長期的視点が成功をもたらした資生堂の経営改革

資生堂の業績は絶好調。

2008年3月期の営業利益は

580億円

と過去最高益を更新する見込みです。
(日経情報ストラテジー、FEBRUARY 2008)

売り上げ・利益とも前年を上回っており、
通期で売り上げ100億円、利益で20億円の上方修正
を行っています。

業績に大きく寄与しているのは海外事業。
海外の現地売上高は2桁の伸びです。

しかし、国内事業も、
化粧品市場が横ばいを続ける中、
店頭売り上げが1%増と堅調な結果を得ています。


こうした好調な業績の要因としてはまず第一に、ご存知

「メガブランド戦略」

の成功がありますよね。

(関連記事)
*資生堂のメガブランド戦略・・・悪魔のスパイラルからの脱却
*資生堂のメガブランド戦略・・・ブランドではなく意味を多様化せよ


従来は100以上もあった雑多なブランドを統廃合し、
資生堂が展開する各カテゴリー(17カテゴリー)の
それぞれでトップになれるブランドを確立するために、
経営資源を集中投下した。

まさに「選択と集中」を行ったわけです。

その第一弾が、
メーキャップ化粧品の「マキアージュ」でした。

そして、苦戦していたヘアケア分野では、

「TSUBAKI」

を投入。

発売初年度は50億円を超える予算を配分し、
一気にトップシェアを獲得しました。

同社社長、前田新造氏によれば、
先行投資型の製品であり、3年目以降に利益が出ればOKとしていた
「TSUBAKI」ですが、計画をはるかに上回る1.8倍の売り上げを達成したおかげで、
当初から利益が出るようになったそうです。


一方、販売の現場でも大胆な改革を実行に移しました。

同社全社員2万6千人のうち1万人を占める美容部員
(同社ではビューティコンサルタント:BC、以下「BC」)の

「販売ノルマ」

を2006年春から撤廃。

顧客から直接評価してもらう仕組みに変えました。
(意外なことに、従来はBCの評価は、社内の支店長や部長が
行っており、直接の顧客からの評価を仕組みとして得ることは
やっていなかったのです)


(参考記事)
*脱ノルマ・・・資生堂の挑戦


この新しく導入した顧客満足度調査は、
接客が終わったら顧客にアンケートを渡し、
自宅で回答して投函していただく方式です。


当アンケートの当初の回収率は17%程度でしたが、
現在は22%、およそ5人に1人は回答してくれています。

これはかなり高い回収率と言えるでしょう。

しかも、アンケートの自由回答欄には、
回答者の約6割の顧客が意見等を書いてくれており、
大半がお褒めの言葉や応援の言葉だそうです。


顧客満足度調査の結果は、
毎月1回、BC一人ひとりにフィードバックしています。

自由回答欄の記述内容も原文のまま見せます。

したがって、BCは、個々のお客さんが自分の接客をどのように
評価してくれたかを知ることができます。

自分が接客した顧客全体の平均値ではなく、
顧客それぞれに対する接客を振り返り、接客を改善することが
可能になったというわけです。


前田社長によれば、販売ノルマがあった頃は、
たとえば今日の売り上げ目標が40万円だったとして、
それを達成してしまえば息が抜けてしまうことがあった。

ところが、顧客満足度調査の仕組みを導入してからは、
最後のお客さんまで気が抜けなくなった。

顧客一人ひとりに対して真剣勝負を挑まざるを得ず、
前田社長曰く、

“お客様が先生のような存在になり、BCさんも本当の意味で
 成長していくという感じがしますね”

なのだそうです。


前田社長は、販売ノルマを撤廃した際、
改革を優先するから売り上げが下がってもいいと明言しました。

なぜなら、

“売り上げよりも何よりも、5年、10年を見た時に、
 お客様からの信頼をどれだけ獲得することができるか、
 全社員のエネルギーを集中させることが大事だったんですね”

と考えていたからです。


「メガブランド戦略」にしろ、
店頭における「販売ノルマ」の撤廃にしろ、
資生堂の改革の核には、

「長期的な視点」

があったことがおわかりですよね。


目先の売り上げ・利益に一喜一憂しない。
顧客の満足、そして信頼を勝ち得ることが持続的な成長のカギ
であることを示し、それに前田社長はコミットした。


短期的な視点しか持たず、
目先の収益確保に血眼になった企業は、
やはり短期で没落する。

しかし、長期的な視点に立った経営ができる企業は、
長きにわたって栄えるものだということが、
資生堂の改革の成功から実感できますね。

資生堂はもう135年も続いている長寿企業なのです。

投稿者 松尾 順 : 2007年12月27日 17:38

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コメント

資生堂さんすごいですね~。
ノルマをなくすなんて大改革ですね。
心から顧客満足を目指すとお客様って自然と応援してくれますよね。だから提供する側も楽しみながら成長して、もっといいものをお客様に提供できる、いいスパイラルですね。
じつは私が前いたサロンの名前はC's(カスタマーズサディスファクション)だったんですよ!
顧客満足に関してはかなりストイックなオーナーでとても勉強になりました。
でも私は自分で勝手に高めの目標作って自分の首を自分でしめてたかんじがあります。今思えば。
今度の仕事ではその辺考慮してお客様の満足に焦点をしっかり合わせたいですね。
まつおっちさんのブログでお勉強させていただきます!!

投稿者 miki : 2007年12月29日 01:18

mikiさん、コメントありがとうございます。

サロンの名前が、C'sなんて「まんまやんけ!」ですね。(笑)

自分で高めの目標を作っていたのはすばらしい!
つらかったでしょうけど、自分を大きく成長させて
くれたんじゃないでしょうか?

投稿者 松尾順 : 2007年12月31日 14:18

明けましておめでとうございます。
そうなんです、ストレートな店名ですよね。
高めの目標は成長させてはくれましたが、いつもぎすぎすして
自分自身満足感がなかったので、今年からは実現可能な目標にします!
まつおっちさん、今年も宜しくお願い致します。

投稿者 miki : 2008年01月04日 12:28

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