事前リサーチの効用

新規事業計画作成のためにさまざまなリサーチを行い、
入念なシミュレーションを繰り返す。

それでも、いざ実行に移してみると、
当初の事業計画通りに進むことはほとんどありません。

だから、事前のリサーチはやっても無駄だという極論を
言う人もいますね。

実際、実行段階を「テスト」とみなして、とにかく始めてみる。
そして、市場の反応を見ながらこまめにマネジメントサイクル
(Plan-Do-Check)を回し続けることができればリサーチは
それほど重要ではないかも知れません。


ただ、事前リサーチの意外な効用としては、
事業立ち上げの中で直面するであろう壁を乗り越える「勇気」を
与えてくれるというものがあります。


育児休業者や介護休業者の職場への復帰支援や、
保育所・託児所関連サービスなどの新規事業を手がける
(株)ワーク・ライフバランス。

同社社長、小室淑恵氏の日経新聞のコラム(私のビジネステク)
によれば、上記事業構想のため、100人以上の育児休業経験者
を探し出し、徹底的にヒアリングをしたそうです。


「職場復帰するつもりで育児休業を取ったのに、復帰後、
 仕事についていけるか不安になり、離職を考えている」

「職場復帰できず会社を辞めてしまったが、その後悔があり
 子育てを楽しめない」

小室氏は、こうしたさまざまな悩みや課題をしっかりと
リサーチした上で事業化を果たしました。


しかし、同社のサービスを企業に導入してもらおうと100社ほど
訪問しても、最初の1年間はまったく話を聞いてくれなかった
とのこと。

景気が悪かったこともあり、

「福利厚生を削減しているくらいなのに、
 育児休業復帰支援なんて考える余裕がない」

という企業が大半でした。


さすがに100社に断られると、小室氏も
「もしかしてニーズがないのかな」と自信が揺らぎました。

そんな小室氏を支えたのが、
徹底した事前リサーチでした。

「あんなに悩んでいる人たちがいたのだから、
 必ずニーズがあるはず」

と、自分の事業に対する自信を取り戻すことができたそうです。


現在、育児支援に対する企業の関心も高まり、
同社のサービスは企業に浸透しつつあるようですね。

投稿者 松尾 順 : 2006年12月13日 11:08

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トラックバック時刻: 2013年09月21日 20:03

コメント

リサーチはラーニングプロセスなんです。
SSM的にいうと線の下にあるもの(論理世界にあるもの)で、現実は線の上にあります。

線の下のものと線の上のものを比較することで、現実に対する豊かな理解ができるわけです。
リサーチの結果や数値も重要といえば重要ですが、現実の顧客や市場ををより理解するツールとして機能させればいいわけです。

リサーチなしに現実世界を学ぼうとしても、自分たちの近辺の情報からでしか構築できません。PDCを細かく回すときでも、適切な外部インプットをどこかで得られなければ、アイディア枯れを起こします。
自分たちだけではたどり着けない、外部からのインプットを得る手段のひとつがリサーチなわけです。

投稿者 菅原 : 2006年12月13日 13:14

菅原さん、まいど!

まさに、リサーチはラーニングプロセス。
腑に落ちました・・・!

収益計画のシミュレーションも、数字はいくらでも恣意的にいじれるので、実はあまり数字自体は重要ではない。むしろ、も重要なのは、収益につながる要素、費用つながる要素が何で、どれが制御可能で、どれが制御可能でないかをしっかり把握することなんですよね。

投稿者 松尾順 : 2006年12月13日 13:39

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