ユニバーサルカーブと草食系男子

1匹(頭)のメスを巡って、
2匹(頭)のオスが激しく争う。

発情期を迎えた動物たちが、
何十万年も前から繰り返してきた行為ですね。


他のオスと戦い、勝利を収めることによって、
オスは自分のたくましさ、生命力をメスに示す。

メスもその魅力に惹かれて、オスを受け入れる。


私たち人間のオス(男)も同様に、
好みのメス(女)を獲得し、またメスから選ばれるために
オス同士での「強さ」を競い合ってきました。


昔の西部劇などでは、
1人の女性を巡って決闘をするという場面が
ありましたよね。

まあ、さすがに現代では、
恋人を巡って殴り合うという人は少ないと思いますが、
変わりに様々な方法で男性は競い合ってます。

例えば、スポーツ選手が持つような行動な身体能力や、
学歴などで示される高い知性だけでなく、お金であったり、
地位・権力であったり、車などの所有物などによってです。


さて、女性を獲得するための男性同士の戦いは、
自分の血を後世に伝えるために遺伝子に組み込まれた
プログラムと言えます。

このため、基本的に、
男性は思春期を迎えると攻撃的になります。

そして、他の男性に負けたくないというプライドのために、
すぐに揉め事を起こしがち。

時にやり過ぎて、
相手を殺してしまうことにもなります。


ですから、横軸に年齢を取ったグラフで、
年齢別の殺人率(他人を殺めてしまう率)を描くと、
男性の20歳前半のそれがぐんと高くなるカーブに
なります。

つまり、右側(20代前半)にグラフのピーク(頂点)
があり、ガクンとさがって、そのあとは年齢が高く
なってもほぼ横這いが続くので、近年ネット業界で
流行った

「ロングテール」

のような形をしています。


このグラフの形は、
世界のどの国でもほぼ同じであることが
わかっているため、

「ユニバーサルカーブ」

と呼ばれています。

国は変われど、
男性の気質は変わらないということですね。


ところが、近年、日本では

「ユニバーサルカーブ」

が消滅してしまいました。

若い男性が以前よりも攻撃的でなくなり、
殺人を犯さなくなったのです。
(凶悪さは増加しているかもしれませんが)


年齢別殺人率のグラフを見ると、
ほぼ平坦な線が続きます。

そして、若年男性よりも、
むしろ中年男性の殺人率のほうが
若干高いくらいなのが最近の傾向なのです。


なぜ、日本の若い男性は
以前ほど殺人を犯さなくなったのでしょうか?

ひとつには、豊かな社会となった日本では、
殺人を犯すことによって失うものがあまりに
大きいから、自制するようになったという点
が挙げられます。

多くの若者が貧困にあえぐ国では、
失うものが少ない上に、その貧困さからくる絶望が
攻撃性をより高めているのと対照的ですね。


ただ、もう一つ大きな理由があると思います。

それは、好みの女性を獲得するために、
また自分を選んでもらうために、

強さ、たくましさ

を女性に示す価値が低下してきたという点です。


現代の女性も、
地位、名誉、金、容姿を兼ね備えた

「白馬の王子さま」

が自分を迎えに来てほしいという願望は
持っていますよね。

しかし、現実を振り返ると、
「白馬の王子さま」と呼べる男性はほんの一握り。


実際には、それほど稼ぎも良くない男性と結ばれ、
共働きで生きていかねばならない可能性が高いこと
を自覚しています。

であるなら、いたずらに男性に

3高(高学歴・高年収・高身長

を期待するよりも、むしろ

3低(低姿勢、低リスク、低依存)

の男性を選ぶことを志向するようになってきたのです。


3低の男性なら、
家事・育児も喜んでやってくれるだろうし、
上から目線の物言いをせず、他愛のない会話
にもつきあってくれるからですね。

つまり、端的に言えば、
現代の女性が求めているのは

強さ、たくましさ

よりも

かわいさ

なんですね。


こうした女性の男性を選ぶ基準の変化が
生み出したのが、このところ注目を集めている

「草食系男子」

でしょう。


「草食系男子」を

‘お嬢マン’

と呼ぶ牛窪恵さんによれば、
草食系男子とはおおよそ次のような人。

・おっとりとしてマイペース
 「まあなんとかなる」とのんびり構えている

・多くはキレイ系
 スリムで少食。ファッション、コスメへの関心高い

・女の子との食事も基本ワリカン
 堅実で消費にしっかりメリハリをつける

・親・家族と仲良く、女友達にも紳士的
 同じ部屋に泊まっても安全。基本、狼に変身しない


こんな穏やかな草食系男子(年齢的には20-35歳が多い)
が増殖した結果、若年男性の殺人率が低下し、

ユニバーサルカーブの消滅

という現象としても現れてきたというところでは
ないでしょうか。


それにしても草食系男子の増殖は、
日本の消費行動や文化に大きな影響を
与えつつありますよね。


ちょっと腰を入れて、

「草食系男子」

の生態を研究してみる必要が
ありそうです。


(参考文献)

『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』
(牛窪恵著、講談社プラスアルファ新書)

投稿者 松尾 順 : 2009年04月08日 10:52

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