様々なビジネスに活用されるアンカリング効果

前回、アンカリング効果の力を踏まえると、
売り手側が、価格交渉を有利に進めたければ、

「ふっかけた方が得」

ということをお話しました。


では、買い手側が、
売り手のこうした策略を避けるためには
どうしたらいいでしょうか?


最初に相手が提示してきた金額が、
とんでもないものだったら、
具体交渉に入らず、いったん席を立って
時間を置き、改めて再交渉を行うのが正解。


なぜなら、ありえない金額だと
わかっていても、提示された金額に
影響を受けてしまうのです。

なんとか調整しようと交渉を始めたら、
その瞬間から、アンカリング効果の罠に
落ちることになります。

だから、ふっかけられたら、
まず席を蹴って数字をリセットし、
再交渉の機会を持つべきなのです。


さて、アンカリング効果は、
ビジネスのあらゆる場面でまさに
‘効果的に’使われています。


たとえば、寿司屋のメニュー、
にぎり寿司(セット)の価格は
たいてい

「松」「竹」「梅」

の3種類ですね。

価格設定としては、

松・・・2800円
竹・・・2100円
梅・・・1500円

といったところでしょうか。

お客さんの懐の具合もあるでしょうけど、
多くの場合、「竹」が選ばれます。

おそらく、
この選択プロセスの背景には
こんな心理が働いているのです。

「梅」だと、なんだか
安さだけで選んだみたいで、
ちょっと恥ずかしい。

でも、「松」は高いなあ。

それに比べると「竹」は
安いから「竹」のにぎりにするか。

つまり、「松」が基準点(アンカー)
となって、実はそれほど安くもない

「竹」

が安く見えてしまうというわけです。


様々な物販店でも、
客層からみてめったに売れそうもない

値段高めの高級品

を陳列することで、
店舗の格を上げると同時に、
他の本当に売りたい商品を
相対的に安く見せるという手法が
採用されています。

いわゆる

「見せ筋」

ってやつですね。


また、これは倫理的にどうかなと
思いますが、新築の住宅を売り出す際、
最初に短期間だけ、あえて高い価格を
設定して売り出し、顧客の反応を
見ながら徐々に下げていくという
住宅販売を採用するところがあります。


例えば、立地や物件内容的には、
明らかに割高な1億円といった価格で
売り出すのです。

ここでは、1億円が基準点となり、
値下げした場合には、

「3千万円値下げして7千万円で販売」

などとチラシで訴求できます。


すると、お客さんは、

本来、当物件の妥当な価格はいくらか

という判断をする以前に、
元値より3割も安くなってお得だなという
印象を受け、購買意欲が刺激されます。

当初の1億円で売れることはないにしても、
売り手としては、利益の大きい価格で
売れる可能性が高くなるというわけです。


米国の不動産王、ドナルド・トランプは
以前、次のような告白をしたことがあるそうです。

“部下がやってきて、(建築見積)価格は、
 7500万ドルになりそうですという。

 そこで客には、「1億2500万ドルかかりますよ」
 と言っておいて、結局は1億ドルで建ててやる
 わけです。

 要するにずるいことをやってきたわけです。
 でも相手は、いい仕事をしてくれたと思っている。”


アンカリング効果とは、要するに
比較可能な「基準点」を示すことで、
相対的な「差」が際立って見える効果です。

ですから、価格以外にも使えます。

例えば、自分が痩せてるように
見せたければ、自分より太めの友人と
歩くとか(笑)


ただ、アンカリング効果は、
価格において最も顕著に見られることが、
行動経済学では判明しているので、
買い手側はほんと要注意です。


また、商売(売り手)としては、
倫理的な問題をクリアしつつ、
うまく活用したいところです。


(参考文献)

『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』
(ウィリアム・バウンドストーン著、松浦俊輔、小野木明恵訳、青土社)

『経済は感情で動く』
(マッテオ・モッテルリーニ著、泉典子訳、紀伊國屋書店)

『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房

投稿者 松尾 順 : 12:36 | コメント (0) | トラックバック

「ふっかけた方が得」のアンカリング効果

近年注目を集めている

「行動経済学」
は、人間が必ずしも‘合理的’に判断したり、
行動したりできるわけではないことを
実験等を通じて検証してきました。


既に「行動経済学」についての書籍が
何冊も出版されていますのでご存知の方も
多いと思いますが、

「人間の意思決定や行動」

に関する様々な「効果」や「法則」が
発見されています。


さて、こうした効果の中で、
最もビジネス、というか商売に
活用されてきたのが

「アンカリング効果」

です。


これは、最初にある数字を示されると、
無意識にそれが基準(アンカー)となってしまい、
その後の判断が影響を受けてしまうというものです。

よく引用される実験としては、
以下のような質問に答えてもらうものが
あります。


---------------------------------------------

a)国連にアフリカ諸国が占める割合は、
   65%よりも高いか、それとも低いか?

   *「65」の数字はルーレットを回して出たもの。
    協力者によっては「10」になるように細工されていた。

b)国連にアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?

----------------------------------------------


a)の質問文には、

65%

という数字が含まれています。

これは、ルーレットを回して出ただけの、
なんら根拠のない数字です。

実験に協力した回答者も、
そのことがわかっています。


それにも関わらず、
ルーレットが「10」=10%となった場合に
アフリカ諸国の国連に占める割合を
推測した結果は、

平均25%

でした。

一方、ルーレットが「65」=65%で
あった場合には、

平均45%

という回答になったのです。


つまり、根拠があろうがなかろうが、
最初に示された数字が無意識に基準と
なってしまい、回答が影響を受けて
しまうわけです。

なお、数字を示さない
(つまりアンカリング効果のない)
b)の質問に対する答えは、

平均45%

でした。
(正解:国連に占めるアフリカ諸国の割合:23%)


興味深いのは、
最初に示される数字が

突拍子もないもの

であったとしても、
影響力を発揮するという点です。

例えば次のような質問。


・サンフランシスコの平均気温は、
 「摂氏292度」よりも高いか低いか。
 サンフランシスコの平均気温は何度くらいか?

摂氏292度なんて、
ありえない平均気温ですよね。

もちろん、
この質問を見せられた実験協力者も、
実際のサンフランシスコの平均気温が、
3桁(100度以上)になるはずはなく、
2桁の数字を推測しました。


それでもやはり、このありえない数字を
示された人の方が、そうでない人よりも
高い平均気温を回答したのだそうです。


アンカリング効果は、
これほどまでに人の判断を左右する力を
持っているわけです。


そして、商売人たちは、
行動経済学で検証されるずっと以前から、
アンカリング効果の存在を経験を通じて
わかっており、

プライシング(価格設定)や価格交渉

において活用してきています。

端的に言えば、
アンカリング効果を考慮するなら、
売り手側が価格交渉を有利に進めたければ、

「ふっかけた方が得」

ということなのです。


外国の個人商店では、
しばしば値札がなく商店主との
価格交渉で購入金額を決めますよね。

この時、よほど善良な人でないかぎり、
商店主が最初に提示する売値は、
あきらかに「ふっかけ」の高過ぎる値段です。

なぜなら、その数字が基準となって、
利益幅の大きい高値で取引が決着する
可能性が高くなるからです。

ですから、買い手の立場からは、
よほど注意して商談しないとバカをみる
かもしれないということでもあります。


今、個人商店を例に挙げましたが、
国際間の企業対企業の大型の商談でも、
同様のふっかけがしばしばみられます。

日本人はある意味正直すぎるため、
不利な価格で契約に至るケースが多い
ようですね。

信頼関係が既にできている相手は
別として、価格交渉では、
最初に提示された数字は、
相当疑ってかかるべきでしょう。

このアンカリング効果、
ほかにも様々な場面で応用されています。

明日も引き続き、アンカリング効果を
活用している具体ケースご紹介します。


(参考文献)

『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』
(ウィリアム・バウンドストーン著、松浦俊輔、小野木明恵訳、青土社)

『経済は感情で動く』
(マッテオ・モッテルリーニ著、泉典子訳、紀伊國屋書店)

『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)

投稿者 松尾 順 : 16:02 | コメント (0) | トラックバック

『「ワタシが主役」が消費を動かす-お客様の“成功”をイメージできますか?』

女性マーケティングのプロが書いた本。

『幸福の方程式』で示されたような、
新しい「消費者心理・消費行動」について、
女性の視点から具体的に解説されてます。

やはり、マーケター必読書でしょう。


昨日ご紹介した『幸福の方程式』では、

「消費」は、

新しい幸福の物語を完成させるための‘道具’

 =道具消費

に過ぎなくなりつつあるということでした。


『「ワタシが主役」が消費を動かす』の冒頭では、
まさに上記の「道具消費」の実例が紹介されています。


同書によれば、東京・表参道では、

「ゴミのポイ捨てはカッコ悪い」

という呼びかけに、学生やギャルたちが、
ボランティアでどんどん集まってくるとのこと。

そして、おそうじが終わった後、
周辺のカフェは、彼らで賑わっています。


彼らは口々に言うのだそうです。

「ここに参加すると、新しい友だちができるから」

「街をキレイにしながら、おしゃべりもできて、
 終わってからみんなで、カフェでお茶するのが楽しい」

著者の日野氏は次のように付け加えています。


カフェがクーポンを配って、コーヒーやサンドウィッチを
 買ってもらう宣伝にやっきになる一方で、早朝からカフェを
 賑わしているその集団は、「ゴミを拾う」ことを目的に
 集まった若者たちなのです。


『幸福の方程式』流に解説するなら、

「社会に貢献するという物語」
 (街をキレイにすることで社会に役立っているという感覚)

および、

「人間関係のなかにある物語」
 (志を同じくする仲間と集まり自分の居場所を確認する)

を生み出すことを通じて、
彼らは「幸福」を得ているということ、
そして、これを支援してくれる道具として

「カフェ」

が利用されているということになるでしょうね。


しかしながら、企業のマーケティング担当者は
この現実をあまり理解できません。

日野氏は、次のように愚痴っています(笑)


このような事例(表参道でゴミ拾い)があるにも
かかわらず、私たちのようなマーケティング会社が、
企業から集客企画を頼まれたときに、

「朝、街を掃除する活動をしましょうよ」

と提案しても、依頼者の頭の中は「?」マークで
いっぱいになります。

「なんで、それが販促になるんだ?」

「売上げ確保と掃除は、どんな関係があるのか?」

「コーヒーを売りたいのに、コーヒーを飲むかどうかも
 わからない客たちを集めて、労力がかかる一方だ。
 コーヒーを飲みたい、という見込み度のできるだけ
 高い客集めの企画にしてくれよ」

と鼻で笑われてしまいます。


どうやら、消費者の意識変化に、
多くの企業のマーケティング担当者は
まったくついていけていないようですね。


さて同書では、現在の不況下での

「消費者の3大意識」

として、以下を指摘しています。

(1)「いいモノをいかに安く選ぶか」

(2)「持たない、買わない、物欲減退」

(3)「環境など社会的責任意識の高まり」


また、各種調査結果に基づき、
これからの消費者は、

「次の5つの基準すべてを満たしているかどうか」

という判断で買物を決めているという説を
提示しています。

---------------------------------------------------

(1)便宜的価値(価格)
   お得、値ごろ間。この程度なら、この価格で十分。

(2)基本的価値(モノ)
   製品の性能・機能そのもの。品質の良さ、信頼性。

(3)情緒的価値(五感)
   見た目が素敵。香り、デザイン、色、肌触り、音など
   五感を刺激。

(4)個人的価値(ワタシにとって)
   自己実現ができる。ワタシにぴったり。ワタシらしい、
   ワクワクする

(5)社会的価値(共感・つながり)
   環境にも配慮したい。ワタシと誰かがつながる。
   (憧れの人、友達、未来の子供や社会、世界の人々など)
   地域活性に役立ちたい。

-----------------------------------------------------


本書は、事例も豊富です。

『幸福の方程式』と同じく、

これからの消費者心理・消費行動

を解読するための、
たくさんのヒントを与えてくれますよ。


『「ワタシが主役」が消費を動かす-
  お客様の“成功”をイメージできますか?』
(日野佳恵子著、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 12:13 | コメント (0) | トラックバック

『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』

『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
(山田昌弘+電通チームハピネス著、
 ディスカバー・トゥエンティワン)

これからの消費者心理・消費行動を解読する上で
たくさんのヒントを与えてくれる本。

マーケター必読書です。


さて、本書に示されている、

消費者心理・消費行動の変化

における最も重要なポイントは、

「消費をすることが幸福を生み出す」

という従来の考え方から、

「幸福を得るために役立ちそうな消費を行う」

という考え方へのパラダイム・チェンジでしょう。


言わずもがなのことですが、
日本の高度成長期には、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、
あるいは、自家用車、クーラーなどを買い揃えることで、
幸福を実感できたわけです。

これは、

「家族が幸福になるという物語」

でした。


その後に続いたのは、
さまざまな「ブランド」を消費することが、
幸福を生み出すという物語を追いかけた時代。

すなわち、

「ブランド消費の時代」

です。


ブランド消費の時代は、
家族ではなく「個人」が主役でした。

一定の幸せが得られるという

「保証」

のついたブランドを購入することで
個々人が幸福感を得てきたわけです。


そして現在。

モノを購入することを通じた家族の幸福物語や、
個人の幸せを保証したブランド消費はどちらも、
まったく消えてしまうことはないでしょう。


しかし、私たちは、

「新しい幸せの形、新しい幸福の物語」

をダイレクトに追求し始めています。


そして、「消費」は、

新しい幸福の物語を完成させるための‘道具’

に過ぎなくなりつつある、

というのが、

『幸福の方程式』

の基本主張です。


例えば、昔ながらの「旅行」は、
旅行そのものが目的であり楽しみでした。

しかし近年は、
東南アジアの某国にボランティアに行き、
社会貢献をすることが目的であり、そのための
ツアーに人が集まるという現象が増えてきています。


つまり、「社会貢献」をサポートするために、

「旅行」(というサービス)

が消費されているのです。


同書ではこのような、

幸福を得るのに役立ちそうだからと
何らかの商品を消費すること

「道具消費」

と呼んでいます。


さて、同書で仮説として示されている

「新しい幸福の物語」

は次の3つです。

-----------------------------------------------------

(1)自分を極めるという物語・・・個人-個人の内的感覚

 端的にいえば、何かにはまって充実した時間を過ごすこと。
 自分の内面に向かう。個人農園で野菜づくりに精を出すなど、
 あえて不便を楽しむ。オタクな世界もこの典型。


(2)社会に貢献するという物語・・・個人-社会の関係

 端的には、社会的な役割を見出し、
 自分が社会に役立っているという納得感を得ること。

 自分はそれなりに豊かな生活をしているがゆえに、
 途上国の貧困や地球環境問題に対してなんらか良いことを
 して、 罪悪感を多少とも軽減したいという
 「ギルティ・フリー」な消費行動も含まれる。


(3)人間関係のなかにある物語・・・個人-個人の関係

 端的には、自分を受け入れてくれる身近な人たちの中で、
 自分の「居場所」を見出すこと。

 従来の「家族」「会社」という、一定の役割が期待され、
 縛りのきつい居場所ではなく、かといって完全に孤立して
 生きるのでもなく、人との距離感を調整し、ちょうどいい
 距離を買う、という選択をする人が多くなってきている。

 考えてみれば、「ツイッター」は、
 人とのちょうどいい距離を自己裁量で調整しやすい
 「道具」ですね。

------------------------------------------------------

なお、上記のような幸福の物語が成立する鍵として、

・時間密度
・手ごたえ実感
・自尊心
・承認
・裁量の自由

の5つがあると同書では解説してあります。
(詳細は、同書をお読みください!)


しかし、結局のところ、
幸福をもたらしてくれる究極のキーワードは

「つながり」

なのです。

実は、これまでの家族の幸福につながる消費、
個人の幸福につながるブランド消費の背景にも、
「つながり」が隠れていました。


しかし、いまはつながりをダイレクトに
実感するために消費を行うという現象が
起きているわけです。

これが冒頭に述べたパラダイムチェンジです。


山田昌弘氏は次のように書いています。

“自分の内側、社会、周りの人々との間につながりを
 つけることが幸福を生み出すスタイルです。そして、
 人々は、つながりを求め、それを維持することに
 お金をかけ始めているのです。”


ですから、
売れる製品・サービスづくりのためには、

「新しい幸福の方程式」

を理解すること、そして人々が、

「つながり」

を生みだし、実感し、また維持することに
役立つためにはどんな製品・サービスが有効かを
考える必要があると言えますね。


『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
(山田昌弘+電通チームハピネス著、
 ディスカバー・トゥエンティワン)

投稿者 松尾 順 : 13:03 | コメント (0) | トラックバック

『ナンパを科学する- ヒトのふたつの性戦略』

‘ミラーマン’こと、元大学教授、
植草一秀氏の痴漢行為に対する実刑が確定しましたね。

植草氏自身は、「えん罪」を主張してきましたが・・・


私は、以前から

「なぜ、人(主に男性ですが)は痴漢行為をするのか?」

という疑問で夜も眠れないことがあります。


ほとんどの男性は、

「異性(人によっては同性)に触れたい!」

という性的欲求に起因する思いを
しばしば持つでしょう。


しかし、公衆の場で知らない異性(同姓)の体を
許可も得ず、勝手にタッチするなんて、
良識に照らせばとてもできることではありません。

そんなこと、相手に対してとても失礼だし、
迷惑千万じゃないですか。

痴漢の被害を何度か受けたことのある友人(男性)が
いますが、電車の中などで、知らない手が伸びてきて
局部をまさぐられたりしたら、たとえ男性でも、
ぞっとする体験でしょうね。
(幸い、私は痴漢を受けたことはありません。)


また、痴漢はれっきとした「犯罪行為」であり、
刑罰はそれほど重くはないものの、逮捕されただけでも
家族がいじめを受けたり、勤務先をクビになるなど、
当人の人生に与える影響は極めて大きい。

ですから、大多数の男性は、
実際に痴漢を行うことはありません。

(私を含め!)


結局のところ、痴漢をやる人は、
ある種の病気に罹っているのではないかとも
言われているようですが、

「痴漢の心理」

について詳しい方がいらしたら、
ぜひ教えてください。


さて、痴漢の被害者になりやすい女性の視点で、

「痴漢やナンパを受けやすい女性には、
 何らかの共通した特徴があるのか?」

を研究テーマに取り上げたのが、

坂口菊恵氏(進化心理学者)

です。

渋谷路上などでの実験等を含む、坂口氏の研究の結果は、

『ナンパを科学する- ヒトのふたつの性戦略』
(坂口菊恵著、東京書籍)

に収録されています。


研究結果の中で興味深いのは、
ナンパや痴漢にあいやすい女性の特徴のひとつとして、

“動き方がスムーズではなく、ぎこちない”

という点が浮かび上がってきたことです。

これは、ひったくりなどの
路上強盗の被害にあいやすい人の特徴とも
ある程度共通しているようですが。


また、

“姿勢の悪い歩行者”

が痴漢の標的と見られやすく、
実際によく被害にあっているとのこと。


痴漢にあいやすい人は、

“服装や髪型がファッショナブル”

という点も、
被害者の共通する特徴のひとつとして
抽出されていますが、

「歩き方や姿勢」

が痴漢を誘発している可能性がある
というのは驚きの結果ですよね。


もうひとつ興味深い点は、
一般に、痴漢にあいやすい人として、
イメージされやすいのは

「内向的(神経症的)な女性」

つまり、

「おとなしそうな女性」

ですが、実際に痴漢にあうのは、
そうした人とは限らないことです。


坂口氏は前掲書の中で、研究の目的について、

“自分(女性)が性的な対象として見られる可能性が
 あることを認識させ、どのような状況がリスクを
 高めやすいのかについて客観的なデータを蓄積する
 ことが即効性のある対処法だと思われる”

と述べています。


坂口氏のこれまでの研究では、
まだ確固たる結論は得られてはいないようですが、
痴漢の被害をなるべく避けるための対処法として、
女性の方は、服装・ヘアスタイルだけでなく、
歩き方や姿勢にも留意されることをお勧めします!


おそらく、これは男性にも有効なんでしょうね。
くだんの友人男性にも教えてあげようかな・・・


『ナンパを科学する- ヒトのふたつの性戦略』
(坂口菊恵著、東京書籍)

投稿者 松尾 順 : 17:18 | コメント (2) | トラックバック

裁判員になる方へ・・・目撃証言の信頼性

まもなく(09年5月21日から)、

「裁判員制度」

がスタートしますね。

ひとことで言えば、
米国の「陪審員制度」のような仕組みです。
(もちろん同一ではありません)


最高裁判所のWebサイトでは、
「裁判員制度」について次のように説明されています。

--------------------------------

裁判員制度とは、国民の皆さんに裁判員として
刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪かどうか、
有罪の場合、どのような刑にするのかを裁判官と一緒に
決めてもらう制度です。

---------------------------------

従来、刑事裁判は、
裁判官3人だけで評議し評決していました。

しかし、裁判員制度の実施後は、
裁判官3人に加えて、国民から選ばれた裁判員6人
の合計9人で、評議・評決をすることになります。


裁判員候補者としては、
社会人のほとんどの人が対象となりますね。

もし裁判員候補者に選ばれたら、
所定の理由がない限り辞退することはできません。

ですから、いつかは自分も裁判員になる日が来るかも
しれないという、心の準備はしておいたほうがいいでしょう。


とはいえ、実際裁判員に選ばれて、裁判に参加する際、
結構つらそうなのは、裁判員制度の対象となる刑事裁判は、
殺人、強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死などの凶悪犯罪
が中心となることです。

ですから、裁判によっては、
「死刑」を宣告するということもありえるわけです。

たとえ、「死刑」が、被告人が犯した罪に対する
当然の報いであったとしても、人の命を奪うという
決定を下すのは気が進まないことでしょう。


さて、裁判員となれば、事件にまつわる、
さまざまな証拠物件や証言の信頼性を
慎重に判断しなけれなりませんよね。


現場に残されていた物的証拠や指紋、
DNA鑑定など結果は、目に見える明白な事実ですから、
それほど判断に苦しむことはないと思います。
(DNA鑑定の結果が間違うこともありますから、
 100%信頼できると言えないにしても・・・)


しかし、目撃証言は、
目撃者の「記憶」に依存するため、
相当の注意が必要でしょう。

法廷に立った目撃者が、

「私は犯人の顔をはっきり見ました。あいつが犯人です。」

などと自信たっぷりに証言したとします。

おそらく私たちの多くは、
目撃者がそこまで確信を持って言うのなら
間違いないだろうと考えてしまいそうです。


しかし、人の記憶がいかに頼りにならないか、
また、過去の記憶というものは、無意識に
創作されてしまう場合もあることが、
心理学等の研究で検証されているのです。


実際、過去の裁判のうち、
目撃証言が決め手となって有罪判決が下されたものの、
後に真犯人が現れ、無罪となったケースが相当数あります。

つまり、目撃証言は明らかに間違っていたのです。

ということは、真犯人が現れなかったために、
そのまま無実の罪に問われたままの冤罪事件も
あると言えますよね・・・


最後に、心理学者によって行われた
シミュレーション実験を簡単に
ご紹介しておきます。

これは実際の事件に近い状況を
再現してみたものです。


実際の事件とは、
ある政党の本部が時限式火炎放射装置で
攻撃され、炎上したというものでした。

当事件では、残された装置の部品から、
その部品を販売した問屋が割り出されました。

そして、事件から3ヵ月後に
ある問屋が事情聴取を受けた時、
この店で事件が起きた1ヶ月前の某日に
同タイプの部品を購入した客が怪しい
という話をしたのです。

その日応対した店員は、
当日のことを徐々に思い出し、
ついに300人の写真帳から1人の人物を
選びだし、その人物が被疑者となりました。


さて、ミュレーション実験は、
事件発生から数ヶ月も経過した後の店員の記憶が
どの程度信頼できるかを検証するために行われました。

実験協力者(3人)は問屋に電話をかけ、
小売をしてもらえるかを確認した上で
店に出向きます。

そして、名刺を渡し、
品物を現金で購入するのです。

その際、
応対した店員の名前を聞いておきました。

実験協力者はスーツにネクタイのビジネスマン風。
ただし、存在を印象づけるためあえて、左手に
包帯を巻いてもらっていました。

こうして訪問した問屋は、
おもちゃ、スポーツ用品など様々な商品を
扱う125店でした。

さて、それから3ヵ月後、
実験を計画した心理学者らが各問屋を訪ね、
店員に実験の趣旨を説明した後、
3ヶ月前に来た客のことを思い出して
もらったのです。

回答を得られたのは86人の店員でした。

客の性別、年齢、髪型などの特徴について
の平均正答率は43%。

また、事前の電話の有無や販売の様子に
ついての正答率は35%。

3ヶ月前のことにしては
比較的覚えていると言える率ですかね。


しかし、写真帳を見せて、
当日来た客を選び出してもらうように
依頼したところ、86人中、29人は、
もはや顔を覚えていないとして
選ぶことができませんでした。

一方、残りの57人は何らかの写真を
選び出したのですが、なんと正しい写真を
選んだのはわずか8人。

残り49人は、まったく見たこともない人物を
選び出したのだそうです。


つまり、顔写真の正答率は、
回答者全体(86人)をベースに考えると約9%

なんらかの写真を選んだ人(57人)ベースでも、
14%に過ぎませんでした。


記憶は時間とともに急速に減衰しますから、
もっと短い間隔であれば正答率は高くなるでしょう。

しかし、時間が経てば経つほど、
人の記憶は不明瞭になり、間違った答えを出して
しまうことさえあることは忘れてはいけません。


*上記実験の出所:
『「温かい認知」の心理学』
(海保博之編、金子書房)


*裁判員制度(最高裁判所)
http://www.saibanin.courts.go.jp/

*裁判員制度の紹介
http://www.saibanin.courts.go.jp/introduction/index.html

投稿者 松尾 順 : 09:20 | コメント (0) | トラックバック

男は目で恋をし、女は耳で恋に落ちる

 A man falls in love through his eyes,
 a woman through her ears.

 「男は目で恋をし、女は耳で恋に落ちる」

- Woodrow Wyatt,
English Journalist and broadcaster(1918-1997)


実に洞察に富む言葉です。

イギリスのジャーナリスト、Wyatt氏は、
優れた観察力によって、男性と女性の恋愛の仕方の違いを
的確に指摘していたんですね。

石田純一氏も、
某記者会見でこの言葉を引用していましたが、
さすが稀代のプレイボーイ・・・!


さて、以前の記事、

『男の視線は女性のどこに注がれるのか』

でご紹介しましたが、Wyatt氏のこの言葉は、
脳科学の研究によって裏づけが取れています。

すなわち、男性が好みの女性を選ぶ際、
「視覚」を司る脳の特定部位が活性化します。

一方、女性が好みの男性を選ぶ際には、
「言語」と「記憶」の部位が活性化するのです。


サバンナでの狩猟採集生活が長かった私たちの祖先。

男性は獲物を探し出すために視覚を発達させていました。

そして、女性が自分の子孫を産める健康な体であるか、
また妊娠適齢期であるかを主に外見で判断してきたようです。


女性の場合は、集落に残っている仲間の女性たちと
緊密なコミュニケーションを取りながら、
家事・育児等を行ってきましたので言語能力に加えて、
言葉を聞き取る「聴覚」を発達させました。

ですから、男性を選ぶに当たっては、
男性の「声」を特に重視するようになったようです。

また、妊娠・育児期間の長期間にわたって、
責任を持って家族を守り、食料を貢げるかどうかを
きっちり男性に「言葉」で約束してもらうことを
女性は求めたのです。

ですから、聴覚に加えて、
「記憶力」も強くなったと考えられています。


どうりで、女性は男性がはるか昔に言ったことを
細部までよく覚えていて、

「あの時あなたはこう言ったじゃない」

などと責めたてるのが得意なんですね(笑)


なお、男性が、視覚優位で女性を選ぶという点は、
心理学の実験でも検証されていますね。

先日配信された有料メルマガ

『セクシー心理学GOLD』(2009-05-09号)

では、イギリスで行われた行動学の実験結果が
紹介されていました。

まず、隠しカメラで100以上の学生を対象に、
異性と話をしているところを観察したそうです。

その後、

「今の異性に対してどれだけ好意を抱いたか」

という質問をしました。

すると、男性が、好意を抱いた女性と
目を合わせていた時間は平均8.2秒でしたが、
あまり好意を持たなかった女性と目を合わせて
いたのは5秒弱だったそうです。

(女性は、好意を抱いている・いないに関わらず、
 視線を合わせる時間に変化はなかったそうです)


やはり、男性は(無意識に)視覚を駆使して
女性を選好してしまうということなんですね。


また、聴覚優位の女性にとっては、
男性の声が、好みの男性かどうかを判断する上で
重要であることも検証されていますね。

カナダと米国の研究者らは、
低い声を持つ男性の方が、より女性を引きつけ、
多くの子を持つ可能性が高いという研究結果を
発表しています。


低い声は、男性ホルモンの影響が大きいのですが、
男性ホルモンが多いほど、男性らしい体型となりますし、
女性から見たらたくましく、頼りがいがあり、
獲物を捕まえる能力も高いだろうという「判断材料」
として声が利用されているようです。


まあ、近年は女性の経済力が高まったこともあり、
必ずしも「男性性」が重視されなくなってきた
傾向が見られます。

このことが、「草食系男子」の登場を
促したであろうことも以前指摘しましたね。


*『男の視線は女性のどこに注がれるのか』

*『ユニバーサルカーブと草食系男子』

*『セクシー心理学GOLD』
http://sinri.net/gold.htm

投稿者 松尾 順 : 15:35 | コメント (2) | トラックバック

神童がプロとして大成しないのはなぜか?

以前、今は解説者として知られる、
元プロ野球選手の方が嘆いていたのを覚えています。


なんに対して嘆いていたかというと・・・

せっかく、素晴らしい才能が認められてプロ選手に
なれたのに、練習が嫌いで手を抜くことばかり考えている、
そして、毎日飲み歩くような不摂生な生活を送ってしまう
若手選手が多いことにです。


若い頃は「神童」、あるいは「天才」と呼ばれながら、
プロとして大成するのは一握り。

多くは、才能を腐らせ、
大きな花を咲かせることなく散っていく。


なぜなんでしょうか。
ずっと不思議に思っていました。


実は、「プロ」として成功できるかどうか、
言い換えると、「高みを極めることができるかどうか」
の分かれ目は、

「マインドセット」(心構え)

にあったんですね。


才能に恵まれた人が陥りやすいマインドセットは、

「才能・能力は天性のものである」

というものです。


ですから、彼らにとって「努力すること」は
ダサイこと。なぜなら、努力は才能のないものが
するものだと考えているから。


そして、学校や試合(本番)は、
自分の才能を周囲の人に見せ付ける場です。

才能があるんだから、常に勝ち続け、
また、優秀さを周囲に見せ続けなければならない。

だから、失敗は受け入れられない。
とても恥ずかしいことだから。


でも、努力をしなければ、
持てる才能の上限で能力は頭打ちになりますよね。

しかも、失敗はいやなので、
失敗するリスクのある難易度の高い課題を
わざと避けるようになる。

そして、「やればできるんだけどね・・・」
などと言い訳をして、自分のプライドを守る。

もし万が一、失敗してしまっても、
その原因を他人や環境のせいにすることで、
自分の才能に傷がつかないようにする。

こうして、まさに才能におぼれて自滅していくのです。


テニスの天才、ジョンマッケンローも
若い頃はこうしたマインドセットの持ち主
だったようです。


彼が試合に負けたとき、
決して自分に落ち度があるとは
考えなかったのです。

ある時、友人と対戦して負けたのは、
相手が恋愛中で、自分はそうではなかったから
という言い訳をしたらしいですね。


一方、天性の才能にも恵まれ、
あるいは、それほど才能に恵まれなかったとしても、
それぞれの世界で高みを極め、プロとして成功を
収めた人々もいますよね。


彼らが持っているマインドセットは、

「才能・能力は伸ばせるものである」

というもの。

だから、日々の地道なトレーニングを怠りません。
努力すれば、いくらでも優秀になれると考えている。

彼らにとって、学校や試合(本番)は、
自分の能力をさらに伸ばす場であり、
才能・能力を証明する場ではありません。


そして、「失敗」は自分のできないこと、
わかっていないことを確認できる貴重な体験です。

ですから、失敗するリスクのある難易度の高い課題には、
それを乗り越えればさらに大きく能力が伸ばせるから、
積極的にかつ喜んで取り組む。


こうしてコツコツと努力することによって、
天性の才能をさらに開花させ、あるいは、
生まれつきの才能を上回る能力を身に付けることが
できるのです。


さて、前回の記事「ほめるな、ねぎらえ!」で
ご紹介したスタンフォード大学心理学教授、
キャロル・S・ドゥエック氏は、

「才能・能力は天性のものである」

と考える人のことを

「Fixed Mindset」(邦訳は「こちこちマインドセット」)

と呼んでいます。

そして、

「才能・能力は伸ばせるものである」

と考えている人を

「Growth Mindset」(同、「しなやかマインドセット」)

と呼んでいます。


上記2つの考え方のどちらを持っているかで、
あなたが高みを極めることができるかも決まるのです。

この2つの対極的な考え方はとても面白いですよ。
次回、さらに掘り下げてみたいと思います。


*参考文献
『「やればできる!」の研究』
(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社)

投稿者 松尾 順 : 12:35 | コメント (2) | トラックバック

ほめるな、ねぎらえ!

共に働く部下・スタッフたちのやる気を高め、
また維持するためには、

「ほめるな、ねぎらえ!」

ということが重要だといわれますね。


「えーと、「ほめる」と「ねぎらう」はどう違うの?」

という疑問が湧きましたか?

認める対象が異なるんです。

「ほめる」の対象は、「結果」や「能力」です。
一方、「ねぎらう」の対象は、「プロセス(過程)」です。


つまり、

「よくやった!君は優秀だ!」

などというのがほめること。

一方、

「毎日、粘り強くがんばってるな!」

というのがねぎらうことです。


所定の成果を出さない限り、
「ほめること」はそうそうできませんよね。

しかし、日々の努力は、
成果が出る・出ないに関わらず、
「ねぎらうこと」が可能です。


もちろん、部下・スタッフたちには、
所定の成果を出してもらわないと困りますから、
成果は出なくてもいいということではありません。

しかし、「ほめる」ことよりも、「ねぎらう」こと
のほうが「やる気」の維持には効果的なのです。


この理由のひとつには、
自分のことを見てくれている、気にかけてくれている
という「心の支え」を与えられることがあります。

もうひとつは、努力し続けることの重要性を認識し、
常に新たなチャレンジに立ち向かえる

心構え(マインドセット)

を醸成することができるからです。


一方、成果や能力を「ほめる」ことは、
短期的にはやる気を高めることが可能です。

ですが、長期的には自信を低下させ、努力を放棄し、
新たなチャレンジを避けるといった、

好ましくない心構え

を醸成する、マイナスの影響があることが
わかっています。


ビジネスではなく、学校教育における研究ですが、
成果や能力をほめる行為にはマイナスの影響がある
ことが実証された実験をご紹介しましょう。


スタンフォード大学心理学教授、
キャロル・S・ドゥエック氏が、思春期初期の
数百人の子どもたちを対象に行った実験です。

まず、生徒全員に、
知能検査のかなり難しい問題を
10問解いてもらいました。

ほとんどの生徒が、
まずまずの成績を取ったそうです。


テストが終わったあとで、
子どもたちに「ほめ言葉」をかけるのですが、
この時、生徒たちを2つのグループに分けました。


そして、一方の子どもたちには、
その子の「能力」をほめたのです。

「まあ、八問正解よ。よくできたわ。頭がいいのね」

といった具合です。


もう一方のグループでは、彼らの「努力」をほめました。
(これが、「ねぎらう」ということです)

「まあ、八問正解よ。よくできたわ。頑張ったのね」

といった感じ。

グループ分けした時点では、
子供たちの能力は全く等しかったそうです。


ところが、「頭がいい」と能力をほめられた子供たちは、
その後、新しい問題にチャレンジすることを避けるように
なったのです。

なぜなら、万が一、いい点が取れなかったら、
ほめられないから。そして、「自分は頭が良くない」
という判断材料になってしまうからです。

実際、その後、別の難しい問題を出されて、
あまりいい点が取れなかった時、

「自分は頭が悪いのだ」

と思い込んでしまったそうです。
(そのため自信を失ってしまい、努力しなくなった)


一方、「がんばったね」と努力をほめられた生徒たちは、
その9割が新しい問題にチャレンジすることを選んだのです。

いい点が取れるかどうかに関わらず、
難しい問題に取り組んだ「努力」が評価されることが
わかっていたからです。

ですから、難しい問題がなかなか解けなくても、
それは頭が悪いからと考えるのではなく、

「解けるようになるまでもっと頑張らなきゃ」

と考えて取り組むのです。


さて、上記の2つのグループのうち、
その後、能力がぐんぐん伸びて、結果的に
知能検査で高い成績を取れるようになったのは
どちらだったと思いますか?

もちろん、努力をほめられた、
つまりねぎらわれた子供たちでした。


この実験結果をまとめると、以下のことが言えます。

能力をほめると生徒の知能が下がり、
努力をほめると生徒の知能が上がったことになる。


この文章、「生徒」を「セールスパーソン」、
「知能」を「販売成績」に置き換えることも可能ですよね。


その本来の意義が十分理解されず、

「結果主義」

に走ってしまった企業の「成果主義」のほとんどが
失敗に終わったのは、こうした実験結果を踏まえると
必然だったのかもしれません・・・


*参考文献
『「やればできる!」の研究
 -能力を開花させるマインドセットの力』
(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社)

投稿者 松尾 順 : 12:08 | コメント (0) | トラックバック

確証バイアスにご注意!

UFOや宇宙人の研究家たちが集まるコンファレンスに
先日出席した、米航空宇宙局(NASA)の元宇宙飛行士、
エドガー・ミッチェルさんが、

「地球外生命体は存在する」

と断言したそうです。
(CNN.com)


エドガーさんは、1971年、アポロ14号に搭乗して
月の上を歩いた6番目の人間なんですね。

エドガーさんによれば、
地球外生命体がいるという事実は、
米国政府を始めとする各国政府が隠し続けているとのこと。


まあ、これはなかなかうまい説明だと言えます。

なぜなら、政府が巧妙に隠し続けてきているから、

「地球外生命体の存在を実証できる確たる証拠を示せない」

のだという言い訳ができるからです。


世界中にはたくさんのUFOの目撃や
宇宙人との遭遇事件が報告されています。

しかし、万人を納得させる証拠を
今のところ誰も示せていないのが現実ですね。

いくら政府とは言えども、
証拠を隠しとおせるとは思えません。


それでも、エドガー氏のように、
地球外生命体の存在を本気で信じている人が
いるのはなぜでしょうか?


それは、人は自分の考え方や信じたいことを
支える情報のみを積極的に受けいれ、反対意見を
意識的・無意識的に抹殺する心理的傾向があるからです。


この心理的傾向のことは、

「確証バイアス」

と呼ばれています。

最近売れている行動経済学関連の本では、
「確証バイアス」の説明が必ず登場しますね。


先日書いた、雨男・雨女の記事、

「過度の因果関係づけにご注意」

も実は、確証バイアスの話でした。

本当に関係があるかどうかわからない
2つの現象の間に勝手に因果関係をつけて
しまうわけですから。


さて、「確証バイアス」は、
もっとベタな言い方をすれば、

人間はみな、多かれ少なかれ、
主観的に物事を判断するということ

だと言えます。

「なんだ、そんなの当たり前じゃないか!」

と思われたかもしれませんが、
物事や人々に対する偏見や固定観念を生み出し、
差別やいじめ、無実の人を有罪にしてしまう「冤罪」
のような様々な問題を引き起こす根本的な原因に、
しばしばなっているのが「確証バイアス」なのです。


だからこそ、私たちは、

・自分の考えや判断は主観的になりすぎていないか、
・自分の考えと反対の意見をろくに検証もせず、
 むげに退けていないか

という自問自答を忘れないようにすべきでしょう。


では、確証バイアスの危うさがわかる、
興味深い実験をひとつご紹介しておきましょう。


プリンストン大学のダーリーとグロスが行った実験です。

実験の協力者は、
小学校4年生のある女の子のビデオを見て、
その子の学力を判断することが求められました。

まず、ビデオの前半では、
半数の協力者に、女の子が

「劣悪な家庭環境に育った子ども」

であることが説明されました。

そしてもう半数には、

「中流階級の家庭の子ども」

であることが説明されたのです。


すなわち、
彼女が劣悪環境で育った子どもだと
知らされた人は、

「彼女は学力が低いだろう」

ということを予期し、
一方、中流階級の子どもだと知らされた人は、

「相応の学力があるだろう」

ということを予期するように仕組まれていたのです。


後半のビデオは、
協力者全員が同じものを見ました。


そのビデオは、
教室内で女の子が先生の質問に答える様子を
撮影したもの。

女の子は、難しい質問にも簡単な質問にも
同じように、正解したり間違ったりしていました。

また、快活に見えることもあれば、
やる気がなさそうに見えることもありました。

つまり、後半のビデオだけを見ただけでは、
彼女の学力が高いかどうかは判断できないように
注意深く作られていたのです。


こうして後半のビデオを見た後、
実験の協力者たちは、彼女の学力について、
読解力、知識、算数能力などいくつかの項目で
評定しました。


その結果、すべての項目で、
彼女の学力をより高く評価したのは、
ビデオの前半で中流家庭に育ったことを
知らされた人たちだったのです。

これは、同じビデオを見たにも関わらず、
協力者はそれぞれ、事前に自分が感じた考え(仮説)を
支持するような情報を積極的に選択したということを
意味します。


私たちは、既に物事に対して様々な事前の知識や
一定の評価(レッテル)を与えていますよね。

おそらく私たちは、毎日の生活の中でも、
自分が今持っている知識や評価を支えるような情報
ばかりを見ていて、反証するような情報は見て見ぬふり
を多かれ少なかれしているのです。


*上記実験は下記文献を参考にしました。

『超常現象をなぜ信じるのか』
(菊池聡著、講談社ブルーバックス)

投稿者 松尾 順 : 16:32 | コメント (0) | トラックバック

先が見えない「不安」、先が見えすぎる「絶望」

私は、メインのマーケティング関連のサービス
以外に、キャリアデザイン関連の仕事もやっています。

キャリアデザインの仕事に関わっていると、
人々のキャリアについての様々な悩みを聞いたり、
知る機会が当然ながら多くなるんですが・・・


このところの景気後退で増えている悩みは、

いつ現在の仕事を失うかわからない

といった、キャリアの先行きについての「不安」ですね。


まるで霧がかかっているような感覚。
人によっては真っ暗に感じているかもしれません。

前が見えないので、怖くて立ちすくんでいる、
どうしていいかわからない、ということなのです。


とはいえ、不景気になる前は、
不安がなかったかというとそんなことはないのです。

まだ、深刻な問題として顕在化していないため、
あえて不安を感じることを避けていたという人が
多いと思われます。

基本、人はばら色の未来を夢見たい。

「不幸な未来を考えたくない」

という心理があるんですよね。


さて、「不安」という心理は、

「解雇」や「降格」「減給」

のような具体的な問題として顕在化した時点では、

「焦り」や「あきらめ」

をもたらすことが多く、
不安を払拭するための行動につながりにくいと
言えます。

したがって、いたずらに
「不安」を感じないようにしたほうがいい。


しかし、平時において、
将来に対する一定の「不安」を感じていることは
むしろ必要で有意義なことです。

例えば、

「いつかこの先、もしかしたら首になるかもしれない」

という気持ちがあれば、
その時に備えて資格取得に挑戦するなど、
実際の行動につながりやすくなるからです。


さて、「今」にしか生きていない他の動物と異なり、
「未来」を予想することができる人間の心理は実に
複雑です。

先行きが見えすぎてしまってもダメなんですよね。


自分の上司の仕事内容を見て、

「この会社でがんばって昇進したところであの程度か・・・」

などと感じてしまい、
絶望したり、やる気を失った経験はありませんか?

この先がどうなるか、
あまりにもはっきりわかってしまうのは、
つまらないものです。


まあ、こんな見方しかできないのは、

「若さゆえの未熟さ」

から来ている面も大きく、
表面的には単純・簡単に思えた仕事の奥行きが、
実は意外に広いことに後になって気づくんですけどね。


先が見えないことによる「不安」
一方、先が見えすぎることによる「絶望」

どちらもネガティブな心理状態ではありますが、
前述したように、早めの不安、そしてまた絶望は、
それが未来に現実とならないためのポジティブな行動を
誘発してくれるので、勇気を持って向き合うべきなのです。


今回、キャリアをテーマに

「不安」「絶望」

といったネガティブな感情を取り上げましたが、
近年の消費行動には、ニーズ充足よりもリスク回避や
不安解消を動機とするものが多く見られます。

これについては別の機会に取り上げたいと思います。

投稿者 松尾 順 : 10:18 | コメント (3) | トラックバック

サブリミナルマインド&サブリミナルインパクト

神経科学的アプローチ、
つまり脳内の反応を直接測定するメリットは、

「人のホンネが正確に読める」

ということでした。

逆に言えば、

人が言葉で語ることはあまり当てにならない

ということですね。


ただ、こう言い切ってしまうと、

「じゃあ、なんのためにアンケート調査なんかやるの?」

と言われてしまいそうです。

これに対する答えは3つあります。

1 調査対象者の行動は、「事実」としてある程度正確に把握できる。

2 購入意向などの心理状態(気持ち)についての回答も
  ある程度は信頼できるという前提に立っている。

3 他の方法よりも時間・コスト的に優位性がある


要するに、従来採用されてきた各種調査手法も、
限界はありつつも、相応の価値があるのだと言わせてください(笑)


さて、

人の言葉がいかに当てにならないか

もっと言えば、

自分の「意識」がいかにいいかげんなものか

について理解するためには、
下記の2冊の本がとても役に立ちます。


『サブリミナルマインド』
(下条信輔著、中公新書)

『サブリミナルインパクト』
(下条信輔著、ちくま新書)


どちらもタイトルに

‘サブリミナル’

という言葉がついていますが、これは

「潜在意識」

のことですね。

つまり、自分が意識できない無意識の世界。

私たちの行動の多くは、
無意識の世界の働きに影響を受けているのです。


著者、下條氏は次のように述べています。

“人は自分で考えているほど、自分の心の動きをわかっていない。
 人はしばしば自覚がないままに意思決定をし、自分のとった
 行動の本当の理由に気づかないでいるのだ”


上記2冊の本はこの意外な真実を実感させてくれる

各種実験

を示しつつ、広告などマーケティングの世界でも、
巧妙に活用されていることを解説しています。


例えば「偽の心音実験」。

これは、男子大学生のヌード写真に対する興奮度合いに対して、
自分がそれをどの程度認知しているか(意識しているか)を
調べるものでした。


被験者には測定機器をつけてもらい、

「これから10枚にスライド(ヌード写真)を
 1枚ごとに見せながら、心拍数を測定します」

と伝えます。


その心拍音は、
被験者にも聞こえるようにしてありました。

でも、実は測定機器はダミーで、
心拍音は実験者が鳴らしている機械音でした。

そして、被験者ごとに特定のスライドにおいて、
この偽の心拍音を速くしたり、遅くしたりしたのです。


この流れを2回繰り返した後、
被験者に、それぞれの写真の魅力度を聞きました。

すると、偽の心拍音が速くなった時に見ていた写真に対する
魅力度が他のものよりも著しく高かったのです。


これは何を意味しているのでしょうか。

本当は自分の心拍音でないにも関わらず、
自分の心臓の鼓動が速くなったと思い込んだだけで、
本人は、

この写真を見て自分は生理的に興奮している
(だってドキドキしているから)

と無意識に認知し、結果としてその特定の写真に
とても魅力を感じるようになってしまったというわけです。


なんともはや、私たちの意識・無意識は
頼りないもの、操作されやすいものなんですね。


最近注目を集めているニューロマーケティング、
ニューロエコノミクス、あるいは行動経済学をより深く
理解するためのバックボーン的知識を得たい方は、
この2冊の本をお読みになることを強くお勧めします。


『サブリミナルマインド』
(下条信輔著、中公新書)

『サブリミナルインパクト』
(下条信輔著、ちくま新書)

投稿者 松尾 順 : 09:34 | コメント (0) | トラックバック

ホンネが読める?ニューロマーケティング(2)

ニューロマーケティングの研究事例としては、

コカ・コーラvsペプシコーラ

の事例が有名ですね。

これは以前ご紹介*しましたので別の例を。
(『買い物する脳』より)


プリンストン大学が行った

「アマゾンギフト券」

についての実験です。


同実験では、
被験者に対して次の2種類のプレゼントを提示して、
どちらかを選ぶよう依頼しました。

・今すぐもらえる15ドルのアマゾンギフト券
・2週間後にもらえる20ドルの同ギフト券


この際、被験者の脳内がどのように反応しているかを
「fMRI」で測定したところ、

・今すぐもらえる15ドルのアマゾンギフト券

を提示された場合に、

「大脳辺縁系」

が異常に活性化したそうです。


大脳辺縁系は感情や記憶の形成を司るところです。

つまり、今すぐもらえるプレゼントに対して、
被験者は感情的な興奮を示していたというわけですね。


理性的に考えれば、
2週間待って20ドルもらったほうがお得。

しかし、「今欲しい」という感情的興奮を我慢できず、
思わず目の前の15ドルのギフト券をもらうという選択を
しまうのです。


生物全般に言えることですが、
基本的に、‘長期的’な利得よりも‘短期的’な利得を
優先する傾向があります。

「手の中の一羽の鳥はやぶの中の二羽の鳥に値する」

という言葉がありますが、今目の前の獲物を逃せば、
いつ次の獲物が手に入るかわからないという毎日を
送っている生物にとって、目先の利得を優先するのは、
当然の行動かもしれません。


人間においても短期的思考が強いことは、
過去に行われた様々な実験でわかっていました。

そして、アマゾンギフト券の実験では、
なぜ短期的利得を優先するのかという理由が
脳科学的にわかったということです。


さて、もうひとつの事例は、カネボウが、
脳科学者、茂木健一郎氏と共同で実施している研究の
第一弾。(日経ビジネス、2009年2月2日号)

20代と30代前半の女性17人に

・自分の素顔
・自分の化粧顔
・他人の素顔
・他人の化粧顔

の4枚の写真を2秒間隔で見せた時に、
脳のどの部位が活性化したかをfMRIで調べました。


その結果、「自分の化粧顔」を見た時、
他人の顔を見た時に活性する部位が反応したそうです。

つまり、自分の化粧顔は、

あたかも他人であるかのように客観的に認識している

ということが、脳内を見たらわかったということです。

日経ビジネスの記事中に書かれていますが、
自分の化粧顔を見せられて、

「これは自分の顔ですか?」

と聞かれたら、当然ながら「はい」と答えるでしょう。

しかし、脳では他人として認識しているわけです。

当人が言葉で語ることと、実際の感覚や認識には
違いがあるということがわかる貴重な実験ですね。


それにしても、化粧品は、文字通り

「化ける」

ためのものなのかなと思いますが、

「素の自分」

とは似ても似つかぬ、他人としか思えない顔に化ける
からこそ「他人」と認識してしまうんでしょうかね・・・?


*ニューロマーケティング:コークvsペプシ

『買い物する脳 驚くべきニューロマーケティングの世界』
(マーティン・リンストリーム著、千葉敏生訳、早川書房)

投稿者 松尾 順 : 13:07 | コメント (2) | トラックバック

男の視線は女性のどこに注がれるのか?

先日の記事(09/01/26)、

「できそこないの男たちが美しくなろうとするのはなぜか」

で書きましたが、
人間の場合、メスがオスを選ぶ他の多くの動物たちと違い、
男性が女性を選ぶ立場でした。(いまでも大勢はそうですが!)


おそらくこのためでしょうか、
最新の脳科学研究によれば、男性が好みの女性を選ぶ時、

「視覚」

に関係する脳の特定部位が特に活性化するのだそうです。


ちなみに、女性の場合、好みの男性を選ぶ際、

「言語」と「記憶」

に関係した部位が活性化します。


さて、男性が女性を選ぶ際に

「視覚」

を重視するということについては、
男性の方なら素直に「確かに!」とうなずけるでしょう。


では、男性は、特に女性の「どこ」に
視線を注ぐのでしょうか?

それは基本的には

「腰のくびれ度合い」(ウエストライン)

です。


人によって、

太めが好き、細い方が好き・・・

と体型に対する好みの個人差はあっても、

「腰がくびれているかどうか」

を男性はとても重視するのです。
(意識的にも、無意識的にも)


なぜ腰のくびれを男性が重視するのか?

これは、くびれ度合いが

「妊娠適齢期」

を表わすサインになるからだと考えられています。


女性は成長するにつれ、
女性ホルモンの影響によって、

「ボン(バスト)、キュ(ウエスト)、ボン(ヒップ)」

の体型へと変化していきます。

ただ、中年期以降は女性ホルモンが減少するため、
こうしたメリハリは残念ながら失われていきます。


したがって、最も腰が‘キュッ’となっている年齢が
ちょうど妊娠に適した時期となることから、
自分の遺伝子をデリバリーしたい男性は、
女性の腰のくびれ度合いで最適なタイミングを判断し、
求愛する女性を選ぶというわけです。


長い間、「選ばれる性」であり、したがって
「見られる性」であった女性が、とりわけ

「ウエストライン」

を磨くことに命を懸けてきたのも、
当然の成り行きだったと言えますかね。


ところで、長い間「オス優位」が
続いてきた人間社会において、

「見られる性」

としての女性は、どうしても

「身体的外観」

に関心を集中しがちになります。

この傾向のことを心理学では

「自己対象化」

と呼びます。


これは、別の言い方をすれば、

「自分が第三者からどう見えているか」

を常に考えてしまうということです。

この傾向が行き過ぎると、
しばしば外見を良く見せようとすること
以外の活動への関心を低下させる結果に
つながることがわかっています。


こんな心理学の実験があります。

さまざまな衣料品(厚手のセーターから水着まで)
を試着室で着てもらった後で、難しい数学試験を
受けてもらうというものです。


実験に参加した人たちのうち、
水着を着た人は、男性、女性のどちらも

「自意識過剰状態」(=自己対象化)

が見られました。

裸に近い状態ですから、どうしても

自分の体型

がどう見えるかに関心が向かってしまったわけですね。


さて試着後の数学の試験の結果ですが、
男性の場合、厚着だろうが薄着だろうが、
試験の点数に差はありませんでした。

ところが、女性の場合、
薄着になればなるほど点数が低下したのです。

外見を気にする意識が、
他のことに集中する気持ちを低下させてしまう
自己対象化の傾向は、女性において顕著なことが
検証されたわけです。


よく、難しい資格試験等の勉強のため一時的に

‘女を捨てて’(=外見にかまわない)

がんばったという女性がいますが、
女性の場合、まさにそうしないと他の活動への集中が
難しいということなんでしょうね。


そういえば、男性の場合、

‘男を捨てて’

何かをがんばるということはありませんね。


さて、女性の地位向上により、男性が

「選ばれる性」、すなわち「見られる性」

へとなりつつある現在、
外見ばかりに気をとられて他のことに身が入らない
男性も増えつつあるんでしょうかね?


(参考情報・文献)

*NHKスペシャル
 シリーズ 女と男 最新科学が読み解く性
http://www.nhk.or.jp/woman-man/

*『ヒルガードの心理学(第14版)』

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (4) | トラックバック

ワニの肉はおいしいか?

いや実際、ワニの肉は結構いけますよ。

以前、レッドロブスターで

「オーストラリア料理フェア」

をやっていた頃、

「ワニ肉の串焼き」

みたいなメニューがあったので、
たまにオーダーしてました。

淡白で癖のない味、
鶏肉に近い食感だったことを覚えています。

鶏肉に近いと言えば、
食用カエルの肉もそんな感じですね。


静岡では「食用ワニ」の養殖も行われているとか。

ワニ肉は高たんぱく、低カロリー、コラーゲン、
DHA(ドコサヘキサエン酸)も豊富で、
身体にいいとされている成分が多いのだそうです。
(R25、2008.12.11)


とはいえ、多くの人は、
あのワニのグロテスクな肢体を想像してしまうと、

「おいしくなさそう」

という先入観を持ってしまいそうですね。

そして、この先入観があるがゆえに、
食べてもあまりおいしく感じないということに
なりそうです。


ではワニ肉の普及のためにはどんな工夫を
したらいいでしょうか?


『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)

には、この答えのヒントになりそうな実験が
紹介されています。


MIT(ミシガン工科大学)内にあるパブ

「マディー・チャールズ」

において行われた実験です。

アリエリー教授は、やってきた客(学生たち)に
以下の2種類のビールを試飲してもらい、
もし大きなグラスで飲むならどちらがいいか選ばせました。

・バドワイザー
・MITブリュー


MITブリューは、
バドワイザーにバルサミコ酢を1オンス(30ml)当たり2滴
加えた実験用オリジナルビールです。


MITブリューが

「バルサミコ酢入りビール」

だと事前に知らされないで飲んだ学生の中には、喜んで

「MITブリュー」

を選んだ者がいました。
(つまり、酢によってビールの味がまずくなっていたわけでは
 ありません。むしろ、かくし味でおいしく感じる可能性もありました。)


ところが、試飲する前に

「バルサミコ酢入り」

だと言われた人は「MITブリュー」を飲むとき
いかにも酸っぱそうな顔をし、大きなグラスに入れてもらう
ビールとしては、ノーマルなバドワイザーを選んだのです。


この実験は、人は自分が予測したとおりに認識してしまうこと、
今回で言えば、

「酢入りのビールなんてまずいに違いない」

という先入観に引っ張られた反応をしてしまうということが
実証されたということですね。


アリエリー氏はさらに追加の実験をしました。

まず何も教えずに「MITブリュー」を飲んでもらいます。
その後、これは実はバルサミコ酢入りなんだと伝えるのです。

すると、酢入りと聞いた後でも、
何も知らないで飲んだ時と変わらずに

MITブリュー

を気に入って選んだのです。

つまり、先入観なしで飲んで「おいしい」と思ったら、
その後で「酢入り」の事実を聞かされてもその認識は
変わらなかったということです。


さてこの実験に基づくなら、ワニ肉の普及のためには、

「ワニ肉と教えないでともかく試食してもらう」

という工夫が望ましいことがわかりますね。


考えてみれば、ウニ、ナマコなど、
冷静になって眺めてみれば見た目気持ち悪い生き物を
私たちは喜んで食べていますよね。
(私は苦手ですけど・・・)

まずは、否定的な予測をさせないで試してもらう、
というのがワニ肉の本当のおいしさを味わってもらうために
有効なのです。外見はじきに慣れる。


なお、上記の実験は、

「ブランディング」

の有効性を支持するものでもありますね。


ペプシ・コーラがコカ・コーラになかなか勝てないのは、
長年のブランディングを通じて、

「コカ・コーラのほうがおいしい、ほんもの」

という予測(ブランドイメージ)を
多くの消費者に持たせることに成功しているからです。


『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)

投稿者 松尾 順 : 10:35 | コメント (0) | トラックバック

「不気味の谷」は本当にあるのか?

ディズニー映画、

『WALL-E ウォーリー』

はご覧になりましたか?


ゴミ処理ロボットの

「ウォーリー」

と、彼が一目ぼれした卵型の美しいロボット

「イブ」

のラブストーリー。


どちらも見かけはいかにも「ロボット」ですが、
とても愛らしいですよね!

2体の顔には「目」しかなく、
口は持たないため言葉はしゃべれません。
(機械音は出せますが)

でも、目の動きだけで、
不思議と十分に気持ちが伝わるんですよね・・・

思わず泣いちゃった人もいるのでは!


同映画では後半、
CG(コンピュータグラフィックス)で制作された

未来の人間たち

が登場します。

生活の全てにおいて、
コンピューターと各種ロボットたちが面倒をみてくれるため、
皆、移動可能なチェアに座りっぱなしの毎日。

このため、ぶくぶくと太り、
すっかり堕落してしまった人々という設定になっています。

ただ、映画を見た方ならお分かりいただけると思いますが、
CGの人間たちはかなり「リアル」に描かれているため、
ちょっと気持ち悪いですよね。


さて、人型ロボットやアニメのキャラクターが、
本物の人間のイメージにかぎりなく近くなればなるほど、

「不気味だ・・・」

と感じられてしまい、
そのロボットやキャラクターに対する親しみやすさが低下する
現象のことを

「不気味の谷」

と呼びます。


この考え方を提唱したのは、
ロボット工学者の森政弘氏でした。

森氏は、人型ロボットを制作するに当たっては、

「不気味の谷」

に落ちないよう、むしろ人間そっくりになるのを
避けるべきだと提唱したのです。


ところが最近は、技術力が向上したこともあり、
この「不気味の谷」の理論を無視して、

「人間そっくりのロボット」

が制作されるようになってきているそうです。
(日経サイエンス、2009年2月号)

実際、本物の皮膚のようなシリコーン樹脂を利用した
6,500ドルもするセックス人形が誕生しているとか。


最近の研究では、「不気味さ」を感じる度合いは、
ロボットやキャラクターのリアルさとは関係していない
という実験結果もあるそうです。

「不気味の谷」

とは矛盾する結果ですよね。


とはいえ、
ロボットやキャラクターがリアルになればなるほど、

「目や頭などの大きさを変えられる許容範囲が狭くなる」

こともわかっています。

これは、

「不健康や生殖不能」

を示すような異常な形質を
人が本来的に忌避するようにできているためではないか
と考えられています。


ウォーリーと同じCGアニメ映画、

『ポーラー・エクスプレス』

でも、リアルな人のキャラクターが薄気味悪いと
批判されました。

そこで、同映画製作責任者を務めたソニー・ピクチャーズ・
イメージワークスのマクドナルド氏は、今後の作品では
「眼球の動き」を工夫することにしています。

“目さえちゃんとしていれば、ほかはどうでもいい”

とのこと。

どうやら、不気味さを避けるポイントは

「目の動き」

だと経験的にわかったようです。


「不気味の谷」が本当に存在するのかについては、
まだ結論は出ていませんが、なかなか興味深いですよね。


WALL-E ウォーリー公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/wall-e/

(参考)
日経サイエンス(2009年2月号)
ニューススキャン

投稿者 松尾 順 : 12:59 | コメント (0) | トラックバック

回転寿司で「バリュー・フォー・マネー」を考えた!

あなたがよく行く回転寿司チェーンはどこですか?


我が家の場合は、

「無添くら寿司」または「かっぱ寿司」

ですね。


やはり、1皿100円という安さが魅力!

「味」に対して過剰な期待はもちろん持ってませんが、
1皿100円にしては悪くない。

値段相応、あるいはそれ以上の品質だと感じます。


いわゆる、

「バリュー・フォー・マネー」

が成立しているんじゃないでしょうか。

ですから、上記チェーンは、
どの店舗もおおむね繁盛してますよね。


さて先日、10年ほど前に住んでいた家の近くにあり、
当時よく行っていた別の回転寿司チェーンの店に入りました。

ここは一皿最低130円から。
皿の柄によって180円、250円などと値段が変わる
昔ながらの価格設定を採用している店です。


このお店、休日の夜7時頃でしたから、
一番の稼ぎ時のはずなのに、店内には2、3組しか
お客さんがいませんでした。

まさに閑古鳥が鳴いている状態。
以前の繁盛していた頃を思うとなんとも寂しい限り。

客が少ないため、
鮮度が落ちて廃棄処分になるのを嫌ってか、
寿司の乗った皿もあまり回してません。

これもまたなんとも寂しい限り。


しかも、1皿300円、あるいは500円位の、
値段高めの寿司を注文してみても、
たいしておいしくない。

これだったら、1皿100円の回転寿司が
よほどマシと感じさせる味でした。


つまり、このチェーンではもはや

「バリュー・フォー・マネー」

が成立していなかったわけです。

当チェーンが撤退するのも時間の問題だろうと
勝手に思ってしまいました。


同様の状況は、

「ファミリーレストラン」

でも見られますね。


中国産ピザ生地のメラニン混入問題で、
見事な対応を取って消費者の信頼を維持した

「サイゼリヤ」

が1人勝ちです。

従来のファミレスチェーンは、
軒並み、さらなる業績悪化に苦しんでいますね。


サイゼリヤもまた、
圧倒的な安さと十分に満足できる味を
提供できているからこそ、
消費者から支持されているわけです。


一方、他のチェーンのほとんどは、

・中途半端な価格設定
・中途半端な味

しか提供できていないため、

「バリュー・フォー・マネー」

が感じられない。

このため、消費者から支持されなくなって
しまっているのでしょうね。


1皿100円の回転寿司チェーンや
サイゼリヤに共通しているのは、ひとつには、
食材段階から自社経営に乗り出すなど、

「垂直統合」

による品質管理と食材原価の低減。


もうひとつは、ITも最大限活用した、

「徹底したローコストオペレーション」

にあります。


おかげで、驚くほどの安さでありながら
一定以上の品質を維持した食事が提供できています。


他の回転寿司、ファミレスチェーンは、
もはや小手先の経営改革ではとても太刀打ち
できないのが現状です。


景気が下降気味の今、
消費者の内食(うちしょく)傾向も強まってますし、
外食産業の勝ち負けは一層はっきりしていくことに
なりそうです。

投稿者 松尾 順 : 10:27 | コメント (0) | トラックバック

買い物の陰にも女あり

“歴史の陰に女あり”“買い物の陰にも女あり”


これは、

『彼女があのテレビを買ったわけ』
(木田理恵著、エクスナレッジ)

に書かれていた言葉です。


同書でも述べられているのですが、
男性が買い物をする目的は、多くの場合、

「女性にもてたいから」

ですよね。

つまり、男性は、女性に評価されるようなモノ・コトを
購入しようとするわけですから、買い物の陰には確かに
「女性」がいます。


また、家族全般に関わる商品、
例えば、住居・家具関連、自家用車、家電製品などにおいて、
金を出すのはたいてい夫ですが、どの製品を買うかの選択に
最も大きい影響力を行使するのは妻(主婦)です。

したがって、やはり買い物の陰には女性がいますね。


以上は、指摘されてみれば素直にうなずけることです。

しかし、実際に製品設計や、
マーケティング・コミュニケーションにおいて
女性の心理傾向や嗜好が十分に考慮されているか
と言えば、必ずしもそうではありません。

男性目線でしか考えなかったために、
男性の心はつかめても、女性の心をつかむことに失敗し、
結果的に選択されない商品がたくさんあるのではないでしょうか?


さて、商品選択時において、
男性と女性で最も顕著な違いがあります。

それは木田氏の本によれば、

・男性は「スペック」にこだわる
・女性は「イメージ」にこだわる

ということです。


男性は、商品の細かい特性、つまり仕様を比較し、
客観的にみて正しい選択しようとします。

一方、女性は、全体的なイメージをとらえ、
主観的な判断で商品を選択する傾向が強いのです。


このことは、
つい最近私が関わった某商品カテゴリーについての
グループインタビューでも明確に現れていました。

男性グループでは、商品の構造や仕様にこだわり、
細かく比較検討するという声が聞かれました。

ところが、女性グループでは、
やはりイメージを気にする人が多かったのです。

また、昨日たまたま見る機会があった保険商品の
プロモーションビデオは、父親と息子が登場する
ヒューマンドラマ風の展開で、私を含む男性陣の涙腺を
ゆるませたのに、同席していた女性陣の中には、

「よく分からない」「演出が変で、笑ってしまった」

という人がいたんですよね。


単純に男性、女性に分けて考えるだけでは不十分ですが、

「買い物の陰にも女性がいる」

ことはマーケターは忘れてはいけません。


『彼女があのテレビを買ったワケ』
(木田理恵著、エクスナレッジ)

投稿者 松尾 順 : 13:25 | コメント (2) | トラックバック

「なんとなくスキ」「なんとなくイヤ」

私は、電子マネーのエディを普段の生活では多用しています。

ですので、コンビニも、エディが使える

サンクス、AM/PM、ローソン(ナチュラルローソン)

になるべく行くようにしてます。


幸い、事務所の近くに上記3店舗ともありますので、
その日の気分で行く店を決めてるんですが。

ただ、不思議なことに、
ナチュラルローソンに行くのだけは、
なんとなく気が進まないのです。
(駅前で一番便利なのですが)


どうしてなのか、その理由を考えてみました。

どうやら、他のコンビニと比べて、

「ちょっとだけエディでの決済時間が長いように感じるから」

ということに気付きました。

つまり、レジのカードリーダーに自分のカードを置いてから

「シャリーン」

となるまでの間の時間がコンマ何秒か遅いように感じるのですね。
それで、ちょっとだけイラっとする。


気のせいかもしれません。

でも、この実に些細なことがもたらす軽い不快感が
記憶に残っていて、ローソンに行きたいという気持ちを
邪魔しているようです。


私たちは、自分が購入・利用する商品や店舗を選択するに
当たって、常に明確な理由に基づいて決めるとは限りません。

しばしば漠然とした理由で、特定の商品や店を選んだり、
あるいは避けたりしていることも多いですよね。

これは、

「なんとなく好き」「なんとなくイヤ」

という状況です。


この「なんとなくスキ」「なんとなくイヤ」に
影響を与えているのは、実はかなり細かいレベルの要因です。

競合商品を見比べて、どちらを選んでも大差がない時、
つまり、明らかに優れたところ、劣ったところがない場合でも、
私たちはなんらかの基準で商品や店舗を選ばざるを得ない。

そんな時、私たちは「なんとなく」の感覚的判断を
優先してしまうのでしょう。


別のやはり些細なことですが、
「なんとなくイヤ」な例をご紹介しましょう。


房総半島の中ほどにある「養老渓谷」には、
ひなびた温泉郷があります。

我が家では、房総半島の太平洋側に面した勝浦、鴨川などに
よく旅行に行きますので、その行き帰りに養老渓谷に立ち寄る
ことがあります。


数年前、この温泉郷に総ヒノキ造りの立派な温泉ができました。

私はオープンしたばかりの頃行ったのですが、
建物から浴槽まですべて「天然木」でできているというのは、
なんとなく気分がいいものですね。

脱衣所から浴室までの廊下には、

「ヒノキを守るため通気をよくしてあります。
 お客さまには寒い思いをさせてしまいますが、
 ご了承ください」

なんてチラシが貼ってありましたが、
まあ、確かに寒いけれど仕方がないかと思いました。


さて、ヒノキ造りの贅沢な風呂でしばらく温まった後、
体を洗おうと洗い場に行って桶を持ったら、
なんとこれが、ヒノキを模したプラスチック製でした。

たいしたことじゃありませんが、

「なんだかなあ・・・」

ですよね。
ヒノキ風のデザインだけになおさらガッカリ。

プラスチック製にするなら、
いっそケロヨンの洗面器でも置いてあったほうが、
ノスタルジックで良かったと思いました。


結局、この温泉には2度と行っていません。
いいお風呂だったんですけどね。

「なんとなくイヤ」

なんですよね。


さて、企業側から見れば、この

「なんとなくイヤ」

というのはやっかいです。

といのも、顧客側としては、
不快な感情をあまり思い出したくないために、

「なぜ不快な感情を覚えるようになったのか」

という理由を封印してしまうからです。


ですから、例えばアンケートで不満や問題点を挙げて
もらおうとしても、なかなか真の原因が浮かび上がってこない。

このため、なぜ売れないかという原因がはっきりしないまま
どんどん顧客離れが進んでしまうのです。


「神は細部に宿る」

と言いますが、商品設計、店舗設計には、
些細な要素によって動く人間心理の機微をキャッチできる
優れた感受性が重要なのです。

投稿者 松尾 順 : 13:16 | コメント (3) | トラックバック

体験談は全てさらけ出せ!

以前、主婦の方を対象としたグループインタビューの中で、

「利用者の体験談」

を掲載しているパンフレットについての感想を聞いたところ、

・良いことだけを選んで掲載しているのではないのか?
・本当に利用者のコメントなのか(捏造ではないのか)?

といった疑念を持ちつつ読むというコメントを
多くの方が口にしていました。


まあ実際、新聞の折込や雑誌広告に掲載されている

「幸運の●●●」

といった怪しい系商品の体験談(大抵ぼやけた顔写真付)、
例えば、

・これを買ったら、翌日に彼女ができました!(25歳、男性)
・持ち歩いていたら、宝くじで1千万円当選!(40歳、主婦)

といった話は全て捏造だと言われていますね。

こうしたビジネスを「体験談商法」と言います。


また、通信販売事業で成功し、現在多数の著作を持つ某氏は、
自著の中で、売り出したばかりのダイエット食品の体験談を
初期のころは自分で創作したことを白状しています。


ただ、明らかに「この体験談はうそっぽい」と感じても、
信じたくなるのが人間心理の不思議。

「溺れるものは藁をもつかむ」

というところでしょうか。
つらい状況にいる人の弱みにつけこんでいるわけです。


最近は、ネット上でも、

「体験談商法」

が横行しているそうです。

真偽のほどが疑わしい体験談を前面に打ち出して、
商品の購入に誘う「体験談商法」は、特に健康食品関連に
多いですね。

なぜなら、効能をうたうことが薬事法で禁止されているため、
利用者の声を借りて効用を伝えるしかないからです。


もちろん、ありのままのユーザーの声を紹介するのなら
基本的に問題ありません。
(それでも、薬事法に抵触する可能性がゼロではない点ご注意)

しかし、企業側が販売促進を目的として
架空の体験談を捏造したら、当然ながらそれは「詐欺」ですね。


さて、こうした状況の中、
真っ当な商品を出している企業が考えるべきことは、
悪質な業者によって信頼性の低下してしまった

「体験談」

をどのように活用すればいいのかということです。


その答えは、明らかな誹謗中傷を除いて
全ての体験談を未編集状態で公開することでしょう。

良いこと、お褒めの言葉だけなく、
厳しい意見、批判、クレームも思い切ってさらけ出してしまう。


ネガティブな声を公開することは、
自社の評判を低下させることにもつながりかねないので
なかなか踏み切ることができません。

しかしながら、
ありのままを公開することによって

・この企業は正直である
・利用者に真摯に向き合おうとしている

というメッセージを一方で伝えることができます。


どちらにしても、インターネットのおかげで

「くさいものにフタをする」

ことがもはやできなくなった今、
いさぎよく全て公開してしまう以外の選択肢が
ないように私は思うのです。


ちなみに、ご存知の方も多いと思いますが、
売り手が見込み客に対して良いことだけを伝えることを

「片面提示」

と呼び、ネガティブなことも同時に伝えることを

「両面提示」

と呼びます。

心理学の実験では一般に

「両面提示」

の方が信頼されやすいということが
わかっています。

「両面提示」のテクニックは、
マーケティングやセールスの現場では、
長年実践されてきているんですよね。


(関連記事)
『両面提示広告:新生銀行のケース』

『シンプルマーケティング(19)DCCM理論』

投稿者 松尾 順 : 11:43 | コメント (4) | トラックバック

やっぱり「くびれて」なきゃね!

日経デザイン最新号(June 2008)に掲載されている
消費者アンケート調査結果によると、

500mlペットボトル入りのミネラルウォーター10製品のうち、
パッケージデザイン(ペットボトルの形状)で選んで買うとしたら、
どれを選びますか?(択一)

という設問に対する回答で、
人気が高かった製品は以下の2つでした。

・アクアセラピーミナクア(日本コカ・コーラ)18.3%
・コントレックス(コントレックス)15.3%


上記2つの製品とも「ボトルの形が良いから」ということで
選ばれています。

現物を見てもらうとわかりますが、
両者の共通点は、腰の部分がくびれたヘチマ形ということです。


こうした形状は俗に

「ウーマンズボディ」

と呼ばれます。
典型的なのは昔のコカコーラの瓶の形ですね。


腰がくびれているデザインは、
手に取りやすいというメッセージを私たちに送っているので、
無意識に好んでしまうのです。
(これは「アフォーダンス」と呼ばれます。)

同時に、やはり性的な連想・刺激があることも
否めないのではないかと・・・


サントリーの「伊右衛門」が大ヒットした理由のひとつとして、
やはり竹を模したあの「くびれたボトルデザイン」があります。
(と私は思っています)


関連記事を以前書きました。

『下すぼまり形状』

この記事では、台所用洗剤のパッケージデザインについての
日経デザインのアンケート調査結果をご紹介したのですが、
やはり、くびれたデザイン(=下すぼまり形状)が好まれる結果に
なっています。


ミネラルウォーターにしろ、緑茶飲料にしろ、台所用洗剤にしろ、
くびれたデザインかどうかで売上に大きな差が出るじゃないかと
思いますが、現実には多様なデザインが存在していますよね。

デザイナーさんとしては、
上記のような人間心理よりも自分の発想やオリジナリティを
優先したいということなのでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 16:08 | コメント (2) | トラックバック

三越な人 vs 伊勢丹な人

本日(2008/04/25)の午後、
有楽町電気ビル北館20Fの「日本外国特派員協会」の
会議室で開催された、

『ブランドの達人[改訂版]』出版記念セミナー

に出席してきました。


本稿はその速報レポート!


『ブランドの達人[改訂版]』
(ブランドデータバンク著、ソフトバンククリエイティブ)

は3万人の消費者アンケート調査である、

「ブランドデータバンク」

の分析結果を元に書かれた本です。


同書では、様々なブランドに対する人々の好みの違いに
着目した消費者のタイプ分けと、それぞれのタイプ別の消費行動や
価値観などの特徴を豊富な図表とともに解説してあります。

例えば、

・ユニクロな人(ユニクロが好きな人たち)
・日産スカイラインな人(スカイラインが好きな人たち)

といった人がどんな人たちなのかが理解できます。

消費者分析に興味がある方だけでなく、
有名ブランド(モノだけでなく、サービスや場所、キャラクター、
有名人なども含む)に興味がある方なら楽しく読める本でしょう。


さて、肝心のセミナーですが、ひとことで言えば

「消費者アンケートデータベースとその分析システム」

を「ASPサービス」として提供している

「ブランドデータバンク」

の紹介を目的として行われたものでした。


ブランドデータバンクは、毎年6月と12月の年2回、
全国の消費者3万人を対象として行われる
オンラインアンケートのデータベースです。


当アンケートでは、車、化粧品、金融、小売店など、
消費者が購入・利用、あるいはメディアで目にする様々な

「もの」
「店」
「サービス」
「場所」(繁華街、旅行先など)
「ひと」(アニメキャラクターやタレント、有名人など)


等を含む、全部で130ジャンルについての所有・利用有無や
好意度に加えて、

・消費に関わる価値観(新しい商品はチェックせずにいられない等)
・各種メディア(広告接触)に対する信頼度

を聞いています。

これによって、前述したように、
例えば「ユニクロを好きな人」は、
他にどんな商品(ブランド)が好きなのか、
どんなライフスタイルや価値観を持っているのか、
また信頼しているメディアは何なのかをオンラインベースで
簡単に把握することができるようになっています。


セミナーでは、昨年(07年12月)に行われた第7期調査結果から、

・三越な人(三越が好きな人)
・伊勢丹な人(伊勢丹が好きな人)

のそれぞれの消費者像の違いを対比させて説明していました。


説明の詳細は、
ブランドデータバンクのWebサイトから誰でも
自由にダウンロードできる

「プレゼン資料」

を見ていただくとして、ここでは、
プレゼン資料にもまとめとして掲載されている

「三越な人」「伊勢丹な人」

それぞれの特徴のみ、簡単にご紹介しておきましょう。

----------------------------------

【三越な人】

●格式を備えた、保守的なブランド嗜好性を持つ

サンプル数:1600サンプル
平均年齢:46.08歳(全体平均:40.41歳)
平均世帯年収:753万円(同:673万円)
平均お小遣い:4.41万円(同:3.87万円)

・50代以上の比率が高い
・能動的な情報摂取は少なく、
 TVや新聞のような旧来のマススメディアを強く信頼
・彼らが選ぶブランドは、長い歴史や格式が高いブランドである


【伊勢丹な人】

●求めるのは時代のセンス、洗練されたブランド嗜好性を持つ

サンプル数:2494サンプル
平均年齢:42.26歳(全体平均:40.41歳)
平均世帯年収:773万円(同:673万円)
平均お小遣い:4.85万円(同:3.87万円)

・中高年比率は高いが、幅広い年代から支持されている
・口コミや交通広告に対する信頼度高い。携帯サイトなども
 活用し、幅広く、また能動的に情報をキャッチ
・海外ブランドに目がない

-------------------------------------

なお、三越な人、伊勢丹な人がそれぞれ好きなブランドで、
際立って違うものとしては、以下のようなものがあります。
(私が適当にピックアップしました)


●男性のお気に入りの腕時計

 三越人・・・ダンヒル、セイコー/クレドール
 伊勢丹人・・・カルティエ、セイコー/グランドセイコー

●女性のお気に入りの服

 三越人・・・シャネル、クリスチャン・ディオール
 伊勢丹人・・・セオリー、カルバンクライン

●女性のお気に入りの腕時計

 三越人・・・ブルガリ、シャネル
 伊勢丹人・・・ロンジン、コーチ

●所有している車

 三越人・・・トヨタクラウン、プリウス
 伊勢丹人・・BMW3シリーズ、フォルクスワーゲンゴルフ

●購読しているファッション・ライフスタイル誌(女性誌)

 三越人・・・婦人公論、家庭画報
 伊勢丹人・・SPUR、25ans、ELL JAPON

●好きな有名人

 三越人・・・小泉純一郎
 伊勢丹人・・・佐藤浩一


まあ、うなずける結果ではありますが、
人それぞれの生きかたやこだわりといったものが、
ブランドに対する態度(心理)や行動を通じて
よく見えてきますね。


*三越な人 vs 伊勢丹な人(セミナーで使われたPDFプレゼン資料)

*ブランドデータバンク
http://www.branddatabank.com/

『ブランドの達人[改訂版]』
(ブランドデータバンク著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 18:53 | コメント (0) | トラックバック

「タスポ」の導入がビジネスに与える影響と消費行動・心理

数年前、飲酒運転に対する罰則が強化された際、
その影響で業績が悪化した業界として

「居酒屋」

がありました。

とりわけ、郊外に展開する店舗の売り上げが落ちたんです。


街中で飲み、電車で帰宅することの多い方には
あまりピンと来ないと思いますが、東京近郊や地方に行くと、
駐車場付の居酒屋って結構多いんですよね。


こうした郊外型居酒屋は、
主にファミリー客をターゲットとしており、
近年その数が増加していた業態です。

しかし、業績が落ちたところを見ると、
以前から、運転手も酒を飲んでいたケースが多かったことが
うかがえますね。

実は白状すると、私もその一人でした。

まだ妻がペーパードライバーだった10年以上前のことですが、
家族で某郊外型居酒屋に立ち寄った際、我慢できずにビールを
1杯飲んでしまい、ほろ酔いで運転して帰ったことがあります。
(自宅まで3分ほどの道のりでしたが)


また、路上駐車に対する罰則が強化された際も、
道路に面した駐車場のない飲食店(ラーメン屋など)の
売り上げが低下しました。

まあ、飲酒運転も路上駐車も本来法律違反です。

違反者からの売上分が減ったとしても、
それはまっとうな水準に戻ったということではあるのですが。


さて、上記と似たような現象が今、

タバコ業界

でも起きています。


今年から、自動販売機では、

「タスポ(taspo)」

と呼ばれる、顔写真付きの

「成人識別カード」

を持っていないとタバコが購入できなくなりますよね。


上記制度の導入時期は地域によって異なるのですが、
いち早くこの3月から導入された鹿児島県や宮崎県では、
売り上げが導入前の3割、つまり

7割減

と大きく落ち込んでいるようです。
(日経ビジネス、2008年4月21日号)


現時点でのタスポの普及率は、

鹿児島県で26%(宮崎は同29%)

ですから、普及率に連動して売上げが低下しているのです。


このため、必要経費を賄えるだけの売上げが確保できなくなり、
廃業を決めたタバコ屋さんも出てきています。


私は以前、各種タバコ銘柄の販売動向調査で
タバコ屋さん巡りをしていた時期がありましたので、
比較的この業界には詳しいのですが、
たばこの販売手数料は10%に過ぎないため、
基本「薄利多売」、つまりたくさん売らないと
商売としては成立しないんですよね。

今回の「タスポ導入」という販売規制強化によって、
予想されたことではありましたが、自販機に依存してきた
タバコ販売店が苦境に立たされてしまったというわけです。


一方、タスポのおかげで特需に沸いているのがコンビニです。
対面販売のため、タスポの提示が不要だからです。

鹿児島のあるコンビニ店では、

“盆と正月が一緒にきた。
 タバコの売上げは以前の2倍以上。8万円になった。”

とのこと。


さて、以上のような状況は、

「タスポの普及が進めば平準化する」

と日本たばこ産業(JT)では考えているようです。

しかし、タスポカードの取得手続きはかなり面倒です。
そうそう進まないでしょうね。
(私は非喫煙者なので関係ありませんが・・・)


しかも、鹿児島の某たばこ店主によれば、
店頭での反応で、

想定していなかった喫煙者の層

が、2つあることが分かったのです。


ひとつは、隠れ喫煙者層、つまり、
家族に内緒でたばこを吸っている人たちです。

具体的には、主婦や、子供の誕生を機に
禁煙したことになっているはずの男性などが該当します。
(自宅外でこっそり吸ってるんですね)

彼らは、自宅にしか送ってもらうことのできない
タスポカードを申請するわけにはいかないのです。


もうひとつは、やめたいのにやめられない層。

彼らは、タスポカードを保有することは、
喫煙を続ける意思表示をしたことに等しいと感じるために、
タスポカードの入手をためらってしまうのです。


タバコに対する販売規制の強化が、
さまざまな形でたばこビジネスに影響を及ぼしている
だけでなく、消費者の意外な消費行動や心理が浮き彫り
になったんですね。

投稿者 松尾 順 : 11:54 | コメント (3) | トラックバック

「技術の独善」を捨てられない日立

他人とうまくやっていくための最重要ポイント。
それは、次の2つでしょう。

・自分のことをよく理解してもらう
・相手のことをよく理解する

わざわざ言うまでもない基本的なことですね。


でも、私たちはしばしば、

「自分のことをよく理解してもらう」

ことにばかり気を取られ、

「相手のことをよく理解する」

ということを忘れがちです。


誤解を恐れずに言えば、
この傾向は男性に多いように思います。

「どう、俺ってこんなにすごいんだよ!」

と、自分の知性の高さや見た目の良さ、血筋の良さ、
金持ちであること、ナニの大きさなどを誇らしげに語るのです。

しかし、実際にすごいかどうかを評価するのは、
意中の女性の役目ですよね。

しばしば男性は、

相手が「すごい」と思ってくれるのは何か

をよく理解しようとせず、独善的に振舞ってしまう。
この結果、あっさりふられてしまうのです。
(恥ずかしながら、自分のことも語っています・・・)


日経ビジネス最新号(2008年4月14日号)の日立の記事を
読んでいたら、日立は上記のような「男性的」な発想が強い会社
だなと思わず感じてしまいました。


日立は年間売上10兆円、
日本人で知らない人はいない大企業です。

しかし、民生用、
つまり一般消費者向け製品における存在感は極めて薄いですね。

はっきり言って、強いカテゴリーは一つもありません。

我が家の家電製品、AV製品を調べてみたら、
松下、ソニー、東芝、シャープ、サンヨー、パイオニア。
日立の影はやはり薄い。かろうじて10年以上前から使っている
テレビ1台だけが日立製でした。


日立の技術力の高さには定評があります。

例えば、洗濯機では2004年に、

「ビート式」

の洗濯機を世界で初めて発売しています。


日立は、この方式を採用した洗濯機のことを

「第3世代の洗濯機」

と位置づけていました。

というのも「ビート式」は、
洗浄力は強いが水の使用量が多い従来の「うずまき式」や、
節水能力は優れているが洗浄力が弱く時間がかかる「ドラム式」
とは異なる新しい方式であり、

水の使用量、洗浄力、洗浄時間

といった主な性能面で他の方式を凌駕する

「すごい洗濯機」

だったからです。


ところが、当時洗濯機で大ヒットしていた、
言い換えると、主婦の心をつかんでいたのは、
2003年に松下が初めて発売した

「ななめドラム式」

のような、洗濯物の取り扱いの容易な洗濯機だったのです。


日立の人たちは、

「どうしてこの技術のすごさがわかってくれないんだ・・・」

と嘆いたことでしょう。

しかし、そうやって嘆く以前に、
そもそも相手(消費者)が求めていることを理解しようとしない、

「技術の独善」

を捨てるべきではないでしょうか。


自分がどんなに「すごい」と思っていても、
相手が「すごい」と思ってくれなければ受け入れられない。

このあまりにも当たり前のことが実践できない
独善的な企業(人)は日立に限らずたくさんありますが、
この発想を捨てない限り、狙った相手にそっぽを向かれるだけだ
という厳しい現実を自覚すべきでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 09:22 | コメント (2) | トラックバック

「無料」というならホントに無料にしてほしい

これまで5年間ほど弊社で採用してきた

「ふで文字名刺」

がちょうど年末で切れたので再発注したところ、
発注先から、サービスを停止したため

「増刷できません」

という返事が戻ってきました。

「ふで文字名刺」、結構気に入っていたんですけどね。
残念です。


そこで、早速新しい名刺を作成することにしたのですが、

「さて、どこに頼もうかな・・・」

と思った時に某サイトでたまたま目に入ったのが、

「無料お試し名刺」

のバナー広告でした。


やはり

「無料」

という言葉にはパワーがありますね。

早速クリック。

飛び先のWebサイトで台紙のデザインを選び、
名刺の表に表示する会社名や所在地、役職などを入力。

名刺の出来上がりイメージを確認して、
決済ページまでとりあえず進んでみました。


名刺代は確かに「0円」でした。

しかし、次のぺージに進むと

「送料」、そして「プロセス料」

というよくわからない費目が表示されます。


「送料」はまあいいとして、

「プロセス料」って翻訳すれば、

「手数料」

ですよねぇ・・・


この「送料」+「プロセス料」は、
発注から納品日までのリードタイムで値段が違います。

例えば、お試し名刺を250枚作成するとして、
納品日が3週間後だと900円弱、
1週間短い2週間後の納品の場合で約1600円です。


まあ、細かいことはいわずに、
単純に値段だけ見れば大バーゲンセール。
メチャクチャ安い!

とてもいいんですけどね。


でも、結局発注はしませんでした。
なんだか気分がすっきりしなかったからです。


「お試し名刺」は本体分はタダですが、
送料だけは別途ください

ということなら

「無料」

と謳うのも納得します。


しかし、「プロセス料」という手数料が
加算されるのであれば、それはやっぱり

「無料」

じゃないだろうというのが、
エンドユーザーとしての率直な感想ではないでしょうか。


まあ、このようなセールステクニック、
このケースでは、

「ローボールテクニック」
(最初に相手が承諾しやすい提案をして、
 後から別のオプションや費用を追加していく方法。
 一度その気になったら、なかなか途中で止めにくいという
 「一貫性」の心理を突いたものです。)

が使われていますが、
従来からよく行われてきたものですし、
法的、あるいは倫理的に大きな問題があるとは思いません。


しかし、このところの一連の偽装事件の発覚のために
人々が、企業の言動に対して疑り深くなっている昨今、

『影響力の武器』や『亜玖夢博士の経済入門』

で紹介されている、
人間心理の盲点を突いたセールステクニックの利用は
なるべく避けた方が賢明ではないかと思うのですが・・・


ところで、最終的に私が名刺を発注した会社は、
3年ほど前にキャリアカウンセリング用のカードを
作成をお願いしたところでした。


当時から、ずっとこの会社のメールマガジン(週刊)を
受け取っていたのが発注を決めた理由です。

費用的にもそこそこ安かったこともありますが。


もし、メルマガがなければ、
以前利用したことなどすっかり忘れてしまっていて、
おそらくほかの会社に発注していたんじゃないかと思います。

メルマガ発行の最大メリットは、
いざ(ニーズ発生)という時に思い出してもらえるという

「リマインダー効果」

だと、常日頃から私はクライアントにお伝えしてるのですが、
図らずも自分自身の行動が、この主張を裏付けるものとなりました。


『影響力の武器[第二版]』
(ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会翻訳、誠信書房)

『亜玖夢博士の経済入門』
(橘玲著、文藝春秋)

投稿者 松尾 順 : 17:37 | コメント (2) | トラックバック

『亜玖夢博士の経済入門』

今日は、最近読んだ風変わりな本をご紹介します。


『亜玖夢博士の経済入門』

は、端的にご紹介するなら、

専門書の解説では厳密すぎて理解困難な、

「経済関連の理論の基礎」

を物語仕立てでわかりやすく解説している本

ということになるでしょうね。


同書には5編の独立したストーリーが収められています。
ただし、それぞれに関連を持たせてあり、
最後には全体が結びつくのですが。


各編では、最近注目されている以下の理論が一つずつ
取り上げられ、それぞれの理論を軸にしながら、
相当ぶっ飛んだ、奇妙な話が展開していきます。

・行動経済学
・囚人のジレンマ
・ネットワーク経済学
・社会心理学
・ゲーデルの不完全定理


主人公は、70歳の亜玖夢(あくむ)博士です。

万巻の書物を読破した亜玖夢博士は、
己の学識全てを傾け衆生を救済するため、
東京・歌舞伎町裏、風俗街の怪しげなビルに

「亜玖夢研究所」

を開設。

歌舞伎町のポン引きがばらまく勧誘チラシを
頼りにやってきた相談者たちが抱える問題を
中国人の助手の手を借りて解決してあげるという設定です。

そのチラシには次の一文が。

「相談無料。地獄を見たら亜玖夢へ」


私が特に楽しかった章は、
やはり私の最大の関心領域である「社会心理学」を
取り上げた第4章(同書では「第4講」)です。


この章では、あらゆる病気に効果があると謳う

「スーパー・バイオニック・ウォーター」

といういかにも怪しげな水を製造するマシン

「ミラクルSBW」

を売りまくるトップセールスマンが、
亜玖夢研究所にやってきます。

そして、あらゆるセールステクニックを用いて、
亜玖夢博士に「ミラクルSBW」を売りつけようとします。


しかし、人類の英知を知り尽くした亜玖夢博士は、
彼が次々と繰り出すセールストークを社会心理学的に
解説してみせることによって、セールスマンを完全に
打ちのめし、無力化してしまうのです。

ただ、結局のところ1台100万円のマシンを
亜玖夢博士は購入します。その後、セールスマン自身は
まんまとある罠にはめられて地獄を見ることになるのですが、
ことの顛末は本書をお読みください。(笑)


なお、4章で亜玖夢博士が示した社会心理学の理論とは、
具体的には、「コールドリーディング」を始め、
名著『影響力の武器』で紹介されている理論である、

・権威に対する服従
・社会的証明
・希少性の原理
・一貫性
・返報性

の5つです。


『影響力の武器』にはより詳細な説明があり、
文章も読みやすいのですが、
なにしろ分厚くボリュームのある本です。

『影響力の武器』をまだ読んでいない方は、
まずは本書での亜玖夢博士の解説を読んで、
社会心理学で解明されている

「相手に影響を及ぼすテクニック」

のポイントをつかんでおくのがいいかもしれません。


『亜玖夢博士の経済入門』は280ページありますが、
軽い文体ですので、通勤時間の1-2時間でさくっと読めます。

とっつきにくい印象のある理論も、
実は人間の行動を理解するために役立つこと、そして
理論の本質は、それほど複雑ではないことがわかりますよ。


『亜玖夢博士の経済入門』
(橘玲著、文藝春秋)

(関連図書)
『影響力の武器[第二版]』
(ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会翻訳、誠信書房)

投稿者 松尾 順 : 07:35 | コメント (0) | トラックバック

乳児でも区別する「良い人」「悪い人」

私たち人間は、「群れ」(集団)を作り、
共同生活をすることで世代をつないできた社会的動物。


共同生活を維持するためには「相互扶助」の関係が必要です。

ですから、茂木健一郎氏も述べていますが、

「他人のため」

に何かをすることを

「喜び」

とするように脳の報酬系ができあがっています。

つまり、誰かのために役立つこと(利他的行動)が、
脳に「快感」を与える仕組みが組み込まれています。


そしてまた、私たちは生まれながらにして、

・誰かを助ける人は「良い人」(好きな人)
・そうでない人は「悪い人」(嫌いな人)

と区別することが、
イェール大学のハムリン博士の実験から
わかっているのだそうです。


以下の実験内容は、脳研究者の池谷裕二氏が、
日経新聞夕刊(2007/12/05)の「あすへの話題」で
紹介されていたものです。


生後6カ月の乳児に、円盤に2つの目が描かれた
かわいいキャラクター「クライム君」を見せます。

クライム君は、斜面を登ろうと努力しているところ。


ここで、別のキャラクターAとBが登場します。

Aは、クライム君を後ろから押して
坂を登るのを手伝います。

一方、Bは坂の上にいて、
登ってくるクライム君を押し戻そうとします。
つまり、クライム君の邪魔をするのです。


この様子を見ている乳児はといえば、
Aを長く眺めたり、Aに手を伸ばそうとします。

言葉をまだ話せない赤ん坊ですが、
こうした態度・動きによって、

「BよりもAが好き」

ということを示しているわけです。


そもそも、クライム君の動きを見た乳児は、

「クライム君は坂を登りたいのだ」

という他者の欲求を理解しているらしい点も
驚きですよね。

これは、おそらくミラーニューロンの働きでしょう。


そしてまた、他人の欲求を叶えるために援助できる人を

「好き」

と感じるのもミラーニューロンの働きなのかもしれません。

他人を助ける人は、
自分に快感をもたらしてくれるわけですから。


さて、当然のことながら、
逆に利己的な行動を取る人は他者に不快感を与えるため、
嫌われ、社会から疎外される結果をもたらします。


ところが、このことがわかっていながら、
私たちはしばしば、「利己的」に振舞ってしまいますよね。

なぜなのでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 07:26 | コメント (3) | トラックバック

「お約束」の偽装

いまさら言うまでもなく、「偽装」は良くないこと。
やってはいけないことです。


でも、提供する側受ける側の両者が了解済みの

「お約束」

の偽装ってありますよね。

その一番卑近な例は、駅前の立ち食いそば店で出される

「えび天ぷら」

でしょう。

私は、若いころ福岡から東京に出てきて初めて、
駅の立ち食いそば屋の

「えび天うどん」

を食べた時、うどんの上に鎮座しているえび天の衣の大きさと、
中に入っているえびの身の「小指並の小ささ」の落差に愕然と
したものです。(オオゲサですけど)


これじゃあ、「えび天」というより、

「シュリンプ天」

と呼んだほうが正確だよなあ!

当時はそう思いました。

まあ、今でも立ち食い店に行くたびに、
あんな小さいエビの身に、あれだけ巨大な衣を着せることが
できる職人芸には感心していますが。


でも、別に文句を言ったりはしません。

あの「えび天」に文句を言う人は、
外国人旅行者とかでもない限りたぶんいませんよね。

実質的な「偽装」とわかっていて受け入れています。


そもそもエビ1尾200円そこらの値段で、
まともなエビが食べられるはずもありません。

それでも、食べる側の心情としては、
トッピングの天ぷらは丼からはみ出すくらいの大きさがうれしい。
たとえ、中身は小指大でも・・・

バカ正直に、エビの真実の大きさ通りの天ぷらを揚げたら、
見かけが貧相となってしまい、注文する人が激減しますよね。

こうした、消費者心理を踏まえた上で、
「お約束」のエビ天偽装は続けられているということでしょう。


まあ、ほかにも贈答用のお菓子箱などの

「上げ底」

も、両者が握り合った「偽装」ですね。

実質よりも、見栄えを優先することの必要性を
贈り手、貰い手の双方が納得しています。


そういえば、古典落語の名作のひとつ、

「長屋の花見」

は、貧乏長屋の連中が花見に出かけたはいいが、
先立つものはないので、番茶を薄めたものを「酒」、
かまぼこは「大根」、卵焼きは「沢庵」で代用して、
見かけだけでも立派な花見を楽しもうとする話でした。


日本には、昔から「上げ底文化」(偽装を許容する文化)
とでも呼べるものが脈々と続いてきており、これが近年、
次々と明らかになっている食品などの偽装問題の背景にある、
というのは飛躍しすぎでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 06:30 | コメント (0) | トラックバック

「第1感」・・・考えない力

最近、「直感」のことばかり取り上げてる私ですが、
畳み掛けるようにこのテーマについて書かれた良書を
ご紹介します。

『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』
(マルコムグラッドウェル著、沢田博・阿部尚美訳、光文社)


2006年初版の本書は、
この数年に出たマーケ本の中では、
ベストテンに入るくらいの優れた本だと思っています。

しかし残念ながら、
ベストセラーとまでは行かなかったようです。


ケチをつけるつもりはないのですが、

『第1感』

という邦題が、正直あまりピンとこないんですよね。
直感的には、あまり惹かれないタイトルだと思います。


本書の原題は、

『blink - The Power of Thinking Without Thinking』

です。

実は私は、翻訳本が出る1年ほど前に原書を買っていたのですが、
購買意欲を刺激したのはこの原題のサブタイトル、

「考えないで考える力」
(The Power of Thinking Without Thinking)

という面白い表現でした。


ですから、邦題でも、

『非思考力』

とか

『考えない力』

とでもしたほうがもっとキャッチーだったかなと思います。


まあ、第三者はいくらでももっともらしいことが
言えますので、タイトルの話はこのくらいにしときます。


さてこの本では、
最初のわずか2秒ほどで感じた結論が、
多くの場合に正しい判断であるということを
様々な具体例を交えて解説しています。


本書冒頭には、
次のような話が紹介されています。

紀元前6世紀に作られたというギリシャ彫刻の大理石像、

「クーロス像」

が、ある美術商によって、
カリフォルニア州のゲッティ美術館に持ち込まれました。

ゲッティ美術館では、この像の真偽鑑定のため、
14カ月かけて科学的な分析を含む徹底的な調査を
行いました。

その結果、同像は数百~千年以上前の作品であることが
確認できたため、同美術館はクーロス像の購入しました。


ところが、美術史や彫刻に詳しい専門家たちは、
この像を見た瞬間に、

「どこかおかしい」

とか、

「新しい」(2千年以上も前のものであるはずなのに)

と感じたのだそうです。

ただし、そのように感じた理由を彼らは
言葉ではうまく説明することができませんでした。

まさに、「直感」が働いていたわけです。


そして再調査の結果、
現在ではこの像は近年に作られた

「模造品」

だとみなされているそうです。


本書によれば、
このように一瞬にして真偽を見分けることが
できるような脳の働きは

「適応性無意識」

と呼ばれており、
心理学で最も重要で新しい研究分野のひとつ
なのだそうです。


この「適応性無意識」こそが、
俗に「直感」と言われているものです。


心理学者、ティモシー・D・ウィルソンは、
「適応性無意識」について次のような説明を行っています。

「高度な思考の多くを無意識に譲り渡してこそ、
 心は最高に効率よく働ける。最新式のジェット旅客機が、
 <意識的>なパイロットからの指示をほとんど必要とせず、
 自動操縦装置で飛ぶのと一緒だ。
 適応性無意識は、状況判断や危険告知、目標設定、行動喚起
 などを、実に高度で効率的なやり方で行っている」


この本には多様な分野のエピソードが掲載されているため、
正確には「マーケ本」と呼べるかどうか微妙です。

ただ、新商品のブラインドテストの例などを示して、
直感的(=無意識的)には優れた商品、好きな商品を
正しく選択できるにも関わらず、現実には、
強いブランドイメージに引っ張られて、

「このブランドだから、良い商品に違いない」

と、実際には好きでもない有名ブランド商品を選んでしまう
傾向が一般消費者にはあることが指摘されています。


これは、「直感的判断」を
「理性的(観念的)判断」が覆してしまうということですね。

明らかに優れているはずの新商品が、
以前からあるパワーブランド商品になかなか勝てない理由
のひとつがここにあります。


「第1感」は、
純粋に読み物としてもなかなか楽しめる本ですよ。

『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』
(マルコムグラッドウェル著、沢田博・阿部尚美訳、光文社)

投稿者 松尾 順 : 11:48 | コメント (2) | トラックバック

相手の心が読めるメカニズム・・・ミラーニューロン

私たちは、他人が何を考えているのか、あるいは
何を感じているのかをあれこれ複雑な推論をすることなく、
ほぼ瞬時に理解することができます。

これって、よく考えれば不思議なことですね。


なぜこんなことができるのでしょうか。

この不思議を解く鍵は、

「ミラーニューロン」

と呼ばれる脳の神経回路にあります。


他人が、何かものを食べています。

それをあなたが見ている時、あなたはただ見ているだけなのに、
食べている人と同じ箇所の脳の神経回路が活性化しています。

つまり、相手の脳内の動きが、
まるで鏡のようにあなたの脳内にも反映されている。


これは、端的に言えば、他人の体験を観察することで、
あなたの脳内では「疑似体験」をしているということです。

だから、まるで自分ごとのように
相手の気持ちが理解できるわけですね。


先日の米大統領予備選において、
ヒラリー・クリントン氏が涙を見せた時、
おそらくミラーニューロンの働きによって、
彼女の苦渋の表情を見ていた支持者の脳内でも、
ヒラリー氏と同様の感情が湧き起ったはずです。
(ただし、その感情を支持者がポジティブに解釈するか、
あるいはネガティブに解釈されるかは別の問題ですが)


ミラーニューロンは、過去の実験から、
サルや人などの霊長類に存在することがわかっています。
(他の動物たちにもあるかどうかは不明)

いわゆる霊長類のほとんどは、
群れを作って共同生活する社会的な動物です。

この社会という集団の中で適応するためには、
相手の感情をすばやく理解し、適切な対応ができることが
求められます。

このためにミラーニューロンが発達したのだと
考えられます。


ミラーニューロンは、他人の感情を理解する力、
つまり「共感力」だけでなく、また、相手の行動を観察し、
模倣することによって何らかのスキルを身につける
「学習力」とも関係があるようです。


ミラーニューロンは、
発見されてからまだ10年そこそこしか経っていません。

人と人とのコミュニケーションに大きな役割を
果たしていると考えられるミラーニューロンについての
新たな発見がこれからも続々と出てくるでしょうね。


(参考文献)
*他人を映す脳の鏡
 (日経サイエンス別冊、脳から見た心の世界 Part3)

投稿者 松尾 順 : 11:36 | コメント (4) | トラックバック

情動優位の時代!?

先日、マスコミにもよく登場される精神科医、
香山リカさんの講演に参加する機会がありました。


香山さんのお話の中で、私が一番引っかかったのは、

“現代は、「知性や理性」といったものよりも「感情や感性」
といった「情動的」なものが人々の行動において目立つように
なってきた。”

ということでした。


キャッチフレーズ的に言えば、

「情動優位の時代」

ということになるのでしょうか。


香山さんは、以前から、そして今でも、
臨床医として精神科の患者さんの治療を行っています。

患者さんはうつ病などの病気に罹ってますから、
当然ながら精神的に不安定です。

従来、患者さんとしか接していなかった香山さんは、

「病気だからこうなんだ、元気がなかったりするんだ」

と思っていたそうですが、近年、大学教授として学生に
接するようになって、この認識が間違っていたことに気づきました。


なぜなら、恵まれた環境にいる、ごく普通の学生たちもまた、
ちょっとしたことですぐに落ち込んだりメソメソしている。
あるいは逆に、ちょっとしたことにイライラし、むかついている。

つまり、香山さんは、
病人ではない、健康な一般人が感情の大きな起伏を日常的に
表に出していることに驚いたのだそうです。

考えてみれば、

泣ける本、泣ける映画

などが最近はやたら人気です。

逆に、大笑いできる漫才の人気も根強いものがありますね。

突然、「切れる」人も増えてます。

泣く、笑う、怒るといった感情を以前よりも
遠慮なく表出できるようになったということでしょう。


今は「心」の時代とも言われてもいますね。

「人間脳」と称される「大脳新皮質」を駆使して物事を
科学的に見ようとするアプローチが主流だった20世紀は
「脳」の時代でした。


一方、「心」の時代はいわば先祖帰りです。

つまり、「動物脳」とも称される大脳辺縁系を駆使して、
感情や感性で物事を全体的に捉えようとするアプローチが
主流になりつつあります。


これは、良い・悪いの議論ではありません。
そのような傾向が顕著になっているという現状認識を
お伝えしているだけです。


ただ、情動優位の時代になったのは、逆に言えば、
理性・悟性による感情コントロール力が低下したからと
言えるのかもしれません。

つまり、現代人、特に若い世代は、
自分の感情をうまく扱うことができなくなりつつある
のではないかということです。

このことが、昔は中年期以降の病気だった
「うつ病」が若い人に増えている背景にあるのではないかと
私は感じています。


マーケティングの世界でも、

「感情や感性」

をどう刺激するかということが、
近年ますます大きな関心事となってきてますよね。


(関連記事)
*わがままな3人の王様たち

投稿者 松尾 順 : 11:16 | コメント (2) | トラックバック

もてたい、恋したい

「オヤジだってもてたい!」

という男性の本音をアカラサマに刺激して成功したのは、

「LEON」

でした。


実際「LEON」では、

「もてる」「口説く」

ために有効な商品を見立てる、つまり

「もてたい軸」

という切り口に沿って掲載する商品や記事を厳選することで
中高年のスケベオヤジの心を掴んだわけです。


さて、もてたいのは若い人も一緒です。
というか、もっとギラギラしてますが・・・(笑)

今年(07年)3月に発売されたユニリーバの男性用オーデコロン、

「AXE(アックス)フレグランスボディスプレー」

もまた、

「吹きかけるだけで女性にもてる」

という単純明快なメッセージを前面に打ち出して、
男性の本能への直球勝負を挑みました。(日経MJ、2007/12/07)

*THE AXE EFFECT
http://www.axeeffect.jp/index.html


キャッチコピーは

「女を虜(とりこ)にする香り」

ですし・・・

展開された一連のTVコマーシャルも、
なんとも直截的というか、

「俺もこれ一本欲しい!」

と男性の欲情を掻き立てるものでした。


この結果、「AXE」は、あっという間に
トップブランドに登りつめていますね。

男性用オーデコロンの売れ筋ベスト10を見ると、
上位3位までをAXEが独占してます。
(日経POSデータ、2007年8月1日~10月31日)


現代の日本は、従来秘めてきた欲望を
表沙汰にすることに抵抗がなくなってきていると
言われてますが、これに呼応してか、
マーケティングコミュニケーションも過激さを
増しつつあるようです。

ちなみに、欧米のTVコマーシャルをご覧になったことが
ある方はご存知だと思いますが、あちらでは昔から、
性本能ダイレクト刺激系のクリエイティブが多いですよね。


ところで、女性だってやっぱりもてたい。
ただし女性の場合、「もてたい」という表現ではなく、

「恋したい」

というのがしっくりくるようですが。


実は、こうしたコンセプトに沿って開発されたのが、
今年4月発売の花王のヘアケアブランド、

「セグレタ」

です。

30代後半から40代がメインターゲットの同商品は、
半年で計画の2倍に当たる800万本超えるヒットを
記録してます。(日経MJ、2007/12/07)

*花王セグレタ
http://www.kao.co.jp/segreta/


「セグレタ」のコンセプトワークやリサーチを
担当した同社の海老澤香織さんによれば、
150近くあったコンセプト案からの絞込む際、
当初アンケートで高い支持を得た

「これからも人生を楽しみ、前向きに生きたい」

という回答に疑問を抱き再調査を行ったそうです。


すると、最初の調査ではそれほど評価されなかった、

「恋こそ究極のアンチエイジング」

を内心では支持している人が多いことに気づいたそうです。


こうして、消費者の表面的な態度の奥に隠された

「インサイト」

をうまく発見できたことが
セグレタがヒットした背景にあるようです。


やはり、男性も女性も老いも若きも、

「愛こそがすべて」 -All you need is love-

ですかね。


(LEON関連記事)

*生まじめに遊ぶ

*シンプルマーケティング(10)プロダクトコーン修正モデル

投稿者 松尾 順 : 14:33 | コメント (0) | トラックバック

いびつな協調性-「KY」を恐れる心

臨床心理士であり、
心理カウンセリング関連の著作で知られる

諸富祥彦氏(明治大学文学部 教授)

によれば、現代の若者の行動には、

「いびつな協調性」

が見られるそうです。


特に男子学生同士の間でそれは顕著です。

彼らは、

「KY」(空気が読めない)

を極度に恐れており、友人から

「お前はKYだな」

と言われないことに命を懸けているらしい。(笑)


また、ゲイだからというわけではないと思いますが、
ペアルックを着てくる男子学生がいるそうです。

そして、彼女よりも男友達の方が大切。

友人の交友関係を気にして、
携帯のメールをこっそりチェックするとか。

自分以上に親密な友人が他にいるかもしれない・・・
と心配なのです。


まあ、これはかなり極端なケースだと思います。

しかし、過去数十年、
欧米に習って個人主義が志向されてきたはずの日本で、
再び、昔ながらの

「日本的集団志向」

に大きく振り子が戻っているように感じるのは、
私だけではないようです。


さて、諸富氏が示した「いびつな協調性」、
すなわち、過度に相手に合わせようとする行動は、
TVプロデューサーのおちまさと氏が発見した

「鉄板病」

の症状に他なりません。


「鉄板病」とは、常に

「正解ゾーン」

にいることにこだわる病気です。

言い換えると、

「ハズしたくない」「間違いたくない」

という思いに囚われていること。


この結果、

「過度に多数側にいる」

ことを志向します。

そして「予定調和」を好み、
場の雰囲気を壊すことをできるだけ避けようとする。

また、世の中の常識や通説、
多数派の意見を鵜呑みにするため、

「思考停止」

に陥りがち。


おちまさと氏は、
こうした鉄板病に罹った人たちが増えてきたことに
警鐘を鳴らしています。

私も、従来の日本社会に見られた、
ウチとソトを厳密に区別し、ルールも使い分ける

「閉鎖的な集団行動」

を過度の協調性が再び強化し、
社会をよりよいものにしていくために必要な
異端なアイディアや創造性、そして
現状を変えようとする意欲を阻害するのではないか
と心配しています。


それにしても、なぜ、

「鉄板病」

はこれほどまでに勢力を増してきたのでしょうね・・・?


『鉄板病』
(おちまさと著、NHK出版)

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (0) | トラックバック

人工生命体Boidsの基本ルール

空を飛ぶ鳥の群れや、あるいは
水の中の魚の群れとそっくりの動きをする
コンピュータ・シミュレーションがあります。


これは、ソニーコンピュータエンタテイメントの
米国研究開発部門で働く、クレイグ・レイノルズ氏が
開発した「人工生命体」です。

「Boids」(ボイド)

と名づけられています。

*シミュレーションはこちらで見ることができます。

まるで生きているかのように、
群れをなして飛び回るボイズの動きは、
次のわずか3つの行動ルールに基づいているだけです。


-----------------------------------

1 セパレーション(Separation):分離

  →仲間に近づきすぎたら離れる

2 アラインメント(Alignment):整列

  →仲間と同じ方向に同じ速度で飛ぶ

3 コアージョン(Cohesion):凝集

  →仲間の中心方向に飛ぶ

------------------------------------


「Boids」の動きは、
鳥でいえば「飛行」を模したものになっていますが、
鳥と同じく

「群れる動物」

である「人間」の社会的活動の多くは、
こうした基本的なルールが背景にあると考えても
いいのではないでしょうか。


以前から何度か書いてきたように、人間の3大本能は、

・食欲
・性欲
・集団欲

です。つまり、食欲、性欲と並んで、

「群れたい」

というのはDNAに埋め込まれた本能です。


これは、上記の3つのルールの中では、

・コアージョン:凝集

に該当する行動になるかと思います。


要するに、仲間同士で寄り集まること。

こうして、外敵から身を守ったり、
お互いに助け合って生きていこうとするわけです。


さて、集団を維持するためには、
構成員があまり身勝手な動きをするわけにはいきません。

そこで、お互いの動きを見ながら同調しようとします。


これは、

・アラインメント:整列

のルールに該当しますね。

社会現象におけるトレンド、ブームの発生は
結局のところ、こうした、他の人に合わせようとする
行動が根底にあるということだと思います。

ついでながら、他の人の意見や行動に基づいて
物事を判断したり、自分の行動を決める傾向のことを
社会心理学では、

「社会的証明」

と言います。


さて、人は群れたがるとはいえ、
一方で「個」としてのアイデンティティを維持したいとう
欲求もあります。

自分という存在を他と明確に識別したいということです。
このため、必要以上に近づきすぎるのを避けようとする。

これは、

・セパレーション:分離

というルールに基づく行動として現れることになります。


「群れたい」という「コアージョン」(凝集)と
「離れたい」という「セパレーション」(分離)は、
相反する行動ですが、鳥にしろ、人間にしろ、

くっついたり離れたり
(同調したり、しなかったり)

を繰り返しながら集団生活をしているということでしょう。


そして、この行動のブレは、
当然ながら消費行動にも反映されてきます。


・新商品が出たばかりのころに手を出すのは、
 集団の変わり者だけ。

・でも、買う人が増えてくると、
 「みんな買っているから」というだけで買いだす。

・そうして、多くの人に行き渡ってしまうと、
 みんな同じだと、つまらなく感じてしまって買わなくなる

投稿者 松尾 順 : 11:11 | コメント (0) | トラックバック

ソーセージは赤いもの

先日、日本ハムで多数のヒット商品の開発を手がけた
伝説のマーケターの方の話を聞きました。


私くらいの年代(40代)が小さかった頃、
つまり昭和40年代に、お弁当などに入っているソーセージと言えば、

「赤いもの」

でしたよね。

あの色はもちろん合成着色料の色です。

そして、中身は、魚肉、豚肉、牛肉などを
ミックスしたものが主流でした。


当時、その伝説のマーケターは、
品質にこだわった商品を開発しようと、
着色しない自然のままのソーセージ、
また中身はポーク100%など、高品質の製品を
いろいろと出したそうです。

ところが、手を変え品を変え、
どんなに優れた高品質の製品を出しても、
見た目の色が「赤」でなければまるで売れなかったのです。


食品の添加物には敏感な今の私たちには、
とても信じられない驚愕の話ですよね。


さて、ユーザーが購入に当たって重視する品質のことを

「知覚品質」

と呼びます。

これは、製品の「客観的な評価」ではなく、
ユーザーがどう感じているかという「主観的な評価」のこと。


昭和40年代のソーセージの場合、

「色が赤いこと」

というのが、ソーセージ選択における
最も重要な「知覚品質」だったというわけです。


新製品開発に当たっては、

ターゲットユーザーの「知覚品質」を
的確に理解していないと売れる商品は作れない

ということをこの話は教えてくれますね。


類似の話では、以前もちょっと書きましたが、
米国進出に失敗した化粧品メーカー、

「ファンケル」

の例がありました。


日本では、ファンケルの無添加化粧品は、

「肌に優しい」

ということが評価されて、
瞬く間に大手化粧品ブランドの地位を確立しました。


ところが、米国の女性には受け入れられませんでした。

その理由のひとつが、

「刺激が少なすぎて使った気がしない」

ということらしいです。

実は、化粧品のピリピリする刺激は、
配合されている添加物のせいなんですが。


ユーザーの「知覚品質」って、
どちらかといえば右脳的・感覚的な判断ですから、
必ずしも合理的なものではないということがよくわかりますね。
(もちろん、食品にせよ、化粧品にせよ、
 添加物は一律に良くないと考えるべきではないでしょうけど)

投稿者 松尾 順 : 09:59 | コメント (0) | トラックバック

もうひとつの「基本的欲求」

人の「心」をより的確に読むための第一歩、それは、人が持つ

「基本的欲求」

にはどんなものがあるかを理解しておくことです。


「基本的欲求」と言えば、誰もが思いつくのは

「マズローの欲求階層説」(「欲求5段階説」などとも言う)

でしょう。


この理論を簡単に説明すると、

人の欲求には、低次元から高次元へと
以下の5つの基本欲求があると考えます。

------------------------------------

1.生存の欲求(食欲、性欲など根源的な欲求が満たされたい)
2.安全の欲求(生命が脅かされない、安全に暮らしたい)
3.社会的欲求(所属や愛が欲しい)
4.自我(自尊)の欲求(社会の中で承認、尊敬を得たい)
5.自己実現の欲求(自分らしさを発揮したい)

------------------------------------

そして、低次元の欲求が満たされることで、
初めて次の高次元の欲求へと移行するというものですね。


この理論は、

売れる商品の開発や、
人の琴線に触れるコミュニケーション施策

を考えるに当たっても確かに有用ではあります。

しかし、もうひとつ使いにくいと感じたことはありませんか。

たとえば、

「自己実現の欲求」

は、私は正直、詳しい解説をいくら読んでも、
わかったようでよくわかりません。
(それは、私の勉強不足ですね・・・確かに。すいません!)


また、マズロー説では、
エンタメ系のヒット商品が売れる理由が
うまく説明できないのです。

たとえば、

「ゲームなどをして楽しみたい」

という欲求は、上記の5つの欲求のどれにも
該当しないように思います。


というわけで、マズローの

「欲求階層説」

は、理論としては学ぶ価値があるものの、
現実への適用にはやや無理があると
私は考えています。


さて、実はもうひとつの

「基本的欲求説」

があります。


それは、

「リアリティセラピー」(現実療法)

の考案者として知られる米国の精神科医、

ウイリアム・グラッサー博士
が提唱しているものです。


グラッサー博士によれば、
人は次の5つの基本的欲求を持っています。

------------------------------------

1.生存の欲求
空気や水、食べ物、住居、睡眠など、
  生きていくために必要なすべてに対する欲求

2.愛と所属の欲求
  家族、友人、会社などに所属し、愛し愛される
  人間関係を保ちたいという欲求

3.自由の欲求
  自分の考えや感情のままに自由に行動し、物事を運び、
  決断したいという欲求。誰にも束縛されずに自由でありたい
  という欲求

4.楽しみの欲求
義務感にとらわれることなく、自ら主体的に喜んで何かを
  行いたいという欲求

5.力の欲求
  自分の欲するものを、自分の思う方法で手に入れたいと
  思う。人の役に立ちたい、価値を認められたいという欲求

------------------------------------

そして、人は、
これらの内面から来る欲求に動機付けられて
行動するということです。

なお、5つの欲求のうち、

「力の欲求」

は「人類」だけが持つ欲求だそうです。


上記の欲求は、
マズロー説と一部重複していますね。

しかし、グラッサー説独自の

・自由の欲求
・楽しみの欲求
・力の欲求

の捉え方は、人間のさまざまな行動の背景にある心理を
もっとうまく説明できると思いませんか?


グラッサー博士の諸理論は、私もまだ学習中ですので、
今はまだ聞きかじり程度のお話しかかできませんが、
今後も記事のテーマとしてご紹介していきたいと思います。


なお、マズロー説の

低次元から高次元へと欲求が移行する

という考え方(仮説)は、
現在の心理学では否定されており、
マズロー自身も、この点は間違いだったと認めています。

実際には、
5つの欲求の強弱の度合いが人によって異なる
というのが現在の見方です。

グラッサー説も、
5つの基本的欲求があるということは言っているだけで、
欲求を段階的に移行するようなものとは見ていません。


*グラッサー説の説明は、

『グラッサー博士のモチベーション・フォーラム2007』

のWebサイトの内容、
および私が直接聴講したグラッサー博士の講演内容を
元にしています。

投稿者 松尾 順 : 12:34 | コメント (0) | トラックバック

だまされない心

米国、および日本でロングセラーとなっている名著、

『影響力の武器』

の著者、ロバート・チャルディーニさんが、
日本心理学会の大会での招待講演のため9月に来日されていました。

私は残念ながら同講演を聞くことはできませんでしたが。


日経夕刊(07/10/11)にチャルディーニさんの
来日中に行われたインタビュー記事が掲載されていましたね。


そもそも、チャルディーニさんが、

「あの手この手で買わせようとするテクニック」

を研究することにしたのは、自分自身が

「だまされやすい人間だったから」

だそうです。


実は、私もかなりだまされやすい人間でした。

学生時代に「キャッチセールス」に引っかかったのを手始めとして、
あれこれと敵の術中にはまり、数十万円をどぶに捨てるような
経験を重ねてきたので、

「なんだ、チャルディーニさんも押しに弱い人だったか」

となんだかちょっとホッとしました。


もちろん、私も、人生経験を十分に積んだ今は、
そうそう簡単にだまされることはなくなってきました。

むしろ、たいして金のない若い頃に、
取り返しのつく範囲でだまされたのは、将来の大損を防ぐ

「免疫」

づくりになったと自分では思っています。


私よりも人生経験の長い中高年の方々が、

「出したお金が、半年で2倍になりますよ」

なんて、ありえない話にコロっとだまされ、
なけなしの老後資金等を巻き上げられる事件が
相変わらず頻発していることを考えると、若い頃に適度に

「だまされる経験」

も必要じゃないかと思いますが、どうでしょうか?


さて、チャルディーニさんが

『影響力の武器』

で研究の成果としてまとめている武器(原理)は次の6つです。

・返報性
・一貫性
・好意
・社会的証明
・希少性


それぞれの詳しい説明は、

「INSIGHT NOW」で泉本貴さんが書かれている

[もう一度読み返したい本:影響力の武器]

がわかりやすいですよ。


チャルディーニさんによれば、
社会の情報化、グローバル化が進む中で、
特に影響力を強めているのは

「社会的証明」

の原理だそうです。


ネット社会では、
情報が即時に広範囲に伝わるようになりました。

この結果、口コミの影響力の背景にある

「社会的証明」

のパワーが高まっているという主張にはうなずけます。


この「社会的証明」とは、
多くの人がやっていることに引きずられること、
いわゆる「付和雷同」のことです。


チャルディーニさんが取材の中で明らかにした
「社会的証明」の影響力の実験が興味深いです。

これは、ホテル側が、連泊する宿泊客に対して、
タオルを毎日替えないで、継続使用をお願いする際、
どんな文面を掲示するが効果的かを調べる実験でした。


文面は次の4パターン。

1「継続使用で節約したお金を環境保護団体に寄付する」

2「環境保護のためご協力を」

3「未来の世代のためにご協力を」

4「当方の大多数のお客さまに継続使用を
  ご協力いただいています」

この実験では、前の3つに比べて、
「社会的証明」の原理を盛り込んだ4番目の文面が

[34%]

も多くの客がタオルの再利用に協力することが
分かったそうです。


「社会的証明」の実験は、
日本でやればもっと大きな差異が出そうですよね。

「空気を読む」ことが重視される日本では、
おそらく、他の国以上に「社会的証明」の影響力が強い
でしょうから。


では、インタビューの中でも、
また『影響力の武器』でも説明されているのですが、

「だまされない心」

を持つ人になるコツを最後にご紹介しましょう。


ひとつは上記6つの「影響力の武器」(原理)
を十分理解しておくこと。

売り込もうとしてくる敵が、
どんな武器で攻めてきているかがわかれば、
簡単に乗せられてしまうことはないですよね。


もうひとつは、購入を決める際に、
相手が使う影響力の武器を、
「自分とモノやサービスとの関係」から切り離すことです。


たとえば、テレビショッピングなどで

「本日限りの限定価格!」
「先着100名さま限り!」

といった「希少性」の武器で相手が攻めてきた時。


この口車に乗せられているだけだと、

「今買わないと後悔するかも・・・」

とつい考えてしまいますね。


しかし、

「ちょっと待てよ、そもそもこの商品は
 自分にとって本当に必要だろうか?」

「自分とモノ・サービスの関係」

だけに焦点を当てるようにするのです。


こうすれば、勢いで買ってしまい、後になって

「後悔する」

ことが幾分か減らすことができるでしょう。


『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房)

投稿者 松尾 順 : 11:45 | コメント (0) | トラックバック

高層階の部屋ほど不人気な国

近年、首都圏では「高層マンション」が
ガンガン建設されてますよね。

当然ながら、日当たりがよく、
眺望の良い「高層階」ほどお値段は高い。


最近は、花火大会で打ち上げられる花火を
自宅で居ながらにして鑑賞できる部屋もあるそうです。

なにしろ、花火の上がる高さと同じくらいの部屋も
あるでしょうから、相当な迫力でしょう。

やはり当然ながら、こうした部屋は希少価値が高いせいか、
人気も高く、さらにお高くなりますね。


さて、日本や欧米では、おおむね

「マンションは高層階ほど人気」

というのが常識ですから、

「当然ながら・・・」

というまくら言葉をつけてしまいます。


しかし、世界を見渡してみると、

「高層階の部屋ほど不人気」
というところもあるのです。


経済発展著しいベトナムのハノイ。

ここでは、ある賃貸アパートを見に来た夫婦が、

「このアパートには5階以上の部屋しか
 空いていなかったから他のところを探す」

とコメントするほど。その理由は、

「怖いから」

だそうです。


地元の不動産屋の話によると、
ある新築アパート最上階の家賃は、
日本円にして月額約2万3千円。

一方、同じアパートの1階、
間取りはほぼ同じで、同3万円強。

高層階の方が7千円/月も安い価格設定です。
日本などと逆ですね。

それでも5階以上の部屋の借り手は
見つからないのだそう。


国内が戦場となった激しい戦争を経験し、
まだその記憶が生々しいベトナム人にとって、

「高層階の部屋は、
 いざという時にすぐに逃げ出せない」

という点が、精神的な壁になっているようです。


上記のベトナムの話は、日経夕刊に
たまに掲載されるコラム

「ところ変われば・・・」

がネタ元です。

このコラムでは、
海外のさまざまな生活習慣や風習が紹介されているので、
毎回興味深く読んでいます。

こうしたコラムを読み、自分たちの基準からは大きく
異なる考え方や暮らしをしている人々のことを知るのは、
固定観念に縛られがちな頭脳を柔らかくするのに効果が
あるように思います。


蛇足ながら、確かに高層階の部屋は、
何事もなければ快適な暮らしが送れると思います。

窓を開ければ涼しい風が吹き抜け、
猛暑の夏でも冷房不要だったとも聞きますし。


でも、いざなんらかの災害が発生し、
エレベータが停止してしまったら本当に大変です。

たとえば、地上38階に買った部屋に行き来するのに、
毎回階段を上り下りしなければならないとしたら、
気が遠くなりそうですよね。

食料の調達とかもままなりません。


実際、災害時における

「高層マンション難民」

の発生が首都圏では危惧されていますね。

投稿者 松尾 順 : 10:37 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(13)受け手の反応レベル

いつものように長々と続けてしまった

『影響力を解剖する』

ロングレビューですが、今回が最終回です。


内容は、影響の受け手の反応についてです。


受け手が、どの程度深く影響を受けているのかという

「反応の深さ」

は、3つのレベルに分類できます。
(米国の社会心理学者、ケルマンの説)


・表面的服従
・与え手に対する同一視
・価値観の内面化


[表面的服従]

いわゆる「面従腹背」です。

表面的には相手に従っているけれども、
心から従っているわけではない。

態度や信念まで変えるまでに至っていないレベル。


単に「賞」が欲しい、または「罰」を回避したいから
仕方なく従っているだけというケースが多いでしょう。

ですから、もし賞や罰影響力がなくなれば、
影響の与え手に従わなくなる可能性が高いでしょうね。


[与え手に対する同一視]

これは、与え手との満足な人間関係を確立したり、
維持するために与え手の影響を受け入れる場合です。

そして、受け手が自ら進んで
意識的に与え手の考え方や行動を模倣したり、
与え手が期待するような役割を果たそうとします。


たとえば、武道や芸事の世界で、
憧れの師への弟子入りが許された人は、
師匠の指示があろうがなかろうが、おそらく、
師匠が期待する行動を進んで取ろうとするはずですよね。

ただ、これはあくまで師匠と弟子という人間関係に
基づくものです。


[価値観の内面化]

これは、受け手自身の態度や価値観が、
与え手のそれと合致するがゆえに、与え手からの働きかけに
応じるもの。

また、十分納得した上で、
与え手から言われた通りに考えを変えたり、
行動したりする場合です。

そして、影響を受ける前にまでに持っていた
態度や価値観は、受け手が納得した上で修正されます。


このため、影響を受けたことの持続力が高く、
与え手が受け手を監視しなくても、新しい考え方や行動を
自発的に取り続けます。

すなわち、「価値観の内面化」は、
もっとも深いレベルで影響を受けた場合ということです。


さて、企業などの組織運営においては、
成員が、目先の報酬(昇給、昇進)や罰(減給、降格)で
表面的に動くのではなく、会社の考える価値観に沿い、
自主的・自律的に動ける組織のほうが当然ながら強いですよね。

だからこそ、経営理念やビジョン、行動指針を明確に掲げ、
常日頃から繰り返し成員に伝え続けることによって、
企業の価値観を成員に内面化させることに最大限の努力を
注ぐ必要があります。

この超有名な事例としては、
ザ・リッツ・カールトン・ホテルの

「クレド(信条)カード」

がありますね。

リッツカールトンの全スタッフは、
常にクレドカードを携帯して、時間があれば何度も読み返す。

そしてまた、朝礼では、本社から毎日送られてくる課題
(例えば、無理な注文をしてきた顧客にはどう対処すべきかなど)

をクレドに書かれた内容をベースに考えるという方法を通じて、

「価値観の内面化」

を徹底しているというわけです。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 09:28 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(12)コントロール感-2

前回書きましたが、

「自分の周囲の世界を主としてコントロールしているものは何か」

ということについての私たちの見方(認識)には、
大きくは、次の2つの傾向があるのでした。

・外的コントロール型
・内的コントロール型


「外的コントロール型」とは、
自分の行動や能力よりも、外的な要因、
すなわち運命や他者の存在によって、
自分にもたらされる結果が大きく異なってしまうものだと
考える見方。

一方、「内的コントロール型」は、
外的な要因よりも、自分の行動や能力、性格によって、
自分にもたらされる結果が大きく影響を受けると
考える見方です。


そして、自分にとって良い結果をもたらすのは、

「内的コントロール型」

の見方であるとも書きました。

「内的コントロール型」の人は、
自分の人生は自分の考え方や行動次第なのだという
いわばポジティブな思考が、「運」をも呼び寄せるからです。


逆に「外的コントロール型」の思考を持っていると、

「どうせ努力しても無駄だ」

という投げやりな態度に陥りがちで、
その自然な結末として、ますます不幸になっていきます。


なんだか、ちょっと自己啓発的な話になってますが、
今回取り上げたいのは、

「過去の経験の結果が、
 こうしたネガティブな見方を形成してしまう」

という点です。


それは、

「学習性無力感」

と呼ばれるもの。

これは、「コントロール感」を
剥奪された状態を意味します。


この存在を検証するために行われた、
犬に電気ショックを与えるちょっと可哀想な実験が

『影響力を解剖する』

で紹介されています。


実験1日目、電気ショックを与えられた犬のうち、
ある犬は目の前の板を鼻で押すとショックを止めることが
できました。

別の犬は、電気ショックを止めるための仕掛けはなく、
ただひたすらショックに耐えるしかない状況に
置かれました。

また別の犬は、
いっさい電気ショックを与えられませんでした。


実験2日目、今度は柵で2つに区切られた部屋に犬が
入れられました。この部屋は、天井にある電灯が消えたら
10秒後に電気ショックが与えられる仕組みになっています。

ですから、電灯が消えたらすぐに柵を飛び越え、
隣の部屋に移れば電気ショックを回避することができました。


さて、前日、電気ショックを鼻で止めることのできた犬と、
最初から電気ショックを与えられなかった犬は、
すぐにこの仕掛けを理解し、電気ショックを回避することを
学習しました。

ところが、前日電気ショックを耐えるしかなかった犬は、
自分が動きさえすれば電気ショックから逃げられたのに、
動こうとせず、電気ショックを受け続けたのです。


この実験が示唆するところは、深いものがありますよね。

動物は、自分がコントロールのできない不快な状況を
体験させられ続けると

「無気力」

となり、後に不快さを自分で解決する力を与えられても
自ら動こうとしなくなってしまうのです。


「学習性無力感」の実験が与える示唆が「深い」と
思うのは、現代社会が、何か自分とは関係のないところで
大きく発展(進化)し続けていて、その複雑で高度な変化に
私たちは翻弄されているという感覚を持たざるを
得なくなってきたからです。

こうした変化に対し、なんとか適応しようとがんばり、
自分の人生のグリップを握り続けている人はいいのです。


問題は、さまざまな理由で
人生のグリップを手放してしまった人たちです。

彼らは、社会への適応に失敗し続けるうちに、文字通り

「学習性無力感」

に陥ってしまい、現状にただ流されるだけとなり、
自暴自棄の生活を送る可能性が高くなります。


最近の若者たちの動向を見ていると、

「ひょっとして、若年層にこんな人々が増えているのではないか?」

という危惧を感じざるを得ませんよね。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 12:55 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(11)コントロール感-1

なぜ、そもそも人は

影響力を持ちたい、与えたい

と思うのでしょうか?

それは、

「コントロール感」

を持ちたいという人間の欲求が根底にあるからです。


「コントロール感」とは、

自分の判断で行った行動が予期した結果を生み、
自分に取って望ましい状況を自分で作り出せた

という認識のこと。

わかりやすく言い換えると、

「自分が世界の中心にいて、世界を思いのままに動かしている」

と思いたいという「自己チュー的感覚」のことです。


ただし、私たちは、この世に誕生して以来、
社会に揉まれながら育っていく過程において、

「自分の周囲の世界を主としてコントロールしているものは何か」

という問いに対する答え(見方)を形成していきます。


この見方には大きく次の2つの傾向があります。

・外的コントロール型
・内的コントロール型


「外的コントロール型」とは、
自分の行動や能力よりも、外的な要因、
すなわち運命や他者の存在によって、自分にもたらされる結果が
大きく異なってしまうものだと考える見方。

なにかがうまくいかない時、常に「周りが悪い、運が悪い」
と考える人は、

「外的コントロール型」

の見方をする傾向が強いと言えますね。


一方、「内的コントロール型」は、
外的な要因よりも、自分の行動や能力、性格によって、
自分にもたらされる結果が大きく影響を受けると考える見方です。

失敗した時、「自分の努力が足りなかった」
と考える人は、

「内的コントロール型」

の見方が強いです。


もちろん、人はそれぞれ、この2つの見方のどちらか
一方しか持たないというわけでなく、両方を使い分けることが
ありますし、時代や状況によっても変化していきます。


たとえば、2001年の米国の同時多発テロ事件、
いわゆる「9・11」が発生した時、あっけなく崩壊した
ワールドトレードセンターを目撃した人の多くは、

「この世には自分ではどうしようもできないことがある」

という「悲観的外的コントロール型」の思考に大きく傾きましたよね。


一方、たまたまバブル期だったから、
どの株を買ったところでほぼ確実に儲かったにすぎないのに、
株式投資で大金を稼いだ人の中には、

「自分は株の天才だ」

などと、「妄想系内的コントロール型」に陥った人がいました。


さて、基本的には、
人生においてよい結果につながりやすいのは、

「内的コントロール型」

です。

要するに、自分に対して影響力を行使し、
怠けがちな自分を叱咤激励して行動を起こさせる。

自分の能動的な行動こそが、
外的要因である「幸運」をも呼び寄せるというのは
成功した人はよくわかっています。


「外的コントロール型」は、

「自分でどうしようもならないことをうじうじ考えても仕方がない」

という「健全な諦念感」につながるのならいいのですが、

どうせ自分がどんなにがんばっても、どうせ浮かばれない」

という「逃げ」(行動しないことの言い訳)に陥ってしまうと、
まさに、自分の思うとおりますます事態は悪化していきます。


ちなみに、私はキャリア・アドバイザーとして、

「キャリアデザイン研修」

も業務のひとつとして行っています。


その研修の中で、私は、
キャリアづくりにおける基本的な心構えとして
次の3点を強調しています。

・健全な自己中心主義
・健全な危機意識
・健全な諦念感


「健全な自己中心主義」とは、
人様に迷惑をかけない限り、周囲がなんと言おうが、
自分のやりたいことを貫こうとする意識。

「健全な危機意識」とは、
現状のままでいいはずがない、という現状に安住しない意識。
(うぬぼれを防ぎ、謙虚さをもたらします)

「健全な諦念感」とは、
前述したように、自分がコントロールできないことについては、
考えない。「人事を尽くして天命を待つ」という意識のことです。


ちょっと話が飛びましたが、

「外的コントロール型」と「内的コントロール型」の
適切な組み合わせ(バランス)

が、この大変な世の中を渡っていく上で有効なのです。


*キャリアの心構えについては下記サイト参照

『キャリアデザイン基礎講座』(第4章)
(A・ヒューマンキャリア塾)


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 12:47 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(10)影響方略-3

相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを

「影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)

と呼びます。


この「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

を有効に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。


『影響力を解剖する』

では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を

・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略

の3つに分類して説明が行われています。


今回は、

「賞罰に関連しない影響方略」

の9項目をご紹介します。


[単に頼み込む]

影響の受け手にとって依頼に応諾することに
たいしてコストがかからない場合、シンプルに依頼
するだけで十分な場合があります。


まあ、わざわざ説明するまでもないことのようですが、
「断られたらいやだな」とか、「頼むのが恥ずかしい」
といった理由で頼めないことってありますよね。

ところが、実際頼んでみたら、
拍子抜けするほど簡単に承諾してくれることが
多いものです。

その結果、頼まなかった場合より、
ずいぶん得することもあります。

なにか頼みごとがあったら、
あまり深く考えずに、ダメモトで頼んでみるのが
いいんじゃないでしょうか。
(相手との間合いとか図りつつ)


[受け手が応じるまで依頼を繰り返す]

ようするにしつこく頼み続ける。
昔の押し一手の営業マンのやり方でした。

熱意が伝わるという意味で相応の効果が
ありますが、いまは大変いやがられますね。


でも、あなたが、落語家に弟子入りしたかったら、
これしかありません。あなたの熱意と決意が
試されているからです。


[理由をつけて頼み込む]

これもわざわざ説明しなくても良さそうですが、
そうでもありません。

依頼の理由が必ずしも正当なものでなくても、
効果があるのです。


「影響力の武器」でも紹介されていますが、

「コピーを取らなくてはならないので、
 割り込ませてくれませんか」

といった、全く理由になっていない理由をつけても
割り込ませてくれる可能性が高いのです。

このあたりは人の心理をうまく突いているんですね。
(詳細説明は、「影響力の武器」をご参照ください)


[与え手と受け手の役割関係を指摘する]

お互いの役割関係を強調、つまり思い出させて
影響力を行使しようとするもの。

上司・部下の関係などにおいて存在する

「正当影響力」

を背景に、

“上役である私の命令には逆らえないはずだが・・・”

などと言う。
セクハラ、パワハラの現場を思わず連想してしまいます。


しかし、こうして自ら役割を強調しなければならないのは、
受け手がその人を認めていないことの裏返しでもあります。

尊敬に値する上司なら、

「私が上司なんだから・・・」

などとわざわざ言われなくても、素直に従うものですよね。


[第三者から支援してもらう]

自分よりも正当影響力や専門影響力が大きい人の
パワーを借りる方法。

恩師などに「推薦状」を書いてもらうといったことが
これに該当するでしょうね。

この方法は常日頃の人脈づくりが鍵になります。


[社会的な規範の存在を指摘する]

「困っている人がいたら、助けてあげるというのが
 人の道というものではないでしょうか」

などと、社会的に共有されている考え方や常識を
持ち出して相手を説得しようとするもの。

このテクニックは、代議士先生が多用しますね。


[頼みたいことを暗にほのめかす]

影響の受け手に対して、
頼みたいことを直接言わず、相手が察してくれるような
表現をする方法。


たとえば、窓を開けてほしい時、

「この部屋ちょっと暑いね」

と相手に言うのはこれです。

直接依頼事項を伝えてしまうと
角が立ってしまったりする場合によく使いますね。


逆に言えば、これがうまく使えないと、

「きつい人」(ストレートすぎて)

という印象を周囲に与えてしまう可能性がありますね。


[受け手をだます]

にせの依頼事項を伝えたり、嘘の理由を述べたりするもの。

明らかなにせもの、嘘だとわかる真性ブラックな話なら、
受け手もだまされることは少ないでしょう。


しかし、霊感商法的なもので、

“この「壷」を床の間に置いておくと
 幸運がやってきますよ”

などといった話は、その効果の検証が不可能です。

つまり、受け手がこの話を信じるかどうかにかかっているため、
周囲から見ると、明らかにだまされているとしか思えませんが、
本人はだまされているとは感じていないという点が厄介ですね。

ビジネスのシビアな交渉でも、
自分たちにとって有利な条件を引き出すため、
結構平気で嘘をつきあってますね。


[受け手と話し合い、妥協点を見つける]

お互いに歩み寄るやり方。

ピアノの音がうるさいと文句を言いにきた隣人と話し合い、
夕方6時以降は練習をしないと取り決めるといったことです。

民主的な方法ですよね。


ただ、駆け引きが発生しますから、
人間心理をよくわかっている交渉上手が相手だと、
自分にとって不利な依頼を飲まされてしまうということが
多々あります。

『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房)

投稿者 松尾 順 : 10:46 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(9)影響方略-2

相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを

「影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)

と呼びます。


この「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

を有効に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。


『影響力を解剖する』

では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を

・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略

の3つに分類して説明が行われています。


前回は、

「賞影響力に関連する影響方略」

に分類されている5項目をご紹介しました。

*影響力を解剖する(8)影響方略-1

今回は、

「罰影響力に関連する影響方略」

に4項目をご紹介します。


[罰を与えると警告する]

罰の基本的な使い方。

親が子供に対して、

「宿題をやらなければ、今日のおやつはなしよ!」

はこれですね。


罰を与えてまでも影響の「受け手」にやらせたいことは、
多くの場合、受け手があまりやりたがらないこと。

このため、影響の「与え手」の指示・命令などに対して、
受け手は表面的に従っているだけに過ぎない、

という点が問題ですね。


これについて、具体例を思い出しました。

在籍した中学の陸上部から、何人もの日本一を輩出したことで
有名なカリスマ体育教師、原田隆史氏は、若いころは
大変なスパルタ先生だったそうです。

「学校では、生徒は先生に従わなければならない」

という正当影響力を背景に、

「ヒットラー」

と影で呼ばれるほど生徒に恐れられました。

ですから、原田先生がいるところでは生徒たちは従順。
まじめに部活動に精を出す。

ところが、原田先生が出張でいなかったりすると、
さぼりまくり。まさに「鬼の居ぬ間に洗濯」。


原田先生は、一度出張したふりをして、
グラウンドが見えるマンションからこっそり
生徒たちを観察して、この現実を知ったそうです。

以来、たとえつらい練習であっても、
生徒たちが自発的に取り組むための工夫を始めた
ということでした。

罰影響力の「持続力のなさ」を原田先生は
身をもって知ったということですね。


[受け手が応じるまで罰を与える]

罰を警告したり、脅かすだけでは、
相手はそう簡単に応諾しないこともあります。

そこで、相手が応じるまで「罰」を与え続ける

「継続的な罰の付与」

が使われることがあります。

これの極端な例は、「拷問」です。

人気テレビドラマの「24」を
好きな方はおわかりになると思いますが、
容疑者の事情聴取の場面が頻繁に登場しますね。


そして、容疑者が筋金入りのワルの場合、

「さっさと吐かないと痛い目にあうよ」

といった単なる脅かしでは通用しないことが
わかっているジャック・バウワーは、
周囲の制止を振り切り、強引な体罰を与え続けますね。
相手が自白するまで。


[第三者から罰が与えられることを指摘する]

母親が、電車内で騒ぐ子供に対し、

「ほかの人に怒られるよ」

というのはこれ。


会社であれば、

「この仕事に失敗したら、社長がどんなに怒ると思う?」

などと、より権威のある、立場の強い存在からの罰を
ほのめかすものです。


自分に罰を与えるだけのパワーがない場合に
有効な影響方略ですが、なんとも陰険なやり方ですね。


[受け手が与え手にかけた迷惑を思い出させる]

過去において、
受け手が与え手に与えた迷惑を思い出させ、

「罪の意識」

を感じさせることによって、従わせようとするもの。

これは、受け手に「負い目」を感じさせることが、

「罰」

を与えていることに等しいと考えられます。


ただ、相手によっては、

「過去のことなんか持ち出して・・・」

と逆に反発を招く可能性があります。


また、

「過去は過去、今は今でしょ」

と開き直る人には効果が減少します。


以上ご紹介した「罰影響力」を使った4つの影響方略は、
基本的に、人のネガティブな感情を突くものですから、
他に方法はない時以外は、利用しないほうがよさそうです。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 11:07 | コメント (0) | トラックバック

「法事」の深い意味

日本では、親族が亡くなった後、

初七日、四十九日、初盆・・・

と、かなり頻繁に遺族が集まる風習(法事、または法要)
がありますよね。


これにはどんな「意味」があるのか、
考えたことがありますか?


“昔からそうするしきたりになっているから、
 今も続けているだけに過ぎない「形式的な仏事」だよね? 
 だから、その「意味」など考えたこともないよ。”

という方が多いんじゃないでしょうか。

私もそうでした。


しかし、実は、「法事」には深い意味があったのです。


話が飛びますが、欧米の病院では近年、

「遺族ケア」

が試みられているそうです。


遺族ケアは、末期と診断された患者さんを
定期的に小さなパーティに招待するもの。

このパーティは、患者の家族や友人、医師、僧侶などを含む
10-15人の集まりです。そして、患者の話したいこと、
歌いたい歌、流したい涙、なんでも受け止めるのです。

パーティは7-8回繰り返され、
3カ月もすると患者さんは天国に召されます。


遺族ケアの要諦は、その後にあります。

患者さんが亡くなった後も、
同じメンバーが集まってのパーティ(患者さんは写真で参加)が
3-4回開催されるのです。

これには、部屋代もお菓子代もかかる。
医師も参加することがありますが、
この場合の実質的なコストは相当高いものになります。


ドライに考えれば、死んでしまった方のために
さらにお金をかけるのは、ある意味「無駄」なことですよね。

にもかかわらず、効率を徹底的に追求する欧米の病院で、

「遺族ケア」

が行われているのはなぜでしょうか?


その理由は、結果的に

「安上がり」

だからです。

つまり、経済合理性の観点から

「遺族ケア」

は行われています。


実は、「遺族ケア」をしなかった家族を
追跡調査してみると、患者さんの死から1-2年のうちに

急病、突然死、精神異常、自殺未遂、交通事故

など、多くの不幸が起こる確率が跳ね上がることが
事実として把握されているのだそうです。

家族の死は、人にとって

「最大のストレス」

であるということを聞いたことがありますよね。

おそらく、このストレスによって、
遺族は精神的・肉体的に不安定になり、結果として、
さまざまな不幸につながっていくのでしょう。

そうした不幸は、社会的には新たなコストの元です。


したがって、

「遺族ケア」

は遺族に降りかかる不幸を未然に防ぐことができる
(そして、新たな社会的コストも抑えられる)

「優れた公衆衛生学的な方法」

だと、欧米では認められているのです。


さて、日本に話を戻しましょう。

身内の死後、
残された家族にさまざまな不幸が起きることは、
日本でも経験的にわかっていました。

これを私たちは

「死者のたたり」

と呼んで恐れました。


ここまで書けば、

「法事」

の深い意味がもうおわかりでしょう。


死者の「たたり」を鎮め、不幸を予防するための

「仕組み」

として確立されたのが、

初七日、四十九日、初盆

といった法事だったのです。


一見、単なるしきたり、風習、伝統としか思えない
私たちの行動の奥には、しばしば深い意味が潜んでいます。


心理学には、

「文化心理学」

という研究分野が存在するのはご存知でしょうか?


「遺族ケア」の話は、
人の行動をよりよく理解するためには、私たちが持つ様々な

「文化や伝統」

についても深く掘り下げる必要性を感じさせてくれますね。


「遺族ケア」の出典:ドクターズマガジン No.94 September 2007

柏木哲夫氏(淀川キリスト教病院名誉ホスピス長/
金城学院大学学長)とカール・ベッカー氏
(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)の対談

投稿者 松尾 順 : 11:49 | コメント (2) | トラックバック

ワカマル君、がんばれ!高いけど・・・

「家庭用」としての市場開拓には
失敗してしまった人型ロボット「ワカマル」。

*参考:ヒューマノイドロボットの過去・現在・未来


将来的には、やはり市場規模が大きい「家庭需要」を狙いつつも、
当面は「業務用」に展開して命脈をつなごうとしてます。


そこで、「ワカマル」君を企業や病院などに

‘派遣’

する事業を始めてるそうなんですが・・・
(日経MJ、2007/08/12)

しかし、料金がなにぶん高い。

基本料金1日12万円、1ヵ月160万円、1年間で300万円。


ワカマル君ができることと言えば、
受付で来訪客を出迎え、視線を合わせて会話できること。

また、応接室の見取り図をあらかじめ入力してあれば、
応接室の入り口まで案内する程度。


しかし、それだったら、生身の人のほうが、よほど割安だし、
かつ、やはり‘生きてる人’ですから良いですよねぇ・・・

投稿者 松尾 順 : 00:08 | コメント (2) | トラックバック

非常事態時のリーダー

先日(07年08月20日)に
那覇空港で発生した、中華航空機の炎上事故。


乗員乗客165人全員が無事避難できたことから

「奇跡の脱出劇」

などと言われていますね。

一歩間違えば、
多数の死者が出た大惨事になっていたところでした。


さて、今回の脱出がうまくいった理由として

「90秒ルール」

が挙げられていたのを
お聞きになった方もいらっしゃるでしょう。


これは、アメリカ連邦航空局が制定した規則です。
具体的には、

「緊急時に乗客乗員全員が、
 航空機のすべての脱出口のうちの半分を使用して
 90秒以内に脱出が可能でなければならない」

というもの。

そして、航空機の非常口の数や位置は、
この90秒ルールが守られるように設計されている
というわけです。

炎上した中華航空機からの実際の脱出時間は、
1分とも2分とも言われていますが、ともあれ、
極めて短時間に、脱出が完了したことには違いありません。


さて、こうした非常事態時にもうひとつ重要なのが、
適切な指示を出せるリーダー(あるいはガイド役)の存在です。

中華航空機の場合、機長や客室乗務員の的確な誘導・指示が
あったと報道されていますね。(ただし、この点については、
乗客の話との食い違いが指摘されていますが)


人や車などが引き起こす

「渋滞」

について横断的な研究成果をまとめた本、

『渋滞学』(西成活裕著、新潮社)

には、建物内で火災が発生した場合に、

「どの方向に逃げるか」

を聞いたアンケート結果が紹介されています。

---------------------------------------

1位:放送や指示に従う(47%)

2位:煙の危険から遠ざかる方向(26%)
3位:非常口や階段の方向(17%)
4位:他の人の逃げる方向についていく(3%)
4位(同率):人の空いている方向にいく(3%)

---------------------------------------

ほぼ2人に1人が、

「放送や指示に従う」

と回答している点が興味深いですね。


同書では、

パニックになると人間は的確な判断ができなくなり
他人に追従する傾向が強くなること

を示し、だからこそ、

リーダー(ガイド役)の的確な「指示」の有無が、
危険から安全に逃げられるかどうかの鍵を握っていること

を強調しています。


話が飛躍するようですが、
企業が直面するさまざまな危機発生時において、
リーダー自身が右往左往してしまい、
的確な指示を出せなかったらどうなるでしょうか?

言うまでもなく、危機から無事脱出できる可能性は
限りなく低くなりますよね・・・


*「渋滞学」は、やや高度な内容ではありますが、
 切り口が実に面白い良書ですよ。
 聞きなれない専門用語・学術用語が頻出しますが、
 文章自体は平易に書かれています。

『渋滞学』(西成活裕著、新潮社)

投稿者 松尾 順 : 09:59 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(8)影響方略-1

相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを

「影響手段、影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)

と呼びます。

なお、今後は「影響方略」で統一します。

「影響手段」よりもイメージが高尚で、
もっともらしく聞こえるからです。

これも、「影響力」を意識した言葉の選択です。(笑)


また、「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

を適切に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。


さて、

『影響力を解剖する』

では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を

・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略

の3つに分類して説明が行われています。


今回は、

「賞影響力に関連する影響方略」

に分類されている5項目を簡単にご紹介します。


[賞を与えることを約束する]

母親が、夏休みの宿題をやったらアイスクリームをあげる
と子供に言うのはこれ。最もシンプルな方略ですね。


[第三者から賞がもらえることを指摘する]

自分の部下に対して、「この仕事を成功させれば、
きっと部長も喜ぶだろう」などと言うのが該当します。

自分よりも、相手に影響力の高い第三者を引き合いに出すこと
が有効な場合もありますね。


[依頼をする前に賞を与えておく]

以前、紙のアンケートを送付する際、
協力依頼状と共に、事前に謝礼のテレフォンカードを
同封しておくという方法をやったことがあります。

これは、相手に強引に「貸し」を作らせ、
アンケートに答えないと悪いなと思わせることで、
回収率を高めることが狙いでした。
(確かに効果ありました)

こうした

「依頼する前に賞を与える」

というのは、いわゆる

「返報性の規範」
(人から受けた恩義には、お返しをしなければならない)

を活用したものです。


[以前に与え手が受け手にしてあげたことを思い出させる]

「昔の恩義を忘れてるんじゃない?
 思い出したら、今回は私のお願いを聞くしかないでしょ!」

などと言われた経験は誰でもあるでしょう。

あなたが、何か頼みごとをしたい相手がいたら、
以前、その人に何か「貸し」がなかったかどうかを考え、
それをネタに相手を揺さぶるのです。
(言われなくてもこの影響方略はよく使ってるよ、
 ということでしたら大変失礼しました)


[受け手をよい気持ちにさせる]

「賞」には、金銭的なものと心理的なものがあるのでした。

相手をほめたり、持ち上げたりして

「よい気持ち」

にさせるのは心理的な賞=「心理低報酬」です。

端的に言えば、「ゴマをする」ことです。
でも、効果は高い。

ちょっと社内を見回してみたら、

「ゴマすりの才能だけで昇進した人がいかに多いか」

ということを実感される方もいるでしょう。


人は、自分が大切にされること、すなわち

「自己尊重感」

や、他人に認められること、すなわち、

「承認欲求の充足」

にいかにメロメロになるかということでもあります。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(7)影響力の源-3

過去2回でご紹介してきた6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

は、影響の与え手が、なんらかの

「資源」

を持っていることによって発揮されるものです。


ここで、「資源」とは、その人固有の

「強み」

と言い換えることができるでしょう。

たとえば、

・「賞」、あるいは「罰」を与えることができる(賞、罰影響力)
・地位が高い(正当影響力)
・専門知識がある(専門影響力)
・尊敬に値する行動力や好意を抱かせる魅力がある(参照影響力)
・理路整然と話せる、具体例を示せる(情報影響力)

といったことです。


しかし、こうした「資源」を持たなくても
影響力を行使することが可能です。


『影響力を解剖する』

では、与え手が「資源」を持っていない場合の影響力の源
として、次の3つが示されています。

・対人関係影響力
・共感影響力
・役割影響力


[対人関係影響力]

これは、ことわざで言えば、

「虎の威を借る狐」

のようなものです。

つまり、影響力を持つ他人を自分の見方につけて、
影響を与ようとすること。

企業内では、実力のある上司や同僚などに
あらかじめ根回ししておくことで、会議で自分の意見を
首尾よく通そうと画策することがありますが、これは

「対人関係影響力」

の駆使にあたります。


[共感影響力]

端的にいえば、

「泣き落とし作戦」

のこと。


自分の苦境を訴えることによって、
相手の共感(というより「同情」ですかね)を得て、
相手の行動を引き出そうとすること。

たとえば、資金繰りに行き詰まり、倒産目前といった時、

「今の私では、なにもお返しできませんが・・・」

と開き直って頭を下げるしかありませんが、
変にやせ我慢するよりも、
かえって相手が受け入れてくれやすいのです。


この意味で、

「共感影響力」

は、逆説的な影響力です。


[役割影響力]

これは相手との社会的な関係に基づいて、
影響を働きかけること。


たとえば、市民が市役所に対して、
駅前に駐輪場を設置するように要求したり、
あるいは、会社の上司に対して、部下たちが
新規事業の行く末について、明確な方向性を
示してほしいと依頼すること。


すなわち、市役所や上司といった立場において
一般に要求される役割や義務が果たされていないような時に、
市民や部下は、彼らよりもある意味、弱い存在でありながらも、
影響を与えることができます。

もちろん、相手が聞く耳をもっていなければ効き目がありません。


しかし、役割影響力を無視し続けてしまうと、
国(企業)によっては、反乱が勃発し、

「革命」

という体制側にとって最悪の事態を生んでしまうわけですけど。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 13:34 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(6)影響力の源-2

「影響力の源」は次の6つでした。
(米国の社会心理学者、フレンチとレイヴンの説)


・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力


今回は、後半の3つについて簡単に解説します。


[専門影響力]

医者から、

“「タバコ」を吸うのは体に良くない”

と言われたので、長年吸い続けてきたタバコをやめることにした。


学問、スポーツ、料理、芸術など、
さまざまな領域において、人よりも豊富な専門的知識や技能を
身につけていることによって生じるのが

「専門的影響力」

その道のプロの言葉なら、素人の自分よりも信憑性が高いだろう
と影響の受け手が考えやすい。だから、影響力が高くなるわけです。


健康関連商品の広告では、よくお医者さんが登場しますが、
これは「専門的影響力」を購買意欲の喚起に活用しているわけです。


さて、「専門的影響力」が効果を発揮するためには、
影響の受け手が、相手の「専門性」を認めていることが前提です。

医師のように国家資格の場合は、
資格を取得していることで「専門性」が担保されますから、
上記の点は問題なりません。

しかし、たとえば「経営コンサルタント」のような職業の場合、
「専門性」を担保されるような資格は実質存在しません。

MBAホルダー=名経営コンサルタント

とは限らないのは言うまでもないですよね・・・


そこで、『影響力を解剖する』には、
専門影響力を高める方法として、

受け手に対し、折に触れて

「自分の専門性の高さ」

を呈示していくことが挙げられています。

こうした機会を積み重ねることによって、
「専門性の高い人」というイメージが強化されていくわけです。


ですから、様々な分野の専門家が、
現在、ブログやメルマガで積極的に情報発信を
行っているのは、

「専門的影響力」

を向上させるためなのです。


逆に言えば、
どんなに自分では専門性が高いと思っていても、
情報発信を通じた「専門性」の呈示が十分でない場合、
専門的影響力は高まりません。
(誰もが認める専門的な資格を取得している場合を除いて)

結果的に、

「話を聞いてもらえない、信頼されない」(=仕事が来ない)

ということになりますね。


なお、「専門的影響力」を
自分の利益誘導のためだけに活用した場合、
相手からの信頼を失ってしまうことも忘れてはいけません。

たとえば、私の経験ですが、以前通っていた歯医者さんで、
保険の効かない高額の金歯をかなり強引に勧められたことが
ありました。

金歯の方が良いのはわかりますが、
その歯医者さんは「金儲け主義」に走っている印象が強くて、
治療途中で、別の歯医者さんに切り替えてしまいました。


[参照影響力]

「参照影響力」は、

「無意図的な影響力」

のひとつとしても、すでにご紹介しました。

*影響力を解剖する(2)無意図的影響力-2


私たちは、小さいころから、
親をはじめとする周囲の人々の「考え方」や「行動」を
真似ることによって、「生き方」を学んできています。

ですから、

「あのような人になりたい」

という願望が、
心の奥深く植えつけられているんじゃないかと思います。

このため、命令されたわけでもないのに、

「あこがれの人」(理想像)の

しぐさや服装を勝手に真似したりするわけです。


そしてまた、こうした尊敬や好意を抱いている人からの

依頼や指示・命令

だったら、私たちは喜んで聞きますよね。


最近、ビジネスでは

「人間力」

という言葉がキーワードになっています。


優れたビジネススキルを有しているだけでなく、
明確なビジョン、ぶれない決断力や危機対応能力、
部下育成能力、そしてまた

「人としての魅力の高さ」

を備え持つリーダーは、
あえて「賞影響力」や「罰影響力」を駆使しなくても、

「あの人のためにがんばりたい」

といった「自発的」で
高いモチベーションを部下に与えることができるからです。


[情報影響力]

これまで紹介してきた5つの影響力は、

「外的な刺激(賞、または罰を与える)」

または

「誰が言うか」

ということが影響力を左右してきました。


しかし、「情報影響力」は、語られる言葉、文字そのもの、
すなわち「内容」(コンテンツ)自体が持つ影響力です。

理路整然とした展開、様々な具体事例を挙げながらの話って、
語り手が誰であるかにかかわらず、

「なるほど、そうなんだ」

という印象を持ちますよね。


つまり、内容自体が優れていると
それだけでも高い説得力を持ちうるわけです。

実際、狂信的なカルト団体のメンバーを
その団体から脱会させる時に有効なのは、
強い「参照影響力」を持つ教祖の話の論理的矛盾を突いたり、
メンバー本人の思考や行動の不合理さを会話を通じて
自覚させるといった、

「情報影響力」

活用のアプローチだと聞いたことがあります。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 11:20 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(5)影響力の源-1

影響の与え手が、
なんらかの目標(意図)を持って受け手に働きかけ、
首尾よく目標を達成するために重要、あるいは有効なこと。

言い換えると、影響力をもたらしているもの。

それを

「影響力の源」

と呼ぶことにします。


これまでの研究では、
影響力の源は次の6つがあるとされています。
(米国の社会心理学者、フレンチとレイヴンの説)


・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力


今回は、最初の3つについて簡単に解説します。


[賞影響力]

“夏休みの宿題やったら、おこづかいあげる”

お子様のいらっしゃる家庭では、
こんな会話が交わされているところもあるでしょう。

なんらかの「賞」=「報酬」で
相手を動かそうとするのが「賞影響力」ですね。

「アメとムチ」のアメのほうです。


さて、賞(ごほうび)は、

・金銭的報酬
・心理的報酬

の2つに大別できます。

「金銭的報酬」は、現金や物品などの金で換算できるもの。
「心理的報酬」は、賞賛や承認などの金で換算しにくいもの。


ただ、私の個人的な見解ではありますが、
‘社会的動物’である私たち人間にとって、

「認められたい」(存在を認知されたい、必要な人間と認められたい)

という欲求、すなわち「承認欲求」が対人関係における行動
においてもっとも大きな要因となっていると考えています。
(「金銭的な成功」を目指している人も、結局は、
 承認欲求を金銭的に満たそうとしているのです)

したがって、「賞」(報償)としては、

「承認」(あなたはかけがえのない人間である)

をしてあげることがもっとも有効でしょう。

ちなみに、ビジネスのためのブログは除き、
世の中の多くの個人ブロガーがコツコツとブログを書く原動力と
なっているのは、この「承認欲求」だと考えてます。

ブログにつくコメントやトラックバックは、

「承認」

の目に見える形だと思います。(好意的であれ敵意的であれ)

読み手の反応が目に見えにくい従来のホームページ式日記と
違ってブログが爆発的に増えたのも当然でした。


[罰(強制)影響力]

「アメ」と「ムチ」の「ムチ」のほうですね。

「私の言うことを聞かないのなら、
 身体的、または精神的な苦痛を与えるよ」

というのは罰影響力を行使している状況です。


なお、「賞を与える」(アメ)、逆に「罰を与える」(ムチ)は
両極端の影響力の源ですが、どちらも、
「賞」か「罰」を相手に思いのままに与えられる状況
(双方が属している家庭とか、会社などの組織・集団)に
あるからこそ影響を及ぼすことができるわけです。

したがって、上記のような「縛り」が弱い関係では、
当然ながら、賞影響力、罰影響力は低下してしまいます。
(別のところから賞を得られる機会や、あるいは
 罰を回避できる可能性があるからです)


[正当影響力]

組織の中では、指示系統がはっきりしています。
もっとも明快なのが「軍隊」でしょう。

子の場合、部下は上司(上官)の命令に
原則として従わなければなりません。

あるいは、公的な場においては、
治安の維持のために働く警察官の指示に、
われわれ一般市民は原則として素直に従います。


上司(上官)や警察官は、社会的な規範に基づく

「正当影響力」

を行使することができるわけです。


このほかにも「正当性」をもたらすものとしては、

・血筋(王家の血を受け継いでいる等)

が挙げられますね。


また、『影響力を解剖する』では、
他の人より多くの賞や罰を持っていることで、

「正当性」

が高めていくことにつながる述べられています。


確かに、賞や罰を与える側が、
ある意味「受け手」よりも「偉い」という感覚が
生じてくるものですよね。

自然発生的な「番長」が、周囲が認める

「正当影響力」

を行使できるようになるのは
端的にいえば、最もケンカが強い、
つまり最大の罰を与えることができる点と関係しています。


なお、お気づきだと思いますが、
企業・組織内で「正当影響力」を悪用するのが、

「セクハラ」や「パワハラ」

と呼ばれる行為ですね。
(実質的には、「罰影響力」を背景にしてますが)


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 11:01 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(4)意図的な影響

今回は「意図的な影響」についてです。


意図的な影響の場合、
影響の与え手には、何らかの「目標」(意図)があって、
受け手に影響を与えようとします。


この時、与え手が持つ「目標」(意図)を受け手に

・わかるように見せる(明示的)
・わからないようにする(隠ぺい的)

という目標の見せ方の違いで、
影響力を2つに細分することができます。


目標を明示して意図的に影響を与えることは、
私たちが日常的にやってることですね。

(友人に)「荷物を運んでくれるかな?」・・・依頼
(部下に)「明日までに企画書を作成するように」・・・指示

など。


一方、「隠ぺい的」な影響とは、
受け手が気づかないうちに、
与え手の望むような態度の変化や行動を
取らされてしまうことですから、

「策略的」

な意味合いがありますね。
直截に言ってしまえば、「相手をだます」こと。
(行き過ぎると「犯罪」になりますね)


実は、

「相手を思いのままに動かす法」

みたいな傲慢系の本で紹介されている

「説得テクニック」

の多くは、この「隠ぺい的影響力」の使い方です。


さて、この隠ぺい的影響力の行使方法として、
『影響力を解剖する』では、

・テクニカルな依頼法
・議題のコントロール
・情報操作
・環境操作

などがあると述べられています。


[テクニカルな依頼法]

「テクニカルな依頼法」は、
『影響力の武器』にもさまざま紹介されています。

例えば、最初に断られるのを承知で、
大きめの依頼(例:10万円貸して!)をしておいて、次に、
承諾させたい真の依頼(例:じゃあ、1万円でいいから貸して!)
をするテクニックがあります。


「ドア・イン・ザ・フェイス」

と呼ばれるものです。

これは、依頼する側が意図的に譲歩(10万円→1万円)することで、
相手にも「こちらも譲歩しないと悪いな」と思わせることによって、
相手からの承諾を引き出す方法。

こうしたテクニックは、
何段階かのコミュニケーションが行われるので、

「段階的依頼法」

と呼ばれています。


セールスマンが頻繁に活用しているテクニックですよ。
詳しくは、『影響力の武器』をご覧になることをお勧めします。


[議題のコントロール]

「議題のコントロールは、
会議を開く際に、あらかじめ議題を選んでおくことによって、
やっかいな話になりそうな議題を避けたり、
問題の起きないように議題の順番づけをすることです。


[情報操作]

「情報操作」は、
自分に都合のよい情報だけを伝えたり、逆に
都合の悪い情報は流さない、といった行動のこと。

「広告」の信頼性が疑われるのは、
消費者が、広告における「情報操作」のにおいを
かぎとってしまうことにあると言えます。


[環境操作]

スーパーのBGMにテンポのよい音楽を流すことで、
来店客の購買意欲を高める、

といったように「環境」を操作することによって、
受け手が影響を受けやすくすることです。


「環境」とは、具体的には、

環境音楽(BGM)、香り、照明、室内のレイアウト
(机の配置など)

のこと。


異性を口説く際に、
照明を落とした落ち着いた雰囲気の店を選ぶのも、

「環境操作」

であることは言うまでもありません。


「香水」をつけるのも環境操作と言えますね。

コマーシャルやWebサイトを見る限り、

「一瞬にして女性を虜(とりこ)にしてしまう」

と期待させる男性用フレグランスボディスプレー

「AXE」

の効き目は実際どんなもんでしょうね?


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 10:51 | コメント (2) | トラックバック

影響力を解剖する(3)無意図的影響力-2

「人に影響を与えること」は、大きくは

「意図的」と「無意図的」

に分けることができるということでした。


そして、無意図的な影響力は、

『影響力を解剖する』

では、次の6種類が挙げられています。

・参照影響力
・行動感染
・観察学習(モデリング)
・傍観者効果
・社会的促進・社会的手抜き
・漏れ聞き効果


今回は、このうち後半の3つについてご紹介します。


[傍観者効果]

高齢者や妊婦が社内に乗り込んできても、
誰も席を譲ろうとしないので、自分も寝たふりをしてしまった。

これが傍観者効果。


周囲に人がいると、

「自分以外の誰かがやってくれるだろう」

と考え、文字通り「傍観者」になってしまうことです。


他人の存在が、無意識に自分の

「見て見ぬふり行動」

を誘発してしまうのですね。


実は、傍観者効果が見られる出来事は、
かなり頻繁に起きています。

ちょっと前のことですが、
列車内で隣に座った赤の他人の男性に脅され、
暴行された女性を満員の乗客の誰も助けなかった
という事件がありました。


また、以前友人から聞いた話ですが、
ある外国人の方が空港の待合室で気分が悪くなった。

ところが、明らかに具合が悪いことが見てわかるのに、
誰も声をかけてくれなかったそうなのです。


傍観者効果は、残念ながら
個人の倫理観では防げない問題です。

しかし、自分が当事者というか、
例えば、街中で倒れてしまった時に誰も助けようと
してくれなかったら大変ですね。


こんな時の解決策は、通り過ぎる特定の人に向けて、

「そこの赤い服の人、助けてください」

などと呼びかけることなのだそうです。

こうすることで、多数の人がいることによって
分散してしまった「社会的責任」を特定の人に
押し付けてしまう。

さすがに、名指しされて無視する人は少ない。
そして、一人が助けると周囲の人も寄ってきてくれます。


[社会的促進・社会的手抜き]

一緒に勉強する仲間がいると勉強がはかどる。


こんな現象が、「社会的促進」です。


他者(観察者や共行動者)の存在が、
自分の作業の量(増加することも減少することもある)に
影響を与えてしまうのですね。

社会心理学者のザイアンスによれば、
他者(観察者や共行動者)がいることによって、

慣れている仕事の場合には作業量が増加し、
慣れていない仕事の場合には作業量が低下する

ことがわかっています。


一方、「社会的手抜き」とは、
単純作業を何人かで一緒にしているときに起きる現象。

これが「社会的手抜き」です。
傍観者効果に近い心理があるように思いますが、
集団で同じことをやろうとすると、一人ひとりの
モチベーションが下がってしまうのです。


たとえば、運動会の綱引きの時、
自分だけ力を入れているふりをしませんでしたか。

周りが力を出してくれるから、
自分くらい手を抜いても大丈夫だろうと
考えてしまうのですね。
(こんな人が多かったら負け確実・・・)


私の勝手な推測ですが、綱引きの勝敗は、

・どっちが力持ちの人間が多かったか

ということではなく、

・どっちが「社会的手抜き」をする人が多かったか

で決まるんじゃないかと思います。


なお、会社の会議などにおいても、
この社会的手抜きは発生しています。

ブレストみたいにある程度全員発言を義務付けないと、
他人にしゃべらせといて、

「自分はただ聞いてることにしよう」

と考える人が発生してしまいます。


『影響力を解剖する』では、
社会的手抜きを防ぐ方法として次の3点が紹介されています。

(1)単純作業ではなく、挑戦的な多少難しい仕事にする
(2)各人に少しずつ異なる作業を与える
(3)各人の責任の分担を明らかにしておく


[漏れ聞き効果]

電車に乗っていて

「○○銀行は危ないんじゃないの」

と話しているのをたまたま聞いて、なんとなく不安になり、
口座から金を引き出した。


こうした、いわゆる「うわさ」を偶然聞いたことで、
自分の行動に変化が生じてしまうのが

「漏れ聞き効果」

です。


なぜ偶然聞いた話に影響を受けてしまうのでしょうか。
その理由として、次の3つが挙げられています。

(1)偶然に会話に接するので、面と向かって話されるときよりも
   受け手に構えが生じにくい
(2)聞こうと思って会話に接したわけではないので、
   その内容から受ける衝撃が大きいこと
(3)会話をしている人が受け手に影響を及ぼそうという意図が
   ない(ように見える)ので、受け手に反発が生じにくい

考えてみれば、「ブログ」は、

「漏れ聞き効果」

が高い媒体ですね。

個人発ながら、「口コミ」と異なり、
不特定多数に向けられた情報発信です。

とはいえ、偶然に目にする機会がありますし、
作為的なものも増えてきたとはいえ、基本的には自然な内容
ですので。

ブログの影響力が増しているのもむべなるかな、です。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 13:12 | コメント (1) | トラックバック

影響力を解剖する(2)無意図的影響力-1

「人に影響を与えること」は、大きくは

「意図的」と「無意図的」

に分けることができます。


変な例ですいませんが、あなたは、ある晩、
酒を飲みすぎて金を使い果たし、
帰りのタクシー賃がなくなってしまいました。
(1回くらいこんな経験ありますよね・・・)

そこで、一緒にいた友人にお金を貸してもらおうと、
丁寧な言葉で頼んだところ、渋々ながらもお金を貸してくれた
とします。


この場合、あなたは、友人に対して

「意図的」

に影響力を行使したということになります。
つまり、意図的な言葉によって、相手から「金を貸す」
という行動を引き出したわけです。


一方、本人が意識しないのに、他の人に影響を与えてしまう、
また逆に、頼まれもしないのに、他の人の影響を受けてしまう
ということがあります。

「無意図的」な影響力です。


さて、無意図的な影響力は、

『影響力を解剖する』

では、次の6種類が挙げられています。

・参照影響力
・行動感染
・観察学習(モデリング)
・傍観者効果
・社会的促進・社会的手抜き
・漏れ聞き効果

今回は、このうち最初の3つについてご紹介します。


[参照影響力]

これは、たとえば、
好きなタレントや、尊敬する上司・先輩の服装や行動などを
真似することです。


参照影響力は、男性より女性のほうが大きいと
別のところで聞いたことがあります。

女性ファッション雑誌から、カリスマスーパーモデルが
次々と登場するのはそのひとつの現れでしょう。

女性は、スーパーモデルのような女性の理想像に憧れ、
彼女たちと同じ服やアクセサリーを身に着けたいと願う
気持ちが強いのです。

一方、男性ファッション雑誌のスーパーモデルは
それほど注目されませんよね・・・


[行動感染]

「空を見上げていると一群の人たちがいると、
 ついその人たちと同じ行動をとってしまう。」

「一人が信号無視をして横断歩道を渡り始めるのを見ると、
 自分も横断し始める。」

上記のような例が、行動感染です。


なぜ、無意識レベルで他人の行動を真似してしまうのでしょうか?

ひとつは「好奇心」から、もうひとつは、

「他者と同じような行動をしておけば間違いない、
 とがめられることはない」

という付和雷同的心理が働くからです。


これは、『影響力の武器』では、

「社会的証明」

という言葉で説明されています。


「社会的証明」とは、

「私たちは、他人が何を正しいと考えているかにもとづいて
 物事が正しいかどうかを判断する」

というものです。


「周りが買ってるから、自分も買わなきゃ」

という消費者心理が生み出す

「ブーム」

も「行動感染」のなせる業ですね。


[観察学習(モデリング)]

「お茶の心得がないのに茶会に呼ばれ、
どのように振舞ってよいのかわからないので、
作法を知っていそうな人の振る舞いをそのまま真似をする」

こんな例が「影響力を解剖する」に挙げられています。


人は、自分自身の体験からだけでなく、
人の行動や体験からも学ぶことができます。


ちなみに、

「人の振り見て我が振り直せ」

ということわざは、「観察学習」が下手な人に
向けられた言葉です。(笑)


また、子供は、親の背中を見て育ちます。

すなわち、子供は最も身近な自分の「親」を
観察することによって、自分がどのように考え、
行動すべきかを学ぶ(真似る)のです。


本当に親の責任って、大きいですよね。

意図的にも、また無意図的にも、
子供に最も大きな影響力を行使しているのは

「親」

なんですから。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 14:02 | コメント (0) | トラックバック

影響力を解剖する(1)イントロダクション

今日からしばらく、「影響力」とは何かということを
文字通り徹底‘解剖’した本、

『影響力を解剖する』

の内容を「徹底的」にご紹介していきたいと思います。


「影響力」といえば、ロングセラー本となっている

『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』

がありますね。


『影響力の武器』は、

‘相手からどうやって「YES」を引き出すか’
 (つまり「どうやって影響を与えるか」)

について、さまざまな分野の実践家(営業マンなど)の観察
を元に、実践的な説得テクニックが紹介されているものです。

ビジネスパーソン必読書と言っていいでしょう。


一方、

『影響力を解剖する』

は、説得テクニックにも多少触れられていますが、
より学術的に、「影響力」そのものを掘り下げています。

したがって、「影響力」の背後にある

「原理・原則」

を理解することに役立つ内容です。


アマゾンで見ると、現在本書は古本でしか入手できません。
おそらく絶版になっているものと思われます。

しかし、本書は、
高度な内容がわかりやすく記述されている良書です。
もったいないので、このブログ&メルマガでポイントを
しっかりお伝えしたいと考えています。


さて、

「人が、他の人に対して何らかの働きかけを行うこと」

すなわち「他者に影響力を与えること」は、
社会心理学の分野では、

「社会的影響」

と呼ばれています。


「社会的影響」とは、

・個人と個人の間

または、

・集団と集団の間

で影響を及ぼしあうことです。


ここで、「影響を及ぼす」というのは、

個人(集団)が、
他の個人(集団)の態度、行動、感情などを
前者の望むように変化させるために、
何らかの形で後者に働きかけること

です。

営業担当者が、見込み客に「購入」を
踏み切らせる「営業行為」はその典型例ですね。


したがって、
「影響力」を解剖するためには、

・影響の与え手(Influence Agent)
・影響の受け手(Influence Target)

という2者の関係があること、
そして、与え手から受け手へと影響を及ぼす

「働きかけ」(影響行動)

があるということを

「基本的な枠組み」

としている点をまずご理解ください。


---------------------------------------------
   「影響力」解剖のための基本的な枠組み
---------------------------------------------

影響の与え手 →→→→→→→→ 影響の受け手
         (働きかけ:影響行動)

---------------------------------------------


なお、本書では、集団ではなく、主に個人間での

「影響の及ぼしあい」

に焦点があてられています。

では、次回から本格的にこの本を読み込んでいきます。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房)

投稿者 松尾 順 : 14:12 | コメント (3) | トラックバック

苦情学

西武百貨店で8年間にわたって

「お客様相談室」

を担当した関根眞一氏の著書、

「苦情学 クレームは顧客からの大切なプレゼント」

は読みましたか?


この本では、
顧客から寄せられる様々な苦情の適切な対処方法など、
関根氏が現場の体験からつかんだ

「実践的なノウハウ」

をわかりやすく紹介してくれています。


また、この本には、
常軌を逸した、とんでもないクレーマーたちと、
関根氏との壮絶なやり取り(闘い?)がリアルに
再現されているのですが、

「こんなやつらが世の中にはいるのか!」

と唖然とさせられますよ。


さて、関根氏によれば、
苦情対応には絶対に欠くことのできないものが
一つだけあるそうです。

それは、お客様の

「心理を察する」

ことです。


関根氏は、お客様相談室を担当してから、

「お客様の心理」

が読めるようになるまで5年かかったそうです。


そして、この5年間の関根氏の考え方の変化が、

「予測する力養成講座」(講談社MOOKセオリーVol.11)

のインタビュー記事で語られています。


“お客様相談室に配属されると、まずは会社の利益を
 保護する立場に立とうとするものです。
 会社や店舗のリスクにならないように、
 自分の言葉や態度に気をつけて対処する。”


これは間違いではないそうですが、
しかし「限界がある」と、関根氏は指摘します。

苦情を言う人たちをただ撃退するだけで終わっては
いけないからです。


関根氏の場合、お客様相談室に配属されてから1年ほどして

「店舗と顧客の中立の立場」

に立った考え方ができるようになりました。

関根氏は、

“そうすると、前よりも多くのことが見えてきたのです。
 でもそれでもまだ不十分でした。”

と答えています。


関根氏の考え方に
さらなる変化が起きたのは3年後のことでした。


“その頃から、ほぼお客様側の立場に立って
 物事を考えることができるようになりました。
 つまり、困っているのはお客様で、
 一刻も早く問題を解決したいのはお客様側なのだ、
 ということがわかったのです。”


そうすると、不思議なことに、

“苦情の約8割は電話での対応だけで
 解決できるようになりました”

とのこと。


続けて関根氏は、

「マーケティングの要諦」

にも通じるコメントをしています。


“大切なのは、
 お客様 を 満足させるのではなく、
 お客様 が 満足することなのです。”

“百貨店におけるゴールは、お客様を離さないことだと
 私は思います。そのために、お客様の立場に立って
 それぞれが満足する解決策を探っていくことが大切
 なのです。”


お客様を自社と相対する側に置いて考えるのでなく、
お客様側と同じ場所に自分を置いて考える。

これが、顧客の心理を的確に読むことを可能にし、
優れた苦情処理だけでなく、売れる商品づくりにも
つながっていくんだと思います。

投稿者 松尾 順 : 11:48 | コメント (8) | トラックバック

開発者側とユーザー側の意識差

マーケティング巧者、小林製薬のネタは、
これまで何度か取り上げてきました。


*インパクトか上品か

*良さそうに見えなきゃ売れないョー


小林製薬は、
ユーザーの潜在ニーズを見抜くことにかけては、
最も優れた会社のひとつです。

それでも、
ユーザーの心に刺さるメッセージを生み出すのは
簡単ではない、ということがうかがえる最新事例がありました。


同社は今年(07年)3月発売の

「ホットクレンジングジェル」

でメイク落とし市場に新規参入しています。

上記製品は、発売1ヶ月で20万本以上を出荷して
年間売り上げ目標4億5千万円の3分の1をすでに達成。
現在も順調に出荷を伸ばしています。
(日経情報ストラテジー、SEPTEMBER 2007)


この製品の開発に当たっては、
SNSを活用して多数の消費者の意見を集め、
パッケージデザインや売り場作りなどに活かしたそうです。


具体的には、昨年(06年)12月、
SNS最大手の「ミクシィ」内に公認コミュニティサイト、

「あっためてつる肌委員会」

を開設しています。

開設後半年(今年5月末)で、
上記コミュニティメンバーは5千人を突破。

小林製薬では、この反響の大きさを考慮して、
コミュニティ開設期間を8月いっぱいまで延長を決めました。


さて、このコミュニティで出されたアイディアのうち、
実際の商品開発に反映されたのは、
パッケージに記載された次のキャッチコピーでした。

「蒸しタオル効果でお肌つるつる」


実は、小林製薬内では当初、

「温かさ」

をキャッチコピーにすべきという声が強かったそうです。

というのも、

「ホットクレンジングジェル」

のウリは、単なるメイク落としではなく、
肌を温めて毛穴を開かせ、毛穴に入り込んだ化粧品まで
落とすことにあったからです。


すなわち、既存他社製品との最大の差別化ポイントは、

「肌を温める」

ということであったわけです。


ところが、
SNSを通じてユーザー500人にサンプル(試供品)を
配って感想を聞いたところ、

“つるつるになって気持ちいい”

という意見が一番多かったのです。


開発者と、ユーザーのこの意識の差に驚きませんか?


開発者側である小林製薬が重視した「温かさ」は、

「機能価値」(規格・仕様)

ですよね。すなわち、「なにができるか」ということ。


しかし、ユーザー側は正直ですね。
女性にとって、とてもうれしい「つるつるになる」という

「便益価値」(ベネフィット)

を実感していた。


小林製薬でさえ、ついつい
自社の強み(機能)を訴求したいという欲求が先立ち、
ユーザーが一番知りたい、

「その製品を使えば、どんないいことがあるのか」

というベネフィットを伝えることを
忘れそうになってしまうというのは、実に興味深いです。


やはり、ユーザーが真に求めているのは、

「ドリル」

ではなくて、

「穴」

なのです。


このケースは、
ユーザーの意見を愚直に聴くことの意義を
改めて感じさせてくれますね。

投稿者 松尾 順 : 10:18 | コメント (0) | トラックバック

リンガーハット・・・体感価格の読み違い

「長崎ちゃんぽん」

って、九州以外の方にはあまりなじみのない料理だと思います。

うどん、そば、ラーメンのように
どこでも食べられるものじゃないですからね。


でも、福岡生まれの私にとっては、

「長崎ちゃんぽん」

は、小さいころから
うどん、ラーメンと同じくらい慣れ親しんだ味です。
(「そば」は年に1回、年越しそばの時に食べるくらいでした)


ですから、18歳で東京に出てきてからも、
渋谷や銀座にあるチェーン店の「リンガーハット」に
わざわざ足を運んでいました。

今は、事務所から近い御茶ノ水店ができたので、
週1ペースで通っています・・・(^_^;


さて、リンガーハットは、
昨年(06年)9月に若干の値上げをしたんですが、
以来、客数の落ち込みが激しく業績悪化に苦しんでいます。


値上げ前のレギュラーちゃんぽんの値段は、

399円(税込み)、値上げ後は450円。


海鮮、肉、野菜がたっぷり入った健康的でおいしい料理が
400円未満で食べられるのは格安。大変お得でしたし、
値上げ後の450円でも十分安いと思いませんか?
(逆に、具がちょこっと乗っただけの普通のラーメンが、
 東京では600円以上するのが信じられません・・・)


リンガーハットの経営陣も、
「450円でも通用するだろう」という自負があったようですが、
ふたを開けてみたら大誤算!

今、慌てて割引クーポンを発行して客を呼び戻そうと
がんばっています。


まあ実際に、ひとりのユーザーの立場で考えると、
約400円から450円への値上げというのは、
絶対的な価格としては安いけれど、値上げ率は10%以上に
なりますから、「体感価格」としては「大幅値上げ」です。


リンガーハットの場合、味のおいしさだけでなく、
安さに惹かれていたユーザーも多かったと思いますから、
この価格差の大きさが客足を遠ざけることになったのでしょう。


リンガーハットの誤算は、
「プライシングの難しさ」を教えてくれますよね。

絶対価格じゃなくて、
元の価格(基準価格)との相対的な差が重要だ

ということをうまく読めなかったということでしょう。


まあ、後付け講釈ですから
いくらでももっともらしいことは言えますけど。

私の場合は、値上げ後もリンガーハットに
足繁く通ってますから多少の批判はお許しを!

大好きなリンガーハット、がんばれ!


余談ですが、マクドナルドは、
今年(07年)6月から地域別価格を導入してますね。
東京では3-5%の値上げ。

当初、ユーザーに受け入れられるか心配されましたが、
あまり客足に影響は出ていないようです。


マクドナルドの場合、かなり綿密なシミュレーションに
基づいて地域別価格を決定したようです。

さすが外資系企業。

リンガーハットのように、
「原材料の価格高騰」を理由に、経営側の思い込みだけで
値上げしてしまうのとは違います。


ただ、マクドナルドの場合、
ここ数年、あまりにも価格改定が頻繁でしたから、
そもそも元の価格(基準価格をどこにおくべきか、
ユーザーがよくわからなくなっています。

マックの価格に対する感度は、いわば

「マヒしている状態」

と言えます。

100円マックが維持されているのも、
値上げを感じさせないことに寄与していますね。

投稿者 松尾 順 : 11:14 | コメント (9) | トラックバック

態度データの活用

アウディジャパンでは、
「顧客の生活様式」に関する情報を
現在より詳細に管理できる情報システムを
2008年以降、全国の販売店に導入する予定です。
(日経産業新聞、2007年7月12日)


具体的には、従来顧客データとして管理していた

保有車両

サービス関連情報(オイル交換や車検などのことでしょう)

に加えて、

趣味や習慣、嗜好(しこう)

など、

「日本人顧客の生活様式」

に関する情報を詳細に収集・管理するシステムを
開発済み。


アウディジャパンでは、収集したデータに基づいて
日本市場で販売する車種の選定や広告、
イベント、サービスなどの施策を連動させて
展開することを考えています。


この同社の動きは、従来、主に活用されてきた

「デモグラフィック属性」(性別、年齢など基本属性)

や、

「行動履歴」(商品・サービスの利用履歴)

だけでは、顧客心理や消費行動を理解するには
十分ではないということが(ようやく)わかってきたからだと、
私は見ています。


さて、趣味や習慣、嗜好といった顧客情報は、

「態度データ」

と一般に呼びますが、米国の調査会社、
フォレスター・リサーチは次のようなことを述べています。

----------------------------------------

・態度データを利用したセグメンテーションの利点は、 
 (顧客行動の)予測のための確実なパワーを与える

・一般消費者の場合、特定の行動よりも態度の方が
 変化しずらいので、長期間にわたり予測要素として
 活用できる

・企業が顧客のライフスタイルデータを収集する場合、
 「態度データ」によるセグメンテーションは、
 「属性データ」、「行動データ」によるセグメンテーション
 よりも優れている。

----------------------------------------


態度データの収集は、
属性データや行動データほど容易ではありません。

しかし、「態度」とは、
顧客の行動の背景にある「心理状態」のことです。

基本的に、好き、欲しい、といった気持ち(心理)が
あって、初めて行動に結びつきくわけです。

ですから、今後、顧客の「態度」についての情報を
収集・蓄積・分析・活用することがますます重要に
なっていくと思います。


なお、ご参考までに・・・

顧客を深く理解するために有効なデータは、
大きくは次の4つに分けられます。

・属性データ
・行動データ
・インタラクションデータ
・態度データ

それぞれどんなデータが具体的には該当するのかを
以下に記載しておきます。

----------------------------------------

・属性データ

-性別
-年齢
-職業
-居住地 など


・行動データ

-注文
-取引履歴
-支払い履歴
-利用履歴 など


・態度データ

-意見
-嗜好
-ニーズ
-要望 など


・インタラクションデータ

-オファー
-キャンペーンの結果
-コンテキスト(文脈)
-クリックストリーム(Web上の動線) など

----------------------------------------


*今回の記事は、
 
「SPSS Data Mining Day 2007」(7月12日開催)

において行われた

“The Power of Words ~ 
 データマイニングのビジネス価値を高める言葉の力”

 SPSS Inc. Vice President, Market Strategy
 Mr. Olivier Jouve

の講演内容を一部参考&引用させていただきました。

投稿者 松尾 順 : 11:29 | コメント (1) | トラックバック

なぜ人はツイッターにはまるのか?

最近、ブログ・SNSのお手軽版と呼んだらいいのか、
短いメッセージを気楽に何度でも投稿できる新サービスが
ユーザー数を伸ばしていますね。


代表的なサービスは、米国生まれの「Twitter」
(ツイッター、ついったー)です。


私は、日本生まれの類似サービス「もごもご」


を試していますが、まだその面白さがよくわかりません・・・


上記のようなサービスは、日本では

「リアルタイム日記」

とも呼ばれていて、携帯電話からの投稿も可能なので、
10代ユーザーの伸びが特に大きいようです。


さて、このサービス、やってみた人の半分くらいは

「はまる」

と言われているそうですが。


すでに「はまっている」らしい、
SNSライターの高橋暁子さんによれば、

“ついったーは、きちんとやってみないと
 面白さが分からないサービス”

なんだそうです。


そして、

“「一言言いたい!でもわざわざメールしたり
  日記書くほどじゃない!」という気持ちに従って書くと、
 ついったーはかなり楽しめるんですよね。

 基本独り言だから気軽な上に、思わぬところから
 反応がいただけたりします。”

とのこと。

なるほど、そういうことなんですね。

*以上は、高橋さんのブログから引用させていただきました。
「twitter(ついったー)の面白さを知る方法」


しかし、それにしても、「独り言」なら、
公開しなくてもいいじゃん!

なんて思ったりします。

まあ、以前から、掲示板にしろ、ミクシィーの日記にしろ、
「独り言」的メッセージがかなり多かったわけですけど。


ですから、私としては、

「なぜ人はツイッターにはまるのか?」

ということが気になるわけです。

そして、この疑問を解く上でヒントになる情報が
いくつかありますのでご紹介してみたいと思います。


ひとつは、イッセー尾形の演出をやってる森田雄三氏の話。

家族のコミュニケーションについて、森田氏は、

“夫婦はそもそも話をしない”

という事実を指摘しています。確かにそうです。(笑)

“子供が小さいころは育児の話題が口の端にのぼるが、
 育ってしまうと、連れ添った二人には格別の話題は
 ない。雑事も「あ・うん」の呼吸でわかり合ってしまう”


つまり、近い存在になればなるほど、相手を理解するための
言語コミュニケーションの重要性は軽くなっていくということ
でしょう。

そしてまた、

“相手が真剣に聞かないから、遠慮のない話ができるのが身内だ。
 「話を聞かない態度」と「聞いてくれない話のできるありがたさ」
 のふたつに支えられて、身内の親密さは成立する”

という面白い視点を提供しています。

この意味は、愚痴をこぼす妻が、
単に聞き流せばいいのにまともに受け答えてしまう夫に
対して、逆ギレするシーンを思い浮かべていただければ、
おわかりになるでしょうか。


端的にいえば、人は、

「単に聞き流して欲しいこと」

をしばしば言いたいのであり、

それを聞いてくれる相手として、
真剣な、意味のある対話に持ち込むのではなく、

「あいづちを打つけれど、実は真剣には聞いていない」

相手を必要としているということです。


この状況を仕組みとして備えているのが、
まさに「ツイッター」と言えるんじゃないですかね。

こうしたサービスでは、投稿できるメッセージの長さが
極端に短く制限されていますから、真剣な意味のある対話
には決してならない。

せいぜい、適当な合いの手を入れるだけしかできないからこそ、
必ずしも身内ではないし、近い存在でもないかもしれないけれど、

「聞き流して欲しい人」と「聞き流してあげる人」

をうまく結び付けているということでしょうか。


一方、ITの普及による若者の言語能力の低下という点も
背景にあるかもしれません。

キッシンジャー博士が、
最近次のようなことを言っていたそうです。

“私の孫は、私よりインターネットを駆使して世界中の情報を
 集めて整理するのが上手だ。しかし、自分の考えを書かせると
 二行しか書けない”


今は、ネットを使って実に簡単に情報が手に入りますよね。

ほぼあらゆることに対する答え(らしきもの)が、
ネットで探せば見つかります。

したがって、自分自身で考えることをしなくても済みます。
その答えらしき情報を参照すればいいわけですから。

そしてまた、自分の言葉で語り合う機会が減っているのかも
知れません。


きっちりと自分の考えを伝えるために構成された長い文章は、
仕組み的に書けない「ツイッター」は、現代の若者にとって
実に使い勝手のよいコミュニケーションツールであることは
確かでしょう。


森田雄三氏の話は、下記新書から。

「間の取れる人、間抜けな人」
(森田雄三著、祥伝社新書)

投稿者 松尾 順 : 11:06 | コメント (1) | トラックバック

つぶれる店と繁盛する店

私の事務所の隣のビル1階にあったスペイン料理店が、
最近店を閉めたようです。

まだ、開店して2年ほどでした。

このお店は奥にちょっとしたステージがあり、
月何回かフラメンコやフラメンコギターのショーを
やっていて、そこそこ流行っていると思ってたんですが。


まあ、そういいながら、私自身は、都合3回くらいしか
この店には行ってませんでしたけどね。

今振り返ってみると、
料理はそこそこおいしかったし、値段も決して高くはなかった。

でも、いつ行っても、どうも気分が晴れないというか、
何かが欠けているという感覚と共にお店を出てました。

それで、近いのになんとなく行く気がしなかったというわけです。

気分が晴れなかった理由は、実ははっきりしてます。

それは、「スタッフの人」だったんですよね。
感情のないロボットのような、抑揚のない平坦な挨拶と受け答え。
笑顔ゼロ。過不足はないけれど、義務的・形式的なサービス。

ホスピタリティあふれるサービスを
スタッフ全員に周知徹底させるのは難しいとしても、
せめて、会計を済ませた時に、店の責任者が、
心のこもった笑顔や挨拶で見送ってくれていたなら、
もっとリピートしたのになあと思います。

そういえば、このお店、責任者が誰なのかよくわからなかった。
リーダーの存在感が希薄でした。


一方、友人が絶賛していたのでなにげにチェックしていた
新宿のイタリア家庭料理店、

「プレゴ・プレゴ」

先日、機会を見つけて行ってみたところ、期待以上の満足度でした。

「プレゴ・プレゴ」は、新宿東口から徒歩3分程度。大塚家具iDCの近く。
ベアムス!(BEAMS)の真向かいの雑居ビルの4階。

こなれた値段ながら、どの料理もおいしい。
なにより、スタッフの人たちのきびきびした動きが気持ちよく、
心地よい雰囲気にあふれていました。

周囲を見渡すと女性グループが大半でした。(こちらはオヤジ3人・・・)

新宿駅近くで地の利もいいのですが、それだけに激戦区でも
あるわけです。しかし、このお店なら、おそらくリピーターが
多いんじゃないかと感じました。

庶民的な雰囲気ですので、接待などには向きませんが、
友達同士でわいわいやるお店としては最適でしょう!

私も、また近いうちに行きたいと思ってます。

あ、そうそう、デザートで、

「焼きアイスクリーム」

というのを頼んだのですが、これも最高でした!


結局のところ、味、値段、サービスのそれぞれが平均点以上で
かつバランスが取れていることが、飲食店が繁盛するポイント
なんでしょうね。(当たり前だけど、実現はそう簡単じゃない・・・)

プレゴプレゴの手作りのHPを見ると、リーダー(店長)はじめ、
スタッフみんな若いですね。

スタッフ目当ての女性客も相当多いのかも!

投稿者 松尾 順 : 21:01 | コメント (3) | トラックバック

客が客を呼ぶ・・・四万温泉のスマートボール

ディスコの「センターピン」(成功要因)は、

「混んでいること」

と見抜いたのは、ジュリアナ東京、ベルファーレなどを
プロデュースした折口雅博氏でした。

人が集まるからこそ、その場に「活気」が生まれ、
楽しさを倍増させてくれるからです。


同様の理由で、周囲の反対を押し切り、
無料券をばらまいて新潟スタジアムを一杯にしたのが、
Jリーグ、アルビレックス新潟の代表取締役会長、池田弘氏。


上記の例はどちらもスケールの大きい話ですが、
店舗、とくに娯楽施設は規模の大小にかかわらず、

「客が客を呼ぶ」

というのは同じだなあと改めて思ったのが、
先日行った群馬の四万(しま)温泉の温泉街でした。


四万温泉は、近くにある伊香保や草津ほどの知名度はなく、
歓楽街もないため、温泉街はちょっと寂れた感じです。
(そこが逆に言えば魅力にもなってますが・・・)


さて、車1台がやっと通るくらいのある細い通りに入ると、
いくつかのそば屋などと並んで、スマートボール屋さんが
2軒、斜め向かいに並んでいました。

スマートボールは、私も今回始めて経験したのですが、
ピンボールのような斜め横置きの台で、ちょっと大きめの
ビー玉のような玉をはじき、5とか15とか書かれた穴に
入ると、その数だけ玉が出てくるもの。

まあ、ピンボールとパチンコの「アイノコ」と
思ってもらえればいいです。


この2軒のうち、1軒は、スマートボールとパチンコ、
もう1軒は、スマートボールと射的の複合店。

どちらも店舗面積はは同じくらいです。

でも、一方は先客万来なのに、もう一方は
ガラガラ、というか人っ子ひとりいないんです。


私たち家族は、たまたま最初に混んでいる方に入りましたが、
BGMには「ド演歌」が流れています。

「ド昭和」の香りがしました。

店主は、“若く見積もって”50歳過ぎのおばはん。
へたに声をかけるのがためらわれる「ド迫力」をお持ちでした・・・

土曜日の午後でしたが、この店には次から次へと客が入ってきます。

千客万来

*ガラス越しでちょっとわかりにくいですが、混んでるのはわかりますよね。


そして、その店を出たらすぐ反対側にあったのが、
ガラガラの2軒目の店。

スマートボールだけじゃなくて「射的」もあったので、
ちょっとやってみたいと思ったのです。

ガラガラ

しかし、店内に客が誰もいないので入る勇気が出ません。
素通りしてしまいました。


この2軒、経営センスの差と片付けてしまうのは簡単ですが、
ガラガラ店のオーナーさんは、「サクラ」でもなんでも、
できることをやればいいのにと思ってしまいました。

1組でも先客がいれば、みな安心してお店に入れるんですけど!

こう明暗がはっきり分かれている実例も珍しいですよねぇ・・・


なお、ついでながら、今回の四万温泉の宿泊先は
老舗の「四万たむら」という旅館です。

→四万たむら Webサイト

ただし、部屋は、四万たむらの中でも最も古い施設である、
「花涌館」(かようかん)を選びました。


「花涌館」は、全体的な高級イメージを壊すためか、
Webサイトではおおっぴらには紹介されていません。

古い旅館にありがちなトイレ・バスなしの部屋でしたが、
掃除が行き届いているようで、清潔感がありました。


なにより、たむらの全施設内には源泉掛け流しの風呂が
10種類ほどもあって、どれも趣があってすばらしいもの。

また、夕食はいわゆる懐石料理でしたが、
値段を考えると十分な品数があり、かつどれもおいしい。

これで休前日でも、1泊2食付1人1万円弱です。


もちろん、この宿には、1泊2-3万円を超えるグレード
の高い部屋もいろいろとあるのですが、私たちが選んだ
最安値パックではお得感があるし、満足度も高い!

久々にリピートしたいと感じた宿でした・・・


以下、いくつか写真をご紹介。


 *たむら 前景 
  萱葺き屋根の日本家屋風のたたずまいがいいですね。
たむら前景

 *たむら玄関
  玄関を入ると正面はこんな感じ。
  奥のほうには、田村家に代々伝わる家宝の人形が展示されてます。
たむら玄関

 *たむら帳場(フロント)
  文字通り「帳場」と書いてあり、ここでチェックイン・チェックアウトの手続きをします。
たむら帳場

投稿者 松尾 順 : 09:26 | コメント (2) | トラックバック

「ヒット商品を最初に買う人たち」

今回は、純粋な書評です。


マーケティング戦略において、
ターゲットを考える際に最も役立つ理論が

「イノベーター理論」

です。


マーケティングコンサルタント、森行生氏の最新作、


「ヒット商品を最初に買う人たち」
(森行生著、ソフトバンク新書)

では、まるごと一冊、この「イノベータ理論」、
特に、流行を生み出す「イノベータ」に焦点を当てた議論が
展開されています。


「イノベータ理論」とは、新しい商品を誰が買い、
それがどのように広がっていくかを説明するもの。

本書では、新商品に真っ先に手を出す少数の人たちを
「イノベータ」、イノベーターに続く人たちを
「アーリーアダプタ」、最後に買う人たちを「フォロワー」
と3つのセグメントに分けます。

さらに、森氏のイノベータ理論では、
これまでイノベータ層の中に含まれていた

「マニア」層

を区別し、

「マニア層」と従来の「イノベーター層」

の心理や行動面の違いを指摘しています。


新商品が売れるためには、まず「イノベーター層」が
飛びついてくれることが必要ですよね。

しかし、いわゆるオタク的な心理や行動を持つ「マニア層」
だけにしか受け入れられなかった商品は、大ヒットに結びつく
ことはありません。

したがって、新商品の初期購入者がマニア層にとどまっているか
どうかを見極めることは、新商品の将来性を占う最初の試金石と
なります。

本書では、こうした森氏オリジナルのイノベータ理論に基づき、
花王ヘルシア、ニンテンドーDS、アップルのiPODなど、
具体的な事例を挙げながら、なぜ、ある商品は成功し、
あるいは失敗したのかを明快に分析しています。


また、森氏は、「従来型イノベータ」とは異なる行動を取る

「革新型イノベータ」

と呼べる層が存在していることを本書で初めて明らかに
しています。


「革新型イノベータ」は、従来の常識や商品のイメージに
とらわれず、新たなルールで行動する人たち。

逆に言えば、これまでのルールを壊してしまいます。

ですから、「革新型イノベータ」の心をつかむことができれば、
従来のルールにおいては最強だった競合他社商品を打ち負かす
新たなヒット商品を生み出すことができるかもしれません。


著者の森行生氏は、代表作の

「シンプルマーケティング」
(森行生著、ソフトバンクリエイティブ)

や、長年にわたって発行されているメールマガジンでは、
極めて濃厚な議論を展開してきました。

文章はとても読みやすいのですが、書かれている内容自体は、
高度で緻密なため、読み手にも相当の覚悟が必要です。(笑)


しかし、本書は、初心者向けにさらにわかりやすく、
平易に書かれています。

ですから、上記「シンプルマーケティング」を読まれたこと
のない方には、準備体操的なものとしてお勧めできます。

本書を読んだら、さらに本格的な森理論が学べる
「シンプルマーケティング」がきっと読みたくなります。


一方、森氏の本に既にどっぷりはまっている方にとっては、
「これで終わりなの・・・」と感じるほどあっさりしているため、
さっと読んだだけでは空腹感を感じるかも知れません。


しかし、実は内容自体はかなり高度なもの。

玄米のようにゆっくり噛み締めて飲み込み、
また牛のように反芻することをお勧めします。


なお、「ヒット商品を最初に買う人たち」をベースに、
著者の森さんが講演をされます。

4月25日(水)です。
森さんの話は、お世辞抜きでメチャクチャ面白いですよ。

↓詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!

*シナプス・マーケティング・コミュニティ

投稿者 松尾 順 : 09:33 | コメント (0) | トラックバック

銀座ユビキタス実験

1月から実施されていた「銀座ユビキタス実験」のこと、
ご存知でしたか。3月10日でいったん実験は終了したようです。
(日経新聞2007/03/10)


実験参加者は、専用の携帯情報端末を持って銀ブラ。
そして、たとえば銀座四丁目交差点の三越前を通ると、

「三越は、1930年に誕生しました・・・」

などとガイド音声や画像が自動的に端末に流れます。


これは、銀座の要所要所に設置したICタグや赤外線発信装置から
流れている情報を、近くにある端末がキャッチできる仕組みに
なっているからなんですね。


この仕組み、ぱっと聞いた印象ではとても便利そう。
特に、観光客には喜ばれそうなサービスです。

歌舞伎や美術館などで、音声の説明が聞ける小型の機器を
貸し出しているところがありますよね。

あれと同様、このユビキタスサービスは、その場所に不案内な人
にとってはありがたいサービスに違いありません。


と思ったら、実はそうではなかったんですね。
実験参加者の評判はあまり好ましいものではなかったようです。
また、申し込んだものの、実際には参加しなかった人が9割も
いました。


この端末、首から下げるスタイルですが重さが300グラム。
ちょっと重いですね。

また、屋外で使用するため、液晶画面が見づらいという
ハード設計上の問題もあったようです。


しかし、実験参加者が評価しなかった主な理由は、

「音声などに気をとられ、気楽に銀ブラできない」

ということでした。


また、

「知りたくない情報まですべて受信してしまう」

という声も・・・


つまり、この端末の最大の問題は、
情報受信の「選択権」が利用者側になかったことでしょう。


「ユビキタス」のコンセプトは、もしそれが完全に実現したら
さまざまな情報が、まるで「空気」のように世界を満たしている
状態と言えます。

ですから、こうした情報を人がすべて摂取していたら、
それこそ情報過多で頭がおかしくなりそうです。


ユビキタスに限らず、新しいコミュニケーションテクノロジーは、
どうしても情報発信側寄りの発想が強くなってしまうものですが、
情報受信側の心理理解も大切ですよね。


「情報は自分で取捨選択したい」

現代の消費者の、最も切実な願いはこれじゃないでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 13:57 | コメント (2) | トラックバック

欲望解剖:「水戸黄門」に見る偶有性

ドーパミン(脳内麻薬性物質)のドバー放出以外に、
もうひとつ脳が喜ぶ、大好きなことがあります。

それは、

「偶有性」

と呼ばれるものです。


「偶有性」は、このメルマガ&ブログでも一度取り上げました。

「先が読めないからうれしい」


偶有性は、半ば規則的、半ば偶然に起こる出来事のことです。

人は、物事の展開がすべてわかっていたら退屈になりますし、
かといって、展開がまったくわからないのは不安になるだけ。

半分分かっていて、半分分からない、
そんな世界が一番ワクワクできて楽しめるということでしょう。
(人生も、「偶有性」そのものですね・・・)


さて、「欲望解剖」*の中で、茂木健一郎氏は、
「偶有性」を備えていることが人気の鍵となっている例として、

「水戸黄門」

を挙げています。


「水戸黄門」では、黄門さまが全国を旅する途中で
さまざまな事件に遭遇しますが、最後は、必ず

「この印籠が目に入らぬか!!」
「ははーっ」

で無事一件落着しますよね。


この印籠が「規則性」であり、
一話ごとに異なる事件(ストーリー)が「偶然性」です。

水戸黄門の「印籠」は、偉大なるワンパターンですが、
これが見ている人に安心感を与えると同時に、
黄門さまを移動させることでディテールに変化を与えています。

こうして、規則性と偶然性をうまく混ぜ合わせることで
面白さを作り出している。

だから、ついつい毎回見てしまう。
水戸黄門中毒になるというわけです。


考えてみれば、

「ウルトラマン」シリーズ
「仮面ライダー」シリーズ

なども、毎回、奇妙な怪物が登場してくるけれど、
最後には、決め技の光線やキックでやられて正義が勝つ
という点では、水戸黄門と同様、偶有性を備えていますね。


ある一定のパターンを維持しつつ、
ディテールを変えていくというのが、長く支持される
ロングセラー商品を生み出すポイントと考えることが
できるんじゃないでしょうか。


ちなみに、ご存知「スターウォーズ」は、
多くの神話に共通するパターンに基づいて制作されています。

それは、神話学者のジョゼフ・キャンベルが、
神話に共通するマザー(母型)として抽出した

「英雄伝説」

です。


具体的には、

「英雄は旅立ち、成し遂げ、生還する」

ということ。

つまり

・セパレーション(旅立ち)
・イニシエーション(試練)
・リターン(帰還)

という3ステップを踏むパターン。

日本のおとぎ話では、「桃太郎」が典型的ですよね。


スターウォーズが大ヒットし、長く愛される理由には、
やはり同シリーズが「偶有性」を備えていたからなのかも
しれません。

*「欲望解剖」
(茂木健一郎、田中洋、
 電通ニューロマーケティング研究会編、幻冬舎)

投稿者 松尾 順 : 11:22 | コメント (0) | トラックバック

欲望解剖

今、マーケティングの最先端の研究は、

「ニューロマーケティング」

でしょうか。

「ニューロ・・・」という語感のためか、
かなり怪しい響きがしますが別に怪しいものではございません。


ニューロマーケティングは、
脳神経科学(ニューロサイエンス)分野の成果や、同分野で
使用される機器(fMRI:機能的磁気共鳴画像法など)を活用して、
消費者の心理・行動の背後で、脳がどのような反応を示すのかを
明らかにしようとするものです。


ちなみに、私も昨年10月に

「ニューロマーケティング:コークvsペプシ」

という記事を書いています。


また、この研究に関連する他の分野としては、

「ニューロサイエンス」
「行動経済学」

などがありますので、
ご興味のある方はこちら方面も当たってみられると
いいかと思います。


とはいえ、ニューロマーケティングについては、
まだまだ日本語の文献は少ないのですが、
まったくの初心者の方の入門書として紹介したいのが次の本です。

「欲望解剖」
(茂木健一郎、田中洋、
 電通ニューロマーケティング研究会編、幻冬舎)


本の題名はやはり怪しい(笑)ですが、
専門書ではありませんし、読みやすく書かれています。


本書で、茂木健一郎氏は、

人が「欲望」を感じている時、脳内では「ドーパミン」が出ている

ということを教えてくれています。


「ドーパミン」は、

「脳内麻薬性物質」

と呼ばれることもありますが、
脳が気持ちよくなる、つまり快楽を感じさせてくれる物質です。


そして、人が何かにはまる(=中毒になる)ということは、
ドーパミンをより多く放出する神経回路が強化されるから
なんですね。

たとえばビールが大好きな人は、
ビールを飲むとドーパミンがドバっとでる。気持ちいい。
だからもっとビールが欲しくなるわけです。

ビールの場合、もともとアルコールという習慣性のある物質が
含まれていますから、行き過ぎると、本当の意味での中毒に
なりますよね。


でも、中毒の対象は、アルコールに限りません。

高級ブランドや有名タレント、音楽、マンガ、何だろうが、
人が何かに熱中している時、脳内ではドーパミンがドバドバ
出ているというわけです。


ですから、マーケティングの課題を神経科学的に再定義すれば、

「どんな製品やコミュニケーションであれば、
 人にドーパミンを放出させ、中毒にさせることができるか」

ということになるのかもしれません。


しかし、この表現はかなりヤバイですよね。
ニューロマーケティングにおける倫理についても
一緒に考えないと・・・!

投稿者 松尾 順 : 14:58 | コメント (0) | トラックバック

メディアミックスショッピング:ジャパネットたかた

先週土曜日(27日)、「ジャパネットたかた」
の新聞折込チラシが全国で配布されたようですが、
お気づきになりましたか?

千葉・松戸の我が家の日経新聞にも入ってました。

「ジャパネットたかた」のチラシが我が家にも入ったのは
たぶん始めてです。相当大規模なチラシ攻勢なんでしょう。

ざっと眺めてみましたが、Windows Vista搭載パソコンと
ハイビジョンテレビを中心とした紙面構成です。

パソコンの仕様や価格設定は、さすがにツボを抑えていました。


さて、同社の中心顧客層は、

電気製品に弱く、通信販売で商品を購入することに抵抗がなく、
一方で、受動的でウィンドウショッピングが苦手という人たち

です。


「ジャパネットたかた」は、全国のこうした顧客層に対し、

絞り込まれた商品をテレビ、ラジオ、チラシ、カタログ、
Webサイトなどあらゆるメディアを駆使して訴求する

「メディアミックスショッピング」

によって、成功を収めてきました。


よく考えてみれば、同じ商品をさまざまなメディアで
ほぼ同時に横展開するわけですから、あまり効率が
よくないように思います。

ただ、それぞれのメディアの特性を活かし、
手を変え品を変えて商品の魅力を伝えることで、
説得力を高め、爆発的な販売力を可能にしています。


実際、高田社長によれば、

「ご老人は、テレビに言っただけのことは信用しない。
 紙に書いてあることでなければ信用しない人も多い」

のだそうです。


また、高田社長は消費者心理をよく理解しています。


消費者にとって一番大切なことは、

「どんな商品が、いくらで買えるか」

ということです。

すべての消費者が
フル装備の多機能商品を求めているわけではありません。

機能が少ない商品でも、
それに見合った価格が設定されていれば買う人がいます。


つまり、

「商品の価値は、使う人の満足度で決まる」

ということ、そして、使う人の「満足度」は、

「本当に必要で、使いやすい便利な機能かどうか」

「値段が適正かどうか」

で決まるということです。


ところで、本日付の日経MJ(2007/01/29)には、
高田社長のインタビュー記事が掲載されていますね。

ジャパネットたかたは、2004年の顧客情報流出事件の際、
1月間半の販売自粛を行った影響で減収減益になりました。

しかし、直近の2006年12月期には年商1千億円を突破。
再び成長軌道に乗ってます。

長崎に本社を置く地方企業が、
全国の消費者の心をこれほど掴むことができたのは
すごいことですよね。


余談ですが、通販企業の大手は地方、
つまり関東以外で誕生していることが多いように思います。

これって何か理由があるのかなと気になっていたんですが、
神戸に本社のあるフェリシモについての記事
(日経ビジネス、2007/01/29)の中にその答えを見つけた
ような気がしました。


それは、同社のカタログを精読している地方在住の
フェリシモの顧客が口にした一言です。

「私たちにとって、市販されている女性誌なんて
 生活に関係のないことばかりです。東京のレストランや
 衣料品のことが出ているけれど、地方に住む私たちには
 何の関係もない。でも、このカタログは違うでしょう」


全国をターゲットにする企業の本社が東京にあると、
地方にすむ消費者の心理やニーズが見えなくなってしまうんじゃ
ないでしょうかね?

投稿者 松尾 順 : 13:38 | コメント (1) | トラックバック

ニューロマーケティング:コークvsペプシ

今週もシンプルマーケティングを取り上げてく予定ですが、
ちょっと「ニューロマーケティング」の話題を。

情報源は、

「こころのサイエンス」
(日経サイエンス2006年12月号臨時増刊)

の記事です。


ニューロマーケティングとは、一言でいうと、
最先端の機器(fMRI:機能的磁気共鳴画像法)などを用いて
脳の活動を測定することで、消費者心理や行動の仕組みを
脳神経科学の視点から解き明かそうとする試みです。
(うーん、説明が難しい・・・)


2004年、米ベイラー医科大学の神経科学者、
P・リード・モンタギューのグループがある実験を行いました。

それは、コカ・コーラ(コーク)とペプシに対する消費者の好み
をfMRIを使用して把握したのです。

具体的には、実験の被験者にコークかペプシのどちらか
わからない、ラベルなしの飲料を渡し、
飲んでいるときの脳の活動をfMRIで調べました。

この実験の結果では、
被験者の反応にはどちらの飲み物も差がありませんでした。

いずれも、脳の「腹側被殻」という部位で強い反応を
引き起こしていました。満足感に関わる部位です。


次に、コーク、またはペプシのラベルのついた飲料を渡して、
同様の測定を行いました。

この結果では、なんと
4人に3人が「コーク」の方がおいしいと答えたのです。


fMRIの画像を見ると、最初の実験と同様、「腹側被殻」は
どちらも同じように活性化していました。

ところが、コークがおいしいと答えた被験者の脳では、
コークを飲んでいるとき、「内側前頭前野」という部位も
活動していました。

この部位は、複雑な思考や評価、自己イメージにかかわる
分野です。

つまり、純粋な「味覚」の評価ではコークもペプシも
同じでしたが、イメージ連想がコークの味覚をより
「おいしい」と感じさせていたということです。


モンテギューの結論。

「コークの広告メッセージは長年をかけて消費者を感化し、
 個人の選択に関わる脳の領域に影響を与えたのだ」


ブランド名によって、消費者の製品に対する評価が変わることは、
これまでの様々な調査でもわかっていたことでした。

ただ、脳の活動を測定することによって、
目に見える客観的な現象として「実証」できるという点で
ニューロマーケティングの意義は大きいですよね。


今後のニューロマーケティング研究の進展については、
注意深くウオッチしていこうと思ってます。

投稿者 松尾 順 : 12:00 | コメント (7) | トラックバック

生体認証の負の側面

みずほ銀行のATMに行くと、最近
見慣れない装置が操作画面のそばにありますよね。
(他の銀行でも、似たような装置を見かけます)

最近といっても、春先くらいには設置されていましたけど。


どうやら、日立製の「指静脈認証装置」のようです。

すでに使えるのか、
それとも利用開始を待っているのかよくわかりません。

通常の利用には差し支えないものの、
わけのわからない装置をいきなり設置しておいて、
なんの説明もないのは銀行らしい「不親切さ」ですね。


さて、上記のような装置は、いわゆる

「生体認証」

の仕組みですね。

一人ひとりで異なるパターンを持つ人体上の特徴を
本人認証のための「パスワード」として利用するものです。


生体認証に使う特徴として古典的なのは「指紋」ですが、
日立の装置は「指静脈」ですし、「手のひら静脈」を
使う銀行もあります。

映画なんかでよく見ますが、
金庫やサーバールームなどへの入室に使うのは
「眼球の虹彩」が多いですよね。


この生体認証、基本的に偽造が困難で、
また本人しか持ち歩けない(体の一部なので)という点で、
パスワードよりも本人認証が確実にできるというメリットが
あります。

近年、悪質な偽造や詐欺、盗難が相次いでいて、
銀行としては「預金者保護」のためには、
「生体認証」を導入するしかないという判断なんでしょう。


ただ気になるのは、生体認証のメリットのみが強調されて、
その負の側面についての情報があまり伝わってこないことです。

専門家ではないので体系的な議論はできませんが、
最低でも、3点、生体認証導入に伴って解決すべき課題が
思い浮かびます。


1.万が一偽造されてしまったらどうしましょ?

困難とは言え、偽造は不可能ではありません。
生体認証に使われる人体上の特徴は唯一無二であるために、
偽造されてしまうと、逆に手の打ちようがありません。

従来のパスワードなら、すぐに変更することで対応
できますが、生体認証ではそれができないわけです。

そういえば、映画「マイノリティレポート」では、
主演トムクルーズの眼球をくりぬいて棒に刺し、
セキュリティを突破してましたね。


2.身体障害者の方はどうすればいい?

何らかの理由で指や手がない方への対応はどうするので
しょうか。従来のパスワードも併用できるのなら、
そもそも生体認証の導入の価値がさがりますよね。


3.外出が大変な高齢者の方はどうすればいい?

寝たきり、あるいはそうでなくても足腰が弱って外出が
大変なお年寄りは、家族や、信頼できる介護者の方に
通帳とカードを預けて、お金の引き出し・振込みなどを
お願いしている人が多いと思います。

生体認証で本人しかお金をおろせないとなったら、
上記のような高齢者はどうしたらいいんでしょうか?


もちろん、以上のような課題に対する解決策を
いろいろと考えられているんだと思います。

ただ、生体認証にかかわる

・メリット
・デメリット
・対応策

といったことを対外的にきちんと説明して欲しいですよね。


金融業界もいまだ消費者不在の自己中心的思考が強いように
思います。

投稿者 松尾 順 : 13:01 | コメント (0) | トラックバック

体験情報の価値

先週後半は福岡出張後、福岡・八女の実家に立ち寄り、
さらに、「吉野ヶ里歴史公園」に足を伸ばしてみました。


「吉野ヶ里歴史公園」

同公園は佐賀県にありますが、実家からは車で40分の近さです。


「吉野ヶ里」といえば、
弥生時代の大規模な遺跡発掘現場として有名ですよね。

ただ、そこが歴史公園として整備されていることは
恥ずかしながら知りませんでしたし、
それほど歴史に対して強い関心があるわけではなかったので、
たいして期待してませんでした。

でも、行ってみたらなかなか良かったんですよ!


広大な敷地に点在する、復元された当時の集落跡。

物見櫓や竪穴住居、高床式住居などが、
合計で十数棟建てられており、なかなか壮観です。

以前、1棟だけの竪穴式住居などは見たことがありますが、
村として大規模に再現されていると迫力が違いますね。

「当時の暮らしはこんなだったんだろうな・・・」

などと、当時の様子がリアルにイメージできて
とてもわくわくします。


また、当時の建物が見られるだけでなく、集落の広場では、
弥生時代の服装をしたボランティアガイドの人たちが
焚き火をしています。

そして、集まってきた来客に串に刺した里芋を
ふるまっていました。

めいめい自分で、火にあぶって食べるのです。
ちょっと肌寒い日だったので、ほおばると
あったかくて甘くて、とてもおいしかったです。


おや、あちらでは、当時の素朴な機織り道具を使って、
植物を原材料にした布を織っています。

1枚の布を織るのにどれだけの時間がかかったんでしょう。

当時の農耕の道具として使われていた、
木製のすき、くわを作っているおじさんもいました。

さすがに、木を削る道具は現代の「かんな」を使っている
という、時代考証を無視した矛盾がありましたが(笑)


もちろん、同公園には、
発掘された土器などを展示してある展示室もあります。

また、なぜだかディスクゴルフのコースがあり、
無料で遊べるそうです。バーベキューができるエリアも
ありました。

今回は年老いた両親と行きましたので
どちらも体験できなかったですけど・・・


「吉野ヶ里歴史公園」は、名前は固いですが、
自然がいっぱいの広大な公園で開放感を味わえるし、
家族連れで来れば、歴史の勉強、加えて
誰でもできる軽いスポーツ(ディスクゴルフ)、
そして、みんなでわいわいいいながら楽しめる
バーベキューと、一日を満喫できそうです。

公園の近くには、「吉野ヶ里温泉」もあります。
車で5分ほど。こちらも入ってみました。

中は、いわゆる「スーパー銭湯」です。
本物の温泉に入れて、一人500円でゆっくりできます。
まだできて3年目でしたので、きれいで清潔でした。

今度来るときは、歴史公園で一日遊んで汗かいて、
温泉で汗を流してさっぱりのコースがいい感じです。

今度は自分の家族連れで来ようと思いました。


さて、上記に書いた私の「体験談」、
ちょっとライターっぽいわざとらしい書き方をしてますが、
吉野ヶ里の良さが多少は伝わったでしょうか。


一方、吉野ヶ里歴史公園のホームページを見てください。
なかなかよくできたサイトです。特に問題はありません。

しかし、私が紹介したような楽しさや面白さは
あまり伝わって来ないですよね。


なぜでしょう・・・?


情報は客観的で、かつ構造化、体系化されています。
ですから、情報のわかりやすさや検索性は確かに優れたものに
仕上がっています。

しかし、しょせんは、

・そこに何があるのか
・何ができるのか

といった「機能的な価値」しかほとんど表現されていません。

肝心の、

・そこにいけばどんないいことがあるのか(便益価値)
・どんな気持ちになれるのか(情緒価値)

は伝えようとしていない。

ただ、サービス提供者側がこうした、
ユーザーが本当に知りたい価値を伝えることは難しいですよね。

わざとらしいし、へたをすると自画自賛になってしまいますから。


だからこそ、ユーザーの体験情報に価値があるわけです。

ユーザーによる生の体験情報は主観的で、構造化も体系化も
されていません。でも、人それぞれながらも、何がよかったのか、
どんな気持ちになったかがちゃんと伝わる。

同じ立場のユーザーの共感を得ることができますよね。


カルチュア・コンビニエンス・クラブ(TSUTAYA)の
代表取締役社長、増田宗昭氏は次のようなことを言っています。
(日経情報ストラテジー、JULY 2006)

“僕が理解しているWeb2.0はこういうことです。
 今や世の中に食べたり見たりという体験情報が存在していますが
 実は消費者はこうした情報にこそ価値を置いています。(中略)
 体験情報が世の中を動かす社会になっており、それを実現する
 技術がWeb2.0だと思います。”


体験情報、これは要するに「口コミ」です。

ネット以前は、ごく近い存在の人たちからしか体験情報は
得られませんでした。

たとえば、直接「吉野ヶ里歴史公園」に行った話を聞ける人は
あなたの周りにそうはいないはずです。(笑)

しかし、私たち消費者は、ネットに行けば多種多様のあらゆる
体験情報があふれていることを知っています。


そして、この体験情報こそが、
最も「行動するかしないか(購入判断など)」に参考になる
役立つ情報であることも私たちはわかっていますよね。

投稿者 松尾 順 : 09:28 | コメント (0) | トラックバック

女の人は鼻毛をどうやって処理しているのか?

「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」
(北尾トロ著、幻冬舎)

という奇妙なタイトルの本があります。

私の事務所の積読・未読本の山の中にも1冊あります。
今となってはなぜこの本を買ったのかよく覚えていません。(笑)


ま、確かに、ミーティングなどで目の前に座った人の鼻穴から
鼻毛がのぞいていたら、どうにも気になってしまうものですが、
面と向かって「出てますよ」とは言えないものです。

そんなわけで、私なんかも鼻毛切り用小さいハサミを
使って時々「処理」してるんですが・・・


「そういえば、女性だって鼻毛伸びるよなあ、
 どうやって処理してるんだろう?やっぱり小さいハサミ?」

男性でこんなギモンを持った人もいるかもしれません。

男でも、あそことかとかあそことかあそこの毛は、
ナショナルの「ソイエ」のような、バリカンに似た脱毛器を
使うことは知ってますが、まさかあれを鼻につっこんだり
してないでしょう。(ゴリラくらい鼻穴が大きくないと
物理的にムリ)

いわば、鼻毛処理は、
隠された女性行動のひとつであったわけです。(オオゲサ)

しかし、データ捕捉が容易なネット販売によってその秘密が
明らかになろうとしていますね。


アマゾンのヒット商品ランキングで、
05年度の「ホーム&キッチンストア」部門の年間第一位は
なんと、「鼻毛カッター」だそうです。
今年、06年度の上半期でも同部門約4万点の中で一位に輝いて
います。(Mainichi Interactive Mail、2006/09/12)

鼻毛カッターの05年度の出荷台数は、電気かみそりの780万台に
対して50万台程度だということで、全体としてみればそれほど
需要が大きいわけではない。どうやら、オンラインでのみ、
やたらと売れているのです。

そこで、このヒットの原因を探ってわかったのは、
「鼻毛カッター」のオンライン購入者には「女性」が多いらしい
ということ。

その理由は、家電店の店頭で、女性が「鼻毛カッター」を
買うのは恥ずかしいから。

鼻毛カッターは、元々男性向けのイメージがありますが、
オンラインでは女性も気兼ねなく買えるので、
その分販売量が押し上げられているということらしいです。


アマゾンの同部門担当者によれば、
家電店では、たいてい隅の方にあって見つけにくく、
かといって店員に聞くのもためらわれるけれど、
アマゾンのランキングで「鼻毛カッター」を見つけた女性は、

「こんなのがあるんだ!」

とこうした商品の存在を知り、購入者の感想コメントを読んで
買ってしまうのだろうと分析しています。

実際、コメントの文面から推測すると、男女比率は6:4くらい
だと考えられるそうです。


ネットのおかげで、女性のニーズが顕在化しただけでなく、
ネット特有の現象ですが、

「売れるからますます売れる」

という循環に「鼻毛カッター」も入っているようですね。


ところで、興味深いのは商品自体のコンセプトの変化です。

第1号の鼻毛カッターは90年代に日立から発売されました。
当初は紺色で四角いデザイン、あくまでも男性向けでした。
(そういえば、当時、私も何かでもらって使ってました・・・)

しかし、02年、「女性も使うのでは」という家電量販店の
バイヤーの提案に基づき、「男女兼用」をイメージした
現在のシルバーと水色のデザインに変更されています。

そして、日立では、さらに「女性向け」を開発しようとした
そうです。

ところが、今度はバイヤーに止められた。

「女性用は『自分が使う』とバレるから、店では売れない」

と指摘されたのだそうです。

このバイヤーは、女性心理をよく理解していたんですね。


この話で思い出したのが、同じくちょっと恥ずかしい系商品の代表、
毛生え薬のベストセラー「リアップ」の女性版(リアップレディ)
の売れ行き不振です。

「日本発、女性用発毛剤誕生」

と銘打って発売された「リアップ・レディ」ですが、
期待に反して売上げの伸びがもうひとつなんですよね。


女性向けの発毛剤のニーズは確かに存在しています。
しかし、やはり店頭では買いにくいですよね・・・
(そうですよね、女性の皆さん?仮に自分がそんな悩みを
 抱えていたとしたら)

「リアップレディ」は、対象者である女性の購買心理を十分に
読みきれていなかったと言えるのかもしれません。

鼻毛カッターの事例を参考にすれば、
通販に力を入れれば、もっともっと売れるはずです。
(医薬品ですからちょっと壁があるかな)

投稿者 松尾 順 : 10:10 | コメント (0) | トラックバック

量が質に転化する時

たまに新聞折込で入る「幸運の○○○」チラシ。

財布やお守り、ペンダント、○○○に入るのはいろいろ
ありますが、紙面には成功者のコメントがテンコ盛りですよね。

「この財布のおかげで1億円の宝くじが当たりました!」
「このリングを手に入れてから、毎日もてまくりです!」

などなど。

一応「成功者」の顔写真入りのことが多いですし、
万札がはみ出している財布を持っていたりして、
シズル感があります。(笑)


しかし、どう考えてもイカサマですよね。
全部が全部、コピーライターの作り話であることは
まず間違いありません。

それでも、不思議なことに、何十もの成功コメントを見ていると
なんとなく信じたくなる気持ちが湧いてきます。

もし、経済的に厳しい状態にある人なら、
わらをもつかみたい気持ちでしょうから、思わず注文してしまう
ことでしょう。おそらく騙されていると気づきながらも・・・


さて、普通、出所が不明の怪しい情報を簡単に信じることは
ありませんよね。ところが、そうした情報を10も20も提示
されたらどうでしょうか?

心理学の実験によれば、たとえ信頼性の低い情報であっても、
多数の情報にさらされると、その情報を受け入れやすくなることが
わかっているそうです。

「うそ」は1個でも、100個でも、1000個でも「うそ」のはずですが、
人間心理は不思議なものですねぇ。情報量が増えると、
「うそ」でさえ「真実」として捉えるようになってしまう。

すなわち、量が質に転化する時があるというわけです。

これが、「幸運の○○○」のやらせチラシが成立する背景に
あります。


インターネットでも、
例えばアマゾンなどのオンライン書店の書評には、
おそらく内部関係者(著者本人かも)によるものと思われる
自画自賛コメントが並んでいるものがありますよね。

でも、怪しいなあ、やらせ・さくらだなあ、とわかっていながら、
それなりに参考にしてしまうのが悲しい人間の性(さが)。

こうした心理傾向を自覚することで、
うかつにだまされないようにしたいものです。


一方、マーケターとしては、

口コミ、利用者の声といった類の情報は、
多ければ多いほど効果が高い

ということが言えますよね。
ですから、この知見をうまく施策に反映させるべきでしょう。

もちろんうその情報を捏造してはいけません!

投稿者 松尾 順 : 10:32 | コメント (0) | トラックバック

地縁の再現としてのSNS

今週はお盆ウィークでしたから、
実家に帰省されていた方もいらっしゃると思います。

あなたのふるさとはどんなところですか?

地方でも、福岡市や札幌市のような大都市に住んでいれば、
東京あたりとさほど違いはないでしょうけど、
そうした大都市からちょっと外れると、
昔ながらの集落的なつながりの中で生活をしてるところが
まだまだありますよね。


集落のほぼ全員と顔見知り。仲のいいお隣さんも、疎遠な
お隣さんもいるけど、冠婚葬祭ではお互い助け合う。

塀越しにそれぞれの家の動向がしっかりチェックされているし、
近所のおばさんたちが、あちこちで長々と油を売るおかげで、
「誰がこうした、ああした」という情報はあっという間に広まる。
(私の実家の集落をイメージしながら書いてます・・・)


こうした集落は、「地縁」と呼ばれるコミュニティですよね。

やたらお節介な人がいたりして、たまに
濃い人付き合いがわずらわしいと思わないでもないけれど、
所属欲求を満たしてくれる安心できる場所。


最近、ミクシィのようなSNSに同じ安心感を感じることがあります。

SNSでつながっている人たちは、
すごく親しい人もいるし、それほどでもない人もいるけれど、
基本的に顔見知り。お互い、相手の日記をのぞくことで
相手の様子を垣間見ることができる。

もちろん、つながっている人たちは、
それぞれ自分のネットワークを持っているから、
そのネットワークを辿っていけば、自分とは関係のないところに
出てしまうセミクローズな世界です。

でも自分を起点としたネットワークの中では、
わずらわしいことが起きることもあるけれど、
わけもなく戻りたくなってしまう、そんな空間に思えるのです。

あなたはどう感じますか?


そして、まだ仮説に過ぎませんが、
SNSは、都会人ほど必要性が高いオンラインサービスでは
ないかと思うのです。

なぜなら、都会人の多くが、自分の故郷、
すなわちリアルな「地縁」から離脱してしまっているから。

それによって失われた安心感を回復させてくれるのが、
「SNS」になっているように感じます。

今までも各種のバーチャルなコミュニティモデルが提唱され、
実際に運営されてきましたけど、リアルな「地縁」に
最も近いのが「SNS」のように思います。


20年も前ですが、養老孟司さんは次のようなことを
書いているんですよ。(「脳の見方」、ちくま文庫
ちょっと長いのですが、引用します。

---------------------------------------------------
動物園で、狭いところにタヌキをたくさん飼う。
そうすると、野生状態で持っている縄張り意識を失う。

自分ダヌキが、始終、他人ダヌキに出会う。
そのつどまともに反応していたら、タヌキだって疲れる。
身がもたない。仕方がないから、現在の環境に適応して
タヌキも縄張りを捨てる。

都会の生活は、縄張りのないタヌキを量産する。
一日に出会う人数が増えすぎたから、ヒトもタヌキも、
相手の各個人(個体)に対する関心を薄めざるをえない。
電車に乗れば、まわりは一期一会ばかりである。
・・(中略)・・

現代人の孤独は、人疲れの孤独である。
あるいは、縄張りを失ったタヌキの孤独である。
モンテーニュには、帰る館と領地があったが、
あるべきそうしたものが失われた状況を、
いまでは孤独と呼ぶことがある。
----------------------------------------------------


都会人が失ってしまった縄張り(意識)を取り戻し、
孤独感を埋めてくれるツールが20年後の今、
ようやく登場したといえるのかも・・・

投稿者 松尾 順 : 10:40 | コメント (3) | トラックバック

最強の購買理由・・・大義名分

お宅では、食器洗い機(食洗機)を利用してますか?

食洗機って、実際使ってみると便利ですし、
手洗いよりも水の使用量が節約できるという実利もあります。


でも、なんとなく、

「自分で手洗いできるのに何万円もする食洗機を購入するなんて!」

と購入を躊躇する気持ちがどこかにありませんか。

食後の食器洗いの時間が浮いて別のことが出来るようになるし、
かつ、水道代も安くなるということを考えると、
食洗機を購入するのは合理的な判断であるにも関わらず、
人間心理とは不思議なものです。

おそらく、利用者である主婦に、
「手抜き」とか「らくしすぎ」といった、
ちょっと後ろめたい感情が湧くからでしょうね。

我が家では、妻が出産のために実家に戻っていたころ、
1人暮らしで食器洗いは面倒だと、私が勝手に購入したのですが、
そうでもなければ、食洗機をいまだ利用していなかったかも
知れません。


さて、食洗機市場は、2003年度に急成長したものの、
04年、05年と2年連続で前年を下回り普及が停滞気味でしたが、
今年6月に松下電器産業が発売した製品「NP-BM1」

が好調な売れ行き。
発売以来、食洗機ランキングでずっとトップを独走しており、
市場回復の起爆剤になるのではと期待がかかっているそうです。
(日経産業新聞、2006.08.08)


この新製品成功の秘密は、ひとつには
懐に余裕のある中高年層ではなく「若年層」に
ターゲットをシフトしたこと。

つまり、まだ十分に開拓されていない市場であった
年代を狙ったわけです。


もうひとつは、ターゲットとした若年層に対して、

「新・子育て家電」

というキャッチコピーを前面に出して、

「食洗機を使えば、子育てに回せる時間が増える」

という「大義名分」を訴求したことです。


これは、食洗機という製品がもたらしてくれる本質的な
「ベネフィット」をおそらく初めて明確に伝えた事例
じゃないでしょうか。


私がウオッチしてきた限りでは、これまでの食洗機は、

・サイズが小さい
・ごはんのような粘つく汚れが落ちる
・利用水量が少ない
・高温で汚れを落とす
・洗剤ではなく塩で汚れが落とせる

など、機能や性能といったスペック面の特徴を伝えるものが
ほとんどでした。

しかし、

「結局、食洗機を使うことは、私(ユーザー)に
 どんな幸せ(Peace of Mind)をもたらしてくれるの?」

という消費者の根本的な問いに対する答えを伝えていなかった
わけですね。

たまに、

家事が楽になる、食器洗いの時間が浮く

といったベネフィットを訴求した製品もありましたけど、
これは本音としては共感できても、主婦の感じる「後ろめたさ」
とのバッティング、ジレンマが生じていました。

その点、今回の松下の「子育てに効く!」というメッセージは、
「育児」という、誰もが否定できない最強の購買理由・・・
「大義名分」を打ち出した点が実に巧妙ですね。


松下電器産業は、このところ様々な製品カテゴリーで
ヒット商品を連発していますが、本当の意味で、

生産者志向から、消費者志向への発想転換

に成功したのかも知れません。


例えば、エアコン市場でも、松下の新製品

「新・フィルターお掃除ロボットエアコン」

が、ダイキン工業を抜いてトップシェアを獲得しています。

この製品の場合、現時点では他社が追いつけない最新技術
(フィルターが自動で清掃される機能)が最大のウリであり、
面倒なフィルター掃除(どちらかと言えば、これはダンナの
役割じゃないでしょうか)の手間・時間を省く(Time Saving)
という本質的なベネフィットを

「10年、さよなら、お掃除。」

という、やはり消費者のハートにササるコピーで
訴えることに成功しています。


近年のエアコン市場は、愛らしいキャラクターの「ぴちょんくん」
のおかげでダイキン工業のエアコンが独走してきてましたが、
さすがに、いくら可愛くても「ぴちょんくん」がフィルター掃除
をしてくれるわけではありませんし、
本質的なベネフィットを得られる松下の製品には
勝てなかったのでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 12:23 | コメント (2) | トラックバック

オンライン・ローボール・テクニック

Skype、使ってます?

(知らない方のためにちょっとだけ)
Skypeは、無料の通話ソフトです。いわゆるインターネット電話。
SkypeがインストールされているPC同士なら、
世界中の誰とでも無料で何時間でも話せます。


Skyepは音質がクリアですし、使いやすいこともあって
あっという間にユーザーが拡大しましたよね。

私もたまに使っています。


さて、Skypeのビジネスモデル。

Skype同士の通話は無料とすることで登録ユーザーを増やし、
次に、登録ユーザーが、Skypeから普通の電話にかける場合の
通話料を有料にすることで収益を得ています。

このSkypeから普通の電話にかけることのできるサービスは、

「Skype Out」

といいますが、この利用が進まないことには、
Skypeは儲からない・・・


とうわけで、日本では先月(6月)に

Skype Outのトライアル(お試し)キャンペーン

をやっていましたね。
言うまでもなく、キャンペーンの目的は「新規ユーザーの獲得」。


Skypeユーザーの方は、次のような件名のキャンペーン告知メールが
届いたのを覚えてませんか。

「60分間無料通話クレジットを今すぐゲット!」

本文のキャッチコピーは、

“普通の電話へ1時間タダでかけられる”

となっていて、続く本文の説明は次のようなものでした。

------------------------------------------------------------

普通の電話への通話ができるクレジット、なんと1時間分を差し上げます。
Skypeから普通の電話への通話発信はSkypeOutと言います。

何の裏も難しいこともありません。2006年6月30日までにSkypeから
普通の電話・携帯電話へ1回以上通話を発信するだけで、
その後電話をかけるときに使える1時間分のSkypeクレジットが自動的に
無料でアカウントへ追加されます。

------------------------------------------------------------

「おっ、これはいいじゃん、早速ゲットしなきゃもったいない!」

なんて喜びいさんでSkypeを立ち上げた方がどの程度いらっしゃるか
わかりませんが、その人たちは結構がっかりしたんじゃないでしょうか。


Skype Outをともかく6月中に1回利用すればいいんだね!
と思って、Skypeの画面をクリックしていくと、

「skypeクレジットの購入画面」

につきあたります。

どうやら、通話料金を前払いしなければならないようです。
最低料金は10ユーロ(日本円で1500円程度)です。

つまり、キャンペーンの無料通話1時間分をゲットするためには、
1500円分の支払いがこちらに発生するということになります。


「なあんだ・・・(ガッカリ)
 やっぱり‘裏’があるじゃないか!!」


もちろん、Skype Outをフルに活用するのであればいいのでが、
Skypeクレジットには有効期限がありますので、
こちらが払った1500円分と無料通話分を使い切るだけの時間分
とても利用しそうにないなと感じた方が多いんじゃないでしょうか。
(1分当たりの通話料金が安いだけに、使いでがありそうですし)


さて、このキャンペーンで問題なのは、

無料通話1時間分をゲットするためには、
ユーザー側に10ユーロの支払いが発生することを
明記していなかったことです。

キャンペーンメールにも、Skypeの手続き画面にも
そうした説明は一切ありませんでした。

このため、期待を持って手続きしようとしたユーザーを
ある意味、「あざむく」ようなコミュニケーションになっています。


このような、最初に魅力的な条件だけを提示して相手をその気に
させた後で、相手にとってあまりうれしくない条件をおもむろに
提示する説得技法を

「ローボール・テクニック」

と呼びますが、

Skypeの今回のキャンペーンは、
意識的にこのテクニックを使ったのかどうかはともかく、

「ローボール・テクニック」的コミュニケーション

になっていますね。


ローボール・テクニックは、
営業マンのリアルなコミュニケーションでよく利用されて
きました。

ローボール・テクニックは、上述したように
相手の裏をかくようなところがあり、
冷静に考えてみるとおかしいことがわかるはずなんですが、
言葉だけのコミュニケーションの場合には、
結構営業マンのペースにはまってしまいがちです。


しかし、オンラインの場合、文字情報ベースですので、
読み手がじっくり検討する時間がある。

このため、そうそう簡単には裏をかけないわけです。

また、裏をかけないどころか、怒りや落胆といったネガティブな
感情を与えてしまいますので、ブランドイメージ低下につながる
可能性を持っています。

どうやら、

「オンライン・ローボール・テクニック」

はあまり通用しないと考えたほうがよさそうです。


糸井重里氏ではないですが、

「正直が最大の戦略」

だと思います。


なお、上記のSkypeのキャンペーンは
あまり成果を上げなかったのかわかりませんが、

今月は、

「普通の電話への通話10分を無料プレゼント」

のキャンペーン・メールが来ました。

でも、どうやって手続きすればいいのかよくわかりませんでした。
説明が不十分でした。


余計なお世話ですが、Skypeのマーケティング、大丈夫?

投稿者 松尾 順 : 12:43 | コメント (0) | トラックバック

エロ本と同じくらい買うのが恥ずかしかったもの

ここで私のちょっとした秘密を明らかにします。
(「秘密」というほどたいしたことはなくて、
 実は、書くのが恥ずかしいだけなんですけど・・・)


私は甘いものが好きで、
毎日のように「シュークリーム」や「大福」、「アイスクリーム」
などを近くのコンビニ(サンクス)で買っています。

また、別のコンビニ(AM/PM)では、しばしば
ソフトクリームをレジで頼んで買います。
「コーン」を指定して。

これだから、ダイエットも続けなきゃいかんのですが・・・(笑)


さて、私と同じ年頃の甘いもの好きの貴方(男)、

そんな貴方なら身に覚えがあると思いますが、レジに並んでいる時、

「このシュークリームや大福は、子供に買ってきてと
 頼まれたものなんですよ・・・」

と無意味な弁解を心の中でしていませんか。してますよね。

いい年をしたオヤジがシュークリーム食べんのかよ、

なんて若い店員に思われるのが恥ずかしい。

ですから、いかにも「これは私が食べるのではありません」
という顔つきをしたいわけですよね。

私はそうです。もちろんこの弁解は大ウソで、
事務所で一人密かに楽しんでいるんですが。


甘いもの系のお菓子は、固定観念として「女子供の食べ物」
というイメージを大方の男性(特に中高年)は持っています。

でも、やはり大人になっても好きなものは好き。
食べたいものは食べたい。
ですから、多少の恥ずかしさは我慢できます。

しかし、さすがにパッケージに幼児の絵が描かれた「ビスコ」
は買えません。心の中の弁解も通用しないんですね。


さて、こんな男性の隠されたニーズを掴んだのが、
「オフィスグリコ」でした。

これまでも何度か取り上げてきてますが、
「オフィスグリコ」は、富山の置き薬方式の職域お菓子販売です。

手で抱えられるくらいの小さめのプラスチックボックスに
お菓子が入れてあります。お菓子が欲しい人は、
100円玉をカエルの貯金箱のようなものに自分で投入し、
好きなお菓子を取り出す仕組みです。

このビジネスモデルでは、
お菓子の補充や代金の回収はすべて人手でやっていいます。
大変な労働集約型業務ですので事業開始時は採算性が疑問視
されましたが、やはり

「規模の経済」

の考え方が通用したようです。


現在、事務所に置かれているボックス総数は、
69000台(2006年3月松)です。年商約20億円。

ここまで台数が出ると、

1ボックスあたり1日100円(お菓子1個分)の売上げ

で採算が合うそうです。

グリコの「置き薬」ならぬ「置き菓子」は
なんとも原始的な販売方法ですが、
結構すごいですよね。


実は、このオフィスグリコ、当初のターゲットは

「OL」

でした。

グリコでは、

「男性より女性の方が、お菓子が好きなはず」

という常識(実は検証されていない「仮説」に過ぎない)
をベースにビジネスモデルを考え、事業展開したわけです。


ところがいざフタを開けてみると、購入者の70%が
男性。しかもそのコア層は30-40歳だったそうです。

彼らは、いままでコンビニではエロ本を買うくらい
お菓子を買うのは恥ずかしかったのです。

一方、事務所では空腹を我慢しながら
残業を続けていることが多い。

そこに、「オフィスグリコ」は救世主のように登場した。
(オオゲサですが)

これなら、大好きな「ビスコ」だって、こっそり買える!
家で食べたら、カミサンや子供に笑われてしまうけど、
自分のデスクならそんな心配もない。ちょっと空腹を
満たすという正当な理由がある。


要するに、「オフィスグリコ」は、
残業続きの男性社員の心を掴んだのです。

グリコさん側としては意図せざる結果でしたが。


よく、

「恥ずかしい系商品」

の典型として、エロ本などのセックス関連商品や
「ズラ」などが取り上げられますよね。

でも、ユーザーの属性や状況によっては、

「お菓子」

でさえ恥ずかしいものになりうるという点は、
マーケティングのヒントになりそうじゃありませんか?


*今回の内容は、I.M Press 2006-7の記事を参考にしました。

投稿者 松尾 順 : 11:04 | コメント (2) | トラックバック

リセット願望?

いまお使いの手帳、以前からずっと同じものですか?
それとも毎年、変えていますか?

まあ、どちらにせよ手帳を新調するのは、
年末か、年度末の3月ですよね。普通は・・・


ところが最近は、年末でも年度末でもない時期に、

「今月から始まる手帳が欲しい」

という客が増えてきてるようです。(日経MJ、2006.06.19)


そこで、渋谷ロフト店では夏場の6-8月も手帳売場を設置し、
「5月始まり」「7月始まり」の手帳も開発して販売してみたら
予想を上回る売れ行き。


面白いのは、
購入者の4人に3人が「20-30代の女性」である点です。

「1月から使い出した手帳が使いづらくて・・・」
「携帯を手帳代わりにしていたが不便なので・・・」
「手帳を変えて心機一転がんばろうと思って・・・」

など、購入動機は様々のようですが、基本的には、

「いったんリセットして、白紙状態から再スタートしたい」

という「リセット願望」を充たす儀式の道具として
買われているんでしょう。

女性の場合、失恋すると髪を切ったり、旅行したりして、
一区切りつける儀式をやりますよね。

それと同じではないかと!


男性の場合、やけ酒とか飲んでも、
それは忘れるためではなくて、うじうじと思い出すためのもの。
リセット願望は、女性と比較すると非常に低いように思います。

だから、例えば夏に転職したからといって、
気分一新のために手帳を新調したりすることはまずないでしょう。
私も夏頃の転職を何度もしましたが、手帳を買い換えたことは
ありません。

正直、男である私には、年の途中に手帳を買い換える心理は
あまり理解できません。

手帳ひとつとっても、「おんなごころ」と「おとこごころ」
の違いが読めるように思います。


余談ですが、日経MJの記事によると、
女性に人気の手帳は「ほぼ日手帳」だそうです。

糸井重里氏が主宰する「ほぼ日刊イトイ新聞」から生まれた
オリジナルの手帳。


いろいろと工夫されていて使いやすそう。
実は私も、2006年度版を購入しようかと考えたんですが、
今の手帳に慣れているせいか踏み切れませんでした。
結構いい値段しますし。(ナイロンカバー製のもので1冊3500円)

で、この手帳を担当しているのが、
東京糸井重里事務所の富田裕乃さんということで
コメントが掲載されていましたが、
彼女は、以前勤めていた広告会社の元同僚なんですよ。

ずいぶん前に糸井事務所に転職したことは聞いていましたが、
今も元気にがんばってるのを知ってちょっとうれしかったです。

投稿者 松尾 順 : 10:02 | コメント (0) | トラックバック

あのヒトは、一人じゃない。

これ、コピーライターの仲畑貴志さんの言葉です。

次のようなエピソードがぶらさがってます。
(宣伝会議、2006.3.1)

即席ラーメンの新商品開発のために行った事前調査で、

「減塩ラーメンを選びますか?」

という問いに対して、大多数の「賛同」というデータが出た。
ところが、この数字に背中を押されて売り出した

「減塩ラーメン」

は売れず、

その真逆の価値である

「激辛ラーメン」

が売れたそうです。

これはどう捉えれば良いのでしょうか?


仲畑さんの答えは、

「ひとりの人間の中には、複数の人格価値観が存在している」

ということです。

「減塩ラーメンを選びますか?」

という問いに好意的な反応を示したのは、健康に留意するという、
その人の中の「理性的」な人格。

ところが、即席ラーメンを食べるときのその人は、

「腹へった、とりあえず、なんか食お」

というゆるい価値観で行動しています。

したがって、ゆるい価値観で選択されているラーメンという
商品を理性反応の数字の集積で判断したのが間違い、

だというのが仲畑さんの考え。


まあ、まったくもってその通りです。
調査のやり方、データの解釈の仕方が適切じゃなかった
ということです。


こうした、

消費者の言ってること(調査結果)と
やること(購買行動)は違うじゃん

という悲劇はかなりの頻度で起きているようですが、
そもそも仲畑さんが指摘されているように、

「ヒトは複数の人格を持っている」

という点を忘れがちな点が問題でしょうね。

ただ、「複数の人格」を持っているといっても
精神が分裂しているということじゃありません。

より正確に言うと、

「消費者は市場というステージで様々な役を演じている」

ということです。

会社員、夫(妻)、親、子、ミュージシャン、ゴルファー

など、時と場合、相手との関係によって、
私たちは、まるで俳優のように複数の役を使い分けています。

もちろん、それぞれの立場で、価値観も違う。
購買行動だって変わってきます。

これは専門的には、

「Role Theory」(役割理論)

と呼ばれるものですが、

よく引き合いに出される、

高級車に乗り、100円ストアで買物をする

といった一見、一貫性に欠けた行動に見えることも、
一人の人間が複数の自分の役を使い分けていることを
考えると、なんら不思議ではないわけです。

ちなみに、即席ラーメンを食べる時の自分は、欲望のままに生きる
「素の自分」を演じているんだと考えられるでしょうね。(笑)

投稿者 松尾 順 : 10:24 | コメント (0) | トラックバック

キャリアとは・・・?

週末なのでテーマ、ちょこっとずらします。

以前、あるキャリア論の講座の最終課題として「私の考えるキャリアの定義」というものを
書きました。今まで公表したことがないので、ここで公表させていただきます。
(知恵市場にも掲載)

「である調」で書いた、ちょっと固めの文章でですがご勘弁ください。

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● 関係性視点でのキャリア

 トム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」は、FEDEXの社員である主人公が、
輸送機の事故によって無人島にたどり着き、それから約4年もの間、
たった一人だけの生活を送る姿を描いた、現代版ロビンソン・クルーソーである。

彼は、遭難するまでは、FEDEXという優良企業の中で順調なキャリアを歩んでいた。
残念ながら、運命のいたずらで、それまでのFEDEXでのキャリアは断ち切られたのだが、
では、無人島での生活の4年間というものを振り返るとき、そこには「キャリア」という
意味合いを与えることはできるだろうか?

 私は、また大半の人が同意すると思うが、無人島の生活に「キャリア」という言葉を
あてはめることはできないと思う。なぜなら、無人島で彼は、ただ生きるためにだけの
毎日を送った。雨水をためたり、魚を釣ったりしたが、それは自分が生きる目的だけ
のための行為であり、「仕事」ではない。したがって、彼は、無人島の生活では、
「生きる」という以上の意味を見出すことができなかった。

彼はそのことに絶望し、自殺を図ろうとしたこともある。(結局、自殺できなかったが)
また、彼はまったくの孤独が耐えられず、遭難時に流れ着いたバスケットボールに
自分の血で顔を書き、'ウイルソン'と名づけて、まるで友人同様に扱った。

 「キャスト・アウェイ」はフィクションだが、私には「キャリア」、あるいは「人間」と
いうものについて深い洞察を与えてくれた。それは、人間は、人との関係、
もっと抽象的な概念でいえば「社会」との関係で自分の存在を確かめる、という点
である。

「キャリア」についても同様である。社会、会社、家族、地域、といった、
なんらかのコミュニティ(共同体)における自分の立場・役割という関係性視点に
おいて、初めてキャリアとう概念が意味を持つ。

 ところで、「キャリア」を形成する中核要素である、「仕事」の本質を考えると、
それは、他者(社会)に対して何らかの価値を提供することによって、
その対価を得る行動である。「対価」は通常金銭だが、よく考えると金銭は
交換手段に過ぎず、生活を送るための衣食住娯楽などが、何らかの形で相応に
満たされればよく、必ずしも金銭である必要はない。

つまり、「仕事」とは、「社会」という人の人との関係性の中で、存在を許される
(生かされる)ための価値の創出行動である。もし、周囲の誰に対しても一切の
価値を与えていないにも関わらず、人並みの生活を送っている人間がいたら、
その人はいわゆる'ごくつぶし'と形容される存在である。そう考えると、
「仕事」というものは、会社勤め、自営業だけでなく、専業主婦の家事や
ボランティアワークなど、明確な金銭的対価を得られないものも「仕事」の範疇に
含めることができるだろう。彼らは、社会の中で受け入れられるにふさわしい
価値を創出しているとみなされるからである。

もちろん、いわゆる生活水準の差は、どんな仕事をやるかによって左右されるのだが、
「仕事」(上記のような広い意味での仕事)を通じて、人は社会の中での自分の
存在意義・存在価値を確かめることができる。

●センスメイキングとしてのキャリア

 「キャリア」というものを考える時、「過去に経験してきた仕事、職歴」といった捉え方を
することを否定するわけではないが、現実にキャリアに悩んで、今どうすればいいのか、
という人にとって、より役にたつであろうキャリアの定義というものを私は提唱したいと思う。

それは、「センスメイキング」、つまり、「意味生成活動」としてキャリアを捉えるという捉え方である。
この場合、意味を生み出す主体は、それぞれのキャリアを歩む本人自身であり、今現在、
そして未来に向けて、仕事に対して「意味」を見出していこうとするプロセスがキャリアである、
と定義したい。ここで、「意味」とは自分の存在意義、もっとわかりやすく言えば、結局のところ
「やりがい」ということになる。

ただ、前述したように「意味」は、基本的に人、社会との関係性の中で生まれるものであり、
またそうでなければ、社会の中での存在意義・存在価値を認めることが困難であるため、
外的基準における仕事の意味をまず考える必要があるだろう。これは、

「この仕事を通じて、自分は社会にどんな役割を果たしているのか」

という質問で明らかになる。この場合、「社会的意義」と言い換えることが可能であろう。
そして、大事なことは、この意味(社会的意義)が自分の価値観、つまり内的な基準に
照らした時、価値を認めることができるか、という評価をすることである。これは、

「この仕事は自分らしさを発揮できているか」

という質問に答えてみることでわかる。

そして、外的基準に照らした自分の仕事の意味(意義)が感じられ、それが
内的基準においても、価値あるものだと認めることができる時、あるいはできるように
なった時、今の一瞬一瞬の時間が輝きのある、充実したものとなる。また、未来は
無限の可能性を秘めたものと感じられるようになる。

 このように、私は、キャリアを今と未来に向けた意味生成活動と定義するが、
内的基準に基づくキャリアの意味は、あくまで自らが能動的に見出すべきもの
である点を強調すべきだろう。外的基準たる社会的意義にはある程度の客観性が
あるが、内的基準は主観的なものである。しかし、生きるということは、自分らしさの
発現であり、己の主観を尊重しなければ、自分でいることはできない。

なお、幼少時の経験や過去の仕事・職歴を振り返ることは、自らの過去の行動から、
帰納的に自分の内的基準、つまり価値観を自己認識するというために役立つ。

投稿者 松尾 順 : 18:57 | コメント (0) | トラックバック

理想の自分で行動する

以前、女性衣料品店を経営していた友人から、

「ターゲット顧客が40代だったら、40代に似合うデザイン
ではなくて、30代に似合うデザインで品揃えをする」
(そうすると40代のお客さんが集まる)

と聞いて「へぇー」を連打したことを覚えています。

自分の本当の年齢よりも一回り若い
「こうありたい自分=理想の自分」に基づいて商品を
選ぶのが女性なんですね。


もちろん、女性だけでなく男性も同じようなものです。

ちょっと前に書きましたが、
リクルートのR25の創刊に当たってビジネスマン対象の
調査をやった時、事前のアンケートでは「新聞を読んでいない」
と答えていたのに、グループインタビューでは、
「日経新聞?もちろん読んでいます」
とみんな答えたそうですから。

「虚栄心」でしょうね。
虚栄心が、本当の自分じゃなくて、理想の自分で
答えさせるのでしょう。


さて、女性の服の話に元を戻すと、服は自分をよりよく
見せるという役割を持っているのですから、本来は、
「本当の自分」を直視したほうがいいと思うのですが、
自分の「虚栄心」を満たすことの方が重要のようです。


この人間心理を利用しているのが、

「バニティサイジング」。

米国のアパレル業界で流行っているサイズ表示法だそうです。

この英語、日本語に訳せば

「虚栄心を満たしてくれるサイズ表示」

となりますね。

これは、自社のサイズ表示だけ標準的なサイズ表示法よりも
小さめにするものです。
わかりやすく言うと、標準サイズでは「L」と表示すべき
ところを「M」と表示します。

すると、Lサイズの消費者としてはうれしい。
というのも、このお店・ブランドではMサイズが入るので、

「あれ、私って、やせたのかしら・・・」

と好ましい勘違いをもたらしてくれるからです。

あるいは、本来Mサイズの人は、Sサイズが着れるので、
標準より痩せている自分に対する勘違いの肯定感を
味わわせてくれる。

しかし、よく考えると「バニティサイジング」は、
サギみたいなもんですよね。

でも、おそらく女性(男性)は、仮に
バニティサイジングを採用しているということを知っていても、
よろこんでだまされるんじゃないでしょうか。

だから、米国のアパレル業界も堂々とやってるんでしょう。


日本でも「バニティサイジング」ってやってるところ
あるんでしょうか。

最近は小学女児向けの服を成人女性が着るのが流行ってる
そうですし、きっとどこかやってるメーカーあるでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 07:29 | コメント (5) | トラックバック

「購買動機」を読むのは簡単じゃない


博報堂買物研究所の所長、長谷川宏氏の話です。
(販促会議2006.6)


ある流通の売り場担当の方が、自店の売り場について、

「この売り場に来るお客さまは、自分の買いたい商品を
 パッと手にとって、すぐにレジに向かう。
 ここは、とても買いやすい良い売り場なんだ。」

と語ったそうです。


ところが、お客さまの気持ちを調べると、

「あの売り場は何の発見もないし、とてもつまらない。
 とにかくすぐに立ち去りたい」

というものだったのです。


要するに、

「お客さまがすぐに買うものを決めてレジに向かう」

という行動の背景にある「購買動機」は、

「その売り場にいたくなかったから」

であって、

「良い売り場だから」

ではなかったということです。


長谷川氏は、

「同じ行動、同じ状況を見たとしても、売り手と買い手では
 全く受け取り方が変わってくる。常にその前提に立って、
 売り場のリサーチをすることが必要です。」

と述べています。


私たち人間は、相手の「行動」を手がかりに
相手の「心理」(気持ち)を解釈(推測)する力を持ってます。
(他の動物にはこの力はほとんどありません)

しかし、売り手という立場になると、
不思議と「行動から心理を解釈する力」が低下します。

行動を解釈するための「枠組み」(フレーム)が
ゆがんでしまうようなんですね。


この「枠組み」とは、わかりやすく言い換えると、

自分に都合のいい「思い込み」

のことですが、これが、
お客さまの行動の奥にある本当の心理(購買動機)を曲解してしまう。


そこでよく、「思い込み」を捨て、「買い手の立場」に立って
考えろと言います。

また、買い手としての自分の気持ちを振り返ってみる「内観」
というリサーチ手法もあるのですが、「思い込み」を消し去るのは
なかなか難しい。


そこで、買い手に対するリサーチをやらざるを得ないのですが、
最近、「3秒間動機」という面白い調査があるのを知りました。

調査会社のドゥハウスさんが提供しているサービスです。

「3秒間動機」の調査とは、実際に買う商品を決めている売り場で、
お客さまがどうしてその商品を買うのか、その「購買動機」を探る
ものだそう。

下記の本で詳細が紹介されてました。

「買う気にさせる3秒ルール」
(喜山荘一&ドゥハウス著、中経出版)

投稿者 松尾 順 : 14:39 | コメント (0) | トラックバック

デジタル化する感性

先日、コンガのレッスンを受けているプロのパーカッショニストの
先生との雑談で、最近の音楽業界事情が話題に上りました。

このところCDが売れない状況が続いているので、
相応の販売が見込めるトップアーティストでもない限り、
レコード会社も簡単にはCDを出してくれない。

したがって、仕方なくCDを自主制作するアーティストが
増えているのが現状。また、あえてCD化せずに、Podcasting
のような仕組みを使って、MP3化した音源をオンラインで
バラ売りすることも増えている。


ただ、オンラインでの音楽販売をやる場合に気になったのが、
MP3(あるいは他の圧縮方式)化することによる
「音質」の低下です。

特に、パーカッションを初めとするアコースティックな楽器は
音の厚み・深みが失われてしまいますので、
音質の悪さを理由にMP3プレーヤーを使わない人もいますから。


しかし、コンガの先生によれば、
最近は、MDやMP3プレーヤーからしか音楽を聴かない人が
多くなってきたので、高品質な音、本物の音を知らない。

だから、そもそも「音質の良し悪し」を聞き分けることが
できないので、「音質」はあまり問題とはならなくなってきた、
とのことでした。

デジタルな音に慣らされた耳は、アナログ的な微妙な音の違いを
聞き分ける能力を失いつつあると言えるでしょうね。


同じことは、「目」についても言えるようです。

パソコンモニターやテレビゲームのコントラストの強い、
派手な画面に慣れた目は、階調が豊富で自然に近い写真は、
「地味」に映るため好まれなくなってきたのだそうです。

このため、こうしたユーザー側の感性の変化に合わせて、
印刷媒体の写真は単調になってきている。

つまり、プロに言わせると、
写真の「品質」は、意識的に低下させられているわけです。


とても残念なことですが、自然な音や画像に近づけようとする努力
が徒労に終わるだけでなく、逆にユーザーの受けが悪くなること
さえある。

デジタル化社会が生んだ功罪といえるのでしょうけど、
こうした「デジタル化する感性」に対して、
様々な表現形式を駆使するマーケターも十分な注意を払う必要が
ありますね。

投稿者 松尾 順 : 07:39 | コメント (4) | トラックバック

「いい人」の適職

先週のNHK プロフェッショナル仕事の流儀は、
キリン飲料の商品企画部長、佐藤章さんでした。

ご覧になりましたか?

NHKですから、メーカー名をおおっぴらに出さないのですが、
取材中のミーティングテーブルには「生茶」がずらりと
並んでましたね。

ヒットする新飲料は1000に3つとも言われる厳しい業界の
商品開発の舞台裏が見れてなかなか面白かったです。


さて、佐藤部長が言った言葉の中で一番引っかかったのが、

“売れる商品は、「いい人」にしか作れないんですよ”

というもの。

「いい人」の意味は、周りの人に対する気配りや思いやりを
持っている人ということらしいです。

ははん、なるほど、と私はひざを打ちました。

つまり、相手の気持ちを知ろうとする努力や
相手を喜ばせようとする気持ちがあればこそ、
消費者に「これが欲しかった」と言わせる商品コンセプトが
生み出せるとういことでしょう。

我田引水(笑)ですが、

「いい人」とはマインドリーディング力がある人

ということじゃないでしょうか。

ただ、「いい人」でも、「野心」がある人とない人が
いますよね。なにかを成し遂げたいという強い気持ち。


慮る力を持つ「いい人であるだけじゃなくて、「野心」を
伴っている人こそが、売れる商品づくりができるんじゃないかと
思います。

「いい人」だと自認する方、商品開発はきっと「適職」ですよ。


ところで、将棋名人の谷川浩司さんも
次のようなことを言ってますね。

文脈は違いますが、上記のことと通じるものがあります。

“将棋界でもこの人に勝ってほしいと思わせる棋士が
 活躍し続けている。・・・
 羽生善治さん、森内俊之さん、佐藤康光さんだ。
 以前からこの三人は勝ち続けると思っていたが、
 それは将棋の強さだけではない。いつでも、周りの人の
 ことも考えられる人が本当に強い人だと思うからだ。”

投稿者 松尾 順 : 06:00 | コメント (0) | トラックバック

どんな家が欲しいのか、依頼者にはわからない

脳科学者、茂木健一郎さんが司会を務めるNHK
「プロフェッショナル仕事の流儀」は、毎回いろんな業界の
「職人」が登場してなかなか良いのですが、ご覧になってますか?

先週は、建築家、中村好文さんでした。

暖かい人柄を感じさせる方で、
仕事を楽しんでる様子がほのぼのと伝わってきました。


さて、中村さんは、「人の生活が好き」だから、
という理由で個人向け住宅設計しか手がけないそうです。

中村さんが設計を引き受けたら、
まず施主のご家族と打ち合わせをするんですが、

「どんな家が欲しいですか?」

とは決して聞かないんですね。


「ご主人は、朝何時に起きるんですか?」

「で、朝食はご家族で?」

などと、家族の行動をざっくばらんに聞いていきます。

中村さんは、そんな雑談のような会話の中から、
この家族が心地良いと感じる家は、
具体的にはどのようなものなのかを探っていくわけです。


番組の中で、中村さんに設計を依頼した家族の8歳の男の子が、
カメラを向けられて「どんな家が欲しい」とNHKの人に
聞かれていたんですが、この子はこう応えたんですよ。

「家族が安心して・・・楽しく暮らせる家」

ふーむ、実に優等生的回答です。(^-^)

しかし、彼の回答は本質を突いています。

つまり、人にとって、「家」というモノから、
どんなベネフィット(この子の場合、安心、楽しさ)が
得られるかが大事だということです。


しかし、自分の求めているベネフィットを享受するために、
具体的にどんな家の造りが適しているかは、
素人なので実はよくわからないのです。

たとえ自分はわかっているつもりでも、
それは単に表面的な知識や流行に左右されていただけで、
実際に建ててみたら、住み心地が悪くて後悔することが
ありますしね。

だからこそ、家の構造や機能、性能に詳しいプロの助けが
必要なわけです。


つまり、中村さんは、

「どんな家が欲しいのか、依頼者にはわからない」

ということを踏まえて、

家を建てようとする家族が求めているベネフィットを
彼らの行動や意識から「洞察」し、
建築のプロとしての知識と経験を活かして、
具体的な設計に落とし込んでいるんですね。


このアプローチ、建築だけの話じゃないですよ。

前も書いたような気がしますが、
ターゲットユーザーに、「どんな商品が欲しいですか」
なんてアホな質問をしてはいけません。

投稿者 松尾 順 : 06:00 | コメント (0) | トラックバック