シンプルマーケティング(3)ライフスタイル-2

森行生氏著の名作、「シンプルマーケティング」から
今日も「ライフスタイル」のテーマを取り上げます!


消費者(生活者)の心理・行動を理解するのに有効な考え方で、
マーケティングにも適用しやすい「ライフスタイル理論」の
ひとつが、米社会心理学者、ヤンケロビッチ博士が生み出した、

「価値観ヒエラルキー」

です。


価値観ヒエラルキーは、
三角形を5層に分割したイメージで表されます。

各層の概要は次の通りです。


(1)ソース(Source) =基本的意識、性格

  人がもって生まれた先天的資質

  外向的・内向的といった基本的な性格はかなりの部分
  先天的ですよね。


(2)ヴァリュー(Value) =価値観

  種々の物事に対する姿勢、社会との接点でもつ生活意識

  たとえば「社会に溶け込んで生活すべき」といった、
  いわゆる「信条」のこと
 

(3)クライテリア(Criteria) =生活基準

  ある判断、選択を迫られた時に優先順位を決めるよりどころ

  森さんによれば、

  「理想とする自分と、それを取り巻く環境」

  ということだそうです。この基準に基づいてある商品を
  購入したり、しなかったりするというわけですね。

 
(4)テイスト(Taste) =生活の志向、好み、感性

  「具体的な事象」に対する志向、好み、意見、考え方。

  たとえば、クライテリア(生活基準)として

  「知的なエリートビジネスマン」

  を理想としているなら、テイストは、

  「無線通信機能付ノートパソコンを持ち歩き、乗る車は
   欧州車で・・・」

  といった具体的なモノに対する好みのことです。


(5)マニフェステーション(Manifestation) =生活行動

  実際の選択、行動。

  たとえば上記の例で言えば、愛車「アウディ」に乗って、
  「VAIO」でメールをチェックする、といったことです。


ヤンケロビッチ博士は、人間の意識は上から下、
つまり1から5への流れをたどると説いています。

消費者行動の基本は、まず意識があって、それが
最終的な行動に反映されるということでしょう。


しかし、森さんによれば
行動から意識へと逆流するケースも頻繁に見られるそうです。

たとえば、若い女性は、雑貨売り場で気に入ったモノを手に
取ったときに、その製品を使っている自分や、
自分の部屋にその製品が置いてあるさまを思い浮かべるそうです。

これは、具体的な行動(マニフェステーション)が、
逆に意識を刺激して、自分のテイストやクライテリアを認識
させてしまう例です。


確かに、若い女性だけに限らず、
私たちは、しばしば自分の行動を客観的に振り返ってみて

「自分が求めているテイストやクライテリアはこれだったんだ!」

と初めて気づくこともありますよね。


さて、この価値観ヒエラルキーをマーケティングに適用する際に
いろいろと留意すべき点があります。

シンプルマーケティングでは、「落とし穴」も含めて詳しく解説
されています。


ここではひとつだけご紹介しましょう。

それは、目に見える部分(マニフェステーションやテイスト)
だけを見て、人のライフスタイルを理解したつもりにならない
ことです。

過去、多くの企業が、ライフスタイルの表層的な現象面だけを
見てマーケティング活動を行い、失敗してきました。


人々のライフスタイルをより深く理解するためには

現象の背後にある、「ヴァリュー」や「クライテリア」
をしっかり見つめる必要があるのです。


現象面では、日々さまざまなヒット商品が生まれ、一方で
廃れていくことを繰り返しています。

表面的な変化は激しいわけです。


でも、商品選択の本質的な基準である

「ヴァリュー」や「クライテリア」

は5年や10年では変わりません。


ですから、

「マニフェステーション」や「テイスト」

ではなく、

「ヴァリュー」やクライテリア」

に焦点を当てれば、
マーケティングの企画・実行はずいぶん楽になりますよね。

中長期的な視点で、
一貫性のあるマーケティングに取り組めるからです。


逆に言えば、
表層的な変化だけを追いかけているために、
コロコロと猫の目のように方向性を変えるマーケティングは、
多くの場合失敗に終わります。


◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2006年10月23日 12:38

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コメント

空気を読もうとして、コメントしないようにしていました。
反応がなくて、ごめんなさい(^^;

このライフスタイル論は私の根幹の一つです。
なので、これを早々とテーマにして頂いて「あー、ちゃんと分かってくれているんだ」と嬉しくなります。

実際のプロジェクトでは、えなりかずきくんの例を良く出します。
彼は21才の若い男性ですが、彼のような人をターゲットにして商品開発や広告を作ろうとして、20代前半の男の子をいくら調べても、彼の琴線に触れるものはできません。

それよりも、おばさま(おばさんではない(笑)。実はこれも大切)を徹底的に調査すれば、彼が「これが欲しいのよね!」と喜んでくれるものができる。

なぜか。えなりくんの
(2)ヴァリュー(Value) =価値観
(3)クライテリア(Criteria) =生活基準
が、おばさまのそれと一致しているからです。

(実際は、彼は高級外車を所有していたりするらしいですが、まあ、わかりやすいイメージとして(笑))

まだまだ楽しみにしています。
またコメントをつけさせて頂きますので、そのときはよろしくです^^

投稿者 Anonymous : 2006年10月23日 16:37

あ、先のコメントは森@シストラットでした、失礼(^^;

投稿者 森@シストラット : 2006年10月23日 16:38

著者森さん直々のコメント、ありがたく頂戴いたします!

えなりくんのような人をターゲットをする時に、
おばさまを調べることで、かれのヴァリュー、クライテリアが
わかるというのは実に興味深いです。

ということは、リーチしにくいターゲット、つまり
調べにくいターゲットの意識・行動を調べるのに、
表層は似てなくても、深層が似ている、別のリーチしやすい
代替ターゲットを見つけて調べるという手があるんですね。

投稿者 松尾順 : 2006年10月23日 22:04

そう、そのとおりです(^^)v
もっとも、それはかなり高度なテクニックですから、普段は使いませんが^^

投稿者 森@シストラット : 2006年10月24日 03:31

このような考えがあることに、深く納得いたしました!
心理って深いですね・・・・けどおもしろい!
役に立ちました。ありがとうございました!

投稿者 ヒロ : 2008年12月13日 00:59

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