過度の因果関係づけにご注意!

私たちは、日常に起こる様々な出来事を
無理やり‘関係づける’ことが多いですよね。

「無理やり」というのは、
たいした根拠も確信もなく、
無邪気に関係づけてしまうということです。


例えば・・・

あなたは、

「雨男」(あるいは雨女)

を自認してますか?

あなたが旅行などに行くと必ず雨が降る!
せっかくの観光が台無し・・・


もちろん、X-メンの「ストーム」じゃあるまいし、
自分が雨嵐を呼び寄せてしまうと、
本気では思ってないですよね。

それでも、自分と雨との間になぜだか関係が
あるように感じて、自分の身の不運を悲しんでいるわけです。


こうした物事を関係づけずにいられない私たちの思考は、
とりわけ「原因と結果」、すなわち「因果関係」で捉よう
とする傾向が強いようです。


なぜ私たちは、出来事の中に

「因果関係」

を発見したがるのでしょうか?

おそらくそれは、

「未来を予測(予知)したい」

という欲求があるからでしょうね。


というのも、原因と結果の関係がわかれば、
原因を「予兆」として捉えることができ、
その後どんな未来が展開するかが読めます。

そうすれば、事前に十分な準備や
適切な対応が可能になりますからね。


ただ、覚えておきたいのは、
出来事の起こり方には

・「因果関係」(シークエンシャル)

だけでなく、

・「共時関係」(シンクロニシティ)
 なんらかの関係のある事象が、同時に起きている

・「並行関係」(パラレル)
 無関係の事象が、ばらばらに並行して起きている

があるという点です。


ところが、私たちはほとんどの出来事の中に

「因果関係」

を発見しようとしてしまうため、
「過度の因果関係づけ」をしてしまいがち。


例えば、

「ジャンクフードばかりを食べている
 青少年の素行は乱れがちである」

みたいな言い方をする人がいます。

この言い方には、ジャンクフードが、
素行の乱れの「原因」であるかのような
ニュアンスが感じられますよね。
(ジャンクフード嫌いの人なのでしょう)


でも、実際のところ、
ジャンクフード自体が青少年の行動に影響を
与える大きさは限定的だと思います。

この場合、むしろ「ジャンクフードを食べること」
と「素行の乱れ」は共時関係とみるべきです。

おそらく、「家庭環境」に根本的な問題があるために、
その結果として、「食生活の悪化」と「素行の乱れ」
の2つの出来事を同時にもたらしている可能性の方が
高いんじゃないでしょうか。
(もちろん、これも検証する必要のある因果関係ですが)


このように人は、しばしば自分の価値観や偏見に基づき、
都合の良い因果関係として出来事を見てしまうのです。

これ、ポジティブな因果関係を見るのであれば、
まだいいのですが、ネガティブに捉えがちだとまずいですね。

例えば、朝出社した際、
廊下で出会った同僚に「おはよう!」と挨拶したのに、
相手からはシカトされてしまった。

シカトされたことは確かに不愉快な経験ではあります。

しかし、

「俺のこと嫌ってるんだ、だから無視したんだ」

などと、自分勝手にネガティブな因果関係で
考えてしまうと、ブルーな気分が続いてしまいますよね。

実のところ、無視した同僚は、
単にまだ寝ぼけていてボーッとしていた
だけかもしれません。

あるいは、身内に不幸があったために、
落ち込んでいたのかもしれません。

つまり、必ずしもあなたに
原因があるとは限らないわけです。


ですから、毎日起こる様々な出来事を
まずは虚心坦懐に受け止める。

そして、その出来事と他の出来事との間の
因果関係づけに、自分自身の偏った考え方や価値観が
反映されていないか客観的に考えてみる習慣をつける
ことをお勧めします。


(参考文献)

『こころと社会‐認知社会心理学への招待』
(池田謙一、村田光二著、東京大学出版会)

投稿者 松尾 順 : 2009年04月16日 13:20

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コメント

事例として面白い記事を見つけました。
ご参考まで。
「SNSユーザーの学生は成績が悪い」:調査結果
http://news.livedoor.com/article/detail/4114349/

投稿者 金森 : 2009年04月17日 12:39

金森さん、まいど!

面白い事例、ありがとうございます。

冒頭の文章を読むと、
この書き手はフェイスブックに
否定的のようです。

飲酒と運転という明らかな因果関係を
持ち出すことで、フェイスブックと学業
との間に因果関係があるかのように
書いていますね。

投稿者 松尾順 : 2009年04月17日 12:53

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