言葉の呪縛から思考を解き放て!

ミクシィに「マーケティングコミュ」というのがあって、
いろいろとトピが立つわけなんですが。

最近、

・「ブランド・コミュニティ」の定義がよくわからないので、
 教えてください

・「シチュエーショナル・マーケティング」がどういうものか
 いろいろ調べてもわからないので、他に情報源があったら
 教えてください

といったトピが気になってしょうがありません。

どちらもマーケティングを学んでいる学生さんからのもので、
質問自体がダメというわけではありません。

ただ、どちらの方も、

「言葉」

自体に囚われすぎているように感じるんですよね。


彼らが知りたかった

「ブランド・コミュニティ」

「シチュエーショナル・マーケティング」

のどちらも、まだ比較的新しい概念ですし、
万人が受け入れる確立された「定義」はまだ存在しません。


したがって、大切なのは、上記のような言葉で指し示された
現実の行動や現象(マーケティング施策など)に目を向けて、
それらの行動に共通する

「本質」

を理解することでしょう。


たとえば、

「シチュエーショナル・マーケティング」

について言えば、その本質は、

『ユーザーの置かれた時や場所などの状況によって変化する
ニーズに対応できる(対応する)マーケティング』

と言えるでしょう。(これは、あくまで松尾の見解ですが)


だとすると、こうした取り組みをしている事例は、
「シチュエーショナル・マーケティング」と銘打ってなくても
あちこちで見つけることができます。


また、人によっては

「シチュエーションマーケティング」
「状況マーケティング」
「コンテキストマーケティング」

と異なる言葉で指し示されているものも、
「シチュエーショナル・マーケティング」と同義、あるいは
類義語であることがわかるはずです。


しかし、ここで「言葉ありき」で考えてしまうと、
狭い枠組みでしか物事を見ることができなくなってしまう。

上記の学生さんたちの質問には、
そんな印象を受けているというわけです。
(私の考えすぎかもしれませんが)


そもそも、現実の世界に対して、言葉は常に後付けです。

つまり、

「行動・現象ありき」

です。


そろそろメディア的な賞味期限が切れつつある

「Web2.0」

だって、ユーザー参加型とか、ロングテイルといった
先行事例を観察していたティム・オライリー氏が、
後から強引に括ったものにすぎません。


ですから、例えば、

「Web2.0とは何か」

とか、

「そのサービスは、Web2.0的である・ない」

といった言葉を中心に据えた議論にこだわりすぎるのは
正直なところ、「不毛」だと考えています。
(もちろん、新たな言葉を起点に、別の新たなアイディアが
生まれる可能性はありますが。)


言葉は、その本質において
他のものとの「境界線」を作り出す働きがあります。

つまり、言葉によって物事は区別されるということです。

たとえば、四足の動物を見て「犬」と呼んだ瞬間から、
言葉としては、その動物は犬以外の動物ではなくります。

しかし、そもそも犬という動物がはじめから存在していたわけ
ではありません。私たちが一定の特徴を持つ動物に対して、
勝手に「犬」という名称を与えているだけです。

これは、他のすべての物事においても同じです。


私たちは、言葉を発明することによって、
高度なコミュニケーションを可能にしました。

しかし、上述したように、言葉の呪縛によって思考の広がりが
失われ、タコツボ的議論が繰り返される可能性がある。


アイディア発想をとりわけ大切にすべき私たちマーケターは、
言葉の呪縛から思考を解き放つべきだと改めて思います。

投稿者 松尾 順 : 2007年05月07日 13:18

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コメント

「薔薇は薔薇という名前でなくても、かぐわしく香るものだ」
映画「薔薇の名前(The name of rose)」のセリフです。
(1987年公開、監督:ジャン・ジャック・アノー、主演:ショーン・コネリー)

今回の松尾さんのご意見にピッタリの言葉だと思いませんか?

投稿者 金森努 : 2007年05月07日 13:38

金森さん、まいど!

なるほど、ぴったりの言葉です。
ありがとう。

なお、今回の拙文、

「言葉で語る前に、現場に行け、現実に向かい、まず自分の五感で確かめよ」

というのを最後に入れ忘れました。(^o^)

投稿者 松尾順 : 2007年05月07日 21:15

いやまったくそう思います。

投稿者 開米瑞浩 : 2007年05月08日 00:50

「製品と商品の違い」では煽り側にまわってしまいました。(泣)

拙ブログでも「○○とは」といった検索ワードでのアクセスが多く、はてなやWikipediaなど言葉の意味を調べる媒体の需要の大きさを実感しています。
でも、そこで調べた言葉がどんな使い方されてるか考えると、ちょっと不安になりますね。

投稿者 課長007 : 2007年05月08日 12:13

課長007さん、まいど。

>「製品と商品の違い」では煽り側にまわってしまいました。(

いいんじゃないでしょうか。
その議論の中から、何が得られるのかをはっきり意識していれば!

わたしも、よく言葉の定義は調べますけど、定義はひとつではないこと、周辺にさまざまな関連語があることを意識しながら、つまり、一歩下がってその言葉を多面的に見るように気をつけています。

こうした視点は、松岡正剛校長の編集学校で鍛えられたことなんですけどね。

投稿者 松尾順 : 2007年05月08日 12:26

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