従業員満足>顧客満足

「あ、この店員さん、仕事を楽しんでるな、
 職場や、共に働く仲間たちが大好きなんだろうな!」

こんな印象を持つ店員さんに出会えたら、
その店でのショッピングや食事はとても楽しい経験になりますよね。

その店員さんの幸福な気持ちが、お客さんにも伝染するのです。


近年、従業員が生き生きと働けることを重視する企業が
少しずつ増えてきています。

そうした企業の中で最も有名なのは、

「サウスウエスト航空」

でしょう。


同社では、

「顧客第二主義」(従業員第一)

を掲げ、

「従業員満足度(Employee Satisfaction)」

の向上を最も重要な経営指標としています。


もちろん、「顧客」はどうでもいいという意味ではありません。

「満足した従業員だけが、顧客に最高の満足を提供できる」

という信念を持っているのです。


この信念は、とても妥当な考えだと思います。
しかし、これまでも、また現在でも、

「顧客満足」

は重視するけれど、

「従業員満足」

にはあまり関心を持たない経営者が
あいかわらず多いのではないでしょうか?


しかし、上記のような本質が見えていない経営者も、
次のような調査結果を知れば気が変わるかもしれません。


63社、合計4700人の顧客と従業員を対象に行われた
イメージ調査があります。

これは、自分が働く企業(従業員の場合)、
また、自分が取引する企業(顧客の場合)に対する

「好感度」

を測定することが目的でした。


ここで、「好感度」は、

「その企業を一人の人間だとみなした場合に、
 どんな性格だろうか?」

という直感的な評価で答えてもらっています。

そして、これに対する具体的な回答としては、

「親しみやすい」「明るい」
「率直である」「面倒見がよい」

といったものが用意されていました。


この調査でわかったことが2つあります。

ひとつは、

従業員と顧客の見解(評価)には強い相関関係があること

です。

もうひとつは、

従業員と顧客の見解(評価)には大きなギャップがあり、
従業員が、顧客よりも当該企業に対して

「よいイメージ」

を抱いていた企業の売上伸び率が高いということです。


このことから、自分が働く企業に

「好意的な感情」

を持っている従業員は、顧客に対して強い好感度を与える

ということが言えます。


これは、冒頭に書いたように、

「感情の伝染」

とでも呼べるものです。

自分が好きな仕事や職場であれば、
自然と動きも軽やかになるでしょう。

サービスの質が向上します。

また、すばらしい笑顔で顧客に接することができる。
人間味のある会話も交わせるでしょう。

その結果、その企業は顧客の支持が高まり、
売上の伸びにつながるというわけです。


サウスウエスト航空のトップはもちろん、
こんな調査結果を見せる必要はありませんね。


しかし、こうした「道理」がわかっていない企業は
ばかげたミスを犯してしまいます。

たとえば、某百貨店チェーンでは、
巨費を投じて店舗をリニューアルしました。

ところが期待通りの売上が上がりませんでした。


リニューアルといっても、
それはあくまで顧客が見える部分のみでした。

販売スタッフ用の施設は手つかず。
休憩室は粗末なまま。
商品管理室は以前よりも狭くなっていました。

その結果、販売スタッフの士気は上がらず、
そのぱっとしないスタッフの感情が顧客にも
伝わっていたのです。


この百貨店の問題点を探るための調査の対象となった
顧客の一人のコメントが印象的です。

“リニューアルといっても、単なる化粧直しだったようね。
 肝心の意識は何も変わっていないもの”


ハードをいくらいじろうが、
やはり顧客満足を大きく左右するのは人的サービスです。

「従業員満足なくして、顧客満足なし」

ということを企業は深く認識すべきでしょう。


なお、従業員の自社に対するイメージを上げる、
つまり、従業員に愛される企業となるために重要なポイント
は次の3点だそうです。

・研修制度
・マネジメントシステム
・権限委譲の度合い

抽象的な表現ですが、ひらたく言えば、

・従業員の成長の機会を与えること
・明確なビジョンに基づく優れた企業経営が行われていること
・現場での裁量の余地が大きいこと

と解釈できるでしょうね。


以上は、次の記事を元にしました。

「従業員に愛される企業は業績が高い」
(Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー October 2007)

投稿者 松尾 順 : 2007年09月11日 10:54

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コメント

こんにちは。金森です。
松尾さんもお気に入りの島田紳助さんの最新著「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」の中にも、「お客よりも従業員を満足させよ」という項目がありますね。
非常に正しい考え方だと思います。
自分のことを考えても、地方の講演会に呼ばれた時、同じ報酬でも行き帰りの電車をグリーンにしてもらえたり、ホテルがちょっといい部屋にしてもらったりしていると、俄然「頑張ろう!」と思います。
(そうでなくても頑張るんですけどね。プロだから。)
ただ、従業員満足は勘違いした人が出ると困るなとも思います。
何だかダレたアルバイトを放任しているコンビニオーナー。
一度、オーナーに「何とかした方がいいんじゃないの?」と言ったら、「いやぁ、注意して不満もたれると辞められちゃうもんで・・・」とのこと。
完全に勘違いしてますね。こういうケース。
正しい理解が広まることを願って止みません。

投稿者 金森努 : 2007年09月12日 14:16

金森さん、まいど!

そうでしたそうでした。島田紳助さんの本にも書いてあったのでした。忘れてましたよ。

そのコンビニのアルバイトですが、満足度を聞いてみたらきっと満足度低いと思いますよ。辞められないように甘やかしたところで、満足度が向上するはずはありません。確かに不満は減るかもしれませんが。

投稿者 松尾順 : 2007年09月12日 14:50

「伸びてる会社は社員の笑顔に嘘がない」

決してDHBRさんに対抗するわけではありませんが、^^;
「ES CS」や「従業員満足 顧客満足」は拙ブログの人気フレーズでもあり研究(?)テーマの一つ。

「社員力」しかり、ここ一年ぐらいで徐々に盛り上がってきてることを実感してます。

投稿者 課長007 : 2007年09月12日 21:30

課長007さん、まいど!

「伸びてる会社は社員の笑顔に嘘がない」

本質を突いた言葉ですね。

実際、お客さんは、表面的な作り笑いと、心からの笑顔の違いを感覚的に察することができますよね。繁盛する店とそうでない店はそんな微妙な差のように思います。

投稿者 松尾順 : 2007年09月13日 00:58

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