ギフトエコノミー・・・合計0ドル、お支払いはペイフォワードで!

カリフォルニア州立バークレー大学近くの

「カーマレストラン」

は、土曜日の夕方5時から10時までオープンしているお店。
毎週、40-50席ほどの店内が満席になる賑わいです。
(オルタナ、FEB. 2008 No.6)


ネパール料理をベースとするインド風メニューは、
ネパール、イラク、ベトナムからの移民シェフが作る本格派。

サラダ、メインディッシュ、デザートまで、
豊富なメニューが並んでいます。

ところが、メニューには値段が書かれていません。
なぜなら、食事後にいくら払うかを「客」が決める仕組み
だからです。


客が料理を食べ終わると、
伝票の代わりに封筒が置かれるそうです。

その中に入っているカードには、

「合計0ドル」

という文字と共に次のようなメッセージが!

寛容の精神に基づいて、この食事はあなたの前に来た
 だれかからの贈り物です。私たちは、あなたがこの循環を
 続けてくれることを願っています。
 もし、これから訪れるお客様へこの輪をつなげたいと思ったら、
 封筒に無名の寄付を残してください。」


この封筒にお金をいくら入れるかは客の自由。

しかも、客から回収された封筒は店内のポストにしまわれ、
閉店後に開封されるため、誰がいくら払ったか、
あるいは払わなかったかは、一切分からないようになっています。


カーマレストランの創設者の一人、

ニプン・メーター氏

によれば、このレストランのコンセプトは、

「ギフト・エコノミー」

です。


ギフトエコノミーとは、
自ら進んで与えることを前提に成立する経済。

需給関係で価格が決まり、貨幣の支払いと引き換えに
モノやサービスが提供される市場経済とは異なり、
ギフトエコノミーでは、お互いの善意と信頼関係が必要です。

ところが、この店では、ギフトに対して直接の見返りを
期待するのではなく、信頼関係のない見知らぬ次の人に
対してギフトを送るという思想、すなわち

「ペイ・イット・フォワード」

が根底にあります。
(映画「ペイフォワード」で描かれた姿)


カーマレストランは07年3月にオープン。
当初、ギフトエコノミーの手法が成功するかどうか
わかりませんでした。

しかし、ふたを開けてみると、
毎週土曜日の開店中に訪れる客は平均70-100人程度。

座席数を考えると、
わずか5時間で約2回転していることになりますね。

売上も常にコストをカバーし、
2倍以上になることもあるそうです。


こうした、客が支払額を決める

「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ」

は同店だけでなく、
ユタ州、コロラド州、ワシントン州などにもあり、
増加の兆しを見せているとか。


お互いに助け合うことで成立する共同生活を営む、
社会的動物である人間の「遺伝子」に組み込まれている

「互恵性」

を活かしたギフトエコノミーに基づくビジネスは、
これから面白い発展を見せてくれそうです。


そういえば、イギリスのロックバンド、

「レディオヘッド」

は、昨年末にリリースした最新アルバム

「In Rainbows」

のダウンロード販売で、
購入者が価格を決める方式を採用して話題を
呼びましたね。

これは、カーマレストランの

「ギフトエコノミー」

コンセプトであるとはちょっと違いますが。


レディオヘッドの試みもまた、

「成功した」

と言えそうです。

有料でダウンロードしたユーザーは30-50万人。
平均購入価格は、およそ6ドル(660円)と
推定されており、総売上2-3億円に達します。

メジャーなレコード会社を介さない
ダイレクト販売ですから粗利も大きいでしょう。


*カーマレストランについての出典

「オルタナ」(Feb.2008 No.6)

*オルタナ公式サイト
 http://www.alterna.co.jp/

投稿者 松尾 順 : 2008年02月04日 04:53

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コメント

勉強になります。
それで成り立つんですね~。

投稿者 りばーさいどmk : 2008年02月04日 11:15

りばーさいどmkさん、コメントありがとうございます。

スタッフはボランティアだとか、
宣伝しなくても口コミで客が増えるとか、
うまくいく要因は他にもいろいろあるようです。
(紹介から割愛しましたが)

なお、「ペイ・アズ・ユー・ウイッシュ」は、
日本にも、投げ銭、お布施式の伝統がありますけどね。

投稿者 松尾順 : 2008年02月04日 11:39

http://kikuchiyumi.blogspot.com/2011/10/blog-post_16.html
で紹介させていただきました。とても参考になりました。ありがとうございます。

投稿者 きくちゆみ : 2011年10月16日 18:55

すばらしい試みですね。
こんな試みを日本でもできたらいいなと思いますが、日本ではどうなるでしょう? 私はちょっと懐疑的です。
欧米では、なんだかんだ言っても背後に「神」がいる。誰も見ていなくても目には見えない誰かが見てる、という意識が人々の中にしみ込んでいる。
一方日本は、恥の文化と言われるように、「誰か不特定多数の他人の目」が「神」の代わりをする。誰かが見ていたら、「恥をかかないように」道徳的な行動をするけれど、誰も見ていなかったら・・・。
なんて思うのは私だけでしょうか・・・。

投稿者 うぴょちゃん : 2011年11月22日 22:46

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