ネットだから売れる

昔は、

「ネットで、ものが売れるわけない!」

と言われた時期がありましたね。


でも、今となってみれば、

「ネットで、売れないものはない!」(極論ながら)

という感じですけど。


さて、以前、売れない理由の第一として挙げられたのが、
バーチャル店舗の「信頼性」ですよね。

文字通り‘仮想’の店舗であり、物理的な存在が確認できない
お店からものを買うのは不安を感じるだろうということでした。

ただ、これは初回だけの話です。

ネットでもちゃんと取引できて、確かな商品が届けば、
次からはあまり不安を感じることはありません。

それに、実在の店舗があるからといって、
必ずしもそこに置いてある品が良品とは限らないし、
口のうまい店員にいいように丸め込まれ、買う気のなかった商品
を買わされることもあるわけで、実は店舗の実在性は信頼性とは
あまり関係ないということが消費者は元々わかっていました。


そして、もうひとつ、ネットで買わない大きな理由は、

「手に取って確かめられないから」

というものでした。

これは一見説得力のある理屈に思えます。
が、これは真実を知らない頭でっかちの先入観でした。

ネットでの販売、すなわち「Eコマース」は、
通信販売の進化形と言えるわけですが、
すでに通信販売の先達は、「通信販売だからこそ売れる」
という理由を発見していたのです。

それは、商品を購入後、実際に使用した時に消費者はどんな
価値を得られるのか、という「使用価値」を説明するのは、
店舗よりもカタログの方が優れているということです。

端的には、最新のファッション衣料。
店舗ではのっぺら坊、しばしば首なしのマネキンが着ている。
ポーズも取ってません。(笑)

生地は手にとって確かめられても、自分がこれを着たら
どのくらい良いのか、イメージしにくいですよね。


一方、通販のカタログには、理想(なりたい)の自分を
投影できる、スタイル抜群の生身のファッションモデルが、
その衣料品が最も際だつポーズを取って着ています。

どちらが、使用価値を実感でき、また購買意欲がそそられる
でしょうか?


「料理器具」なんかも同じですね。
デパートなどで売場に並んでいる鍋をいくら手に取って
眺めてみても、それでどんなにおいしい料理が作れるのか、
まるでわかりません。

でも、カタログなら、鍋の中で出来立てのシチューが
湯気を立てている、そんな写真を見せることができます。

店頭で単なる飾り物となっている現物を見るよりも、
カタログで使用後の写真を見た方が、よほど「使用価値」が
伝わるということです。


以上の話、実は通販生活の創業者、斉藤駿氏の説です。

通販生活のカタログが、他の通販会社と比較すると
1アイテムあたりのコピーがやたらと多いのは、
商品の「使用価値」を最大限に伝えようという意図が
あったわけですね。


さて、Eコマースでは、紙のカタログよりもさらに表現力豊かに
商品の「使用価値」を伝えることができます。
リアル店舗ではまず聞けない、既存ユーザーの声も豊富。

ですから、

「ネットだから売れる」

ということは、通販をやっていた人なら
最初からわかっていたことでしょう。
(白状しますと、私も頭でっかち。
 Eコマースの市場性については半信半疑でした・・・)


なお、斉藤さんによれば、

「通販は、時間節約になる、便利だから売れる」

という考え方は間違いだそうです。
(Eコマースでも同じ考え方が浸透していますが)

通販では、基本的に街中で手に入りにくいものがよく売れる。

逆に言えば、近くの店ですぐに買えるようなものは、
そうそう通販では売れない。(例外は「アスクル」くらい)

確かに!
ネット・コンビニは確かにいまだ浮上してませんね。


*参考文献
 「なぜ通販で買うのですか」(斉藤駿著、集英社新書)

投稿者 松尾 順 : 2006年09月05日 12:17

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