シンプルマーケティング(16)意味性の純化と広告戦略
シンプルマーケティングで言う「意味性の純化」とは、
「記号」と「意味」の双方向一致を強化することでした。
これ、まだわかりにくい人もいらっしゃると思うので、
再度、具体的に説明します。
「吉野家」という店舗名(記号)を聞けば、
うまい、早い、安いの「牛丼」(意味)をイメージしますよね。
現在、吉野家には「豚丼」なども置いてありますが、
それらは連想されるイメージに上ってきません。
つまり、記号→意味の連想が強い。
一方、「牛丼」という商品カテゴリーやそのイメージ(意味)
を見たり聞いたりしたら、吉野家を連想する方が多いと思います。
つまり、意味→記号の連想も強い。
この双方向が強い、つまり「意味性の純化」に成功している
ブランドは、ほとんどの場合、その商品カテゴリーにおける
ナンバーワンブランドです。
吉野家が「牛丼」カテゴリーにおけるナンバーワンブランド
であることは異論はないですよね。(復活途上ですが)
さて、「意味性の純化」にいったん成功したとしても、
競合製品の登場や、節操のないブランド拡張、多角化などに
よって、記号と意味の双方向一致度合いが弱くなっていくと、
ナンバーワンブランドの座から落ちてしまう可能性が
出てきます。
前回(15)でご紹介したセイコーやカゴメの事例は、
ブランド拡張や多角化の失敗例でした。
ですから、企業としては「意味性の純化」を
弱体化させないようにしなければなりません。
ただ、現実はそうではないですね。
とりわけ、広告戦略において顕著です。
広告のキャラクターやメッセージが頻繁に変わる
一貫性のない広告が目に付きます。
その最大の失敗例として挙げられるのが、
90年代のキリンビールの「キリンラガー」でしょう。
キリンラガーの場合、熱処理された苦味のあるビールという
従来のイメージを「生ビール」化して、薄めてしまっただけでなく、
キャラクターを頻繁に変える広告を続けました。
こうした一貫性を欠くコミュニケーションが客離れを招き、
97年に、ついにアサヒの「スーパードライ」に首位の座を
奪われてしまうわけです。
私も以前、キリンラガーの過去の一連のTVコマーシャルを
見る機会がありましたが、「キリンラガー」の意味がぶれ続けて
いたため、
「これじゃあ、明確なブランドイメージが形成できないな・・・」
と感じたことを覚えています。
シンプルマーケティングの著者、森さんは
“ブランディングに成功するためにはブランドの意味性を明確にし、
それを極力反映させる広告をつくって「いける」と確信したら、
むやみにいじくりまわさないことが肝要なのである。”
と述べています。
なお、森さんによれば、広告戦略については
・記号性連続性
・意味性連続性
の2つの方向性があるそうです。
「記号性連続性」とは、
タバコの「マールボロ」の代名詞となっている「カウボーイ」
のように、時代を超えて「男っぽさ」という意味を保持できる
ビジュアル(キャラクター)を使用しつづけること。
一方、「意味性連続性」は、
コカコーラが、「若者の象徴」という意味を伝えるために、
その時代時代で異なるビジュアル(キャラクター)を採用する
ことです。
1940年代のコカコーラは、当時人気の若大将、加山雄三が
登場してたそうですが、今は、倖田來未ですよね。
そして、記号性連続性の場合、
いつの時代にも通用する不滅のビジュアルを
表現するのが難しいこと。
また、意味性連続性の場合は、
そのつど、時代にふさわしい素材を探すのが難しいことです。
どちらにせよ、広告戦略も一筋縄ではいかない。
口で言うよりもはるかに難しいことではあります。
投稿者 松尾 順 : 2006年12月25日 11:18
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