS社員の紹介 & 寸劇裏話

▼@ITイベントレポート(各講演のダイジェスト)
------------------------------------------------------------


さて、最近増えてきた「導入事例記事」も、
物語化された効果的なコミュニケーションのひとつです。

導入企業への取材を元に、背景や、導入のきっかけ、
導入成果などをストーリー性をもたせることで、読者の関心を
引き、わかりやすく製品の特徴やメリットを訴求できます。


実は、私もしばしば、事例記事の取材・ライティングの仕事を
やる機会があるのですが、数年前、某ソフトウェアの導入事例記事
を書いた時、次のようなことがありました。

初稿を提出した後、クライアントから戻ってきた修正指示を
見ると、大幅に「箇条書き」を増やすようになっていたのです。

もし、指示通りに修正するとストーリー性がまったく失われて
しまうため、私は頭を抱えました。

とはいえ、なんとかクライアントの要求に最大限こたえつつ、
ストーリー性を失わないように注意して修正してその仕事は
納めたのですが・・・

今でも、ちょっと違うなあという思いが残っています。


いわゆる「ビジネス文書」では、

「箇条書き」

が過度に強調されている嫌いがありますよね。

出張報告とか提出したら、上司から、「箇条書きに直せ」
なって言われて突っ返された経験ありません?


確かに、「箇条書き」は、
ポイントだけをわかりやすく抜き出して提示することができます。
したがって、多くのビジネス文書では有効な文体だと思います。

しかし、箇条書きは、内容を把握する必要に迫られた人には
読んでもらえますが、そうでない人、すなわち、
まだ内容に関心を持たない人には、あまり読んでもらえません。

なぜなら、箇条書きは
キーワード、キーセンテンスの羅列に過ぎないため、

・表現が平板なため読んでいて面白くない

また、まさに「接続詞」がないので、

・読み手が文脈を想像しなければならず、
 読み進めるのが大変

だからです。


ですので、関心のない人を振り向かせたい
マーケティング・コミュニケーションでは、
「箇条書き」の使いどころを間違えてはいけません。

「箇条書き」が適しているのは、主に製品スペックのような
そもそもストーリー性を要求しない部分や、並列的な情報が
多数あって、箇条書きでないと混乱する場合です。


「図解コミュニケーション」で知られる久恒啓一氏
(宮城大学教授)は、

「箇条書きは思考を停止させる」


とおっしゃってますが、確かに「箇条書き」は、

分かった気になっただけで、実はぜんぜんわかっていない
(わかってもらえていない)

というコミュニケーションになってしまう危険性を
秘めていると思います。


「箇条書き」にはご注意!

投稿者 松尾 順 : 2006年07月07日 11:48

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mindreading.jp/mt/mt-tb.cgi/233

このリストは、次のエントリーを参照しています: 「箇条書き」にはご注意!:

» watch movies from watch movies
デイリーブログ『マインドリーダーへの道』 [続きを読む]

トラックバック時刻: 2013年10月06日 23:58

» Www.rikemedia.com from Www.rikemedia.com
「箇条書き」にはご注意! [続きを読む]

トラックバック時刻: 2013年12月17日 04:57

» Www.rikemedia.com from Www.rikemedia.com
「箇条書き」にはご注意! [続きを読む]

トラックバック時刻: 2013年12月17日 04:57

コメント

箇条書きに関連してもう一つ。
「企画・プレゼンテーション講座」というセミナーを企業研修で時々開きますが、その際に「企画書の↓(矢印)に注意!」と金森はよく述べています。
箇条書きに加えて矢印で↓と書いて次の箇条書きにつなげるということは、パワーポイントの企画書などで良く目にします。
しかし、矢印は書いた本人と受取手が同じ解釈をするとは限らないのが怖いところ。
矢印の意味が「だから・・・」なのか、「しかし・・・」なのかでは大違い。プレゼンを聞いている人なら判ることですが、企画書は一人歩きするもの。誰が見ても正しく伝わることが肝要です。
なので、私は「↓と書いたなら、その横には、 ↓しかし のように意味する言葉を付け加えておきましょう」と述べています。
正しく理解してくれた受講者は、次の日から実践してくれるのでとても面白いです。簡単なことで、ミスコミュニケーションを防げるんですよね。

投稿者 金森努 : 2006年07月08日 05:43

口頭で説明するための「プレゼン資料」と、資料単体で読んでもらうことを意図する「企画書」はそもそも構造から表現まですべて別ものとして作成すべきじゃないかと思います。
最近はパワーポイントが普及したせいで、プレゼン資料だけよんでも十分に意図が伝わらないのが現実でしょうね。
金森さんがご指摘されているような誤解があちこちで生じていると思います。

投稿者 松尾 順 : 2006年07月09日 11:06

コメントしてください




保存しますか?